傷だらけな多重人格の青年は泥臭くもVtuberとして呼吸をする 作:村上トオル
「引き続き私達のバンドメンバーの紹介をしていきたいと思います。ベース担当の城崎ハク先輩です!!」
「イェーイ!!ハクん民の見てくれてる!!城崎ハクだよ!!」
ベースを大きく弾きながらも自己紹介を済ませると、後ろにいる琉藍が少し五月蠅そうにしているけどそんなの無視、無視……!!これぐらいド派手なパフォーマンスしなきゃ私空気になっちゃうって……!此処には個性が強すぎるバンドメンバーが多すぎるだからさ。
「個性か……」
私も個性的っちゃ個性的なのかもしれないけどさ……。
中二病だった時期もあったぐらいだしさ……。
「中二病か……」
手に持っているベースを抱えながらも私はあのときのことを思い出していた。
あの頃の私は我武者羅だった。
中学時代、偶々虐められていた子を助けてその子を笑わせる為に中二病みたいなことをし始めたのがキッカケだった。笑わなかったあの子は私の前では笑うようになって「なにそれ」と言いながらも私の中二病を笑ってくれていたんだけど……。現実ってのは辛いもんだね。
どれだけ彼女はいじめに抗えたとしても彼女を虐めていた奴らは次にターゲットにしてきたのは私だった。そして、最悪なことに物語と言うのは更に事態を悪化させていき私は助けた子にすら虐められるようになり私の中学人生というものは最悪だった。
「ああ!!!もうクソクソ!!こんなじゃあ高校生活なんて絶対乗り切れないよ!!」
そして今はもう高校生活を迎えていた。
虐められていた過去を捨てて私はとうとう花の女子高校生活を迎えようとしていたのだが……此処で問題は発生していた。入学式を終えて、今日から通常通りの学校が始まるというのだが私はベースを持って登校しようかどうかで悩んでいた。
「私、実はバンドメンバー探してるんだ!!」
って感じの雰囲気でバンドメンバーを探して最高のバンドメンバーと共に学園祭で見に来るかもしれないあいつらにぎゃふんっと言わせて下克上を完成させてやると意気込んでいたのは良いもののもし誰も話しかけてくれなかったらどうしようとなっていたのだ。
「アニメや漫画のガールズバンドみたいに上手く行くかなぁ……」
制服を着たまま私はベッドにダイブして足をバタバタとさせていた。
「でも実はバンドに誘った子がバンドに対してトラウマ持ちでしたとかだったらどうすればいいか分からないしなぁ……」
漫画やアニメのキャラみたいにそこは上手く説得という訳にも行かないだろうし、私は良くて脇役に決まっているだろう。
「ああ、もうダメダメ!!ちゃんとしないと!!待ってください、オーラだけじゃ意味ないってば!!此処はしっかりとやらないと!!姫咲香織、十五歳!!此処が正念場も同然なんだから!!」
「駄目だ……もう駄目だ……おしまいだ……」
私は今最早リングの中で戦意喪失しているたった一人の戦士となっていた。
いざギターケースを持って学校に登校したものはいいものの私はそもそも友達と言える奴がいないことが終わっている。この時点で私は終わっていたんだ。それに気づかないおバカさんは自分が誰かにバンドに誘ってくれるなんて淡い期待を抱いていたのだ。
そしてもう一つ……。
そもそもこの学校バンドやってる奴少なかった。これ自体が本当に私の勉強不足だったと言わざる負えなかった。
最後のもう一つが……そもそも……。
「声掛けられなかった……」
もし声を掛けてバンドやらないと言えば「バンド?」と言った感じで興味を向けてくれていたかもしれない。それなのに私は声を掛けることすら出来なかった。これじゃあ私、陰キャのピンク髪の女の子みたいにも慣れないよ……。
「終わった……帰ろう」
継続的にやって行けばもしかしたら誰かが声を掛けてくれるかもしれないという期待もせず、私は帰ることにしていたのだがその日の放課後、楽器屋に用があってやって来るとそこにはドラムが叩く音が聞こえていた。
誰かがドラムを叩いているのだろうと思いながらも私はピックを探していると、話し声が聞こえ始めていた。どうやらドラムを叩いている子を誰かがバンドに誘おうとしているような話のようだった。
「ふふっ、どうやら……バンドメンバーを探している人達が居るようだね……これは我が眷属じゃなくて……一行になる機会かも」
これはもしかしたらワンチャンがあるかもしれない、なんて準備運動を心の中でしながらも私は待機しながらもそそくさに楽譜を読んでいるフリをしながらも話を聞いていると、話は終わったようで同じ学校の女子生徒が二人と男子生徒が出て来ると、男子生徒の一人が私の方をチラッと見て不思議そうにしていた。
あれ?もしかして独り言聞かれてた……?
だとしたら滅茶苦茶恥ずかしいんだけど……!!私は取り乱しながらも持っていた楽譜の本を棚に戻していたが、肩に掛けているギターケースのせいで滅茶苦茶自己主張が激しいことがバレてしまっていた。まずい、彼……。私がバンドに入りたいって気づいているよ。ど、どうしよう……!!このままじゃ……あれ?バンドに入ろうって言われた方がよくない?だってそっちの方がハッピーエンドじゃない……?
「無視だとかだったら私滅茶苦茶悲しいんだけど!!?眷属とか言ってたの聞かれてないよね!?」
彼は私みたいなオタクに話しかけてくれた人ではあったが、もう一人いた少女に話しかけられて何処かへと向かってしまうのだった。ああ、もうあの展開的に一緒にバンドやろう!!って流れだったはずじゃん。
「終わった……本当に今日は終わった……」
高校生活から始まるバンド生活……。夢見ていた生活が此処で終わってしまっていた。
もしかしたら始められたかもしれないというのに……。
それからして私はなんとかバンド生活を始めることが出来た。
いや始められたというよりお手伝いみたいな感じで始まることになったのだ。路上ライブ、私は絶対無理無理と首を振ってしまって参加することを止めてしまったけど恵梨や琉藍と練習しているうちにこういうのも悪くないのかもしれないと思ってライブというものに興味を持ち始めていたのだ。
「香織いつも来てくれてありがとう」
「え?えっと……う、うん。別にいいよ……」
正直恵梨のことはあの噂を聞いていたから、話しかけられてあわあわとしていたけど練習しているうちに「あれ?この子良い子じゃない!?」となっていた。実際、恵梨は琉藍の練習を何も言わずに手伝ってあげたりしたいたし、終わった後も一人で練習しているに違いないだろう。
「楽しみだな、三人の路上ライブ!!」
「ようやく間に合った……さぁ、聞こ聞こ……」
路上ライブの会場にやって来た私。
恵梨が私の姿に気づきながらも恵梨と千里が歌っているす姿に琉藍のドラムの音を聞いて私は思ったことがあった。やっぱりこのバンドに入りたいとこのバンドに入ればどれだけ楽しい事だろうか、ワクワクが止まらなくなるだろうか……。そんな思いを胸に抱きながらも私はみんなの演奏が終わった後、大きな拍手をしながらも琉藍たちに「今日の良かったよ!」と連絡しようとしていてたが……。
「私琉藍の連絡先も恵梨の連絡先も知らないじゃん……」
これまで何度も練習をしてきたメンバーだというのに私は二人の連絡先を全く知らなかったという事実に絶望しながらも私は家に帰ることにするのだった。
「おはよう香織」
「おはよう恵梨……あのさ……」
「連絡先教えて欲しいなー!!」
なんて楽々と堂々とそんな直球のこと言える訳ないじゃん、私が……!!
「香織、RINE交換する?」
「え?い、いいの……?」
「うん、この先バンドに入るなら連絡取れた方が楽でいいでしょ?」
「あ、ありがと……!!」
恵梨からすれば何で私が浮かれ気分でいるのか分からなかったかも知れないけど、私はそもそもクラスのRINEにも誘われなくて誰とも交換が出来ていなかったから本当に嬉しかった。
「え?バンドに入る……?」
RINEを登録した後で浮かれていた私は自分が耳に入ってきて後回しにしていた情報。え?私、恵梨達のバンドに入るなんて言ってたっけ……。
「入りたいんでしょ?」
「い、いいの!?」
恵梨は無言のまま頷くと、自分でも馬鹿みたいに笑みを浮かべているのに気づいてしまうレベルで喜びが隠せなくなってしまい、私は今にも恵梨に抱きつきそうになっているのを堪えていた。危ない、今抱きつこうとしたら絶対溝落ち喰らうところだった。
「香織の実力ならきっと千里達にも追いつけるから大丈夫」
神様、本当にありがとう。
私に今までベースのことを教えてくれて……。そして今日からは私ベースシトとして有名になって見せるから……。
「え!?いいの!?私も本当にいいの!?足引っ張るかもよ!?」
「香織なら大丈夫」
「恵梨って神って言われたことな「ない」」
「で、ですよねー」
「改めて一年B組の姫咲香織です!!ベース担当としてよろしくお願いします!!」
屋上に恵梨と共に来ていた私はバンドメンバー。そして竜弥の前で挨拶をしていた。ちゃんとした挨拶はこれで二度目。此処でちゃんと私というものをアピールしていきたい。
「趣味は裁縫!好きなものはゲームとアニメ!!」
「よろしくヒメ―」
鉄格子に寄りかかりながらも琉藍はブラブラと手を上げていた。
「裁縫っていうことは衣装作れたりする?」
「えっ?うん、作れはするよ」
私が裁縫を得意になったのはお母さんが洋裁屋をやっているから。小さい頃から横でお母さんの洋裁を見ていたからあるとき自分でもやってみようと思って作ったことがあってお母さんに凄く褒められたのを覚えている。
前にはコスプレ衣装なんてのも作ってみたけど流石に着る自信がなくて着なかったけど……。
「それで千里、もしかして衣装作るの?」
その日の帰り、スタジオでの練習の前に私は千里に声を掛けられていた。
衣装を作りたいという話をされていた。
「そう、アタシたちもバンドをやることになったんだし衣装ぐらいはあった方がいいかなって思ってさ……。買うのもいいんだけどね」
「わかるよ、自分たち特有の衣装の方が気合い入るって言いたいんだよね!?」
自分たちだけのマイデザインの衣装での演奏。
心踊らないわけがない。寧ろ、高揚感が増してしまうほどだよ。
「そうそう、そんな感じ。だからアタシたちの衣装作り、お願いしたいんだよね。衣装のデザインは恵梨に考えもらうから、それを見て香織には作って欲しいの。勿論、アタシ達も手伝うからさ」
「うん、任せて!私作ってみせるから!!」
「とは言ったものの……ちゃんと作れるかな」
自分に任された大役、決して悪いものではないけれど重荷にならないか心配だ。
にしても恵梨ってデザインとかそういうの出来たりしていたんだ。知らなかったよ。
でもそういえば前に適当に書いたって言って見せてくれたハスキー、結構可愛かったっけ……。
「恵梨もああいう趣味みたいなのあるんだし他の皆もそういう意外な趣味持ってたりするのかな……」
まあ人は見た目によらないなんて言葉があるけど、実際にそれを目に当たると度肝を抜かれるなー。気になるけど今は気にしてても仕方ないか……。
「って千里、あれなんか置いて行ってる……」
ライブハウスのテーブルの下に置かれていたのは小さなカピパラのぬいぐるみ。
このぬいぐるみ、何処かで見たことがあるような気がするんだけどなんだっけ……。あー思い出した、確か前に映画がやっていたアニメに登場するメインの子だ……!確かいつものほほんとしていて可愛らしい子だった気がする……!!
「千里……!!忘れものしてるよ!!」
思わず自分と同じ同志を見つけたと思って、私はそのカピパラのぬいぐるみを持って千里のことを追いかける。
「え?忘れもの……?」
千里が後ろを振り返って、私が「手広げて!」と言うと千里が「どうしたんだろう?」と言いたそうにしながらも手を出すと、私はカピパラのぬいぐるみを千里に渡す。
「はい、これ……!!千里それ好きなの?」
「え?うん」
ま、待って私……。
此処であのアニメのこと知っているのなんて聞いても良いけど、もしただ可愛くて買っていただけの場合はどうすればいいんだ。それじゃあ会話を続けるどころか絶妙の空気感が漂ってしまって終わってしまうだけだ。それはまずい、絶対に不味い。どうする……?
「ねぇ、香織……。香織ってアニメ好きなんだよね?」
「え?う、うん!そうだよ!!」
「じゃあ……なんかアタシが好きそうなアニメとかあったりするかな?」
「!!!?」
これはもしかしてもしかしても……布教が出来るってこと!?
間違いないよね、間違いないよね。これは間違いなく布教が出来るってことだよね!?
「え、えっとね……ちょ、ちょっと待って!!」
私は今頭の中で膨大の数の作品の計算していた。
千里がもしこういう可愛らしい系のものが好きなら勧めるべきなのはこういう類に似たもの……。もしくは千里は音楽が好きだから音楽を通して物語が深くなるものをオススメするっていうのも悪くないのかもしれない。
決めた……!
私が勧めるのは……!!
「え!?も、もしかして千里……この二日間の休みの間に全部見てくれたの!?」
その日……私が洋服を作るのに難儀していると千里と竜弥が手伝うと言う話を聞いてくれて一緒にやってくれることになったのだが私は千里に勧めたアニメを全部見たと言われて大声を出していた。
「暇だったから結構見ちゃったんだ……。結構良かったよ、バンドアニメ……。一人ぼっちだった女の子がバンドを通して成長していく物語とか……。尊敬していたボーカルの女性と出会えた女の子がバンドに入って自分が間違っていないことを証明していく物語とか……。最初は全然バラバラでバンドとして機能していなかった五人が最終的にはバンドとしてなって行く物語とか本当にどれも良かったよ」
私は膝から崩れ落ちそうになっていた。
千里の好みに合わせてバンドもののアニメを紹介したつもりでいたが、まさかの全部見てくれているとは思わなかったのだ。あわよくば一作品ぐらい見てくれたらいいかなという消極的な気持ちでいたがまさか全部見てくれているとは思わないよ……!!しかも物語の内容ちゃんと捉えているし……!!もしかしてこの子神!?神様!?オタクが勧めたアニメ全部見てくれてるじゃん!?
「あー香織、俺もバイト二日間休みだったからゲーム買ってみたんだが……結構面白いな」
「え、え!?竜弥何買ったの!?」
「あーなんだったっけ……。確かもう随分前に出ていたオープンワールドって言うジャンルのゲームだけど……ボスの倒し方とか色々あったりしてあれこれ考えて倒すのが本当に楽しかったぞ」
「マジで!!?」
竜弥が多分言及してくれているのは間違いなくあの神ゲー。
ボスを自分のタイミングで好きに倒せたり、ラスボスをすぐに倒せることが出来るあのゲームに違いない。大丈夫!?最初にあのゲームを喉に通したら他のゲーム霞んだりしない!?などと杞憂なツッコミを入れながらも私はご満悦だった。それこそ琉藍がドン引きするぐらい。
「竜弥!!今度ゲームについていっぱい語り合おう!!ね!!というか男の子なのに裁縫得意なんて珍しいね竜弥!!」
人が嬉し涙を流すときがあるとしたらこういうときなのかもしれない。因みに竜弥が裁縫が得意な理由は妹の制服を縫い直したりしてあげたりすることがあったからしい。妹ちゃん、キミのお兄さん器用過ぎない!?とツッコミを入れながらも私は二人と一緒にゲームの話やアニメの話をしながらも今私は幸せを感じていたが……幸せは長続きはしななかった。
「あれ?もしかしてお前……」
次のライブに向けて、スタジオ練習を終えた後私は満足げに帰っていると誰かが私のことを呼び止めたような気がしていた。
「!!?」
寒気がしていた。
私はすぐにでも逃げようとしていたが足が竦んで動くことが出来なくなってしまっていた。このままじゃまずい、あいつらはきっと私のことを虐めていた奴らだ。私だと気づかれたら最後、私は今までの自分を忘れて脆い私が出てきてしまう。なんとか竦んでいる足を動かそうと路地の方に逃げようとするが、私は中学時代の奴らに囲まれてしまう。私は目を瞑って覚悟を決めようとした瞬間だった。
誰かが私の手を握って一緒に逃げてくれたような気がしていたのだ。
その手は温かく、震えていたはずの私の手が震えが止まっていた。それはまるで「もう大丈夫だよ」と言われたように暖かったのだ。そして、それは実際に言われたのだ。
「大丈夫か?これ飲め」
「りゅ、竜弥……あ、ありがとう」
公園まで一緒に逃げてくれた竜弥は自販機で飲み物を買って私に渡してくれていた。
「……何も聞かないの?」
「聞いて欲しいのか?」
「……言いたくない、昔のことなんて」
言ってしまえば確かに楽になれるのかもしれない。
楽になれるのかもしれないけど、私は言いたくなかった。きっと自分のプライドが許したくなかったんだろう。弱い自分を見せるということが……。
「だったら、無理して言わなくてもいい。でも……香織の中で何か悩みがあってそれをぶつけたいっていう気持ちがあるならそれを自分の音楽にぶつけてやれ。私の感情は此処にあるって、これが私の生き方だって……」
「生き方……か……」
何処かで聞いたことがあるような言葉だった。
いや確かにその言葉には聞き覚えがあった。それは私が好きなバンドのアニメで何度も聞いた言葉だったからだ。そうだよね、私は私なりの生き方を貫き通していいんだ。間違ってないと証明してみせればいいんだ。確かにあいつらのことは今でも怯えるほど怖い。それでも私は立ち竦んで指を咥えて待っている場合じゃないと思うのは自分の中で自分という人間が……音楽が間違っていないと確固たる意志があるから。あいつらを見返してやりたいという気持ちがあるから。だったらそれに従えばいい、本能のままに動けばいい。
「竜弥」
「なんだ?」
「ありがとう!!本当に竜弥は最高の盟友だよ!!」
何かを聞こうともせず、竜弥はただ笑顔で宥めてくれていたのだ。私はそれが本当に嬉しかった。あのとき、私は怖かった。どれだけ自分の中であいつらに見返してやるなんだという気持ちもあろうとも私は自分の怖いという心に抗うことは出来なかったんだ。自分の弱さを情けなく感じながらも手を差し伸べてくれた竜弥に本当に「ありがとう」という気持ちが強かった。
「はぁ……此処まで来るまで大変だった……」
この日になるまで苦難の日々だった。私は友達なんて居ないから家族にライブチケットを売る羽目になってしまった。こうなることなら路上ライブでもしてチケットを買って貰えばよかったよと「とほほ」となりながらも、恵梨と話している千里の方へ向かう。琉藍の方を見ると自由気ままにドーナツを食べていた。
「千里、今回のライブに沿った衣装出来たよ」
紙袋の中に詰め込められている衣装を千里達に引き渡すと、千里がお礼を言ってくれた後にそれぞれの衣装をみんなに渡してくれた。千里が今回提案した衣装は黒を基調したもの。ライブハウスでやるライブは初めてということで印象に残る衣装を最初に着たいという要望に応えて作り上げたもの。……思ったんだけど、千里に要望にあった千里の衣装。Tシャツの下の方裂けたようなものでお願いと書かれてあったけど……。大丈夫?千里のお父さんとか見に来てたりしていたら殺到しないかな……。苦情は受け付けてないんだけど……。
「みんな行くよ!今度のライブは成功させるよ!!」
「「「うん!!」」」
そして、私を含めての最初のライブが始まった……。
ベースを持ったままライブハウスへと入り、それぞれが所定の位置に入ると音楽が始まり始める。私は竜弥に言われた通り、自分の生き方に正直に生きてやる。ぎゃふんっと言わせてやるという意志のものと私は立っていた。
千里が歌っていたのは私も知っているバンドのアニメの曲。
私の影響もあって今回のセトリはバンドアニメの曲が多めのセトリとなっている。曲を知っている人かしか乗ることが出来ないかも知れない。それでもこの日を持ってとくと知ればいい。この楽曲たちの魂を……!!
知っている曲ということもあり、私のベースはいつものように軽やかに演奏することが出来ていた。それこそ私が大好きなアニメの魂を乗せるようにして……!!
「やったよ!恵梨!!」
「うん、やったね千里!!」
ライブを終えた後、千里と恵梨は抱き合いながらも二人で感極まっている様子であり琉藍と私はお互いに見合って笑いながらもこのライブハウスでの初ライブで自分が間違っていないし、自分はあの頃とは違うということを見せつける最初のライブとして爪痕を残せるいい機会となったのだった。
そして……あれから年月が流れ出していた。
学園祭のあの日……。
私達は二年生最大のライブを行われようとしていた。一年生のときはライブ等で忙しいあまり、学園祭に出ることは出来なかったが……今回日程の調整も出来たことにより学園祭のライブに参加することが出来ることになったのだ。
今回のライブ、もしかしたら中学時代私のことを虐めていた奴らが見に来るかもしれない。あのとき、私のことを虐めていた奴らにぎゃふんと言わせることを想像するだけで本当に最高だよ。と今にも高笑いしそうになっていると、「準備お願いします!!」という声が聞こえてきた。
二年になってからというもの恵梨が楽曲を作ってくれ楽曲たちのおかげで私たちは更なる飛躍をすることが出来た。恵梨は千里に合わせた歌を提供するのがかなり上手で今千里が歌っている歌は人々の心に響くようなロックを捧げている曲ばかり。どれもノリノリで思わず私もサイリウムを振りたくなってしまうほどだ。そんな歌に私の最高のリズムを刻みながらもノッていたのだ。
もう自分を曝け出すのを怯えなくてもいい。間違ってるなんて怖がらなくてもいい。
今此処にいる姫咲香織はただただ音楽を楽しみながらも自分という人間に正直に生きているだけの人間でしかなかった。注目されたい、見返してやりたい。馬鹿みたいな感情なのかもしれない。それでも今みんなが私たちのことを見てくれている。これを喜ばずに居ないでなんて居られるわけがなかったんだ……!!
「どうよ……!!これが私姫咲香織の生き方だ!!」
演奏を終えた後、私は檀上裏でそう一人で言っていた。
「姫咲凄かったね!あんなに輝いてるの初めて見たよ!!」
「でしょでしょ!!私の最高の瞬間見てくれた!?」
「うん!!見た見た!!」
同じクラスの生徒に話しかけられた私は二年生のときに感じた学園ライブでの視線を私は忘れることが出来ないでいた。あのとき浴びた視線はあの子あんな演奏出来たの!?という驚きやらあの姫咲があんなに目立っているなんて!?と言った表情が忘れることが出来ないでいた。
「竜弥……!!」
「香織の生き様ちゃんと見させてもらったぞ」
「うん!!そりゃあ当然だよ!!此処が私の生き様を見せる最大限の場なんだからさ!!」
「次のライブも頑張れよ!!」
「おうよ、盟友!!」
千里達との会話を終えて私が最後となり会話をしてくれた竜弥。
壇上裏から去って行く竜弥を見送りながらも彼に対してただただ感謝の言葉を思うのだった。
ありがとう、竜弥。そして、ありがとうみんな。此処まで私のことを引っ張ってくれてありがとう。私……此処まで来れたよ。自分が立ちたかったステージに立つことができたよ。私は自分が生きたいという道を選んで正解だったよ。
本当にありがとう……。
◆
「三曲目行きます!!」
千里がそう宣言すると、千里がまず歌い始めると私も歌い始める。
千里との歌声が私に共鳴する度にあの日のことを思い出す。
「先に謝るなんて言い訳しないで」
あの日の路上ライブの始まる前、私が千里に対して言った言葉。
あの日の言葉ははっきりと覚えている。私にとっても千里にとってもあの日の出来事が私達のバンドを作り上げる上で大切な出来事だったのは間違いないのだったから。
「千里の歌ってのは……音楽ってのは所詮その程度なの?」