勇者と王女のぶるーごーすと   作:ひつまぶし太郎

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2話目です。
過度な期待はせず、暇つぶしにご利用ください。


にわめ。

 

少年はとりあえずびたんびたんと芋虫のように悶える褪せ人を遠巻きに見つめ、やがて動かなくなってから恐る恐る近づいた。

 

少年は教会の庭で死んでると思って触れた蝉に小便を引っ掛けられたことを思い返し、とりあえず流石に光で命を落とすほど儚い命ではないだろう…ないよね?と褪せ人の生死を確認するために手を伸ばそうとして、蛍光色の全身を前に直接触ることを躊躇する。

 

“まっぴんくでどくどくしい…から、剣でいいか”

 

『う…なんかHPが減らないギリギリの痛みがする…これは現実…?』

 

のろのろと起き上がり、再起動した褪せ人に少年が地図やその他もろもろを“狭間の地のルーン”と交換で売ったところ、蛍光色の全裸は大層喜んだ。

 

『ちゃんとハゲまで入れてね。こだわりのメイクなんだから!…じゃなくて、ありがとう!君!えーっと…まだ聞いてなかった。名前は?』

 

“つるつるぴかぴか”

 

『誰がつるっぱげだい!あ、違う違う。君の名前だよ君の名前!あと私の名前はねぇ、今はGだっけ。あ、違うや。アルフォートだった!』

 

“なまえなんてない”

 

『へー君も名前無いんだ!お揃いだねぇー。んん、でもそれじゃあお礼言いにくいしなぁ…』

 

“そもそも、それがやくめ。かねももらった”

 

『それでも私がお礼言いたいの!あそうだ、私が名前つけてあげるってのはどう?お礼にさ!』

 

“なんでもいい”

 

『投げやりだなぁ。バリネコスケベブラックとかどう?うわ!急に感情が芽生えるじゃん!そんなに嫌だった!?』

 

“ころして、ばらして、おわらす?”

 

『あははは!本気の殺意!んーなら、呼びやすくクロでいっか!いろいろありがとうねクロくん!』

 

“どいたまー”

 

そんなやり取りから始まった二人の関係は良好だった。

案内人とはいえ、半年では各ダンジョンの中までは調査できない。

案内人のせめてものつとめとして少年は褪せ人とともにダンジョンへ突撃し、罠にかかり、死にものぐるいで逃走したりしているうちに、自然と互いに信用するようになっていった。

 

『ヤバいヤバイよヤバすぎるよ!メリナが“ヤバいわよ”なんて言ってたの、ただの脅しだと思ってたのに!』

 

“そらからいっぽうてき。いいまと。こんがりやけました?”

 

『このままじゃ日焼けして私がより良い女になっちゃう!』

 

“ならやくのがいい”

 

『うそうそ、超うそ!あーもうドラゴンになんて手を出さなきゃよかったよー!撤退撤退!レベル上げてからまた来よう!』

 

少年は、感情豊かに全力で生きるその褪せ人から人とは何たるかを学んでいった。

その思い出は、今なお少年の中に根付いている。

 

 

 

《魔力防護》

 

二本指を信じる者たちの祈祷

 

魔力カット率を高める

足を止めずに使用できる

 

導きの先では、あらゆる者が敵となる

僧兵も、魔術師も、古竜の騎士も、黄金の末裔も

覚えておけ。狭間は、褪せ人を歓迎していない

 

 

 

ランタンの光を頼りに暗い廊下を進むことしばし。

敵もいなければアイテムも何も無い廊下を抜け、外へと繰り出した途端に少年は見たこともない敵に襲われていた。

 

つや消しした騎士兜の亜種のような頭に、角ばった装甲をした全身鎧。

手にはクロスボウのような、それでいておそらくクロスボウよりも高性能な武器で小さな礫を連射してきている。

 

「■■■■、■■■■■■■ッ!」

 

“何いってるかわからん”

 

だがどうやら追尾もしなければ、武器についている小さな口からしか攻撃は飛んでこないらしい。

《ラダゴンの赤狼》のように一人時間差攻撃をしてきたり、ドラゴンのブレスのように広範囲攻撃というわけでもない。

その早いだけの攻撃をすり抜けるようにして躱しながら、少年は愛用のブロードソードを一閃。

少年にとってはあまりにも容易い敵。

 

“よゆうでござる”

 

だが。

剣を振り抜いた姿勢で余裕を見せる少年は、頭を落としたその敵の爆発によって吹き飛ばされた。

 

“!?!?!?!?”

 

狭間の地にいた倒すと爆発する壺でできた謎生物を思い返した少年は、とりあえずとどめを刺した時はすぐ離れることを脳内メモへとしっかり刻みつけた。

ついでに煤けた服を払い、よろよろと立ち上がる。

 

とりあえず敵を倒してもルーンはもらえないらしい。

そして、すべての敵がいちいち爆発するのだとしたらドロップアイテムも望めない。

…消費アイテムの補充手段を確保するまでは、あまり無茶な消費はしないほうが良さそうだった。

 

というか無茶な消費以前に、そろそろホストの元に戻ったほうが良いだろう。

あまり先行しすぎると杖蝿クソ白野郎と罵られてしまう。

それに流石に目が覚めただろうしと引き返し少年は、そこで奇妙な三人組と顔を合わせることになる。

三人は上の階から落ちてきたのか、天井が開きそこから光が差し込んでいる。

 

「損して得を取れって言葉があってね…って、こんなところに子ども?」

 

“…ふしんしゃ”

 

「それって私のこと!?いや、状況だけ見ればそうなんだけどちょっと待って!」

 

「と、とにかく助けてくれてありがとうございます先生…」

 

「今の冗談でちょっと感謝が薄れたけど…ありがとう先生!」

 

その先生と呼ばれる不審者は幼い少女二人の下敷きにされてとてもいい笑顔を浮かべており、妄言まで吐いていた。

なんかこいつ年下の幼い女の子の足舐めてそうな顔してんな、と少年の直感は言っていたが流石にそこまで変態ではないだろう。

だが。

 

“しんにゅうしゃははいじょ。ふしんしゃはあうと”

 

少年の推定ホストは全裸の幼女だ。

つまり眼の前の不審者のストライクゾーンである可能性が高い。

呼ばれた霊体の仕事的にも心情的にも、排除対象だった。

 

「二人共…来るよ!」

 

「絶対先生のせいだよね、なんで決め顔できるの!?」

 

「あれって剣?あんな大きさの刃物なんて初めて見た…しかもヘイローがない…?あとなんでバケツ被ってるの!?」

 

少年は人殺しだ。

障がいとなる存在はすべて例外なく殺戮する。

そんな行動原理を掲げる褪せ人の影響と、それに影響されやすい下地があった、などと言い訳するつもりはない。

後悔もしていない。

 

邪魔なら殺す。

味方なら生かす。

モブに囲まれ数の暴力に汚い悲鳴を上げ、ドロップの渋い強モブに中指を立て唾を吐き捨て、ボスを倒せばガッツポーズ。

ダンジョンをマッピングし、敵の観察をし、パターンを覚え、敵の殺し方を考える時間が何よりも楽しい。

自分に課した縛りでボスを踏みにじる瞬間と何にも縛られずに最適解でボスを木っ端微塵にする瞬間は何事にも代えがたい快楽だ。

少年は殺戮に飢え、血に酔う。

 

───それが常識。

 

だがどうやらここではそうではないらしい。

そのことも頭の悪くない少年はうっすらと理解していた。

 

「とりあえず制圧してから考えよう!事情もあとから聞く感じで!モモイはそこで待機、ミドリは前にお願い!二人とも銃は無しだよ!」

 

「ヘイローないもんね…もしかしたら先生と同じくらい弱いかも!あとゲームの中から出てきたみたいな見た目した子だし私も色々聞いてみたい!」

 

「油断しちゃだめだよお姉ちゃん!」

 

ヘイローと呼ばれるモノがない少年を見て、銃ではなく拳のみで向かってきた彼女たち。

幼い姿に似つかわしくない凶暴な武器を所持していたようだが、その根底にあるのは優しさだった。

優しいなら敵の息の根は止めておくべきだと思う少年の思考はさておき、其れが優しさだと言うなら、向けられた方も応えるべきなのだろう。 

 

“すでしばりはひさしぶり”

 

少年は走りながら剣を投げ捨て、素手になった両手を構える。

素手での戦闘なんていつぶりだろう。

暗月の姫の塔に泊まった際に二段ベッドの上か下かで褪せ人と喧嘩したとき以来だろうか、なんて回想する少年はその小さな歩幅に反してあっという間に距離を詰める。

 

『お、おいお前たち…そんなことで顔面腫れ上がるほどの喧嘩をするんじゃない…あ、こら!喧嘩をやめ…やめろって言ってるだろ!だってこいつがじゃない!子供か!』

 

足を払い、掴もうとしてきた手をすり抜ける。

その際少年が着ている密使装備のマントに手を引っ掛けられ、人間離れした力によって振り回されるがその勢いに従わずにその魔手から逃れる。

 

“かいりき。ほんとはむきむきのくま?くまさんこちら、てのなるほうへ”

 

「…冷静に冷静に…。とりあえず捕まえたあとはお説教だからね!」

 

“いやんえっち”

 

手加減、というよりも徒手格闘になれていないのだろう。

白々しく拍手する少年に向かってどこか追いかけっこの鬼ようなたどたどしさで向かってくるその双子の緑色の方に向かって飛んだ少年は、飛び越す際に部屋に落ちていた黒い太めの縄を引っ掛けるとあっという間にぐるぐる巻きにする。

先程の攻防で少年よりも遥かに力の強いことはわかっているので、どうせ一時しのぎにしかならないが、1対3の構図が一時でも変えられるならやって損はないだろう。

 

「───今!」

 

「待ってたよ先生!おりゃぁぁぁぁ!って、ああ───っ」

 

そして、拘束のために停止した隙を逃さずに突撃してきた桃色の脇をあっさりすり抜けると、少年は不審者へと一直線で駆け抜けた。

 

「「先生!?」」

 

「はい、捕まえた。やっぱり隙を見せた私のところに一直線できたね?」

 

“!?!?…はなして”

 

そして一撃で意識を昏倒させるつもりで放った飛び蹴りは、何故か当たる直前で何かに干渉されたように勢いを殺され、不審者に抱きとめられる。

もがこうにも完全に抱きしめられてるせいで力を入れにくく、武器を出さないと決めた以上打つ手もない。

 

とりあえず抓るか。

せめてもの抵抗として、そんなある意味子供らしい攻撃に出た少年を、その不審者はやたらニコニコした笑顔で見つめてくる。

 

───抵抗する幼い子供を全力で抱きかかえて、抓られて笑顔になる大人は誰がどう見ても不審者だった。

 

「せ、先生…絵面が犯罪者すぎるかなーって思うんだけど」

 

「やめなよお姉ちゃん…」

 

「あ、いやいや違うよ!?単に思ったより子供っぽいなってのが面白くて…それにどうやら優しい子みたいだし」

 

「優しい?私をムキムキの熊呼ばわりした子が?」

 

「それって私達に合わせて素手で向かってきたこと言ってる?」

 

「そうそう。ミドリも落ち着いて考えてみたら、わかるでしょ?」

 

「うー…言われてみればそんなこともあるようなないような」

 

“とりあえずはなさんかい”

 

抱きしめられたままぷらーんとなる少年は、いい加減実力行使に出るか考え始めていた。 

 

「おっとごめんごめん。とりあえず下ろすけどもう暴れないでね」

 

“いちじきゅうせん”

 

そんな不穏な考えを見通したわけではないのだろうが、先生は少年をそっと地面におろした。

 

「とりあえず私の名前は□□。キヴォトスの外から来て、今は先生をやってるんだ。よろしくね」

 

「私はモモイ!こっちは妹のミドリ!」

 

「ちょっと、なんでお姉ちゃんが言うの?」

 

「え、何となく?」

 

仲良くじゃれる双子と先生を前に、少年は静かに自己紹介した。

 

“ぶるーごーすと。なまえはまだない。呼び方はおすきにどーぞ”

 

「え、名前無いの?んーなら、呼びやすくクロでいっか!とりあえずなんでここにいたかとか、いろいろ聞かせてもらえるかな?」

 

その呼び名に、少年は思わず固まる。

 

“……なにゆえクロ?”

 

「黒いから…ごめん安直過ぎた?」

 

“…べつにそれでいい”

 

この出会いは、再び自分にとって転機になる。

そんな予感が少年にはあった。

 

 




今回も最後まで読んでくださって誠にありがとうございました。
書いていて自分でもなんて中身のない小説だろうとは思うのですが、息抜きなので許してください。

ごーすと'sそうび
頭:ぐれーとばけつ
服:密使しりーず
右手:ぶろーどそーど(構え)、くれぷすの黒鍵
左手:青紋のひーたーしーるど、二本指の聖印
その他:ふれいる(ぐらびたす)
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