宴の翌日
テンペストの主だった者達に加えてユーラザニアの三獣士やエレンさん達も会議室に集まっていた。
アウトサイダーからは、僕、黎斗さん、ブレン、ヨウムさん、ミュウランさん、グルーシスが会議に参加していた。
まずは、今後の人事についてだが、リムルさんの秘書にあの執事風の悪魔が新たに就任する。彼はディアブロと名付けられた。それと、あのガビルが幹部に昇進した。テンペストに来て色々と頑張っていたらしい。
「では、今後の方針について伝えたいと思う。アウトサイダーや三獣士の皆さんにも関係あることだから一緒に聞いてもらいたい。」
「ええ、お聞きします。」
「何でも聞きますよ、旦那。」
この会議の議題としては、この国の今後の方針だ。
僕らが治めることになるファルムス王国にも、色々と関わる話なのだろう。
「それはカリオン様の救出に、関係あるのですね。」
三獣士のアルビスさんの問いかけに、リムルさんが静かに頷く。
ということは、例の敵対する魔王達に関することでもあるらしい…
「俺、魔王になることにしたよ。」
「はい!」
「いやだから、魔王にね…魔王に…」
リムルさんは既に魔王になってるのに、何を言ってるのだろうか?
他の皆も静かにリムルさんの方を見ている。
「もうなってますよね?」
「そうじゃなくて、世界に向けて俺も魔王だって宣言しようと思ってさ!」
なるほど、リムルさん自身は魔王になったが、そのことを世界中に表明したわけじゃない。
その事実を全世界に知らしめようという話であった。
「ほほう、他の魔王に喧嘩を売る。そういうことですかな?」
「そう!その通り!他の魔王にというか、相手はクレイマンだ!」
ハクロウさんの解釈通り、全世界に魔王であると宣言することで、クレイマンらに宣戦布告をすると言う話であった。
「なるほどな、自分から魔王の席を奪うってことですね。面白い!」
「そうだ、今回の件、裏にいたのは魔王クレイマンだ。俺は、クレイマンを許すつもりはない。」
「つまり、クレイマンとの全面戦争を始めるってことですね。」
「ああ、けどそれだけじゃない。」
リムルさんの口から語られたのは、ファルムス王国に関することや、西方聖教会への警戒、そして、魔王カリオンの救出とユーラザニアの民の保護に関することであった。
「リグルド!西側諸国との交渉を任せる!」
「御意!お任せくださいリムル様!」
「ベニマル!全員の進化結果を纏めろ!全戦力を持ってクレイマンを叩き潰す!」
「了解です!リムル様!」
クレイマンの軍勢と戦うとなると、ベニマルがこちらの大将になるだろう。
「ファルムス王国の捕虜の尋問は僕らアウトサイダーにお任せください。ブレン、早速任せたよ。」
「フフフフフ、お任せあれ…」
ファルムス王国に関することは基本的に僕らアウトサイダーでやることになった。
まずは僕らで内情を聞き出してしまおう。
「三獣士の皆さんにも協力をお願いしたいのだが…」
「願ってもないことですわ。ジュラの森の盟主様。」
「何でも言ってくれよ!俺達はアンタの命令で動くぜ!」
三獣士も他国の者ではあるが、既にリムルさんのことを信頼している様子だ。
滅の報告ではアルビスさんとスフィアは一度こちらに派遣されており、リムルさん達と交流を交わしたらしい…フォビオもカリュブディスの一件で許されたこともあり、リムルさんに従う所存だと静かに首を縦に振る。
「リムル殿!」
「!?」
「ブルムンド王国とテンペストの安全保障条約に従い、はせ参じました!」
「フューズ!」
その時、扉を勢いよく開けて自由組合のフューズさんが部屋に入って来る。
「押忍!」
「チョウタロウ!」
その横にはチョウタロウの姿もあった。
「街中で大勢が倒れていた…ファルムス王国め!なんてことを!」
「あれは寝て…」
倒れているのは恐らく、昨日の宴会で酔いつぶれて寝てしまった住民達だろう。
あ、そうか、フューズさん達にリムルさんがファルムス王国の軍勢を全滅させたことを伝えてないのだろう…あ、僕らもチョウタロウ達に連絡するの忘れてた。
「チョウタロウ、実は…」
と言うことで、ファルムス王国が全滅した経緯に関する僕の記憶を流していく。
「ふむふむ…押忍!そういうことっスか!」
「チョウタロウ、一体どうしたんだい?」
僕が渡した情報に頷くチョウタロウを、フューズさんが不思議そうに見る。
「まあ、一言でいえば、ファルムス王国の軍勢、俺が全滅させちゃったんだよ!」
「…!?」
リムルさんが齎した、ファルムス王国を全滅させたという情報を信じ切れず、フューズさんが驚きつつも辺りを見回す。だが、僕含めたリムルさんの仲間達はリムルさんの言葉を肯定するように静かに頷く。
ファルムス王国軍が全滅したという話を信じざるを得なくなり、フューズさんは固まってしまう。
「気持ちは分かるが、まあ、温泉にでも入って休め。」
ヨウムさんの言葉に、緊張の糸がほぐれたようにフューズさんは大きくため息を吐く。
漸く情報を飲み込むことができ、安堵の気持ちもあってか大きくため息を吐く。
(カイト、聞こえるか?)
(どうした、滅?)
(空からペガサスに乗った騎士団が30騎ほど、近付いてきている。あれは、武装国家ドワルゴンの戦士団だ…!)
その時、外にいた滅から来客の報せがあった。
一度共闘しているから、滅達はドワルゴンの騎士団のことを認知していたらしい。
「リムルさん、来客が来ました。恐らく、ドワルゴンです!」
「わかった、すぐに行こう!」
僕がその報せをリムルさんに伝えると、僕らはドワルゴンの方々を出迎えるためにすぐに外に出る。
「久しいな、リムル。聞いたぞ、魔王になったらしいな。」
「まあね、色々あってな。ぶっちゃけ面倒だけど、今後の対策の会議を行っていたところさ。」
ペガサスに乗っていた褐色肌で筋骨隆々の男が、ペガサスから降りてリムルさんと握手を交わす。
この方が、武装国家ドワルゴンのガゼル王ッ…!なんというか、ものすごい風格と威厳を感じる…!
「ちょうどいい、俺もその会議に参加するとしよう。」
ガゼル王もその会議に参加するということで、現在テンペストと国交を結んでいる2ヵ国からそれぞれ代表が参加するということで、外交的な話も会議の中で進めれそうだ。
僕らが新たに治めるファルムス王国とその2国との同盟も組むことができたら嬉しいな。
なんてことを考えていたら、ガゼル王が森の方向に目を向ける。
「何者だ…?」
そこには、ローブを纏う謎の5人組が居た。
「何者だ貴様たちは?」
「これはこれは、地底に隠れ住むのがお好きな帝王ではありませんか。意外ですな、臆病なあなたが魔王に肩入れされるとは。」
「貴様か…馬鹿みたいに高いところが好きなエルフの末裔よ。神樹に抱かれた都市より降りて来たのか。」
ローブを纏う者達の先頭に立つ金髪で中年の男は、どうやらガゼル王と知り合いらしい。
「いや、その身体は恐らくは…」
「ああ、人造人間、ホムンクルスを利用したものだ。魔王を名乗る者の前に出るのは、用心せねばね。」
ホムンクルスの身体か、興味深いな。
人間と見分けがつかなかったし、ヒューマギアの開発の参考になるかもしれない。
「こやつらは魔導王朝サリオンの者達だ。相変わらずだなエラルド。」
「お前もな、ガゼル。それで、そちらの者が?」
ガゼル王がこちらのサリオンのエラルドさんのことを僕らに紹介してくれる。
そのエラルドさんはふとリムルさんの方を見る。
「どうも初めまして。この森の盟主をやっているリムルです。よろしく!」
リムルさんの名前を聞いた瞬間、エラルドさんの目つきが変わった。
「貴様かァ!?貴様が!私の娘をたぶらかした!魔王ですか!?」
「え、ええ…?」
突然、エラルドさんがリムルさんに詰め寄ってくる。
「覚悟はできているんでしょうね!!」
と言うと、エラルドさんが魔方陣を展開し、大火球を作り始める。
「おいおい、この人ヤバいぞ!」
「すぐに対処しよう。」
僕と黎斗さんは対処しようと咄嗟にベルトを腰に巻く。
「この!アホタレがァ!!」
とその時だった、エレンさんが杖でエラルドさんを殴り飛ばし、魔法を中断させる。
「うああ…」
「ちょっとパパ!何しに来たのよ!」
「エレンちゃん!無事だったのか!」
「無事も何も!私は自分の意志でここに来たのよ!」
エレンさんとエラルドさんって親子だったんだ…
しかも、エラルドさんは、相当な親バカだ…
「いやはっは、スマンなあ…娘が魔王に攫われたと報告を受けたもので、慌ててしまったのですよ。」
どうやら何か勘違いがあったらしく、急に攻撃を仕掛けて来たらしい。
多分この人、娘のことになると周りが見えなくなるタイプだ。
一先ずはサリオンの代表者であるエラルドさんも加えて、これからのテンペストの指針を決める会議が行われることになった。