『青春にいちゃいけないやつがいる』   作:上条@そぉい!

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書いてて自分でもちょっとおいたわしくなってきた。だけど化け物はそんな事気にしないので……


『猿の手』

 

──貴様一体何をした?

 

 あれからすぐにカイザーから連絡が飛んできた。戦闘の余波に気がついたのだろう。それで私に連絡が来るのは少し妙だと思ったが目を付けられているのだろう、と考えて私も適当に誤魔化す。

 

「あはは、またあの機械の蛇が暴れたらしい。こっひどくやられて帰ってきたよ」

 

 相手が、だけどねー?

 

──……何を企んでいるのかは知らんが、貴様があの場所について知らない筈はあるまい?

 

「もちろん、だからあの蛇が邪魔なんでしょ?いずれどうにかしなきゃならない問題だけど、肌で感じたのは、1人2人の強力な戦力じゃ無理だね」

 

 平均的なキヴォトス人が挑んでも戦いにすらならないだろう。やはり強力な兵器の量産が必要だ。前に作った兵器の物量でもいいけど、相手はAIだからハッキングされて乗っ取られる可能性があるのがねぇ……。

 

──まあ、いい。休暇に何をしようと関係はない。だが分かっているだろう?

 

 わかってるって。あれでしょう?ゲヘナとトリニティの件。本当はもう少し穏健にやるつもりだったけど気が変わった。ちょーっと過激なやり方をしよう。そういう気分なんだ。その方が()()()()()()

 

 連絡を切って、私はその足でゲヘナに向かった。人相が変わったからか、途中で不良生徒に絡まれたりしたが、相手はこっちの目を見た途端すぐ逃げちゃった。そっか、今の私が『クロウ』の名前であるのは少し変か。

 なら名前を変えよう……そうだな、今の私は幻のような擬態ではない、現実に根を下ろしている。その意思として『リアル』と名乗ろう。

 


 その女を見た時、背筋がゾクっとする感覚があった。至って普通、むしろ気弱そうに見える雰囲気と表情の女に、何故こうもビビるのか。それが分からず、気のせいだと断じていつものように振る舞う。

 

「キキキ、ようこそ万魔殿へ!歓迎するぞ、ええと、カイザーの使者よ!」

 

「こちらこそ突然の連絡ごめんね」

 

「全くだ!だが……いい!このタイミングは実にいい!」

 

 あの空崎ヒナを引き摺り下ろす策がある、と突然連絡が来た時は驚いたが、今羽振りがいいカイザーと協力関係を結べるのはとてもいい。更に万魔殿の力が増すというもの。キキキ、待っていろ空崎ヒナ!

 

「あはは、そう言ってもらえると嬉しいね」

 

 お互いが向かい合って机を挟んでソファへ身を沈める。そうして交わされる会話はとても重要なもの。

 

「それで、策を聞こうか使者よ」

 

「あ、私の名前はリアルね。それで策なんだけど──」

 

 そうして語られた策に、時に疑問をぶつけ、時に頷き、結論が出た。

 

「──いいだろう!その提案を飲む!」

 

「ほんと?よかったー、断られたらどうしようかと」

 

 そう言って胸を撫で下ろす女に、先ほどまでの怖気はない。やはり気のせいだったか。そう思っていたら差し出されたのは一枚の紙だ。

 

「一応企業だからね、これ契約書。ここにサインお願いします」

 

「キキキ、それくらいお安いご用だ!」

 

 スラスラとサインを書いて返す。しかし、今更ながら良いのだろうか。まさか向こうから風紀委員会の力を削ぐ提案をしてくるとは。

 向こうのメリットは企業として製品など契約を結ぶことで新たな販路を開拓できる、と言っていたが……

 キキキ、だがこれで風紀委員会もでかい顔はできまい!

 

「それじゃ、これで失礼するね!良い返事が貰えて良かったよ」

 

 話すこと数十分、相手はニコニコと微笑みながら部屋を出ていった。

 さて、次は先生との面会だ。今日は忙しくなりそうだ。

 

──この時に、ちゃんと契約書をしっかり読んでいれば、後にあんな事にはならなかった。

 


 

 『先生、また生徒から連絡がありました!』

 

 シッテムの箱からそんな声が聞こえてくる。ゲヘナの敷地内を歩く私はそれに返事を返しながら考える。

 

 エデン条約……一度マコトやヒナの意見を聞いておかなきゃ。

 

 トリニティの裏切り者──ナギサが言うにはいるらしいそんな者。その上、こちらにもそんな火種がないとは限らない。一度確認が必要だ。

 

 そんな風に結論をつけて、万魔殿へと急ぐ。その時だった。ゲヘナではない、白いシャツにチェックのスカート、緑かかった水色の長い髪をした少女とすれ違った。

 その瞬間、ふんわりと香ったものに、懐かしさを感じてつい振り返ってしまった。

 

「──ユメ?」

 

 自分も気が付かないうちに呟いていた名前に、その子は振り返って不思議そうに首を傾げた。

 

「私はリアルですよ?先生」

 

「あ、ごめんね。間違えちゃった」

 

 何処かで会っただろうか?向こうもこちらの事を知っていたみたいだけど……まあ、自慢じゃないけど有名だから顔くらい知ってるかも。

 それだけ会話して、リアルと名乗った少女は後ろ姿を見せながら行ってしまった。うーん、ちょっと気が抜けてたかなぁ。昔に離婚して母方に引き取られていった、ユメっていう自分の妹を思い出しちゃった。きっと、あの子が今くらいの年齢ならあんな風に成長してるんだろう。

 

──久々に会いたくなっちゃったな。

 

 もう随分と連絡していない。便りがないのは元気な証拠、なんて言うんだけどね。




クロウ改めてリアル
感情を手に入れてウッキウキになってる。多少ガバをしても気にしないエンジョイ勢になった。カイザーに言った事に嘘はない。本当のことも言ってない。

羽沼マコト
キキキ、これで私の天下は確実!
キヴォトスにおいて『契約』がどんな重みを持つのかちゃんと理解していれば……

先生
なんだか懐かしい気配に昔を思い出した。


ちょっと展開的にアレだと思ったので曇らせタグつけます
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