「それで、結局この人何だったの?」
会議を終えて解散し、ふと気になったのが一応魔王のラミリスだ。
一応会議中に目を覚ましたのだが、その後はヴェルドラと一緒に漫画を読んで寛いでいる。
僕らの国が滅亡しそうと言ってるわりにお気楽なものだ。
しれっと従者と思われる仮面の者にお茶を運んできてもらっている。
「ラミリス様、このようなことをしている場合ではございません。早くリムル様にあのことをお知らせしないと…」
「うるさいわね、私は今とても忙しいの!」
「ここに来た目的を思い出してください!」
「だから!私はね!運命の出会いをしたわけよ、この漫画という素晴らしい書物に…」
ほう、人の国に対して滅亡するだのなんだの言いに来たかと思えば、漫画を読みふけってだらけるか…
流石にお仕置きをした方が良さそうだ。
「アーク」
『ああ…』
『アークドライバーゼロ』
と僕の腰にアークドライバーゼロが現れる。
「変身」
『アークライズ!オール・ゼロ…』
と僕はアークゼロに変身するとともに、ラミリスの身体をがっしりと握る。
「ちょっと!なんなのよ!!」
「さっさと要件を言え、でなければ貴様の身体を握りつぶす!」
このいい加減な女に対し、僕は少し強硬手段に出ることにした。
特にその情報が他の魔王も関わっていることであれば、聞いておく必要がある。
「ちょ、カイトッ…!やりすぎだ…」
「いいから…さあ!何故この国が滅ぶか早く言うんだ!」
「わかったわ!分かったから離しなさい!!」
少し強引な手段になったが、僕がラミリスを話すと、彼女は自分の持ってきた情報を語り始めた。
魔王クレイマンの提案で、魔王達の集まりである
「アンタ、魔王を名乗っちゃったわけ?」
「後悔も反省もしてないぞ。」
「アンタなら不思議じゃないわよね…色々と面倒が起きると思うけどそれだけの実力があるなら大丈夫じゃない?」
リムルさんは実際魔王にもなってるわけだし、最悪他の魔王が来ても問題はないかな。
『解。仮に魔王3人が攻めてきた場合に我々が全勢力で対処した場合…勝率は40%、ただし、君が魔王になったと仮定すれば勝率はさらに上がるだろう。』
(僕も魔王か…いや、その件は今は置いておこう)
恐らくだが、ミリムが強すぎて強くなったリムルさんでもまだ勝つのは難しい。
だが、流石に魔王がもう1人いれば何とかなると言った計算か。
「今回わざわざワルプルギスを提案した理由って言うのがね、魔王カリオンの裏切りなんだってさ。」
「どういうことだ!?」
「誰よアンタ達?」
「カリオン配下の三獣士の皆さんだ。」
どうやら、クレイマンはカリオンを悪役に仕立てようとしているらしく、三獣士のフォビオらが異論を唱える。
「カリオン様が何を裏切ったというのですかッ…!?」
「ジュラの大森林への不可侵条約を破り、ミュウランとかいう魔人がクレイマンの配下だってことをアンタにバラしたんでしょ?」
「それで俺がミュウランを倒したって言うのか…」
クレイマンの筋書きは恐らくこういう流れだろう。
カリオンがクレイマンらを裏切り、クレイマンの部下であるミュウランさんがリムルさんに殺されるように仕向けたと言ったところか…カリオンは既にミリムによってやられており、今度はワルプルギスを通じてリムルさん達に制裁を下そうと言ったところだろう。
まあ、ミュウランさん生きてるんだけどね。
「クレイマンはジュラの森を制圧するつもりか?」
「アンタね!そんなに落ち着いてるけどこれって大事なのよ!カリオンはミリムに倒されちゃったらしいし…クレイマンは軍の出撃を命じたみたいだし!」
「出撃?すでに動き出しているというわけか…」
これはまた、戦争になりそうだな…
「クレイマンめ…思っていた以上に抜け目がないな…」
「だから!落ち着いてる場合じゃないってば!!」
と言ってラミリスが飛び回る。たぶん彼女が1番慌てているが、戦争状態に突入しそうなら尚更、落ち着いて行動すべきだと思うのは僕だけだろうか?
『解。カイトの言う通りだ。』
(ああ、俺もそう思う。)
と、アーク経由の回線で滅もしれっと賛同してくれる。
「落ち着けよ、そもそも俺はミュウランを殺していないんだから。」
「どういう意味?」
「クレイマンは出鱈目を言っているってことさ。」
それに、クレイマンがリムルさんを制裁しようとしているミュウランさん殺害の一件はそもそも起こっていない。丁度今この場にもミュウランさんはいて、皆の視線がそちらに集まる。
「あの…魔王ラミリス様、殺された魔人と言うのは私なのです。」
「え?」
「私がミュウランです。」
「は?」
ミュウランさんが生きているということにラミリスは困惑の表情を見せる。
「分かったわ!犯人はクレイマンで決まりね!」
まあ、そう言うことである。
クレイマンは魔王達を騙してリムルさんを潰そうとしているが、そういうわけにはいかなさそうだ。
他の魔王がどのように動くかは分からないが、それはラミリス曰く3日後に行われるというワルプルギスでの話し合い次第になりそうだ。ということで、会議はしばらく続きそうだし夜も迎えたので一度休憩することにした。
『カイト、個体名タソガレの魂の解析が完了した。』
(あのエターナルのことか…その情報をアウトサイダーの皆に共有してくれ。この後僕からもリムルさんに伝えるよ。)
『了解した。』
と、その前に滅を襲撃し、先日倒されたエターナルの変身者タソガレの魂の解析が完了した。
収集者で回収した魂の解析がアークによってできるらしく、その解析ができたみたいだ。その結果を聞いておくとしよう…
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「おおー!天ぷらにお肉か!」
「早く食わせろ!」
「まあ、落ち着いてください。ここは皆さんと共に食べ始めましょう。」
と言うことで、迎賓館の中にある和風の宴会場に皆集まる。
アウトサイダーの中でも食事をできる浅倉威、デザスト、アークオルフェノクも共に参加しており、先に食べようとするデザストをアークオルフェノクが止めている。
因みに、ラミリスがトレイニーさん達を気に入ってここで一緒に住みたいと駄々をこねているがまあ、それは置いておこう。まずは食事だ。
「さて、遠慮なく食べてくれ!食べながら話そう!」
「「「いただきます!!」」」
と言うことで、早速用意されたご飯を食べ始める。
エビの様な生き物の天ぷらや、お肉の煮込み料理、それにタケノコの炊き込みご飯?などもあり中々充実している。
生前の日本を思い出す和風料理を用意したリムルさんやシュナの手腕には驚かされる。
「ああー!美味い。」
「絶品ですな。」
ガゼル王とエラルド公爵もこの料理に舌鼓を打っている。
こんなに美味しい料理を提供できるなら、外交面でも他国に良いアピールができそうだ。
「ところでカイト、ファルムス王国の捕虜の尋問を行っていたみたいだが、何か情報は得られたのか?」
「ま、まあ…情報は…得られました…」
と、リムルさんから問いかけられて応えるが、あれは…尋問や取り調べと言えるものではない。
浅倉威やデザスト、バンノさんにブレンと言った面々が尋問と言う名の拷問を行い、彼らはほぼ肉塊と言える状態で生かされているだけだ…しかも、ブレンの毒で常に苦しんでいる。
あの光景を思い出せば箸も止まりそうになるし、ヨウムさん達も少し視線をそらしている。
「では、私の方から…エドマリス王の尋問の結果、どうやら彼に接触した商人が居たそうです。」
あの現場を思い出して気持ち悪くなってる僕と、そんなことはお構いなく飯を食い続ける浅倉デザストコンビの代わりにアークオルフェノクが尋問の結果を話してくれる。
「その商人がテンペストの絹織物を彼のもとに持ち込み、欲望を刺激したそうです。そして、今後の流通の主流がファルムス王国からテンペストに移るのを危惧して今回の件に繋がったそうです。」
エドマリス王からの話は、以前にミョルマイルさんが推測していた話の通りだった。
商人に関しては色々と怪しいが、詳細は分かっていない。
「それで、西方聖教会関係者は?」
「西方聖教会の一件の黒幕は、ニコラウス枢機卿という男です。彼はこの国を神に対する明確な敵対国として討伐する予定とのことです。」
「なるほど…レイヒム大司祭は神敵討伐の栄誉を持って中央に対する評価を得ようとしていたのですな…」
恐らく、レイヒムの目的もフューズさんの推測通りだろう。
一先ず、西方聖教会本体としてはまだ完全にこちらを滅ぼす気ではなさそうなので、ブルムンド王国、ドワルゴン、サリオンがテンペストとの外交を強化し、アピールすることで揺さぶりをかけることにした。とは言え、ヒナタの件も教義の件もあるし、不可侵協定的なものを引き出せれば十分だろう。
「さて、その3名の捕虜をヨウムが救出したということにして、凱旋を演出するわけだが…3人…エドマリス王…レイヒム大司祭…あと1人は誰だ?」
そういえば、捕虜が3人いたが、もう1人に関しては僕もあまりよく分かっていない。
「えーっと、もう1人の捕虜って誰だっけ?」
「ラーメンだ。」
「ラーメン?」
僕の問いかけに、浅倉威が食事を口に運びつつ真面目な顔で応える。
ラーメンと言えば僕らのソウルフードとも言えるあのラーメンだが、そんな名前の人間が果たして本当にいるのだろうか?
「そうそう!ラーメンみたいな名前だ!」
と、デザストも言っている。
リムルさんも僕と同じで食べ物のラーメンを思い浮かべているのか涎を垂らしている。
「いいえ、お2人共違います。彼はラーゼンという名前です。」
「ああ、あの魔人ラーゼンですか…」
「英雄ラーゼンか…忘れてはならぬ男よな。」
「ファルムスの守護者にして、叡智の魔人として知られる男ですね。」
アークオルフェノクがその捕虜の名前を訂正すると、ガゼル王、エラルド公爵、アルビスさんが彼について語る。
多くの人達に知られているということは、まあまあな大物なのだろう…
決してラーメンではない。
それにしても、他国から相当な実力者として知られているファルムス王国のラーゼンを捕らえたという悪魔ディアブロも相当凄いな。
「よし、エドマリス王、レイヒム大司祭、ラーゼンの3人の捕虜を連れてファルムス王国に行ってもらうわけだが、ディアブロも連れていけ!」
というリムルさんの指示にディアブロは少し驚いたような表情を見せる。
「俺達はクレイマンを相手に戦争を起こす。町の守りはヴェルドラに任せるとして、ヨウム達の支援に誰を付けるか悩んだが、お前なら適任だ!頼んだぞ!」
「おお!承知しました。リムル様。」
実力の高さゆえに信用され、役目を任されたということでディアブロの表情は嬉々としたものに変わった。
「ディアブロの助けが加わるのはありがたいですね。さて、リムルさん。彼が来るなら安心してこのことを伝えられそうです。」
「ん?どうしたんだ?」
「実は、僕らアウトサイダーはファルムス王国の国盗りをする前に、クレイマンの軍勢とも戦わないといけなくなりました。」
「それはどういうことだ?」
僕らはヨウムさんと共にファルムス王国の奪還に向けて動かねばいけないが、その前にクレイマンとの戦争でも戦う必要ができてしまった。
「先日ファルムス王国の異世界人と共にこの町を襲撃し、滅を一度倒した者に関する情報が集まりました。彼、と言うより彼らの情報はハンドレッドという組織に属しており、そのハンドレッドはどうやらクレイマンと組んでいるようです。今回リムルさんと戦う際に彼らも絡んで来る可能性があります。」
これは、タソガレの魂をアークが解析して分かった情報だ。
「その、ハンドレッドとやらがお前達にどう関係しているのだ?」
「彼らは僕らと同じ、仮面の戦士、仮面ライダーに変身して戦うからです。仮面ライダーは多くの魔人たちを超える実力を持っていて、対抗するなら僕ら仮面ライダーが出る方が良いと考えています。」
ガゼル王の質問に答える。
向こうにどんな仮面ライダーがいるかは分からないが、そのライダー達はユーラザニアの三獣士やこちらのベニマルらより強いかも知れない。
そうなると僕ら仮面ライダーアウトサイダーズが戦って、対処した方が話は早い。
「仮面ライダー、先程変身していた姿ですか…」
「確かに、カイト殿の兵は皆ブルムンド王国にいた者達よりも強かった。彼らと同様の軍が敵にいるなら、攻略は難しいでしょうな…そうなれば、カイト殿らが対処するのが最善か。」
エラルド公爵は僕が先程ラミリスを少し脅す際に変身したアークゼロのことを思い浮かべ、フューズさんはチョウタロウらヒューマギア軍団の実力に対する信頼から僕の話に納得してくれている。
「ハンドレッドか…確かに厄介そうだな。だが、カイトが出て来てくれるなら安心だ。」
「ええ、任せてください。」
「ソウエイ、クレイマンの軍勢の動きを知らせてくれ。」
「八ッ…軍勢は…」
一先ず、敵の動きを探るために偵察に行っていたソウエイとソーカが現れて僕らに思念伝達で彼が見た軍勢の動きを僕らに見せる。
「およそ3万、現在魔王ミリムの領地で編成を行っております。また、別動隊1万は既に北上を開始している模様。」
「3万と1万か…対処できる量ではあるな。」
続いて、3万の本隊に関する報告に移った。
3万の部隊を率いるのは、ミュウランさん曰くヤムザという名前の魔人らしく、クレイマン本人はこの戦には出ていないらしい。だが、ヤムザも相当な実力者らしく、3万の兵を預けられるのに値する人物であると言える。
「なるほどな、だが、そこまで恐れる必要はなさそうだ。クレイマンは用心深い…俺達の町に獣王国の戦士団が合流していることは知ってるはずだよな?それなのにこの戦力って、少ない気がしないか?」
リムルさんの言う通りだ。クレイマン抜きの3万の軍勢でこの国を攻め滅ぼすのは難しいだろう。
2万の兵を全滅させて魔王化したリムルさん、それにより強化された眷属の魔物達、そしてユーラザニアの三獣士がこの地にいるとなると相当な戦力だ。別動隊の戦力がどれほどか分からないが、それでも少ない方だ。少なくともクレイマン本人が出た方が良いんじゃないかな?とは思う。
「クレイマンの狙いは、この町とは違うのではないか?」
「なるほど、そうかもな…てっきりテンペストを狙ってくると思ったが、違うとなると…」
「ユーラザニア?」
ベニマルとリムルさんの言葉を聞き、僕はある答えを推測した。
そう、彼らの狙いがユーラザニアであると。
「ユーラザニアが狙いだって言うのか!?しかし、首都は壊滅し周囲の村や町に残っているのは避難民ばかりで…!」
「一体、なんのために!?」
スフィアとフォビオがクレイマンの狙いについて疑問を感じている中、アークが僕に声をかけてきた。
『解。クレイマンの狙いは恐らく真なる魔王への覚醒。あくまで推測だが、リムルと同様に多くの魂を持ってしての覚醒を狙っている可能性はあるだろう。』
魔王には2種類いる。実力故に魔王と認められた者と、1万もの魂を狩り尽くして魔王に進化した2種類の…そして、圧倒的に後者の方が実力があり、クレイマンは前者から後者に進化することでさらなる力を手にしようとしているのだろうか…
「クレイマンの狙いは、真なる魔王に覚醒することだ。」
リムルさんも僕と同じ推測をしており、それを聞いて三獣士の面々は悔しさと怒りの表情を滲ませる。
ユーラザニアの主力がこちらに避難している今、残った民を蹂躙するには良い機会だし、その軍勢でも十分な数と言える。
「クレイマンの軍勢は本隊、別動隊ともに、2日もあればユーラザニアに到達すると思われます。」
「クソッ!今から戻っても間に合わねえ!」
「後手に回ってしまったか…クレイマンめ!」
自身はワルプルギスに参加して他の魔王からリムルさんに敵意を向けさせ、その間に部下を使ってユーラザニアを蹂躙し、自分が真なる魔王に覚醒するのに必要な魂を集める。
何とも賢い男だ…いずれにせよ、今は彼らとハンドレッドへの対処を考えよう。