「おおー!リムル様!それにカイト殿!」
僕らがワープしてきたのは、中央都市リムルの近くにある洞窟の中であった。
そこではガビルやその部下のドラゴニュート達、それに加えてソウエイとその部下たちの姿があり、僕らは彼らの下に駆け寄る。
「リムル様、ご無事で何よりです。」
「ええー!?俺よりソウエイ!お前の方が大変じゃね?」
ソウエイ達がリムルさんに跪くが、ソウエイは傷だらけで流血もしている。
リムルさんがすぐに回復薬を彼にかけて、傷を癒す。
「テンペストに何が起こっている?」
「それが分からないのです。」
「街に行った吾輩の部下達とも連絡が取れず心配で!」
状況はベスターさんにも分からないみたいで、ガビルも部下達と連絡が取れずに困っている。確かに、この場にはガビルの部下の中でも印象的なあの3体が居ない。
彼の持つ通信水晶が黒く染まってしまっている。
「結界に覆われているようです。」
「結界ねえ…」
先程のリムルさん同様、街が結界で覆われてしまっているらしい。
結界に覆われている時のリムルさんは仲間との通話や魔法の弱体化と言った被害を被っていた。
「ソウエイ様は、テンペスト周囲に貼られている結界を破って街に入ろうとし、お怪我を召されたのです…」
「黙れ、ソーカ。俺のことはいい…」
「ソウエイでも突破できない結界だとすると、相当なものだな…誰の仕業だ?」
「恐らくは人間の国、ファルムス王国かと…」
ファルムス王国と言うと、ヨウムさん達が生まれ育った国だ。
町全体に結界を張り、この規模の襲撃を仕掛けれるとなると国ぐるみでの攻撃なんだろうな…
「奴らが軍事行動を起こしていることを確認しています。大軍が街に迫っています。」
「街に急ぐぞ!」
どうやら事態は悪い方向に向かっている様だ。
簡単にまとめれば、ファルムス王国という国がこちらに攻めてきており、その一環として街に襲撃するとともに、ヒナタを使って街の主のリムルさんを仕留めようとしたってところか。
一先ず、街の入り口まで行ってみよう。
「これが結界!?」
そこにはオーラでできた透明な壁が街を覆ってしまっている。
「アーク、解析開始。」
僕とリムルさんは結界に触れてその解析を開始する。
『解。内部に起点を持つ
外側と内側からそれぞれ結界が張られているのか…
さっきのヒナタの結界に近いものか。リムルさんや僕が受けた影響を考えると中の者達も弱体化してしまっていたはずだ…
「ソウエイ、大魔法を発動させている奴は俺が抑えるから、お前達はこの結界を張っている者達を探し出せ。」
「御意。」
「ただし、戦闘行為は禁じる。相手の正体と強さを確認しろ。」
「僕もリムルさんに付いて行く。アークオルフェノクは外で待っていてくれ。」
「かしこまりました。」
僕とリムルさん、ランガは結界の中に入り、ガビル、ソウエイら、アークオルフェノクは外で行動することになった。
結界を解析したことで、僕らは結界の中に入れた。
街は至る所から炎や煙が上がり、建物も多くが損壊してしまっている。
「アーク、滅の反応を探してくれ。」
『魔素濃度こそ薄いが微かに感じる。私が案内しよう。』
「リムルさん!僕は滅を探すから先に他の皆を!」
僕はアークの案内で滅を探すために一度リムルさんから離れる。
平和な日常を失った街を、アークの案内で走っていく。
「滅!滅!」
アークに案内された先で、滅は倒れていた。
服は破れ、皮膚が一部無くなって機械部品が露出してしまっている。
「か、海斗…すまない、皆を守れなかった…」
「何があったんだ!?アーク、すぐに修復を…」
『了解』
アークドライバーから赤いレーザーが放たれて滅の身体の傷を修復していく。
「しくじってしまった…最初は3人の人間が街でトラブルを起こした…ゴブタの友人のゴブリンが巻き込まれた。トラブルを起こした3人はどうやらこの国の敵だったらしい…恐らく転生者だ…彼らが皆を殺そうとしたから、守ろうとした…だが、白い仮面ライダーが来て俺を…」
白い仮面ライダー!?
何者なんだ…一体?
(アーク、滅の脳内見れるかな?)
『ああ、可能だ。』
滅を修復しつつ、彼が見た記録映像を僕は確認した。
そこには3人の異世界人が起こした事件など、先程滅が話した出来事が記録されていた。
そして、襲撃に来たのは仮面ライダーエターナルだった…
一体なぜ彼が?なんでエターナルがここに居るんだ?カリュブディスの時に現れた城ジャマトと言い、仮面ライダーの敵達がなんでこの世界にいるんだ?
「俺はそのライダーに負けてしまった…そして皆を…」
映像には、異世界人やその後現れた騎士団によって町の住民が惨殺される光景が映っていた。
この騎士団、恐らく先程ソウエイが報告していたファルムス王国だろう…
ファルムス王国…絶対に許さない!
「リムルさんも、このことを知ってるかな…?」
「分からない…」
犠牲者が出た事実は既にリムルさんの耳にも入ってしまっているだろう。
これは悲劇としか言いようがない…
最悪だ、街には僕らと親交があった者達も多くいる。そんな彼らを殺されてしまった…
「皆に手を合わせにいこう…」
まず僕らにできることは犠牲者を弔うことだ…
ファルムス王国に復讐してやりたい気持ちはあるが、リムルさんだって苦しいはずだ。
僕らが勝手に動くのはよりリムルさんの心を傷つけてしまうかも知れない。
それに…本当に動くならアウトサイダーを全員揃えてからだ…
「皆…」
広場の方に行けばケガを負った者達や、命を落としてしまった者達の姿が多くあった。
その傍では、家族や友人の死を悲しむ者達の姿もあった。
『悪意の増大を確認…』
「ああ、そうなるのも仕方はない…」
今すぐにでも復讐したいし、ファルムス王国を滅ぼしてやりたい。
僕の中の怒りは逃げ場もなくただただ増大していく。
「リムルさん…それにヨウムさん!?」
そこにリムルさんもやって来るが、その傍には彼の部下だけでなく傷だらけのヨウムさんと褐色肌の男性がいた。
この惨劇の光景にリムルさんは立ち尽くしてしまっている。
「ヨウムさん…怪我は大丈夫ですか?」
「俺のことは気にするな…」
今にも倒れてしまいそうなヨウムさんの方を僕が支え、隣の褐色肌の男の身体を滅が支える。
「私が大魔法を使用しなければ、こんなことにはならなかったでしょう…」
そんな状況で、緑髪の女性が口を開く。
彼女は確か、最近ヨウムさんの一団に入ったミュウランという女性だ。
彼女の口から話されたこととは、この町を内部から覆う
『否。この地域の魔素低下の大きな原因は彼女が張った結界ではなく、外側の結界だ。それに、彼女からは悪意を感じない…』
(悪意を感じない?それはどういうことだい?アーク?)
『推測だが、誰かに脅迫されて今回の行動に出て、その責任を感じているのだろう。』
どういう事情が裏にあるかは分からないが、彼女の言葉をそのまま捉えてここで殺してしまうのは時期尚早と言ったところか。
「ミュウランだったか、詳しく話が聞きたい。会議室に来てもらおうか。」
「リムル様。よろしければワシも会議に参加させてくれませんか?今回の件について外の者の視点で話が出来るかと…」
リムルさんも僕と同じく、彼女に対して慎重に対応する様だ。
すぐに殺してしまうべきではないと考えたのか、証人として会議に呼ぶそうだ。
そして、その会議に参加したいと小太りの男が名乗り出る。
「来てたのか!助かるよ、ミョルマイル。」
ミョルマイルと呼ばれた悪人面の小太りの男はリムルさんと顔見知りのようだ。とは言え、彼からも特に悪いは感じない。
その後は、会議室に主だった面子が集まり、状況を把握していく。滅が見た映像を投影しつつ、他の者達の話を聞き、今日の出来事を纏める。
二重に張られた結界はこの街の魔物達を弱体化させ、ハクロウさん達も負けてしまい重症を負ったそうだ…
さらに街でトラブルを起こした人間達を救うふりをしてファルムス王国の騎士団が現れ、住民達を切っていった様だ。
"この街は魔物に汚染されている!我らは人類の法を守る者として!魔物の国など断じて認めぬ!故に西方聖教会とも協議し、この国への対応を考える!時は今日より1週間後!指揮官は英傑と誉れ高いエドマリス王その人である!降伏して恭順の意を示すなら良し!さもなくば!神の名のもとに貴様達を根絶やしにしてくれようぞ!"
とファルムス王国の騎士が言い残したらしい…
西方聖教会、あのヒナタ・サカグチも属する組織であり、彼らの信条は"魔物は悪"というものだった。
だが、魔物を悪と決めつけ惨劇を起こす人間共の方がよっぽど悪意に満ち溢れている…
ファルムス王国は彼らと同じくルミナス教を信仰し、その意に従っているのだろうか…
「最初から、西方聖教会とファルムス王国はグルだな。俺達を目の敵にする理由は魔物の存在を認めないという教義によるものだろう。」
宗教とは難しいものである。その中でも何かを悪と決めつけるものや、誰かにとって悪になってしまうものもある。 少なくとも、西方聖教会は僕らからすれば悪、敵と言えるだろう…
それに、1国と組んでこちらに攻めてきているのだ。
ファルムス王国の軍が街を攻めるのと同時に、西方聖教会のヒナタがリムルさんを狙った…
宗教観以外にも何か悪意が渦巻いているようにも感じてしまう。
「だとすれば、ファルムス王国はなんだ?」
「リムル様、よろしいですか?」
と、ファルムス王国の行動に対して、何か心当たりがある様子のミョルマイルさんが口を開く。
「現在この街を中心に新しい交易路が生まれ、流通に大きな改革が起き始めています。」
「それで?」
「交易路は重要です。関税をかけるだけでもかなりの収益が見込まれますからな…ファルムス王国は元々、西側諸国とドワルゴンを結ぶ交易路でしたからな…」
「つまり、交易路を独占できていたファルムス王国がテンペストが発展したことで独占できなくなり、関税での収入が見込めなくなったということかな?」
「作用、その影響はかなり大きい。」
ミョルマイルさんの言葉から、ファルムス王国の意図を読み取った。
「なるほどな…俺は知らず知らずの内に虎の尾を踏んだのか…」
テンペストの発展がファルムス王国の損失に繋がったことが、この事件の引鉄になってしまった。リムルさんはその事実を噛み締めて下を向く。
「ミョルマイル君。テンペストの現状、そして、ファルムス王国から大軍が向かっているこの事態を一刻も早くブルムンド王国に伝えてくれるか?」
「もちろんです。テンペストの正統性を訴えましょう。」
「僕もブルムンド王国にいる仲間を通じてフューズさんやベルヤードさんに連絡してみます!後、ソルティ!ミョルマイルさんの護衛を頼む!」
「お任せあれ〜」
僕らのテンペストとファルムス王国は引き返すことの出来ない戦争状態に突入してしまった。そうなれば迅速な行動が必要で、ミョルマイルさんがブルムンド王国に訴えかけるだけでなく、僕もチョウタロウを通じてベルヤードさんと話をすることにした。
それにブルムンド王国までの道も安全では無いため、彼にはバグバイザーから召喚したソルティを護衛として付ける。
「2人とも、頼む。」
「「お任せあれ/任せてください!」」
と僕はリムルさんの言葉に力強く頷く。
今のリムルさんは心が傷ついてしまっているはずだ。
少しでも力になりたい…
「さて、ミュウランさんとやら、どういう経緯で俺達にちょっかいを出すことになったのか、詳しく聞かせてもらおうか…」
ここで話はミュウランさんの方に移る。
「ミュウラン…」
「良いわ、何も隠すことは無いわ…」
彼女のことを妖夢さんと褐色肌の魔人グルーシスが心配そうに見つめている。
「私はミュウラン。魔王クレイマンの配下です。」
クレイマンという男の名が出ると場が少しザワつく。
クレイマンの名はミリムから聞いたことがあった。なんでも謀略好きの魔王だそうで、カリュブディスの件を起こした中庸道化連との関係も疑われている。
「そうか、クレイマンが糸を引いているということか…」
クレイマンは自身の配下のミュウランをこの街に潜入させ、情報を集めつつ、結界を張るという大仕事をさせた。
クレイマンから僕らに謀略を仕掛けてきたと言えるだろう…
滅ぼすべき対象にファルムス王国や西方聖教会だけでなく、魔王クレイマンも加わった。僕も、いやリムルさんたちも彼らを許さないだろう…
これはきっと、長い戦いの始まりとなるだろう…
魔王クレイマン達が後悔する戦いの幕開けだ…!
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「流石はハンドレッド、作戦を速やかに進行することが出来ましたね。」
「当然だ。気に入っただろ?俺達の力。」
「ええ、ミュウランの代わりにあなた達を私の5本指に加えたいですね。」
この1件の裏で糸を引いているクレイマンは、赤と黒のストールを巻いた冷徹な印象の男と黒い和服の女に紅茶とスコーンを振舞っている。
「それで、タソガレには次は何を命じれば?」
和装の女、ミメイがクレイマンに問いかける。
彼女ともう1人の男サイゲツ、それにテンペストを襲撃した仮面ライダーエターナルの変身者であるタソガレという男はハンドレッドという組織の構成員である。
彼らは仮面ライダーガッチャードとレジェンドに敗れた存在ではあるが、この世界でクレイマンに協力し再び暗躍している。
「頃合を見て逃げるだけで結構。必要なのはテンペストとファルムス王国の戦争で失われる命…それだけです。」
クレイマンはある大いなる計画のためにファルムス王国や西方聖教会を裏で操り、大きな戦争を起こそうとしていた。
だが、その勝敗は彼にとっては関係の無いものであった。
計画を果たせれば、どうでも良くなることであった。
「あなた方ハンドレッドの今後の活躍にも期待してます。」
「任せろ、ついでにアウトサイダーとかいう奴らも俺らが潰してやるよ。」
「1万人のカッシーン軍団もいるわ。彼らとて敵ではないわ…」
「それは頼もしい。」
そして、計画を果たすまでも、そして成してからもハンドレッドはクレイマンにとって頼りになる存在となるだろう。
彼らは1万の兵に加え仮面ライダーの力を持っている。アウトサイダーすらも倒せてしまうと豪語していた。
そんな彼らと協力関係、いや主従関係を結べないかとクレイマンは頭を考えを巡らせるのであった…
ハンドレッドもいよいよ本格参戦してきました。
次回も乞うご期待です。