勇者と王女のぶるーごーすと   作:ひつまぶし太郎

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そして、この小説には深刻なキャラ崩壊が存在します。
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ごわめ。

 

朝。

少年が目覚まし時計という悪魔に叩き起こされ、逆に叩き潰して威嚇のような唸り声を上げたり、なんでもつけていいよと言われた少年によって生み出された最強のトースト(ジャムバターチョコピーナッツはちみつ漬け)を食べた先生があまりの甘さに悶絶するという一幕があったりしたが、とりあえず一晩明けて少年と先生は再びゲーム開発部の部室を訪れていた。

  

「あ、おはよう先生!朝早くから来てもらっちゃってごめんね?」

 

「おはようモモイ。目覚まし時計がお釈迦になったこと以外は大丈夫だよ。モモイの方こそ大丈夫?」

 

“FATALITY…”

 

「ふぇい…?あ、うん!私はちょっと寝たから大丈夫だよ!ゲームしてたら徹夜なんてよくあることだし…それにしても目覚まし時計がどうかした?」

 

「うん、この子が目覚まし時計にびっくりしちゃってちょっとね。次は音が静かなやつにするよ」

 

“あくまのどうぐ”

 

「それ、目覚まし時計の意味ある?スマホで良くない?」

 

「それはそう。で、モモイはこんな朝早くからどこに?」

 

「私はちょっと、アリスの学生証を受け取りにね!クロくんの分はいらないんでしょ?」

 

「そうだね。流石にキヴォトスでは男の子は珍しすぎて、ごまかすのは難しいかな」

 

「だよね…。まぁそっちは先生に任せるよ。とりあえず私が学生証取りに行ってる間部室でゆっくりしてて!このあと先生たちとアリスに学園の案内してあげる予定だから!」

 

そうして、朝から元気よく駆けていくモモイと入れ替わるように部室へと足を踏み入れた2人を迎えたのは、眠りこけるミドリとロッカーの中の人、その中心でゲームを無心で行うアリスだった。

なんとなく邪魔をしてはいけない鬼気迫るものを感じたふたりは、ぴ、ぴ、ぴ、と機械的なリズムで画面から音が鳴るのを後ろから眺める。

 

“ねる”

 

「ああうん、なら私の膝枕をどうぞ?」

 

“くさそう”

 

「し、失礼な!」

 

ゲームクリア。

その文字が画面に表示される頃には、少年は飽きて先生の膝を枕に眠りについていたし、先生は足が痺れて限界が来ていた。

ゲームクリアの画面を満足そうに眺めたアリスは、そこでようやく自分の後ろに二人の見物人が増えていたことに気づいたらしい。

そして少年は少年で、自分に視線が向けられたことを敏感に察知して跳ね起きた。

少しだけ自分が何を言うべきか考えるような素振りを見せた後に、アリスは笑顔で口を開いた。

 

「…パンパカパーン!アリスはファンタジー世界の住人と先生の二人と合流しました!」

 

“…は?”

 

「えっと、これは…」

 

“ばぐった”

 

なんということだろう。

部室に来た頃はひたすら疑問符を浮かべるだけだった少女は、一晩で洗練()された言語を話すようになっていた。

しかも少年への認識がファンタジー世界の住人。

おそらくゲームに出てくるキャラクターと似たような格好をしていた少年をそう定義したのだろうが、正体不明と理解を諦めあるがままを受け入れている先生とは真逆の対応だった。

 

「合ってますか?」

 

「う、うーん…そうだね。とりあえずよろしく?君と話せて、私は嬉しいよ」

 

“よろしこ”

 

「…!はい!よろしくお願いします!」

 

そして、そんな3人の会話によってようやく少女たちも目を覚ます。

アリスに学生証を渡したり、ミドリが姉を問い詰めたり。

そんな一幕はさておいて、一同はアリスの武器を入手すべく、ついでにミレニアム・サイエンススクールを案内するべく部室の外へと出るのだった。

 

 

 

 

 

『ンアーッ!銃と言うには大きすぎます!』

 

“…え、なにこれは…”

 

『解説しましょう!今のアリスさんの発言はネットで有名なミームの一つを模したいわゆるパロディで、現在このミームが栄えていたサイトはサーバーごと閉鎖されてしまっていますが今なお脈々と命のバトンが繋がているそんな息の長い一大コンテンツ!その名もいん『はいストップ』』

 

エンジニア部でアリスが『光の剣』とは名ばかりの、宇宙戦艦搭載用レールガン。

基本重量だけで140キロあるその銃と呼ぶにはでかすぎる代物を持ち上げ一同を驚愕させ、ついでに天井に穴を開け、普通に戦闘してみせるという異常な力を見せつける傍ら。

少年は自身の愛用している違法改造クロスボウがスナイパーライフル並の威力と飛距離を持つことと、最速岩投げがキヴォトスでも有用なことを証明し、ついでに愛用の剣を実験用のマネキンに試したところ普通に銃弾よりもヘイローへのダメージが大きい事がわかったりとこちらはこちらで異常を見せつけていた。

 

『君は一体…』

 

“ぶるーごーすと”

 

『いやすまない。こういう勘ぐりは野暮だったね』

 

“まつりのしゃてきやがしゅせんじょう”

 

『おや、なら今度絶対取れない射的屋を作ってみようか。…うん、面白そうだ。我らが会計に体験してもらおう』

 

『いいねそれ。景品が取れたらセミナーからの依頼を一度だけ無料でする、取れなかったら部費アップとかどう?』

 

まぁ当たり前といえば当たり前か、と少年はその白刃を見下ろして思う。

この剣は神殺しを目指す鍛冶師が鍛え上げた一品。

神秘、という点においてこの世界でヘイローよりも純度が上回ったとしてもそうおかしな話ではない。

それに実際不死の巨人も無敵の神も、太古のドラゴンもこの剣と全裸ハゲの褪せ人でぶっ殺してきた。

むしろヘイローを切り裂けないことのほうが驚きだ。

とはいえ、奥の手次第では余裕で削りきれそうだが、わざわざそれを試そうと思うほど少年は無意味な殺戮に飢えてはなかった。

 

そしてひとしきり案内を終えたモモイたちは部室に戻り、少年は一人の女性と出会った。

 

「あら、遅かったわね。待ちくたびれたわ」

 

“でっっっっっ”

 

「?…なにか?」

 

「よ、妖怪が出ました…!おっぱいの大きさが常軌を逸しています!しかも、腰回りがモモイよりも細いです!」

 

「それはちょっと言いすぎじゃない!?」

 

その女性は、普段動じない少年やまだまだ無垢?な有栖が衝撃を受けるほどDynamiteでボン・キュッ・ボンだった。

よく整えられた長髪の黒髪はまるで日本刀のような鋭さを感じさせ、その怜悧な顔は整っているが故に威圧感がある。

白いタートルネックの服がはちきれんばかりに盛り上がり、腰回りには見事なまでのくびれ。

とはいえ、少年とアリスの反応に困惑するその顔は案外あどけない。

 

「えっと、君は…」

 

「私の名前は調月リオ。ミレニアムサイエンススクールの生徒会セミナーの会長。人呼んでビッグシスター。つまりこの学園の生徒は皆、私の妹ということよ」

 

「つまらないですからね?普段の合理主義はどこ言ったんですか会長!?」

 

「そう…私の自己紹介、またウケなかったのね。難しいわ…」

 

「ミドリが言ってるのはそっちのつまらないじゃなくてつまりじゃないって意味で…いや確かにつまんなかったけどさ!」

 

「…別にわかってくれなくてもいいわ」

 

「もーこんな事で拗ねないでよ会長!」

 

大きさに釘付けな少年と、自己紹介を求めたら思ってた数倍濃いものが返ってきて固まる先生、そしてスタイルお化けに怯えるアリス。

そんな三人を置いて会話を続けるミドリとモモイの様子からは、かなりの親しさを感じられる。

 

「…あのね、リオも先生と会うの緊張してたんだよ…」

 

「ああそういう…」

 

「そんな事実はないわ」

 

「あはは!会長も意外と可愛いとこあるね!」

 

それは、人見知りで引きこもりのユズがロッカーから出てきて会話してることからもよくわかる。

ふい、と目をそらすその女性はどうやら学生らしい。

 

「それで、その生徒会長さんが私に何の用なのかな。困りごと?それなら全力で手伝うよ?私は生徒の味方だからね」

 

「………。そう、あなたはそういう人なのね。アビドスでの一件も聞いているわ。生徒(庇護対象)と見定めたなら、合理を捨てて全身全霊で解決に当たる。…だから、きっと、あなたには荷が重いわ。私の悩みはね」

 

「そうかな。…もしかしたら、そうかもね。それでも私は君の悩みをいつかは聞かせて欲しいと思ってるよ」

 

「ええ。なら、今言うわ」

 

「あれ、今言うの!?」

 

会長は先生からその隣。

甘い匂いに釣られてユズに餌付けされている少年のさらに後ろ。

アリスに目を向けて言った。

 

「あなたがアリスね。噂の新入部員さん?」

 

「は、はい…私の名前はアリス・ザ・ブルーアイ。ドワーフ族の槍騎士。使用武器はガンランス《火竜の牙》、出身は鋼鉄山脈。幼い頃、魔族の襲撃により家族を失って燃え上る村から助け出されたその日から、ハンターとして日々努力してきました」

 

「そう。私の名前は、調月・リオ・ブランドー。表向きはエルフ族の弓使い。でも実は夜な夜な処女の血を啜る吸血鬼。石仮面で覚醒したわ。使用武器は───」

 

「ちょっとちょっと!?2人してツッコミ不在のままアクセル踏まないで!…えっと、それでリオの言う悩みって…」

 

「ええ…つまり。私が入り浸るサボり部屋…もとい、自分を冷徹な算術使いと思い込んでいる激甘会計の優しさに甘えて実績はクソゲーランキング1位に入った私にとっての神ゲーのみで、部員も足りていないからという真っ当な理由で今や廃部寸前の自堕落空間に加入したいなら、私を倒してからにすることね…ということよ」

 

「紹介文がその通り過ぎて耳が痛い!」

 

「そんな…会長!仲良くしてくれてるからきっと私達の味方だと思ってたのに!最悪ユウカへの交渉をすっ飛ばして生徒会長権限で部にしてもらおうと思ってたんだよ!?」

 

騒ぎ立てるモモミドに、会長は心の底から不思議そうな顔をしてからドヤ顔で言い放った。

 

「ここが部として認められたら、私が入り浸れないでしょう?安心して、ユズとこの部室は私が守るわ」

 

「アリス知ってます!職権乱用ってやつですね!」

 

「…そう、今の貴方に分かりやすく言うなら…」

 

会長は一瞬何かを飲み込むように目をつぶり、それを周りが察するよりも早く意識を切り替えて覇気を纏った。

 

「私が魔王ということよ。勝負はスポブラ三本勝負。アイテム使用は無制限、戦場はセクターZ」

 

“スポブラ…?”

 

「えっと、割と有名なゲームなんだけど知らない?」

 

“しらんが”

 

「スポブラ。つまりスポーツブラのことだよ」

 

“げーむ?”

 

「もう先生、嘘教えるのやめてください!えっと、クロくん違うからね?スポブラっていうのはスポーツブラザーズのことで、まぁわかりやすく言うと対戦格闘ゲームだよ」

 

「私はインターネット掲示板のキャラランクスレで何度もTier1を取っているルイージでいくわ」

 

「いい加減インターネット掲示板使うのやめなよ会長!キヴォトスでネット掲示板を真実だと思い込むのは恥ずかしいことなんだよ!しかもルイージって!」

 

「なら、アリスはピカジュウでいきます!」

 

「初心者が勝てるほどスポブラは甘くないことを教えてあげましょう…!私が魔王よ!」

 

気合い十分な会長を冷めた目で見るゲーム開発部は、この後の結果を察しているようだった。

 

「ねぇ、お姉ちゃん。この戦いって…」 

 

「う、うん。アリスの勝ちだね…」

 

そして、その宣言は悲しいかな本当に覆されることはなく。

 

“みごとすぎる…”

 

会長は見事なまでの負けっぷりを披露してみせた。

というか、キャラの動きに合わせて会長の体も揺れるせいで反応が遅い。

おそらくレースゲームをしていたら、体が完全に傾くタイプだろう。

 

「なるほど、私の負けね。でも覚えておいて私は歓迎してないわ」

 

「もー会長ってば負けず嫌いなんだから!」

 

「まぁまぁ、ほら。次は私もやりたいな」

 

「なら次こそ私が勝つわ…!」

 

“くそざこどすけべようかい…”

 

「ふしだらな会長と笑いなさい…」

 

「ノリがいいのはいいけど、ちゃんと怒るときは怒らないとだからね?」

 

そこにあるのは妙な緊張感のあった初対面からは程遠い学生たちのたまり場としての賑やかで優しい時間。

この時間は、資格審査にユウカがやってくるまで続くのだった。

 




最後まで読んでくださってありがとうございます。

というわけで、リオ会長がゲーム開発部に入り浸ってる概念でした。
息抜きなので、この中身のない小説がどこまで続いて行くかはわかりませんがせめてパヴァーヌ編1章くらいは終わらせたいです。
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