「後は待つだけだね。」
各々が任務を終えて、リムルさんの部下達と僕らアウトサイダーが街の中心の広場に集まっていた。
その中心部ではシュナとミュウランさんが結界を保つためにオーラを上空に向けて放っている。
『告。個体名リムルテンペストの魔王への進化。ハーベストフェスティバルが開始されます。』
「これは…」
「世界の言葉です…」
その時、僕がこの世界に転生し、スキルを得た時に聞こえた女性の声が聞こえてきた。
シュナ曰くこれは世界の言葉というらしい…
『完了と同時に系譜の魔物へのギフトが配られます。』
「リムル様…」
この声が聞こえ、リムルさんの魔王化が始まるということは、ファルムス王国軍の殲滅に成功し、目的の第一段階をクリアできたということだ。
そのことが分かり、皆は嬉しそうにしている。
「気を引き締めろ!我らが主の勝利だ!次は我らが力を振るう番だ!」
更に、魔王に覚醒すると共にリムルさんの臣下の魔物達にも力が分け与えられるらしい。
ベニマル達も新たな力を得てより強くなるかもしれない。
「うう、ひえぇ…」
「うわぁー!」
丁度その時、足音がしたかと思えばランガがこちらに走ってきており、口にくわえていた2人の男を離して地面を滑らせる。
「リムル様!」
「早く主を!」
「マントを用意しろ!熱変動耐性が機能していないかもしれない!」
「よくぞご無事で…」
ランガの頭の上には動かない状態のリムルさんが乗っており、シュナが彼をマットでくるんで台の上に置く。
「デザスト!彼らを確保しろ。」
「任せろ!」
一方で、先程ランガが連れてきたのは恐らくファルムス王国の捕虜だ。
デザストが彼らをマフラーで縛ってしまうと、デザストとエレンさん一行で捕虜2人を連行してしまう。
『告。ハーベストフェスティバルが開始されました。』
そして、台座の上でリムルさんの身体が虹色に発光し始める。
(アーク、これは何が起きているんだい?)
『個体名リムルの身体組成が変化し、新たな種族へ進化している様だ。』
ここからは世界の声が聞こえなかった。
正しくはリムルさんだけに聞こえているのだろうか?
僕は状況が分からなかったのでアークに解析してもらいながらその結果を見る。
『種族が
流石、1万人の魂を使って進化するだけあって、強そうなスキルや耐性をいっぱい獲得している様だ。
これもう、リムルさんに通じる攻撃無いんじゃないかな?
『さらに彼のユニークスキル、大賢者が
自律型?まあ確かに、アークみたいに意思があるスキルなんてそうそうないけど、リムルさんもそんなスキルを得たってことか。
『さらに
魔王になったことで、リムルさんは2つのアルティメットスキルというものを手にした様だ。
それに加えて個体としての進化、多くのスキルの取得、そしてアルティメットスキルの取得を経てリムルさんはあのミリム達と同じ領域に至ったのだ。
『告。個体名リムルテンペストのハーベストフェスティバルが完了しました。』
「リムル様…!」
「魔王に…」
そして、世界の声がリムルさんの進化が完了したことを告げるとシュナ達は嬉しそうにリムルの方を見る。
『続いて、系譜の魔物へのギフトの授与を始めます。』
「ギフト…?」
「シュナ!?皆…!?」
その声と共にリムルさんの仲間達がフラっとしたかと思えば次々と気を失って倒れていく。
そして空も雲に覆われて暗くなる。
「皆!リムルさんの仲間達を守るんだ!敵の生き残りが来たら大変なことになるぞ!」
今敵が攻めてきてしまえば、リムルさんも仲間達も眠ってしまっているので大事になってしまう。ここは残った僕らで皆のことを守ろう。
「これは…」
「ギフト?リムル様とのつながりが…強く、感じます…」
ベニマルはまだ意識があるが、シュナもランガも次々と眠りについていく。
「あれは、リムルさん?」
その時、リムルさんの身体が光ったかと思えば、白い布に包まれた女性の姿に変わる。
背格好や髪色などは普段僕らが接しているリムルさんと同じだ。けど、その表情はいつものリムルさんとは違い冷たいという印象だ。
『告。後は任せて眠りにつきなさい。』
その言葉を聞いて、安心した表情を見せて残ったベニマルも眠りにつく。
「魔王…?」
「やったのか?」
リムルさん、魔王になって少し雰囲気が変わったような…
『解。正確には、個体名リムルの身体を借りた彼のスキル
確かに、リムルさんかと言われると少し違った印象ではあるが、彼の自律したスキルであると言われれば納得はできる。
「告。ラファエルの名において命ずる。
そうラファエルが命じると、彼女の前に黒い禍々しいオーラが発生して、そこに空間内の魔素が吸い込まれていく。町を覆う結界も破壊されて、結界を形成していた魔素も黒いオーラに吸い込まれていく。
そして、黒いオーラは無数の球へと変化する。
(シオンたちの、魂…?)
その球は、シオンを始めとする命を落とした町の住民の肉体の上で浮遊する。
恐らくこれは、彼らの魂だろう。予想結果の通り、結界を張っていたことで彼らの魂はまだとどまっており、いよいよ彼らの中に戻ろうとしていた。
「…!?」
「アークデーモンだと!?」
その時だった、黒髪に赤いメッシュの執事風の男を含む謎の3人組が突然現れて地面にローブを纏った日本人男性の身体を放り投げる。ローブを纏った日本人は気を失っている様だ。
まさかの敵襲か?いつでも対処できるようにしないと…
「ただいま戻りました、我が君…」
と思いきや、3人組はリムルさん…正確にはラファエルに跪く。
もしかして、リムルさんと契約した悪魔か何かか?
「本来ならば、儀式の終わりまで待つべきでしょうが、失礼ながら申し上げます。どうも、魂の完全なる再生には魔素量が足らぬようです。」
「是。規定に必要な魔素量を満たしておりません。生命力を消費し、代用します。」
この儀式に必要な魔素が足りてないのか…?
『解。どうやら蘇生にはまだ少し魔素が必要なようだ。』
魔王化して、周囲の魔素を食い尽くしても足りないのか…
けど、生命力を消費するのはまずいんじゃ…
「お待ちください。我が君。代用にご自身の生命を用いずとも良き考えがございます。この者どもをお使いくださいませ。この者達も、あなた様のお役に立てて光栄でしょう。それこそが、我らにとっての喜びなのですから…」
「了。規定に必要な魔素量を確保可能。その案を承認します。ベルゼビュート…」
悪魔の内2人を犠牲にすることで魔素量を確保することにしたらしく、悪魔2人がその身を捧げてベルゼビュートに食われてしまう。
「おお、羨ましい…」
悪魔は変わった連中だ。
自分の身を主のためにささげることも彼らにとっては幸福なことらしく、残った1人の悪魔も羨ましそうにその様子を見ている。
「失礼しました…」
悪魔は数歩ほど下がって、この儀式の様子を僕らと並んで観る。
「規定の魔素量に達したことを確認しました。これより、反魂の秘術を開始します。」
「究極の…魂の秘術…!?」
「これが、生まれたての魔王だって!?」
命を落とした者達の肉体にあった傷が癒えていき、シオンも折れてしまった角がまた生えてきている。
「美しいな…」
「ああ、これほど美しい光景は初めて見た…」
僕と黎斗さんもこの光景に少し感動する。
魂が活性化し、皆の身体を癒していく光景は、壮観だった。
そして魂が全て体に戻ったのち、空から再び日差しが差し込んでくる。
「成功、したのかな…?」
反魂の秘術は成功したのだろうか?
それは分からないが、スライムの姿となって再び眠りについたリムルさんを悪魔が台座の上に置く。
「シオン!皆!」
1番最初に目を覚ましたのは、反魂の秘術を受けたシオンら町の住民達だった…