転生したらアウトサイダーだった件   作:夢野飛羽真

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今回、海斗君がまたとんでもないことになります!


第25話 夜明け

あの後もミュウランさんに関する話は続いていた。

そこで齎された情報は、彼女の心臓はクレイマンによって握られており、彼に生殺与奪の権利を握られているとのことだ。それ故に命令を聞くことしかできず、この地への内偵とアンチマジックエリアの発動を行ったそうだ。

ヨウムさんとグルーシスの彼女を許して欲しいという嘆願により、処罰は保留となりミュウランさんは迎賓館に軟禁されることになった。

そんなことをしていたら、既に時間は夜を迎えていた。

 

「さて、今ある情報はこんなところだ。」

 

(ほう、なるほど…ファルムス王国、西方聖協会、それに魔王クレイマンの3つの勢力との戦いとなりそうなのか…)

 

丁度結界の外に黎斗さんとデザストが到着し、外で待機していたアークオルフェノクと合流した様だ。アークを使った回線通信で会話をしている。

今ある情報を纏めつつ、今後の僕らの方針を話し合う。

 

(一先ず、我々も向かうとしよう。ここの守りはバグスター達に任せるとしようか。)

 

「うん、それで頼むよ。」

 

街にいた黎斗さん、デザスト、ブロンズドライブ、ブレンの4人の内ブロンズドライブとブレンは街の防衛のためにそこに留まり続けていたけど、バグスターやヒューマギア達もいて町の安全は保障されたと分かり、彼らもこちらに来てくれている様子だ。

 

(西側ではグラファイトが目を光らせてくれています。ファルムス王国の兵がこちらにも向かってきた場合、彼が対処する予定です。)

 

「ありがとう。そっちの備えも不安だったからね。」

 

ブレンたちはソルティを除く9体のバグスターによる防衛線をしっかりと張ってくれているので安心してこちらも次のことを考えられる。

 

「しかしながら、状況は最悪だ。犠牲者が出た…それも、リムルさんからすれば最も失いたくない仲間の1人が…」

 

会議を終えて、怪我人たちの下を訪れたリムルさんはある違和感に気付いた。

 

"シオンがこの場に居ない"

 

そのことに気付いたリムルさんをベニマルらが案内した。

そう、遺体が安置されている町の広場に…そこにあったのは、冷たくなったシオンの身体だった。

今は1人にして欲しい、そう彼から言われた僕らは一度離れてから黎斗さんと連絡を取っていた。

シオンの死は僕だって悲しい。あの明るく元気で、暴走しがちだがそんなところも面白い彼女の姿が見れないとなると、かなり寂しい。

僕はその悲しさを抑え、黎斗さん達と状況の確認をしているが、リムルさんの悲しさは僕の抱えるものとは比べ物にならないだろう。今はそっとしておいた方が良いだろう。

 

(そうだな…それと、結界を突破してそちらに1台馬車が向かっていたぞ。)

 

「馬車?少し見てくるよ。」

 

黎斗さんからこの町の方に馬車がやって来たと聞かされるとすぐに、僕はその馬車の方に向かう。

一体誰が来たのだろうか?

 

「おお!エレンさん!」

 

「カイト君!リムルさんはどこに!?」

 

その馬車から降りてきたのは、エレンさん達3人だった。

 

「リムルさんならこっちです!」

 

彼らの要件はリムルさんに会いたいというものであり、僕はすぐに彼らを案内した。

リムルさんは1人で悲しんでいるが、善意ある人々に触れたら心の傷が癒えるかもしれない。

直感的にそう思ってエレンさん達をリムルさんのいる広場まで連れて行った。

 

「リムルさん!」

 

「来てくれたのか…少し待ってくれ。皆を眠らせないと…」

 

僕らがリムルさんのもとに着いた時、彼はシオンを弔うために彼女の肉体を捕食しようとしているところだった。

 

「あ、あのね!可能性は低いけど、ううん…ほとんどないかも知れないんだけど!でもあるの!死者が蘇生したというおとぎ話が!」

 

死者が蘇生した話?そんな話があるのか?

さっき、僕とアークで検索した時にそんな話は見つからなかった。

だが、一抹の希望はあるとエレンさんはリムルさんに言葉を投げかけていく。

この話は史実に基づいて作られたおとぎ話であり、過去に死者の蘇生があったというのは事実である可能性も少なくはない。

 

「ふふっ、はっはっはっは」

 

「リムルさん?」

 

その話を聞いて、リムルさんは静かに笑う。

 

「いや、つい嬉しくて。死者の蘇生か…夢物語だな。可能性が0でないなら十分だ!詳しく聞かせてくれ、エレン!死者蘇生のおとぎ話を!」

 

夜明けと共に差し込んできた陽の光がリムルさんの顔を照らす。

 

「うん!」

 

頷いたエレンさんの耳が急に長く尖ったものへと変化する。

 

「エレンさん、エルフだったんですか!?」

 

耳が変化したエレンさんの見た目は、まさにエルフとも言える。

 

「これは、魔導王朝サリオンに伝わる話。」

 

エレンさんはブルムンド王国出身だと思っていたが、どうやら元はサリオンという国に暮らすエルフだったらしい。彼女の祖国に伝わるというおとぎ話の内容を纏めると…

竜と人との間に生まれた竜皇女と、その友である小竜の話。ある時、竜皇女を支配しようとした国によって友人である小竜が殺されてしまった。怒った竜皇女の力はすさまじく、国王と全国民の命を奪い一国を滅ぼしてしまった。多くの命を奪った彼女は、魔王へと進化した。すると小竜は奇跡の復活を遂げたが、魂を失っていたため、意思無き魔物カオスドラゴンとなってしまい、少女自身の手によって封印されてしまったというものだった。

 

(アーク、この話って…)

 

『君の考え通りだ。恐らくこの話は、魔王ミリムのおとぎ話だ。』

 

竜と人のハーフで圧倒的な強さを持っているとなると、ミリムなのではないかと思う。

それより、実際に小竜は生き返ったのであれば、死者蘇生は本当であると言える。

 

「しかし…意思無き魔物になられても意味がない。」

 

「この町は今、結界に覆われているでしょ?」

 

「なるほど…結界に覆われているから魂が拡散せず失われていないってことですか?」

 

僕の言葉にエレンさんが静かに頷く。

結界によって魂が留まっているなら、死者蘇生も成功し、意思無き魔物にならない可能性がある。

 

『その確率は、3.14%…』

 

低い確率かも知れないが、可能性が0ではないだけで十分だ。

 

「エレン、話をしてくれてありがとう。」

 

「ううん」

 

「でも良いのか?俺に魔王になれって言ってるようなものだぞ。」

 

確かに、おとぎ話の通りに死者蘇生するならリムルさんは魔王にならなくてはいけない。

 

「うん、私ね、本名はエリューン・グリムワルトって言って魔導王朝サリオンの王家に連なる家系なんだ。」

 

何故エレンさんがそんな話を知っていたかと言うと、彼女は魔導王朝サリオンのお嬢様で、カバルさんとギドさんもその従者らしい。自由に色んな土地を見て回りたいということで、普通の冒険者に扮して彼女らは旅をしているらしい。

 

「さっきのおとぎ話は、サリオンでも一部の人しか知らないの…リムルさんが魔王になったら私が関与したのがいずれバレると思う…でも良いの!皆を私も助けてあげたい!それに、ファルムス王国も西方聖教会のやり方も許せないもん!」

 

「お嬢様がそう仰るなら、護衛として異論はございませんよ。」

 

「もちろんでやす。」

 

「良い仲間だ。羨ましいな!」

 

「うん!私達にできることがあったら何でも言ってね!」

 

リムルさんの言葉にエレンさん達も笑みを零す。

彼らが善意ある人々で本当に良かった。

僕もエレンさん達と気持ちは同じだ。

 

「僕も一緒に手伝いますよ。シオン達を僕も助けたい!僕らアウトサイダーも全力でサポートします!」

 

僕らも協力は惜しまないことにした。

アークに魔王について色々と調べてもらおう。

 

「カイトもありがとう!頼もしいよ!」

 

シオンと住民達を復活させるために僕らは動き始める。

まずはリムルさんが追加で結界を張り、僕はアークと共に魔王について調べる。

 

『魔王になる条件、その1つは魔王種という魔王の種子を身に宿すことだ。個体名リムルも、君自身も既に条件は満たしている。』

 

「え、僕も?」

 

『ああ、そして発芽させるのには栄養が必要だ。それは、1万人以上の魂だ…』

 

「つまり、人をたくさん殺さないといけないってとこか…」

 

魔王になる条件をアークと一緒に探したけど、1つ目の条件を僕が満たしていることも、もう1つの条件の厳しさも驚きだった。ただ、さっきのおとぎ話と合う部分もある。

竜皇女が一国を滅ぼす時に、多くの命を葬り去った。それは1万人以上の魂が栄養となって魔王の種を発芽させるという話に一致する。

ただ、この条件はリムルさんがファルムス王国と戦争になれば満たせるだろう。

その肝心のファルムス王国との戦争は、既に迫っている。まあ、向こうから来てしまうのだが…

さて、この件についてもリムルさん達と話すとしよう…

 

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「ミュウラン、処罰を決めた。」

 

その前にまずは、迎賓館に軟禁されているミュウランさんのもとを訪れる。

彼女の横にはヨウムさんとグルーシスさんもいる。

 

「お前には死んでもらう。」

 

「旦那!待ってくれ!ミュウランはホントに!」

 

クレイマンと通じ、この悲劇を起こすことになってしまったミュウランさんに、リムルさんが死刑を告げる。

ヨウムさんはそれを何とか止めさせようと行動する。滅から聞いた話だが、彼はミュウランさんのことを愛しており、何度もアプローチしているそうだ…

 

「グルーシス!」

 

「何してるヨウム!ミュウランを連れてさっさと逃げやがれ!」

 

グルーシスもその想いは同じで、獣人化して僕らの前に立ちはだかる。

 

「ミュウラン!行こ…」

 

ヨウムさんがミュウランさんを連れて逃げようとしたその時だった。

彼女は立ち上がりヨウムさんと唇を合わせる。

 

「好きだったわ。ヨウム…私が生きてきた中で初めて惚れた男…今度は悪い女に騙されないようにね…」

 

だが、死の覚悟を決めたミュウランさんは最後に自分の愛をヨウムさんに伝えた。

死の覚悟を決めたのは責任感を感じてか、いや、愛するヨウムさん達まで罪人にしたくない。そんな想いで最期にヨウムさんからの愛に応え、死を受け入れようとしていた。

 

「さようなら…」

 

「ミュウラン!」

 

「すみません、ヨウムさん…こうするしか…」

 

僕がヨウムさんを、ベニマルがグルーシスを抑えて、ミュウランさんはリムルさんの眼前まで歩いていく。

 

「やめてくれ!俺も一緒に償う!何でも言うこと聞くから!」

 

「良い覚悟だ。」

 

「一生かけて償うから!だから!そんな!ミュウラン!ミュウラン!」

 

ヨウムさんの訴えもむなしく、リムルさんの手がミュウランさんの胸を刺し貫いた。

 

「ああ…」

 

「よっと、大丈夫ですか?」

 

「上手くいったようだな!」

 

倒れていくミュウランさんの身体を僕が受け止めると僕と、リムルさんは互いにサムズアップして見せる。

 

「あれ?なんで私生きて…」

 

「!?」

 

リムルさんによって命を落としたはずのミュウランさんだが、死んではおらずしっかりと意識もあり自分の意志で立っている。

そのことにヨウムさん達も驚きの表情を見せる。

 

「3秒くらいは死んでたかな。死んでもらうとは言ったが、殺すつもりはなかったし。」

 

僕とリムルさんは最初からミュウランさんの命を奪う気はなかった。

クレイマンに心臓を奪われ、今はクレイマンの意のままに動く仮初の心臓を入れられている。

僕らは新しい疑似心臓とクレイマン製の心臓を入れ替えることにした。

さて、そのことを本人たちに告げずに行った理由だが、クレイマンの心臓には盗聴機能があった。盗聴されているなら、リムルさんがミュウランさんを殺したかのように芝居をし、そのまま心臓を入れ替えて彼女をクレイマンから完全に開放してしまおうというものだった。

 

「あの…では、この鼓動は?」

 

「仮初の心臓を参考に作った疑似心臓だよ。勿論盗聴機能はない。これでお前は自由だ!」

 

「クレイマンはもうあなたに手出しはできませんし、僕達がさせません。」

 

疑似心臓を埋め込んだことで、ミュウランさんは晴れて自由の身になった。

 

「やったじゃねえか!ミュウラン!お前を縛るものは何もなくなったってよ!」

 

「ええ…」

 

ヨウムさんが喜びの声を上げながらミュウランさんの肩に手を置き、ミュウランさんは目に喜びの涙を浮かべる。

 

「リムルさん…いえ、リムル様…どんなに言葉を尽くしても感謝を伝えきれません…忠誠をお望みであれば、私はそれに従います。」

 

「いや、それはいい。ただ、手伝って欲しいことがあるんだ。」

 

「なんでしょうか?」

 

「今、お前が死んでいき返ったようにシオン達も生き返る可能性がある。」

 

リムルさんはミュウランさんを自身の配下に加えることはなかった。

その代わり、シオン達を蘇らせる手伝いをミュウランさんにしてもらうことにしていた。

より最善の手を尽くすため、魔術に詳しい彼女の協力を得ることにした。

 

「んで、それが終わったら、その後はどうする?」

 

「私、折角自由になれた身ですけど…人間の短い一生分ぐらいなら束縛されても良いと思っています。」

 

「え、それって…」

 

それは、ミュウランさんからのプロポーズであり、ヨウムさんと彼女は互いに頬を赤らめている。

 

「え?あ?え?ええー!?」

 

一方、こちらもミュウランさんを狙っていたと思われるグルーシスさんも驚きの表情を見せる。

 

「…」

 

「慰めは要らねえよ!」

 

ミュウランさんを取られたグルーシスを慰めようと、ベニマルが彼の肩に手を置く。

 

「それに、どうせヨウムは人間だから100年かそこらの寿命だ。その後は俺の番だ。」

 

「何言ってやがる!何考えてるんだお前!」

 

グルーシスとヨウムさんが言い合いをしているが、これも微笑ましい。

ミュウランさんに関することが解決し、自由になっただけでなく、幸せになることができた。

色々あって、傷付いてた僕らの心が少し癒される微笑ましい光景だ。

 

「ところで、ヨウムとカイト、2人に頼みたいことがあるんだ。」

 

「ああ、旦那の頼みなら何でも!」

 

「うん、僕にできることなら大丈夫ですよ。」

 

どうやら、リムルさんから僕ら2人に頼みごとがあるみたいだ。

もしかして、その話をするためにリムルさんは僕をこの場に呼んだのかな?

 

「2人でファルムス王国の新しい王様になってくれ。」

 

「おう!任せろ!」

 

「ええ、良いですよ…」

 

「「って、え?王?」」

 

王様になって欲しいという提案、最初は勢いよく承認したけど、冷静に考えるととんでもない提案だ。

 

「つまりだ!今こちらに向かっているファルムス王国の軍勢を国王とその幹部もろとも殲滅する。すると、残された国民が困るだろ?そこでお前達の出番だ!お前達が王としてファルムス王国を支配して俺達と国交を結んでくれ!」

 

「俺が王だと?」

 

「俺も魔王になるんだから、お前達も付き合えよ。」

 

しれっと、自分の偉業に僕らを巻き込もうとしてる。

だが、筋は通っている話だ。ファルムス王国の王様や主力の軍をリムルさんが魔王になるための養分として殲滅してしまう予定だ。そうなれば罪なきファルムス王国の国民たちは自分達を率いる存在や守ってくれる存在が居なくて困ってしまう。その穴を埋めつつ、リムルさん達の都合の良い方に導くというのは合理的な話だ。

 

「リムル様はあなただからお願いしてるのよ。私も応援するから、波乱万丈に生きてみたら?」

 

「俺も付き合ってやるぜ!傍でお前が死ぬのを待ってやる。」

 

「何!?…分かった。やるよ、任せてくれ。」

 

ミュウランさんとグルーシスの後押しを受けて、ヨウムさんはファルムス王国の王様になることを了承した。

 

「けど、ファルムス王国出身のヨウムさんが王様をやるのは分かるんですけど、なんで僕まで?」

 

「ファルムス王国の兵士の命を多く奪うから防衛力もかなり落ちるし、今のファルムス王国は貿易に頼り切った国だ。そこでヒューマギアの力を借りたい!カイトとヒューマギアの凄さはノースフェリアの発展を見ててよく分かる!ファルムス王国を治めながらヒューマギアの労力やノースフェリアからの資源供給でヨウムを支えて欲しい!」

 

「まあ、他のアウトサイダー達がどう思うかは分かんないですけど、やってやります!」

 

ヨウムさんが覚悟を決めるんだから、僕も受けない理由はない。

ファルムス王国の国力低下を防ぐにはヒューマギアは適任だ。

 

「てことで、ヨウムさん、よろしくお願いします!」

 

「おう!」

 

僕とヨウムさんも硬く握手を交わす。

ファルムス王国はこれから、僕とヨウムさんという2人の王が治める国へと変化していく。

だが、その前にやることは山積みだ。

まずはアウトサイダー達の説得、次にリムルさんの魔王化。

それに謎の仮面ライダーエターナルも倒さないといけない…

そして、魔王クレイマン…!彼らも滅ぼす!さあ、戦いを始めようか…




次回、いよいよ戦いが始まります!
お楽しみに!
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