零崎人識の人間関係 匂宮出夢との追憶   作:忘旗かんばせ

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第十三話『カーテンコール』

 

◆   ◆

 

 萩原(はぎはら)子荻(しおぎ)は廊下を歩いていた。

 

 零崎(ぜろざき)人識(ひとしき)匂宮(におうのみや)出夢(いずむ)を連れ、元の世界に帰ったのは数日前のこと。

 

 人識がこちらの世界に因果を固定されている原因であった匂宮出夢を生き残らせながら、どうやって元の世界に帰るのかと思っていたけれど——意外や意外、彼らの元には、()()()()()

 

 それは誰よりも赤く、理不尽なほどに鮮烈な人類最強。

 

 彼の妹——零崎舞織(まいおり)こと無桐(むとう)伊織(いおり)からの依頼を()()()()()らしく——彼女は当たり前のように世界を超えて、零崎人識と匂宮出夢を連れ戻して行った。

 

 その際に起こった諸々の騒動は、単行本にして十巻分は下らない壮絶な大事件となったのだけれど——それは割愛、だ。

 

 正直言って、思い出したくもない。

 

 巻き込まれた子荻にしてみれば——そうとしか、言いようがない。

 

 その騒動も、人類最強が帰還して数日、ようやく後始末が付き——萩原子荻は、久しぶりの休みを取っていた。

 

 だからこの廊下は——大学の廊下では、ない。

 

 人気のない、無限に続くような廊下。

 

 それはあたかも——()()()()()()()()()()

 長い廊下を——

 長い長い廊下を——超えて。

 終端。

 

 小さな部屋に、子荻はたどり着いた。

 

 そこにいたのは——

 

「——お久しぶりですね、(むつ)さん。いえ、無辜(むつみ)さん、とお呼びしたほうが良いのでしょうか」

「どちらでも、お好きなようにお呼びください」

 

 実口(みぐち)六——あるいは、罪口(つみぐち)無辜。

 

 いつか見た純白の和装に身を包み。

 彼女は闇の中、佇んでいた。

 その、背後には——

 

 椅子が。

 

 椅子が一つ——置かれている。

 

 仕立ては良く、高級品であることは間違い無いだろうけど、逆に言えば、それ以外には何の変哲もない、回転式のデスクチェア。

 

 それは今は、後ろ向きになっていて、だからそこに座っているのが誰なのかは、高い背もたれに隠れて見えなかった。

 

 見えなかった、けれど。

 それは。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、あまりにも人の忌避感を煽り——

 

「驚いたのは」

 

 声が。

 声が——響く。

 

「NARUTOが完結していたことよりも、ONE PIECEがまだ終わっていないことの方だったな」

 

 きぃ、と。

 椅子が回る音がして、

 ゆらりと、

 姿を——表す。

 

「そうは思わないか、萩原子荻」

 

 手に持つのは——一冊の漫画本。

 そのタイトルは——()()()()()()()()、第一巻。

 

 喪服のような着流し。

 まるでこの世の全ての不吉を束ねたかのような、不遜の凶相。

 まるでこの世の全てを吉兆と楽しむかのような、不適な笑み。

 かつての狐面は、すでになく。

 されど。

 されどその最悪ばかりは——健在。

 

 西東(さいとう)(たかし)

 

 人類最悪の遊び人が——そこにいた。

 

「お久しぶりですね——狐さん」

 

 その言葉に、彼はつまらなさそうに鼻を鳴らす。

 

「『お久しぶりですね——狐さん』。ふん、確かに久しぶりだが、()()姿()()()、感動の再会という気分にもならないな」

 

 彼は言って、読み終えた漫画本を無造作に脇に差し出す。

 いつのまにか。

 彼の背後には、二人の女が佇んでいた。

 

 一人はかつて人識が出会った女——『化粧師(メイキング)御皐月(みさつき)伏岐美(ぶきみ)

 そしてもう一人は——『空間製作者』一里塚(いちりづか)()()

 

 彼女は差し出された本を受け取り、そしてその二巻を代わりに返す。

 それを受け取ったきり、着流しの男は、背後に侍らせた二人をまるで気にすることもなく、子荻にだけ声をかけた。

 

「どうだった——零崎人識は」

 

 ページを捲りながら、男は言う。

 楽しむような、試すような物言いに、子荻はけれど平然と返した。

 

「それは、無辜さんにお聞きした方が良いのでは無いですか?」

「『無辜さんにお聞きした方が良いのでは無いですか?』ね、ふん。そんなことはどちらでも同じことだ。知りたいのは零崎人識そのものの情報よりも、それを見たお前の感想の方だ——が。しかし」

 

 彼は言って、視線を動かす。

 

「せっかくの()()()だ。お前はどう見た——無辜」

 

 水を向けられた彼女は、淑やかに答える。

 

「実にハイセンスなお方でした」

 

 その言葉に、男は不機嫌そうにページを捲る。

 

「『実にハイセンスなお方でした』、か。ふん。つまらん答えだ。……お友達になったんだってな?」

「ええ。……いけませんでしたでしょうか?」

「『いけませんでしたでしょうか?』、ね。ふん。馬鹿を言っちゃあいけないぜ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。その程度のものに左右される決意なら初めから程度がしれている。お前が零崎人識との友情を結ぼうが結ぶまいが、そんなことはどちらでも同じことだ」

 

 言い終えて、西東天は改めて子荻に視線を戻す。

 

「改めて——」

 

 お前からは。

 

「零崎人識はどう見えた? 萩原子荻」

 

 問われて、彼女はしばし黙り込む。

 

「——普通」

 

 ぽつり、と。

 

 呟くように、彼女は言った。

 

「驚くほど、普通の少年——でしたね」

「『驚くほど、普通の少年でしたね』——ふん。あいつはお前より年上だろうに、少年、ね……」

 

 ふ、と笑って、男は続ける。

 

「だがまあ、普通、という感想は、その通りだろうよ。今更()()を読み返すまでもなくな。あいつの物語は——もう終わっている。やり残しも、これでしまいだ。カーテンコールさ。あいつはもう、()()()()()()()()

 

 小さく笑って、ページを捲る。擦れるような、小さな音。

 

「……()()調()()は無駄でしたか」

 

 やや恥じらうように、子荻は言った。着流しの男は大袈裟に肩をすくめる。

 

「まさか。お前の手駒——『御愛顧感謝(ヴィアツェルト)』だったか。あの手の()()を消費しただけでこれだけの成果だ。十分以上に十分だよ」

 

 漫画本を持ったまま、両手を広げる。人類は十進数を採用しました、というジェスチャーでは、無いだろうけれど。

 

「振り返ってみれば、直接の要因は別として、そのきっかけを作ったのは間違いなくお前の手駒————『御愛顧感謝(ヴィアツェルト)』だった。奴が無事全てを終えたのも、恐怖との向き合い方を学んだからこそだろう」

 

 零崎人識は——()()()

 嬉しそうに、彼は言う。

 

「役を、降りたのに?」

()()()()()だよ、萩原子荻。俺の敵と零崎人識が表裏一体なのは()()なんだ」

 

 くつくつと笑って、彼は続ける。

 

「役ってのはいわば、鎖みたいなもんだ。あるいは枷かな。あるいは()()()()()——とまで言えばスピリチュアリズムの領域かもしれないが、そんなことはどちらでも同じことだ。いずれにせよ、自由になる、ってのは、それだけで一つの恐怖だぜ。その領域に至ることができる人間が、果たしてどれだけいるか」

 

 いわば限定的な因果からの解放だ——

 と。

 彼は語る。

 その言葉の本当のところを、子荻は理解できない。

 それが、役に囚われる、ということか。

 

「——さて」

 

 雑談は終わり、とばかりに。

 彼は風向きを変えた。

 

「そろそろ、お前にも紹介しておくとしようか」

 

 ぴくり、と。

 その言葉に、子荻は反応する。

 

()()()()んですか」

「ああ、ようやくな。だからこそお前を呼んだ」

 

 言って、顎をしゃくれば。

 いつのまにか、部屋の片隅に現れていた扉が——開く。

 

「入れ」

 

 現れたのは——五人の人影。

 

 それはこの世の何より異常な集合だった。

 それはこの世の何より異質な集合だった。

 それはこの世の何より異彩な集合だった。

 それはこの世の何より異端な集合だった。

 それはこの世の何より異相な集合だった。

 それはこの世の何より異形な集合だった。

 

 それは五人の人間でありながら、まるで一人の人間であるかのような形をしていた。

 いやそれは。

 それはその五人だけのことではなく。

 

 もとより部屋の中にいた、()()()()()()()()()()()()——

 六人が六人、まるで一人の人間であるかのように、同じに見えた。

 

 その集合は、口を開く。

 まるで一人の人間が、手の指を一本ずつ、順番に折って行くように。

 

「初めまして、ご同胞」

 

 人影の一つが言った。

 

 鼈甲の眼鏡。十二単の異性装。艶やかなる絢爛の着物に、死化粧にも似た静謐の白粉と玉虫の紅。

 それを纏うは思春期を迎えるよりもなお早い、童とさえ言えるほど幼くあって、けれど不気味なほど老成し気配を漂わせる、あまりにも異常な少年だった。

 

「『断片集(フラグメント)』、雲隠が一。——時宮(ときのみや)無刻(なしとき)と申します」

 

 彼は優雅に一礼して、「どうぞ、よろしくお願いします」と笑顔を付け加えた。

 

「ハロハロ、ご類友!」

 

 人影の一つが言った。

 

 赤縁の眼鏡。半裸。露出した肌の至る所に刺青を刻み、特に目立つのは、顔面の半分を覆う『混沌』の二文字。

 その奇抜に奇抜を重ねたファッションで身を飾るのは、まるでパンダのように黒々とした隈を両目の下に刻む、あまりにも異彩な少女だった。

 

「『断片集(フラグメント)』、雲隠れが三——奇野(きの)無知(むち)! 呼ばれて飛び出て参上でぇーっす! よろしくね!」

 

 ぱち、と可憐にウィンクを決めて、彼女は小さく手を振った。

 

「お目通り叶いましてありがたく、ご同輩」

 

 人影の一つが言った。

 

 ツーポイントのオーバルグラス。男性用のものを無理やり女性用に改造したかのような、漆黒のスリーピーススーツ。

 起伏に富んだ体のラインが浮き上がるようなそれに身を包むのは、まるで幽鬼のように白い肌の、あまりにも異端な淑女だった。

 

「『断片集(フラグメント)』、雲隠れが四——拭森(ぬくもり)無抜(なしぬけ)にて。どうぞお見知りおきを」

 

 慇懃無礼な目礼を一つして、彼女は次に番を回す。

 

「初めま死てなのだな、ご死ん友」

 

 人影の一つが口を開いた。

 

 金縁の眼鏡。純白のスリーピーススーツに、同じく純白のホールカット。首にはポルカドットのモノトーンネクタイ。

 そんな衣装を高貴にも着こなすのは、まるでこの世の全てから見放されたかのように希薄にすぎる、あまりにも異相な紳士だった。

 

「『断片集(フラグメント)』、雲隠が五——死吹(しぶき)無屍(むし)。以後、よ死なに——なの、だな」

 

 胸に手を当て、紳士的な一礼。その頭が上がるよりも早く、次の人影が口を開く。

 

「会える日を夢見ていたとも、ご同類よ」

 

 人影の一つが言った。

 

 まるで影そのものに溶け込むような暗色のツナギ。それは男のシルエットを闇に隠し、けれどその合一を阻むように、その背には巨大な十字架が背負われている。

 そんな悍ましき業の象徴を背に負うのは、長い髪で顔どころか全身を覆う、蜘蛛のように長い手足の、あまりにも異形な怪人だった。

 

「『断片集(フラグメント)』、雲隠が六——咎凪(とがなぎ)無研(なしとが)、ここに見参だとも」

 

 微動だにしないまま挨拶を終えて、彼は口をつぐむ。

 

「改めて——お久しぶりです、ご友人」

 

 そして、最後に口を開いたのは。

 銀縁眼鏡の、武器職人。

 

「『断片集(フラグメント)』、雲隠れが二——罪口無辜」

 

 今ここに、()()()()()()()()()——と。

 そんなふうに、彼女は言った。

 

「狐さん」

 

 人影は。

 人影たちは、口を開く。

 まるで一個の生命体のように。

 声を揃えて。

 声を連ねて。

 

「断たれし破片より集合へ」

「殺戮の果てより(まじな)いへ」

「呪いの底より物語へ」

「『断片集(フラグメント)』——光源六帖(キリングシリーズ)、解体」

「全機、()()()()()()()()()()

 

 六つの声が、揃う。

 

断片集(フラグメント)』。それは終わらぬ断片の群衆。六人が一人、一人が六人。

 

 その意思はすでに——決していた。

 

 罪口無辜が、人類最悪と()()()()日から。

 

()()()()()()()()——『断片集(フラグメント)雲隠六帖(ミッシングシリーズ)。今新たに——集合しました」

 

 彼らは恭しく——頭を下げる。着流しの男へと。跪いて、諂うように。

 まるで邪悪に対してそうするかのように。

 醜悪に対して拝謁するかのように。

 この世の何より最悪なるそれを慕うように——彼らは深々と、頭を下げた。

 

「ああ」

 

 その忠義を、その忠誠を、その忠節を、その忠魂を、その忠実を、その忠信を、あまりにも当たり前のものとして受け取って、彼は——人類最悪の遊び人は、あまりにも気軽に頷きを返す。ともすれば軽薄に、あるいには軽率に、然るには軽諾に。

 

「悪いな。わざわざ一度——死んでもらって」

 

 なんて——あまりにも軽々に。

 まるでなんでもないことであるかのように、さらりと軽く——人を死なせたことを、謝った。

 

「いいえ、とんでもない。狐さんのためならば、たとえ火の中水の中——地獄の底へも、なんのその」

 

 無辜は穏やかに微笑んで、そう言った。

 

「お前だけでも、階段としては十分——と、思っていたんだがな。しかし、状況が変わった」

 

 彼は足を組んで、パタリと本を閉じた。

 

「世界の終わりへのアプローチは、失敗した」

 

 過去への悔恨などまるで一つも存在せず、一切の恥じらいもないままに、男は己の失敗を語った。

 

「俺の企みは俺の敵によって完膚なきまでに粉砕され、俺はどうしようもなく無様な敗北を喫した。それ自体に得るものは何一つとしてなかったわけだが——」

 

 失うものばかりだったわけだが。

 

「しかし、()()()()()()()()()()()()()

 

 初めてだぜ——

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 クク——と。

 可笑しそうに。

 冒しそうに。

 犯しそうに——

 笑う。

 

「初めから考えておくべきことだったんだよ。むしろどうして思いつかなかったのか、と、過去の自分の無能を責め立てたいところだね。失敗してよかった。成功しなくてよかった。世界を終わらせなくて——よかった。もし全てが上手くいってしまっていたのなら——俺は取り返しのつかない、致命的な失敗をしていたところだった。考えてみれば、当たり前の話なんだよ。ああ、どうしてそんな簡単なことにも気がつけなかったんだ。これだからいけねぇよな、視野狭窄ってのはよ。恐ろしいぜ。免許返納を考えるような歳じゃあなかったはずなんだがな、俺もいよいよヤキが回ったかね——」

 

 狂ったように、捲し立てて。

 止まらない。

 人類最悪の狂気は——

 止まるような、それではない。

 

()()()()()()()()()

 

 彼は。

 彼はその言葉を——口にした。

 

「そんなことは当たり前の話なんだ。だってそうだろう——()()()()()()()()()()()()()()()()()——()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 世界には物語がある。

 

 物語がある——の、ならば。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「名作には、次回作ってのが付き物だ。クク——時としてそれは駄作でもあるのだろうが、何。()()()()()()()()()()()()()

 

 その機会を——危うく逃すところだった。

 男は。

 心の底から嬉しそうに——笑っていた。

 

「だからこそ、十三階段は新生する必要があった」

 

 以前のそれでは——足りない。

 世界を終わらせるには、足りない。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()——まるで、足りない。

 

「零崎人識には、感謝しないといけないな」

 

 十三階段の再編を、手伝ってもらって。

 別世界の存在を、教えてもらって。

 感謝しても——し尽くせない。

 

「忙しくなるぜ、お前たち」

 

 世界を終わらせる、そのために。

 物語の終わりを見る、そのために。

 彼らは動き出す。

 十三階段は——動き出す。

 全ての世界の終わりへ向けて。

 全ての物語の終わりへ向けて。

 人類最悪は——動き出す。

 

「お前にも、より一層忙しく働いてもらうことになる」

 

 そう言って——西東天は、萩原子荻に目を向けた。

 

「お前もそろそろ、()()()()()()()()()()()

 

 なんて、ともすればセクシャルハラスメントのように聞こえるその言葉は、けれど、意味が違う。

 

 言われて。

 萩原子荻は。

 萩原子荻だと、定義されていたものは。

 小さく、けれど確かに——頷いた。

 

「ええ、もう皮をかぶる必要も——ないわけですしね」

 

 世界を渡る条件。それを知るために、零崎人識に近づく必要があった。その目的は概ね全てが達成され——ゆえに、もうその仮面に、意味はない。

 

 彼女は、顔の前に手をかざす。

 

 それだけで——変わる。

 全てが——変わる。

 

 髪色が。

 顔付きが。

 体付きが。

 

 萩原子荻だったものが——別のナニカに、変わっていく。

 

 いや、それは変わっているのではない。

 

 変わっているのではなく——戻っている。

 

 元の姿に、戻っている。

 元の姿に——帰っている。

 

 栗色の髪が、黒白に。

 平坦気味な体付きが、起伏に富んだ体に。

 髪型も、顔付きも、服装さえも、全てが変わって、代わって、戻って、帰って——

 

 そして。

 

 彼女は——眼鏡をかける。

 

 なんの変哲もない、普通の、眼鏡を——

 

「いい加減、コンタクトにも嫌気がさしていたところですから」

 

 声すらも、似ても似つかない。

 彼女は。

 萩原子荻——だったものは。

 閉じていた瞳を——開く。

 

「ただいま戻りました——狐さん」

 

 まるでこの世の全てが死に絶えたかのような、絶望に満ちた微笑みに。

 

 人類最悪はまるで気にした風もなく、気軽に返す。

 

「ああ、おかえり————羽川(はねかわ)(つばさ)

 

 彼女は。

 羽川翼は——跪く。

 

 

【挿絵表示】

 

 

()()()()()()()()()——羽川翼。あなたの元へ、帰還しました」

 

 それは文字通りに最悪な光景。

 その様だけが、すでに世界の終わりとして成立してしまうような——そんな絶対的な破滅の象徴。

 それは一つの世界が終わったその証で、いずれ全ての世界が終わるその兆し。

 

 醜悪にして露悪。

 凶悪にして害悪。

 邪悪にして極悪。

 険悪にして嫌悪。

 至悪にして罪悪。

 粗悪にして増悪。

 積悪にして俗悪。

 毒悪にして獰悪。

 劣悪にして猛悪。

 

 ありとあらゆる罵詈雑言を、那由多無限と並べ果ててさえまるで足りない——究極の最悪。

 

 彼女は深々と——頭を下げる。

 神に祈るように。

 悪魔に願うように。

 この世全てを終わらせるように——頭を下げる。

 いつまでもいつまでも。

 世界の終わる、その日まで。

 

          ネコノメパラレル・序——了

 






これにて真に幕となります。
ご愛読、ありがとうございました。
             ——kanbase wasuhata

追記
沃懸濾過様(@loka_ikaku)からいただいたファンアートを、許可を得て本文中に挿絵として追加させてもらっています。
沃懸濾過様、本当にありがとうございます!

よろしければ、第四話『ドッグドックドクタードーズ』1に挿絵として追加させてもらっているファンアートと合わせてご覧下さい。

元イラスト↓
https://x.com/loka_ikaku/status/1891144043192549652
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