体調は治りましたが今週は忙しいので更新少なめです。
それでは、楽しんでいってください。
ベニマル達の広範囲攻撃のお陰で僕はすぐにオークロードの前に辿り着いた。
「あれが、オークロードか…!」
あの者がオークロードであるというのはすぐに分かった。
他のオークよりも大きく、肌も黒さが増している。木でできた特徴的な兜が王であることを象徴している様に見える。
「ん?」
その時だった。
僕とキジン達やガビルと、オークロードの間に上空から何かが降って来る。
「どういうことだ!このゲルミュッド様の計画を台無しにしやがって!」
ゲルミュッド?確かどこかで聞いたことあるような…
『解。リグルの兄らに名付けをしたという上位魔人だ。』
アークのお陰で思い出した。前にリグルと世間話をした時に聞いたことがあった。
「もう少しで俺の手足となって動く新しい魔王が誕生したと言うのに!」
新しい魔王…?魔王って結構ヤバい存在ではあるけど、それを作ろうとしてたのか…
「だから名付けをしまくった!種を蒔きまくったんだ!最強の駒を生み出すためになあ!」
「そのために…」
「我らの村にも!」
「来たということか!」
コイツは自分の野望のために森の魔人たちを利用しようとしていた。
そのことにキジン達も怒りを露にし、シオンは力強く大剣を握りしめる。
「おお!これはゲルミュッド様!」
「あれが、ガビル様の名付け親…」
どうやら彼はリザードマンの里にも来ており、ガビルに名付けを行っていたらしい。
「どうしてここに!?もしかして、吾輩たちを救けに「役立たずのノロマが!」」
「「「え?」」」
「貴様もさっさとオークロードの糧となれ!役に立たない無能の分際でいつまでも目障りな奴め!オークロードに食われ力となれ!俺の役に立って死ねるのだ…光栄に思うがいい!」
コイツ、ガビルすらも捨て駒にしようとしているのか…
自分で名付けをしておきながら、使えないと分かれば餌にする。とんでもない下衆な男だ…
「げ、ゲルッ…」
「やれ!オークロード!」
「…」
狼狽するガビルを、そのまま食べてしまえとゲルミュッドが指示するが、オークロードは動かない。
「どうした?」
「魔王に進化とは、どういうことか?」
「貴様が魔王オークディザスターとなって!このジュラの大森林を支配するのだ!それこそが私と!あのお方の望みだ!」
あのお方?ってのが誰かは分からないけど、オークロード自身もゲルミュッドに疑問を抱き始めている様子だ。
「何をしている!豚が!こうなったら俺がやるしかないか!」
そういってゲルミュッドは左手に赤色のエネルギーの様なものを集める。
恐らく魔法弾の類だろう。
「ガビル様!」
「お逃げください!」
「死ねェ!」
魔法弾からガビルを守ろうと、彼の部下3人がガビルの身体を守る。
だが、彼らだけで防ぎ切るのは厳しいと判断し、僕はリザードマン達の前に立ち、液体金属状の盾を作って魔法弾を防ぐ。
「あ、あなたは…」
「安心して、君達は僕が守るから。」
「何者だ!お前もオークロードの養分となって死ね!」
今度はゲルミュッドがバランスボールほどの大きさの魔法弾を生成する。
「
「ゲルミュッド様ー!!」
魔法弾が空中で幾つもの弾に分裂し、僕とリザードマン達に一気に降りかかる。
「防ぎ切れそう?アーク。」
『可能な限り対処する。』
再び4丁のアタッシュショットガンをビームエクイッパーによって生成し、周囲に浮かせながら魔法弾を狙って弾丸を放つ。だが、全ての魔法弾を撃ち落とすことはできず、僕は再び液体金属のシールドで自身を守ろうとしたその時だった。
「リムルさん!」
僕の隣にリムルさんが降りてきて、掌で魔法弾を吸収し全て飲み込んでしまう。
「なあ、これが全力か?この程度の技でどうやって死ぬんだ?」
そう言ってリムルさんがゲルミュッドを煽る。
「あ、あなたはッ…!あなた様は!」
「お前らは仲間を連れて退却しろ!」
「は、はい!」
リムルさんの言葉を聞いて、ガビルとリザードマン達はこの場から引き下がる。
「さて、やってしまおうか。」
その間に僕らはゲルミュッドとオークロードと蹴りを付けるとしよう。
ということで先程生成したアタッシュショットガンを手に持ち、ゲルミュッドに向けて撃つ。
「き、貴様!俺様の腕が!」
アタッシュショットガンの弾丸は、ゲルミュッドの左肘に直撃し、撃ち落とされた彼の腕が地面を転がり血だまりができる。
「トウッ!」
更に狼狽するゲルミュッドにリムルさんが飛び蹴りをして、蹴り飛ばされたゲルミュッドが地面を転がる。
「貴様ら!終わるぞ!あのお方がお前を許さんぞ!」
「その御方のこと、詳しく聞かせてくれよ。誰が裏で糸を引いているか。」
この件には更なる黒幕がいるらしく、そのことを問い詰めるように僕らは歩みを進める。
「やめろ!来るな!オークロード!俺を助けろ!オークロード!いや、ゲルドよ!」
ゲルミュッドは僕らから逃げるようにゲルドと呼ばれたオークロードの下に駆け寄り、泣き縋る。
ここはオークロードを利用して助かろうという算段なのだろう。
まあいい、2人纏めても僕とリムルさんで何とかなるはずだ。
「な、何をする!ゲルド!おい!ヤメロ!食べないでくれ!」
と思っていたが、ゲルドは僕らが考えもしない行動に移った。
ゲルミュッドの身体をその大きな手で握りしめると、そのまま持ち上げて自身の口に近付けていく。
「ヤメロ!ヤメッ…!」
そして、ゲルドはたった一口でゲルミュッドの首から上を食べてしまった。
その行動に引いてしまった僕らをよそに、残った肉も食っていく。
『オークロード、個体名ゲルドの魔素量増加を確認。』
まさか、(一応)上位魔人の身体を食べたことでさらにオークロードが進化するなんてこと…
『ゲルドが魔王へ進化…成功。彼はオークディザスターへの進化が完了した様だ。』
おっと、本当に進化してしまったみたいだ。
身体はさらに大きくなり、無駄な脂肪は減って背中からは太めの棘の様なものが生えた外殻が形成されている。
「俺はオークディザスターだ!全てを喰らうものなり!名をゲルド!魔王ゲルドである!」
「リムルさん…」
「ああ、やるぞ!」
ここに居る全員の気持ちは同じだ。
ここであのオークディザスターを倒さねば最悪の事態を招いてしまう。
即刻ここで倒してしまおう。
「シオン。」
「八ッ!」
ベニマルの指示と共に、シオンが大剣を構えてオークディザスターに向けて走り出す。
「おい!」
「ここは俺達にお任せください!」
まずはリムルさんの配下たちがゲルドに対処する様だ。
なら、僕もその間に攻撃の準備を進めよう。
「薄汚い豚が!魔王だと!思い上がるな!!」
シオンが勢いよく振り下ろした大剣を、ゲルドは鉈のような武器で受け止める。
その後、シオンが一度弾き飛ばされるがもう一度向かっていき剣を振るおうとした時だった。
「…!」
ゲルドの注意がシオンに向いたタイミングでハクロウさんが刀で一閃。
見事にゲルドの首を落とした。
「動いた!」
だが、首を失った身体は倒れることなく動き、切り口から生えた黄色い触手の様なものが落ちた首を回収して再び首の上に取り付ける。
「とんでもない回復速度だね。」
「ああ、俺達でも太刀打ちできないだろうな。」
この回復能力的に、剣で対抗するのは厳しいと判断し、キジン達と一緒にいた滅とデザストには僕のサポートに回ってもらうことにした。
「操糸妖縛陣」
とその時、地面から無数の意図が飛び出してきてゲルドの身を包み込む。
これはソウエイの技だ。
「やれ!ベニマル!」
「これでも喰らってな!
ソウエイのアシストにより、敵を狙える状況となったベニマルが黒い炎の球を放つ。
その球はソウエイが作った繭を囲むようにドームとなり、その中が黒い炎で満たされて中にいるゲルドを焼き尽くす。キジン2人によるいい連携攻撃だ。
「アオーーーーン!!」
さらに、ランガが吠えると空中に黒い雲が渦巻き、黒い雷が焼かれたゲルドに追い打ちをかけるように落ちてくる。
先程多くのオーク達を葬った2人の技を受けたんだ。流石にあのオークディザスターも無事な訳が…
「魔素切れか?」
「面目ございません!」
「俺の影に潜ってろ!」
ランガは今の技で全力を出し尽くしてしまっており、リムルさんに促されて影に潜って休むことになった。彼が魔力を切らすほどの技を受けたのだから、これで無事で立ってたら恐ろしいものだ。
「何!?」
「まさか…!」
「これが…痛みか!」
と思っていたが、魔王に進化したゲルドはそう簡単には倒れていない。
多少ダメージを負いつつも、再び立ってこちらに向かってくる。
「王よ…この身を御身と共に!」
「うむ…」
さらに彼は、駆け寄って来た部下のオークの身体を持ち上げるとそのまま食っていく。
肉を喰らえば先程の攻撃で受けた傷がさらに再生していく。
「足りぬ!もっとだ!もっと食わせろ!」
完全に体力も回復してしまったゲルドが、手から光弾を放つとそれが分裂して僕らに降り注ぐ。
これはさっきのゲルミュッドの技か!
だがそれらは全て、リムルさんが吸収し、飲み込んでいく。
「どうやら、僕達の出番のようですね。」
「ああ!いくぞ!」
ここで僕とリムルさんがオークロードに向かい合う。
先程のキジン達の攻勢は、ゲルドが仲間を食って回復したことで無意味に終わってしまったかと思われたが、彼らは十分時間を稼いでくれた。
『『『『『ガンライズ!!』』』』』
その間に僕はアークの力をフル活用して、オーソライズバスターを数十個ほど作成していた。
ガンモードに変形させたそれらを浮かせて、ゲルドの周囲を囲んでしまうと、その砲門から強力な光弾を次々と放っていく。多方向から強力な光弾を受ければ、流石のオークディザスターもダメージを負うだろう。
「お、王よ!」
「デザスト!あのオークを止めろ!」
「任せろ!」
恐らくゲルドの副官と思われるマントを付けたオークが、自身が犠牲となって彼を救おうと駆け出していた。
だが、それをデザストが伸ばしたマフラーによって捕らえる。
これ以上ゲルドに回復させないため、そしてこれ以上犠牲を増やさぬためオークを捕えさせて止める。
「喰らいつくせ!カオスイート!」
攻撃は確かに効いていたが、ゲルドが背中から出したオーラに着いた顔がオーソライズバスターを振るい落とし、更にリムルさんに襲い掛かる。
だが、眼が赤くなったリムルさんはその攻撃を避けている。
「アレは…」
『解。恐らく個体名リムルは意思を自らのスキルと入れ替えてオートで戦っている。』
「なるほど、まあ僕らも引き続き援護だ!」
リムルさんも何やらすごいことをしているけど、僕らも引き続き戦うだけだ。
僕と滅は地面に転がったオーソライズバスターを手に取り、光弾をゲルドに向けて放つ。
「よし!」
僕らが撃った攻撃で隙を作ることができて、リムルさんは黒い炎を纏う刀でゲルドの左腕を切り落としてみせた。
「…ッ!」
「馬鹿な!」
更に刀で切りかかり、ゲルドが鉈で防ぐが、鉈は焼き切れて溶解してしまう。
武器を失ったゲルドが数歩引き下がる。
恐らく、先程切られた左腕は切り口が焼かれてまだ再生していない様だ。
「フンッ!」
だが、切られた腕をゲルドは引きちぎり、新たな腕を形成する。
「今こそお前らを食ってやろう!」
両掌の上で魔法弾を作り、分裂させてこちらに向けて放ってくる。
リムルさんは魔法弾を吸収し、僕は液体金属のシールドで攻撃を防ぐ。
「リムルさん!」
「フハハハハ!このまま喰らってくれるわ!」
だが、攻撃を防いでいる隙にゲルドがリムルさんの身体を掴み、攫ってしまう。
ここでリムルさんを食ってしまおうとしているらしいが…
「うおおおおおおお!」
突如ゲルドの足元に赤い魔方陣が形成されたかと思えば、リムルさんの身体ごゲルドは炎の渦に包まれる。
これは以前戦ったイフリートの技だろう。
「うおおおおお!はっはっは!」
だが、あの強力な技もゲルドには効いていない様子だ。
恐らく火炎耐性を得てしまっているな。
「俺には炎は通じぬようだぞ!」
「そうかよ!炎で焼け死んだほうが幸せだったかもしれないぜ!」
どうやらリムルさんの人格が元に戻った様子で、何やらゲルドに語り掛けている。
「俺はお前を敵として認めた!今こそ本気でお前の相手をしてやるよ!」
「ヌハハハハハ!笑止!今までは本気でなかったとでも!最早貴様には何もできん!このまま俺に食われるがいい!」
どうやら彼は触れた相手を腐食させる能力がある様で、リムルさんを腐らせてしまおうとするが、それも効いていない様子で、彼の手からはリムルさんのスライムの液体が零れ出てきている。
もしかして、リムルさんの作戦って…
「お前に食われる前に、俺がお前を食ってやるよ。俺は、スライムだ!」
「貴様!」
スライムの流体状の身体に変化したリムルさんがゲルドの身体に纏わりついていく。
「食うのはお前だけの専売特許じゃねえんだよ!」
恐らくリムルさんの策は、イフリートと戦った時の様に、ゲルドを飲み込んで捕食してしまおうということだった。
そうなれ僕らのやることは決まっている。
「滅!リムルさんを援護だ!」
「了解!」
僕と滅はスライムにまだ包まれていないゲルドの身体にオーソライズバスターによる砲撃を撃ち込んでいく。
僕らの援護の甲斐もあって、弱ったゲルドの肉体はスライムの肉体に包まれていき、そして完全に全身が覆われる。
巨大化したリムルさんの体の中で、オークではゲルドの身体が溶け始めていく。肌が無くなり筋繊維が露になってそれらも溶けて骨も溶けて彼の身体は完全に溶けてしまった。
『オークディザスターの消失を確認。』
後に聞いた話ではあるが、オークの住んでいた里は災害によって飢饉に陥っていた。
生まれたばかりのオーク達も命を落とすほどの事態であった時、彼はゲルミュッドに出会い名前を得た。
そしてヴェルドラの反応が消えたことで彼らは食料を求めてジュラの大森林にやって来たらしい。
だが、彼らの侵攻戦はもう終わった。
僕もアークを通じて他の仲間達に戦いを終えるように告げる。
夜明けと共に森は平和な時間を取り戻したのであった。