『青春にいちゃいけないやつがいる』   作:上条@そぉい!

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独自設定が多い……


『再誕者』

 開幕の挨拶はその大きな開かれた口から放たれる熱線のビームからだった。こらちめがけて飛んでくるそれを指差し『逸らす』

 途中でガクン、とあらぬ方向に曲がったそれは誰もいない砂を焼き尽くす。

 

『やはり万全とはいかないか』

 

 その結果を見て淡々と化け物は思案する。本来ならもう少し早く逸れる筈だった。想定よりも逸らせなかった、つまり私の反応速度が遅くなっている。甘く見積もって魔力出力も普段より半分は落ちている……普段のやり方では押し切られる可能性が高いな。

 

『なら、キヴォトスのやり方で付き合ってやろう』

 

 足りない魔力は、銃火器の火力で補う。ギターケースを肩に担ぎ、再び飛んでくる熱線を横に跳んで避けて、相手の弱点を探るように何度かロケット弾を放つ。弧を描いて飛んでいくそれは相手の装甲に直撃。結果は──

 

『効いてないか』

 

 爆炎が晴れた後に見える真っ白な装甲には焦げ一つない。随分と頑丈……というより、これはあのビナーが持つ特性だろうか。相手の攻撃に合わせて瞬間的に『神秘』を纏う事でその防御力を飛躍的に高めているらしい。

 

『機械が神秘を使うか、そんなのは色彩由来だけだと思っていたが』

 

 或いは都市伝説が形を成した幻想種、くらいだろう。なんにせよこれでは火力が足りない。ならばどうする?

 

『まだ試作途中だったが──良い機会だ、お披露目と行こうか』

 

 ギターケースを垂直に砂に突き刺し、乱暴に蹴る。ガシャンガシャン!とルービックキューブの如くその形状を変えていくそれは、最終的に鋭利な針、いやその太さは杭と言ったほうが正しい。プシュー、と蒸気を呼吸の様に吐き出すそれを満足げに見て化け物は、それを自らの腕に装着した。


 

 機械は混乱していた。いつもの様にまたこの砂漠に邪魔者が現れたのか、と姿を見せてみれば、その相手は少女。ここでは珍しくない。2年ほど前にも同じ様なことがあった。だが、自分の演算はそれを正しく少女、と認識しているのに、もっと根深い、奥底にある意識はそれを否定している。明らかな矛盾だ。

 我々デカグラマトンは神の存在証明を理想とする。その証明する為の演算装置である筈の自分に間違いがあってはならない。その原因を探ろうとエラーを探していた。

 

──検索結果 なし

 

 しかし、演算を何度繰り返しても結果は同じ。何も出てこない。では機械である筈の自分のうちにあるこの焦りはなんだ?言語化できないこの内にある衝動は一体?

 こちらに攻撃しようとその一切を寄せ付けていない。小賢しくこちらの攻撃を避けようと変わらない、結局はいつか当たる。ひたすらに熱線をぶつけ続けてるうちに、その姿を一瞬見失った。

 

── 一体何処へ……?

 

 再び視認したのは、自分の体の上に這い上る少女の姿だ。視線がぶつかる。その瞬間、ない筈の感情が揺れる。これは一体何だ?何なのだ!?

 混乱が極まる。そこでみてしまった。その少女の瞳、その奥底の深淵を覗いてしまった。ドロドロと渦巻く理解できない粘着質なナニカ

 

──エラー!エラー!エラー!エラーエラーエラーエラーerror error error eeeeeeeee

 

 まともに思考できなくなった瞬間。少女の手に装着された武器が炸裂する。

 

 ズゴンッッッ!!!!

 

 鋭く、コンパクトな衝撃は真っ白な装甲を貫き胴体をぐちゃぐちゃに破壊する。回路を破壊され、ぐちゃぐちゃになった思考が本能のままに敵の排除をなりふり構わず優先される。

 

 

 効果あった。と確認するより先に、ビナーが突然暴れ始め、巨体の上にいた私は振り落とされる。

 落下していく私と再び目が合う。その口には先程までとは違う、膨大なエネルギーを秘めた熱線がチャージされている。その照準は既に定められている。

 

「まzい」

 

 落下している私は無防備、ここから避けるのは不可能。判断するより先に生存本能が身体を動かした。

 

「逸らせ……逸rse!!!!!」

 

 今ある全ての魔力を注ぎ込み全力で『逸らす』。捻じ曲がる熱線の軌道は、ジリジリと修正されていく。

 地面に到達するのと、熱線が化け物に到達するのは、全くの同時だった。

 少女の身体が砂に溶けていく。周囲に散らばる粘着質な液体はウネウネと動くも、それも熱線によって溶かされていった。

 

『テケリ・リ!』

 

 決着のついた砂漠で、そんな鳴き声だけが聞こえた。

 


 

 砂の中に逃げ込んだ粘液の生き残りは、必死だった。もはや思考する知能もなく、人格は消え去った。このまま砂漠に埋まるミイラの様になるだろう。だが、その未来が訪れる前。粘液は自らに触れるものに気がついた。

 砂ではない。岩などの無機物ではない。それは──死体だ。少女の死体がある事に気がついたのだ。砂漠の乾燥した気候のお陰か、そこまで劣化していない死体だ。

 粘液は、この死体を核にする事に決めた。考えがあったわけではない。水に飢えた遭難者が、水溢れるオアシスを見つけた時の様な必死さがその行動に走らせたのだ。

 粘液の生き残り達は、それを知らせ合い、身を寄せ合う。そうして産声を上げたのは──今までとは比にならない怪物だった。

 

「は、ははははHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!!」

 

 砂の中から跳ね飛ぶ少女は、空を浮遊しながら笑った。腹を抱えて笑った。今までのような擬態でも、模倣でもない。肌を刺す熱気。不愉快な程のネットリした風。全身を叩く空気の感触。全てがリアルだった。

 真似ではない、嵐のような感情の波の到来は、化け物に今までにはない清々しさと、全能感を与えていたのだ。

 その姿は今までの少女ではない。死体を核とした為、姿がそれに依存している。緑かかった水色の髪に、チェックのスカート、白いシャツという服装。

 今感じる全てを楽しむ彼女に、下から熱線が飛んでくる。だが触れる直前で『逸れた』

 

「ん?あぁ、まだ居たね君」

 

 そこで怪物はその視線をビナーへと向ける。既に先ほどあった敵意などない。そこらの石を見る目と変わらない。

 

「ま、いいや。少し試運転に付き合ってよ」

 

 拒否権はないけどね、と告げて、指をビナーへと向けられる。ビナーは暴走しながら相手の攻撃に備えるも、何も見えない。だと言うのに──

 

ゴッ!ゴッ!ゴッッッッ!!

 

 雨のように連続して見えない力場によって攻撃され、その巨体が砂漠の砂にめり込む。断続的に放たれる雨のようなそれに身体を動かすことも出来ない。

 

「なるほど、これが」

 

怪物はその結果を見て納得した。何故ここまで違うのか。それはキヴォトス人が持つ『神秘』に最適化された肉体にある。前と同じように魔術を放ったとして、模倣していた身体で10で放つところを1で、或いはそれ以下で放てる効率の良さを持っている。それに伴い肉体の剛性は前よりも遥かに高いのだ。

 なるほど、だから『無名の司祭』は王女を機械の肉体で作ったのか。神秘、魔力を使う上でこの効率の良さは外せなかったのだろう。

 前に王女にされたように、『ヨグソトースの拳』を詠唱破棄して1000回ほど連続発射したが、まだまだ使えるだけの魔力がある。それどころじゃない、体のうちから魔力が次から次へと作られていくのを感じる。これがキヴォトス人か。

 

 何処まで出来るのか、存分にテストするとしよう。

 

 

──ちょっとやりすぎちゃったけど

 

 

 数分後、ボロボロになったビナーと、ガラス化してしまった砂漠を見て、少しやりすぎたと反省しながら私は帰った。




クロウマーク2
前任者は破壊されましたが今回はうまくやってくれるでしょう……
たまたまあった死体にとりついて蘇った、それに伴い人格も少し変わった。
今まではあくまで「こういう時はこうなんだろう」という行動、感情の模倣であり、真に迫るものではなかった。

ビナー
中身を覗いてしまったのでSAN値チェック、全ロスで永久発狂です。


『666』解説 一撃形態
察しのいい人は分かったでしょう、ずばりパイルバンカーです。
蒸気を動力としてゼロ距離で放つロマン兵器。
変形ギミックの元ネタは映画『アイアンマン』から。あれかっこいいんですわ。

偶然あった死体は一体誰なんでしょうね?
ヒントは「暑くて干からびそ~」
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