勇者と王女のぶるーごーすと   作:ひつまぶし太郎

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よんわめ。

 

 

『いい?女の子はね、花で喜ぶ。ベタだけどねぇこれ鉄則!』

 

“……”

 

『それでねぇ、他にはねぇ』

 

“………”

 

少年は隣で妄言を垂れ流す酔っ払いのハゲをスルーしながら、アイテムの作成を行っていた。

今の褪せ人の姿は、ヒゲ面の剥げたおっさんだ。

小汚え酔っ払いにうざ絡みされながらも、少年は完全無視。

 

今、少年はリベンジに燃えていた。

 

『もー!かまってよぉー!君が年相応に生きることになった時の知恵を授けてるんだよ?いわば先生だよ先生!ほら、りぴーとあふたみー?せ、ん、せ、い♡』

 

“しねはげ”

 

『ド直球!ウケるー!うっぷ、おげ…』

 

“こげろのむな”

 

だから今、酒カスハゲにかまってる暇はないのだ。

 

『ねー!そんなにあの二人に負けたのムカつく?』

 

“あのでぶとのっぽきらい”

 

少年は眠り壺を量産しながら、感情の起伏の少ない瞳に珍しく炎を燃やしていた。

少年と褪せ人はつい先程、互いの隙を埋めるように連携してきてかつ、何度も復活してくる二人組のボスから命からがら逃げ出し、対策を練っている最中だった。

 

そんな少年の隣で、褪せ人があたりを見回すような素振りを見せる。

 

『まぁーわかるけどね?それに再戦が手間なのもクソだと思う。……にしてもここ暗くない?あんまり暗いところで作業してると目が悪くなるよ?』

 

“くらいほうがおちつく”

 

『えー?いくらなんでもランタンすらなしは厳しくない?手元しか見えないんだけど…』

 

“くらやみとわかいせよ”

 

塩対応に次ぐ塩対応。

構ってちゃんの褪せ人(ヒゲ面でハゲのおっさん)は、ぬるりと暗闇の中で少年の方を抱き寄せ耳元で囁き始めた。

 

『…へいへーい実は強がってんじゃないのー?うぇーい!ほら、耳ふぅー…どう?くすぐったい?』

 

“うざい…”

 

『でへっへっへ、はい《星灯り》ぃ!』

 

“!?…あ”

 

真の暗闇に突然現れた光。

それに目が眩んだ少年は、手元で感じた感触に諦めにも似た感情が湧き上がる。

 

『え、どうかした?』

 

“おやすみ”

 

『え、どうい───』

 

二人の手元で、数十個の《眠り壺》が連鎖的に起爆する。

貴重な《トリーナのスイレン》が大量に無駄になったことへの不貞寝も兼ねて、少年はそれに逆らうことなく意識を手放した。

 

これ以降、少年はどれだけ夜目が効くのだとしても、本気の隠密時以外はランタンをつけるようになる。

暗闇を見通せたとしても、不意の明かりで目を潰されると学習したからだ。

 

 

 

 

《暗闇》

 

かつて円卓の暗部として

二本指に仕えた者たちの祈祷

 

周囲を暗闇で覆い、術者を見失わせる

足を止めずに、またしゃがんだままでも使用できる

 

暗部とは、導きを見失った褪せ人であった

祝福なき暗闇で、彼らは使命を求めたのだ

 

 

 

 

「うーんさすがに中世すぎるかな…他にないの?普通の服」

 

“ないが?”

 

「そっか…そっかぁ…」

 

それが少年が目立たない普通の服に着替えてと言われて着替えた服装への返答だった。

 

少年は自分のシャワーを浴びたお陰で火照る体を改めて見下ろす。

布の服だ。

なぜか宝箱に仕舞われていた特に由緒もない普通の服だ。

褪せ人がパッチをボコして正当に手に入れたそれを譲り受けた少年は、密使シリーズを洗濯してるときの予備の服として利用していた。

 

他には《市民の服》なんかも狭間の地には存在していたが、少年の収納には存在していない。

そもそも鎧以外の服など趣味の領域で、なんなら『全裸こそ一番のおしゃれ!狭間の地一番のファッションモンスターは私だよ!』とかうるさいやつのせいで、頑として手放さなかった密使シリーズとグレートヘルムを除いて、少年は服を持っていなかった。

必要もなかった。

 

「ちょっとまってね?知り合いに声かけてみるよ。私も子供の服は持ってないしね…」

 

“そもそもこまってない” 

 

「そうかも知れないね。だけど、私がそうしたからするんだ。もし服が用意できたら着てくれる?」

 

“…べつにいいけど…”

 

どこまでお人好しなのだろう。

行きずりで、初対面で襲いかかった相手への対応とはとても思えない。

実際少年にはもう先生を襲うつもりもないが、そんなもの狭間の地では関係なかった。

剣の素振りが当たったら即敵対。

贖罪するまで互いに命を賭けて殺し合う関係は継続する、そんな世界で生きてきた少年にとって目の前の人物はどうにも距離感を測りかねる相手だった。

 

「うん…うん。そう、そうなんだ…ちょっと訳ありでね。うん。そう…確か近くに来るって話だったよね?そのついでに…うん。費用はあとからになるけどこっちが持つし…うん。あ、お願いできる?ありがとう!うん、待ってるよ。じゃあまた明日」

 

キヴォトスの常識のない少年からすると、眼の前の先生は虚空に向かって話す痛い人に見えるのだが、しってむの箱とやらで誰かと交信してるらしい。

また今度すまほ買ってあげる、とは先生の言葉だが少年は使いこなせるとは思えなかった。

 

「とりあえず今日はそれで寝よっか。えーっと、私はソファーで寝るから、クロは私のベッド使ってね」

 

“いっしょにねる”

 

「え!?あ、気にしないなら私もベッドで寝ようかな…うん。とりあえず部屋の隅で体育座りとかじゃなくて安心したよ」

 

“すいみんはだいじ。ねどこはいいほうがいい”

 

外でも雨がしのげさえすれば寝れるが、ベッドがあるならベッドで寝る。

それが少年の習性だった。

今日は、未知の体験が多く流石に疲れた。

疲れを自覚した少年はあっという間に夢の世界へと落ちていき、隣で無防備に体を休める先生の鼓動もやがて聞こえなくなった。

 

「おやすみ。君がどこから来てどこに行くのかはわからないけど、私にできることは何でもするよ。私は大人だからね」

 

だから当然、その言葉も少年には聞こえていない。

それでも先生は、満足そうに笑ってから少年の頭を一撫ですると自分も目をつむるのだった。

 

 

 

 

翌日。

少年の目の前には、計四人の少女がいた。

一人は眼鏡の黒髪の少女。

その隣に眠たげな顔をした桃色の子ども。

さらにその隣に青いマフラーを首に巻いた少女。

そして、最後尾に少し居心地の悪そうに笑顔を浮かべる金髪の少女。

 

「みんな来てくれてありがとう。リンへの書類の提出は無事終わった?」

 

「はい、なんとか…先生に教えてもらいながら作ったものでしたが…」

 

「うへぇ…おじさんはあんな細かい文字だらけの書類は二度とコリゴリだよぉ。お昼寝してても文字が追いかけてくるんだもん」

 

「ん、銀行襲うほうが簡単」

 

「まぁまぁ…正式な委員会になった以上今後もちょくちょく書類を作ることになるだろうから今のうちからちょっとずつ慣れていこうね…あれ、そう言えばヒフミはどうしてここに?」

 

3人の少女と先生の目線が集まったことに気付いたのか、ヒフミと呼ぼれた少女は思わずさっと目線を反らした。

その様子に言い出しにくそうにしながらも、眼鏡の少女がおずおずと口を開く。

 

「ヒフミさんはその…」

 

「ん、また襲われてた」

 

「あはぁ、ヒフミちゃんのペロログッズへの情熱はおじさんにはちょっと眩しすぎるかな…」

 

「あ、あはは…私もなんでああなったかはちょっとわからないです…私はただ限定ペロロ様グッズの列に並んでただけなのに…」

 

ずーん、と沈む割に特に反省した様子もないヒフミの様子にどこか親近感を覚えている少年に、ようやく先生は振り向いた。

 

「と、とりあえずクロ、紹介するね。向かって左からアヤネ、ホシノ、シロコにヒフミだよ!」

 

“おんなばっか…すけこまし?”

 

「風評被害!どっちかって言うとキヴォトスが女の子多すぎるんだと思うんだよね私は!」

 

「それで先生、そちらの子は…」

 

「ん、ずっと気になってた」

 

「この子は…」

 

そこで少年の方をちらりと見ていたずらっぽく笑った先生を少年が静止するよりも、先生が口を開くほうが早い。

 

「この子は保護してるちょっと訳ありの子なんだ」

 

「この子実は私の子なんだ」

 

「「「「!?!?!?!?」」」」

 

“ひとのこころがない…”

 

冗談とはいえ、おそらく先生に好意が芽生え始めているであろう少女たちに告げることではない。

本人は軽いジョークのつもりなのだろうが、現にその言葉をきっかけにホシノ、シロコと呼ばれていた二人の目から光が消えた。

なにやらどろどろとした空気が発生している気すらしてきた少年は、さっさと事態に収集をつけるべく躊躇いなく先生のスネを蹴り上げた───!

 

「いったぁ!?ごめんってちゃんと紹介するよ!ごめんって、あた、痛い!!スネばっかり的確に蹴らないで!」

 

「うへぇ…ちゃんと説明してね、先生?」

 

「白状する」

 

「えーとね、うん。この子は保護してる訳ありの子でね。たぶんずっと戦いに利用されてきた子なんだ。クロ、自己紹介できる?」

 

瞳孔ガン開きで迫る二人に流石に選択を間違えたことを悟ったらしい先生は、冷や汗を流しながら少年へと自己紹介を促した。

 

“ななしのぶるーごすと。いまはくろ”

 

ジェスチャーの一礼を決め、顔を上げた少年は二人に向かって片手を差し出した。

 

“よろしこ”

 

挨拶と同時に少年のお腹がなり、空気が緩む。

シャーレの朝はこうして穏やかさを取り戻し、いよいよ持って本題に入るのだった。

 

「うへぇ、とりあえず駅前のウニクロで無難な男の子の服は買ってきたけどさ〜サイズは合うかなぁ…?えへへ、おじさんに着てるとこ見せて?」

 

「ん、目出し帽も被るべき」

 

「いやいやシロコ先輩、先生のリクエストは目立たない格好ですからね?」

 

“きにいった”

 

「嘘でしょ?」

 

「先生パジャマなら是非この服をどうぞ!ついさっき手に入れたペロロ様着ぐるみパジャマです!ちょうど子供服だったから飾るしかないと思ってたんですが…かわいい×かわいいで最強になれますよ!ほら、どう!?君もペロロ様好きだよね!?」

 

“とりはすき”

 

「やっぱりペロロ様の魅力は全世界に世代を超えて通用するんですね!」

 

「美味しいからとかじゃないよね…?」

 

“………きがえてくる”

 

「ねぇちょっと!?」

 

『うはー!かわいいー!次はこれ着てくださいこれ!』と鬼のような勢いでパジャマ以外のペロロ様お洋服を出してきたヒフミによって着せ替え人形になった少年は、しばらく変な顔をした鳥のキャラクターを見ると一瞬びくつくようになるのだが、これは完全に余談だろう。

 

「うへぇ、キヴォトスでの通貨の手に入れ方ぁ…?おじさんとしては君くらいの子はお小遣いもらうのが一番いいと思うなぁ。世間の厳しさを知るのはあとでもできるからね」

 

「ん、銀行を襲う」

 

“ん、てきたおせばてにはいる?”

 

「幼い子に犯罪を吹き込むのはやめてくださいねシロコ先輩!」

 

 




今回も最後まで読んでくださって誠にありがとうございました。
毎度中身がなくてすいません。
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