キヴォトスにおける『最強』は誰か?そう尋ねれば、幾つか名前が上がるだろう。空崎ヒナ、美甘ネル、剣先ツルギ、その他にも多くいる強者達に共通しているのは何か?それはズバリ神秘の使い方である、と黒服は語った。
キヴォトス人は皆、神秘を銃弾に宿し発射する事で威力を高めている。だから、一つの弾丸が戦車を軽々破壊することもある。これが神秘における『矛』。そして、受けても痛いだけで済ませられるのも、その神秘が攻撃を受け止める『盾』の役目を果たしているからだ。
それが基本ならば、強者とそれ以外との違いは何か。その『矛』と『盾』の操作を意識的に行使できているかどうかで決まる。
瞬時に『矛』に神秘を振り分け、受ける時は『盾』に振り分ける。口で言えば簡単だが、これは人が心臓の鼓動の回数を意識的に変える事が出来ないように、本来はできるものではない。だが、一部の者はそれを可能とした。
その中で更に一握り、頂点に限りなく近い者がいる。キヴォトスの中でトップクラスに神秘の量が多い小鳥遊ホシノである。
彼女はこの神秘の操作に長けていた事もあるが、無尽蔵と見誤るほどに多い神秘はそのまま、攻防力に割り振れる力の多さに直結する。普通の者が10コストの割り振りに四苦八苦する中、彼女は100コストを使える無法。これこそが黒服が彼女を特別視する理由であった。
ドシンドシンと駄々をこねるように踏み荒らされる多脚のスタンプをヒラヒラと避けてはショットガンを撃ち込むホシノは、冷静にその結果を観察する。
──随分と硬いね。数発あれば戦車でも壊せる自信があるんだけど。
ならば、と構造上脆くなる筈の関節部を狙って撃っても手応えを感じない。これは余程の装甲だ。
「無駄だ!貴様らの攻撃など通じない!ハハハッ!!!」
狂った様に笑う声が聞こえてくる。だが、それを聞くホシノに焦りはない。
「あんまり舐めないで欲しいな〜、おじさんこれでも経験豊富なんだよ?」
それよりも警戒するべきは、あの二対の巨大なブレードである。一振りで砂漠の大地が大きく切り裂かれ、幻想的な青緑の粒子が舞い散る様は、綺麗に見えるがホシノの目はそれを危険視していた。
──あれはまともに受けたらおじさんも危ないね。
普段の私なら、と付け加える。
ホシノは普段、神秘を制限している。その莫大な神秘は、自らの体を傷つける諸刃の剣だったからだ。強すぎる握力が、自らの手を握り壊してしまうように、彼女はそうならない様、気を遣っていた。それでも問題なく火力は出たし、気にしてこなかったが、相手の装甲を貫けないのであれば話は別だ。
『無制限』の『神秘』をぶつけて一気に破壊する。それがホシノの出した結論である。
もはや狂気を口から吐くしかない理事長は、ホシノ目掛けて2対の巨大なブレードを振り下ろす。しかし、ホシノは動かない。誰もが次の瞬間訪れるだろう悲惨な結末を想像した。だが、ホシノは!
「ちょっと痛い、かな〜。おじさんも歳だねぇ」
口調は軽い。盾でしっかり受け止めた。それを支える足を伝って衝撃が地面を大きく揺らすが、しっかりと。
何をするつもりか。そう数少ない残された理性で理事長は考えた。だが、ホシノの行動は常識を超えたものだった。盾越しにブレードを押さえつけると、そのまま持ち上げたのだ。ブレードに繋がれた本体ごと、持ち上げた勢いで一本背負い。そのまま振り回してエクセルサスをひっくり返し地面に叩きつけたのだ。
すぐさま姿勢を戻そうとする前に、彼女は次の行動に移っている。隙だらけの巨大な機体の上を走り抜け、正確に理事長のいるコックピットの装甲に銃口をピタリと密着させ、引き金を引いた。
「ま、待てぇぇえええ!!?」
中から命乞いの悲鳴が聞こえてくるが、ホシノはお構いなく、ショットガンのスライドを乱暴に引き、連射した。
ゴォン!ドォンッ!
とても銃から聞こえるようには思えない炸裂音と破壊音は数秒続き、ようやくエクセルサスは機能を停止した。
「機械相手にここまでやったのは初めてだよ、意外と硬いね」
それを確認して彼女はショットガンを肩に担ぎ息を吐いた。
『ふむ、少々予想外だったな』
その時背後から初めて聞く声が聞こえて、銃を向けながら振り向いた。そこに佇むのは少女だった。黒いスーツに身を包み、片手には大きなギターケース。黒髪の少女。
ホシノは初めての感覚に言い知れない恐怖と焦りを感じた。これまでどんなに警戒が緩くても背後を取られるなどなかった。気配すら感じない、なんて異常だ。
『だが、代わりに良いものを見せてもらった。感謝する』
銃を向けられてなお、その少女の表情に変化はない。氷のような無表情。それが余計に彼女の焦りを助長した。
「もしかして仲間かな?助けに来たとか?」
ありそうな可能性を口にするが、この様子ではそれも無さそうに見えた。
『助けは必要ないだろう。そのつもりもない。少々気になったのでこうして対面してみただけでね』
巨大な機械の上にいる2人に下から後輩達の呼ぶ声が聞こえてくる。そちらに一瞬気を取られ、視界を戻したその時には、対面していた少女の姿は消えていた。そこでようやく、自分が全身に冷たい汗が流れている事に気がつく。
事態はこれで解決した、筈だ。だというのに、彼女の心は晴れない。まだ終わりではないと心のどこかで考える自分を振り払い、こちらを呼ぶ後輩達に手を振った。
クロウ
壊されちゃった……と内心へこんでる。でも初めてといっていいこの世界の戦闘をみれて分かったこともあったのでよし。
この後後遺症の筋肉痛に苦しむ小鳥遊ホシノ
これでも『暁のホルス』時代より弱体化してるおじさん。
これと同格扱いの各学園の最強たちはどうなるんだ……
なおSAN値チェックは成功。
先生
最後にだれか居たように見えたけど姿は見えなかった。
もはや触れることもない理事長
この後機体の証拠隠滅自爆に巻き込まれて爆発四散!オタッシャデー!