傷だらけな多重人格の青年は泥臭くもVtuberとして呼吸をする 作:村上トオル
「竜弥、実はこれは最近流行っているブレイドでな……。継続性、瞬発力において最も優れているブレイドなんだ!!!でな、こっちのブレイドは攻撃性に特化していて一発一発の破壊力がかなり高いんだ!!!凄いだろ竜弥!!」
「そ、そうだな……」
「そうか、お前もそう思うか!!それでな、このブレイドはな……!!」
正直俺は瑛太のことをかなり理性的な人だと思っていたから、好きなものについて此処で語るとこうなるとは全く想像もしていなかった。とはいえ、こういうのにはかなり慣れている。香織もこんな感じになることが多かったから。ただあいつの場合は、かなり暴走気味になって最終的に琉藍から「うるさい」と一蹴されていつもの決まりで大体、俺か千里に泣きついて来ることが多い。偶に恵梨に泣きつくこともあったが、恵梨はあんまり相手にしていない。そういう懐かしい光景もあったなぁと感情深くなりながらも俺は瑛太の話を黙って聞いていた。
こういうのは横から一々茶々入れたりするのは良くない。
適度に質問を入れたりすると相手もこっちも気分が良くなる。それに俺はこういう人が何かに熱中しているところを見るっていうのは嫌いじゃないからな……。だから、俺もその話に聞きつつ相手の話題に適切そうな質問を返したりすることが多い。例えば、今瑛太が話しているホビーものの話なら「このパーツとこのパーツを組み合わせたらどんな強力なものになる?」とかが一番分かりやすいかもしれない。とにかく相手の言っていることや好きなものを否定することだけはやっちゃいけない。
それに俺もこういうものに一度は興味があったのは事実。
子供の頃はショッピングモールでこういう玩具を見かけて遊んでみたいと言う欲求があった。まさかそれがこの歳になって叶う事になるなんて思いもしなかった。ゲームが好きとはいえ、こういうホビーものに触れるということは一切してこなかった。それでゲーム好きとは如何のものか?と言われた反論ははっきり言って出来ない。とはいえ、こうやって単純作業で動かして遊べるゲーム、中々面白い。それにパーツを自分で組み合わせることで自分だけのブレイドを作り上げることが出来るというのも面白い。こういうのを子供時代に触れていたらきっと俺は無我夢中で遊んでいたこと間違いないだしだろう。それに最近のはバトル中にブレイドが分解するという要素も組み合わさっているようでこれはこれでかなり面白くて仕方ない。爽快感というか、自分のブレイドが如何に強いんだというのが目に見えて分かるからだ。
「それにしても竜弥、意外とこういうのは好きだったんだな」
「こういうのには触れたことがあるのは実は初めてなんだ。子供の頃は本当にこういうものとか、特撮とかだっけ?ああいうのにも全く触れて来なかったから」
「そうだったのか、でもこうして今は触れて楽しんでいるんだろ?」
「ああ、楽しくて仕方ない……!!」
俺の中に眠っている少年心というものが手の動作に現れていた。
紐のようなものを勢いよく引くと、特徴的な音を立てながらもコートにブレイドが二つ並び立つ、勝敗だけ話すと初心者でありながら俺は今二勝している。俺の気分をよくしてくれる為なのかもしれないと一瞬思ったが、瑛太はあまり手を抜くタイプではない。恐らくきっと本当に偶々だったのか、このゲームの適性が俺にはかなりあったのかもしれない。
「よしっ、勝った!!!」
こうして俺は三勝目を勝ち取ることが出来ているんだから。
悔しそうにしている瑛太を横目にしながらもガッツポーズを掲げてていた。
「竜弥、凄いな……。まさか三勝もされるとは思ってもいなかったぞ」
「俺も正直此処まで勝てるなんて思ってもいなかったな……」
自分がこうして三勝しているという事実に俺は驚きを隠せないでいた。
隣にいる瑛太は俺が三勝した分析をしているのを聞いていると、俺の肩を叩きながらも隣にやって来ていた人物がいた。
「あれぇ?樫川竜弥と澤原瑛太じゃねえか……!!まさかこんなところで会うなんて奇遇だねぇ!!」
「勝田さん……?」
話しかけてきたのは、愉快そうな声で酒の匂いを帯びていたのは勝田信二さん……。
この人と会うのは舞台劇以来だ。少しばかり酒の匂いが気になって仕方なかったけど俺は特に何も言わないでいると、瑛太がそれを指摘していた。
「信二さん、またそうやって朝から酒飲んでたんですか?寿命縮めたいんですか?」
「お?その言い方的に俺のことを心配してくれてんの瑛太?嬉しいこと言ってくれるじゃん?でも、俺の心配はご無用よ。医者からも健康的な肝臓ですねって言われてるからなー」
「絶対に嘘ですよね……」
瑛太が呆れながらも溜め息をついていた。
後になって知ったが、この人は仕事終わりには毎日欠かさず酒を飲んでいるようだ。そのため、31歳ながら医者からはドクターストップをかけられているらしいがそれを無視しているらしい。この人、本当に大丈夫か?と言いたくなってしまうけど多分言っても全く聞き耳を入れてくれようとはしないよな……。
「つーか結構面白いことしてんじゃん?ブレイド、俺もガキの頃はよくやっていたなー。最近のはどんな感じなんよ?」
瑛太は勝田さんに最近のブレイドがどんな感じなのかを説明していた。
この人、本当に聞いてるのか?と時々不思議になりながらも俺は二人の話を聞いていると、興味を持った勝田さんが「へぇ、じゃあ俺もやってみようかな!!」と言いながらも、ブレイドを選び始めていた。遊びというもので人が増えて行くこの感じ、俺は面白いなと感じながらも俺は近くの子供に不思議そうに言われる。
「あっ、大人がいる!!」
と何気ない純粋そのもの言葉ではあるが、刺さる人は刺さってしまうかもしれないだろう。
実際、俺がゲーム実況者だった頃は親御さん世代の人が息子とのゲームを見て私もハマってしまったのですが……。という質問をよく受けていたことがあった。大人が自分より年下の人間に質問をするというのは変な光景でしかないのかもしれないが、俺はそういうときの言葉は與那城によく向けていた言葉そのものだった。
「あっいつもの兄ちゃんじゃん!!」
「なんだ、
「ええ、まあ……」
「じゃあ、この兄ちゃんに遊び相手になってもらってんのか」
いや……さっきの言葉は訂正しよう。
きっとこの子供達にとっては大人がこの場所に来るというのは当たり前の光景だったけど、瑛太以外の大人が此処に来るのは初めてだったんだろう。だから、俺を見かけたとき少し表情が緩んでいたんだ。少しばかり早とちりをしてしまったなと感じながらも俺は子供達とも混ざって一緒にゲームを触れあっていた。
「ぷっはあぁぁっ!!昼間から飲む酒とか最高だな!!」
「……信二さん、幾ら何でも飲み過ぎですよ。もう三杯目です」
「いいじゃねえか、今日は俺の奢りだって言ってるんだからよぉ!!」
俺も瑛太もあまりこの人の奢りだということには乗り気ではなかった。
俺達は先ほどまでブレイドで勝負をしていた。五戦で勝負をしていたのだが、ある一戦のとき勝田さんが最下位が今日奢りなと言い出したのだ。俺と瑛太は顔を見合わせて「え?」となっていた。払いたくない、とかそういう訳じゃなくて現状最下位は勝田さんだったからだ。だからどう見ても不利な戦いなのにあの人は俺達に勝負を持ちかけて、負けてそのまま奢っている。俺と瑛太は「別にいいです」と断ったのだが、帰してくれる様子もなく勝田さんはこうして昼間から酒に酔いしれていた。まあ、ずっと前から酔い潰れていたんだが……。というか、もう駄目そうじゃないのか……。三杯目の時点で顔がかなり真っ赤だったな……。
「ん?どうした樫川竜弥……?俺は特に酔いつぶれちゃいね……」
テーブルの上で寝息をかきながらも気持ち良さそうに眠り始めている勝田さん。
それを見て瑛太が「はぁ……」と溜め息をつきながらも立ち上がり、肩を貸していた。
「あーやっぱり言わんこっちゃない。この人こうなるからこういう場所にはあんまり連れて行きたくなかったんだ……竜弥。今日は帰っていいぞ、お前も特に酒を飲むって訳じゃないんだろう?」
「まあ、そうだな……」
俺も酒は嗜む方かと言われたらあまり飲まない方だ。
周りに合わせて酒を飲んだりと言ったりすることは多かったけど、これは誰にも言ったことはないけど酒を飲んでいる姿や煙草を吸っている姿というのは母さんのことを思い出すからあまり好きじゃなかった。
「瑛太、今日は誘ってくれてありがとうな……。こういう遊びにまさかこの歳でハマることになるなんてとは思っていたけど、結構楽しいもんなんだな。あんまりこういうことを言うのは恥ずかしいのかもしれないけど、つい最近かくれんぼを大人になってからやってこういう遊びっていうのが凄い楽しいんだって分かった気がするんだ。だから……今日は本当に楽しかった」
それを言うと、瑛太は笑いながらもこう言っていた。
「竜弥、俺はああいうものに年齢だとか性別だとか関係ないと思うんだ。好きだからやる、やりたいからやる。それで充分だと思う。誰かに何かを言われたからと言ってそれでも好きだからやりたいという思いが重要なんじゃないかって……。お前ならきっとそれを分かってくれるだろう竜弥?」
『ゲームが好きならゲームが好きって誇れ。誰に何を言われても気にするな!』
「ああ、そうだな……」
「俺にもその気持ちはよく分かるよ、瑛太」