傷だらけな多重人格の青年は泥臭くもVtuberとして呼吸をする   作:村上トオル

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作り上げる物語

 真波の意見には完全に同意でしかなかった。

 脚本が書かれている本を見せられたとき、メアの3D化が仲間として喜ばしいよりも困惑の方が勝ってしまって俺は渡されていた台本を強く握り締めながらも亜都沙に何度も確認するほどで、ツッコミもするほどだったからだ。

 

 

 

 

「みんなー!!今日は私が制作のB級映画、サイボーグシャーク&スシ・ウォーズの上映会に参加してくれてありがとう!!」

 

 メアがB級映画を選んだのには理由があった。

 彼女はB級映画が好きでよく視聴者と一緒にB級映画同時視聴をやっているからだ。同時視聴では彼女の笑い声や反応が面白くて見る人が多くて、なにより一緒に反応してくれる他の視聴者達がいるということで人気を博していた。

 

 そういう経緯もあって今回はこの『サイボーグシャーク&スシ・ウォーズ』という30分ぐらいの映画が作られることになった。俺の役は奏多と同じ警官という役だったが、途中反乱を起こした寿司たちを主人公であるメアとその友人のサユを守る為に俺達は退場することになる。最初に死ぬことになる玲菜に比べればかなりいい活躍を貰った方だろう。

 

「という訳で私は今日この場で3D化決定したということでじっくり見てね!!スクショも忘れないでねー!!」

 

 大きく回転しながらもメアは自分の3Dの体を見せつけている。

 彼女の綺麗な長い髪やフリルがついたスカートが揺れているのが特徴的であり、彼女は大きく飛び跳ねたりあちこちと移動していた。それだけ自分が3D化したということに対しての喜びが出ていたんだろう。

 

 彼女が色々なスクショを取らせている為にポーズを取っているのを見ながらも俺は楓が真波に対して言っていたことを思い出す。

 

『物語というものは多種多様なものがあります。誰にも受け居られるような国民的なものもあれば、神崎亜都沙のように少し特殊な物語を好む者もいます。それを馬鹿馬鹿しいという人もいるかもしれませんが、私はそうは思いません。物語というものには誰かの生命が降り注がれたものが詰め込まれているのです。その人の人生の一ページというものが刻み込まれているのです。そして、それは私達Vtuberにも言えたことではありませんか?』

 

 真波はそう言われて、納得していたがそれでも「なんでサメなのよ」とツッコミを入れていた。その後も話は続いていたが、結局真波は溜め息をつきながらもはんば無理矢理自分を納得させていたが、俺は楓の話を聞いていて確かにそうだなと感じていた。

 

 どんな作品にも物語はある。

 そして、俺達Vtuberにも物語はある。俺が作り出してきたものや作り出して行くものなんてのは

Vtuberの年表には載せられることはないかもしれないが、それでも自分がこういうことをしてきたというものは捧げて行きたい。俺には俺の目標がある。

 

 メアの3D配信を見ながらも俺はそれを改めて再度確認させられていた。

 

 

 

 

 

 

 秋葉原駅……。

 此処は今も昔も変わらない……というわけでもない。最近は色々と店が変わって来て今ではコンセプトカフェみたいなものが凄い増えている印象が多い。路地の方に行けばそういう人達が多くビラを配って居たりすることが多いからな……。

 

 と亜都沙と恭平のことを待っていた俺だったが、俺は随分前に亜都沙に言われていた言葉が少しばかり気になっていた。

 

「これじゃあ俺が変態みたいじゃねえか……」

 

 亜都沙から来ていた集合の連絡を見ながらも独り言のように呟いていたが実際否定することが出来なかった。亜都沙にコンカフェに興味あるのか?と言われたとき、俺は全く否定できなかったせいだ。ぶっちゃけ、あれに関しては高校時代の学園祭で千里のメイド服姿を見ていたから千里のだったら見てみたいというキモい発想をしていたんだ。我ながらどうかしてると思いながらも頭を抱えていた。

 

「煩悩まみれだな……」

 

 思わずそう呟かずにはいられなかった。

 高校生のときにそういうゲームを買っている時点で思われても仕方なかったが、俺は自分が抱えている煩悩のことよりも亜都沙達が来るのを待っていると、亜都沙と恭平が一緒にやって来ていた。恭平は最近俺と会ったばかりということもあって無言で会釈をしていた。

 

「なにー、ボケっとしとったんや?」

 

「いや、俺は別にボケーっとはしてなかったんだがな……」

 

 どうやら亜都沙は俺がボケーっとしていたのをお見通しだったようだ。

 煩悩まみれになっているのを気づかれなかっただけまだマシだとしか言いようがない。いや、亜都沙なら全然余裕で気づいてそうまでがあるが……。

 

「ほら、行くで?今度こそ秋葉案内してくれるんやろ?」

 

「ああ……そうだな」

 

 亜都沙が先に歩き始めると恭平が「待ってくださいよ!!分からないのに先歩かないでくださいよ!!」と言って亜都沙の隣を歩いていた。俺も二人を追いかけるようにして歩いていた。秋葉原は結構変わったとは言ったが、秋葉原駅の前というのはあんまり変わってもいないような気がする。少し歩いて通りに出ると、店が変わった感じがするなと思うけど俺が此処、秋葉原に来たのは高校生のときだからな……。初めて此処に来たときは他の場所とは違う独特な場所という感覚を味わったけど、実際に店の中に入ってそういうものに触れると案外いいものだという感覚に嵌まっていた。

 

 香織が秋葉に連れて来てくれなかったらこういうものは味わえなかっただろうな……。

 記憶の中にあるものを探りながらも俺は亜都沙と恭平の楽しそうな話を少し後ろを歩きながら聞いていた。

 

 

 

 

 

 ゲームセンターに入って来て亜都沙は今羊のぬいぐるみを取ろうと夢中になっていた。

 こういう大きなぬいぐるみというものは案外取るのが難しかったりするんだろうか。香織と一緒にゲームセンターに来たときは確率がどうのとか言っていたが、俺にはよく分からなかった。多分、知らない方がいいことだろうと思っていると……。

 

「あー亜都沙さん、こういうのは確「言わんくてええねん!!そういうのは……」」

 

「は、はい……」

 

 どうやら此処にも香織と似たような思考をするような奴が居たらしい。

 クレーンゲームってそんな確率とかあるもんなんだろうか……。自分でも言うのはなんだが、ゲームはある程度知っているつもりだがこういう部類のものはあんまり詳しくなくて香織の方が圧倒的に詳しかったりしていたからな……。

 

「亜都沙、一回いいか?」

 

「ん?頼んでええか竜弥?」

 

「ああ、任せろ亜都沙……!!」

 

 こういうものは俺より強い奴はいるけど、今此処には居ないからな……。

 実力はあいつ以下だけど、それでもこういうものは嫌いじゃないしな……!!俺は百円玉を入れると、クレーンゲームのボタンが光り始める。俺は角度を調節しながらも、ちょうどど真ん中辺りに配置するとクレーンが下へと動き出すのだが……。

 

 

 

 

「なっ!!?」

 

 ぬいぐるみを掴んだクレーンだったが、いい所まで運ばれていたが力がまるで徐々に弱くなったとでも言いたいのか、ぬいぐるみが所定の位置に戻ってしまっていたのだ。それなりに自信があった俺としてはこの事態に驚きが隠せないでいた。

 

「ほら、やっぱり確「言わんくてええねんって、そういうのは……!!」」

 

 二人の会話が聞こえるなか、俺は自分の頭の中を整理していた。

 簡単に取れると思っていた、自分が浅はかだったのかもしれないと油断していた自分に気を引き締めさせながらも百円玉を入れようとしたときだった。俺の手を掴んで止めようとしていた人物がいた。

 

 

 

 

「竜弥、貸してみてよ。私が一発で取ってあげるからさ」

 

「香織……?一発で取るって本気で言ってんのか?」

 

「うん、だって私……」

 

 

 

 

 

 

 

「クレーンゲーム最強だから」

 

 

 

 

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