傷だらけな多重人格の青年は泥臭くもVtuberとして呼吸をする 作:村上トオル
「香織さんでしたっけ……。あ、あの……そう言うのってフラ「死亡フラグって言いたいんでしょ?大丈夫だって、私マジでクレーンゲーム得意だから」」
恭平の言葉を遮りながらも香織は百円を入れて集中し始める。
その集中しているというものは青い光に体が包まれている香織が俺には見えているような気がしていた。眩暈でもしているのかと思っていたが、どうやらそうではないらしい。
「竜弥、この人誰や?」
「ああ、姫「ふふっ、よく聞いてくれたね。そこの美女。私は姫咲香織……!!21歳……!!今年22歳になるけどねぇ!!まあ、そんなことは置いといて!好きなものはアニメとゲームだよ……!覚えておいて!!」」
俺の言葉を遮りながらも相変わらずなテンションが高い香織。
この自信満々に自己紹介できるところは少しばかり羨ましいなと毎回感じている。
「ふーん?そうなんか?んで、さっき恭平も言いかけておったんやけど、さっきの台詞どう考えてもフラグやろ?ほんまにクレーンゲーム得意なんか?」
「あーそれなら全然。問題はないよ、さっきも言ったけど私クレーンゲーム最強だから」
「なんかさっきからどっかで聞いたことあるような台詞言ってますね」
「ほんまやな……」
恭平と亜都沙が呆れているなか、香織は決まったと言いたそうにしながらもドヤ顔をしていたが二人が呆れているに気づいて若干落ち込んでいたもののクレーンゲームを再開していた。二人には言わなかったが、俺は知っている。香織がかなりゲームを上手いということを……。
ゲームを楽しいものだと教えてくれたのは香織だ。
傍で楽しそうに彼女がゲームをしているのを何度も見て来たからこそ、俺は本当に知っているんだ、香織がゲームが得意だということを……。
「よっしゃああああ!!ほらほらほらほら見た?二人共……!!」
「ほ、ほんまにやりおった」
「フラグじゃなかったんですね……」
香織は一発取りしていた。
絶対に取れない二人は確信していたの一発で取れているという驚愕の事実に驚いているようだった。
「でも、偶々じゃないですか?」
「ほーん?信じないんだ?いいよ、じゃあ違うので見せてあげるよ」
香織が考えていることはなんとなく分かっていた。
二人が更にあっと驚くことを期待していて尚且つ自分が気持ちよくなれるという絶好の機会を逃したくなかったんだろう。香織が違うクレーンゲームの場所に移りながらも、再び百円を入れると集中し始めていた香織にオーラのようなものが再び現れ始める。これが俺には本当になんなのかよく分からなかったが、香織の集中力というものを表していたんだろう。
慣れた手つきで香織は調整、微調整を繰り返して行くうちにアームが落ちて行くと景品をがっしりと掴まれる。恭平が後ろで「アームから落ちろ、落ちろ」と念じているのがなんとなく伝わりながらも俺がクレーンゲームの方を見ていると、再び景品を獲得している香織の姿があった。
「ほ、ほんまに上手いみたいやな……」
「そ、そうなんですかね?やっぱり確率とかじゃ……」
「おお、おお?言うじゃん、ガチファン君。そんなに言うならもっと見せてあげるよ」
納得している様子の亜都沙だったが、恭平は微妙にまだ納得しておらずそれを感じ取ったのか今度はフィギュアに挑戦しようとしている香織だったが、百円を入れた時点で闘志のようなものが見えていたが、今回は紫の闘志が見えていたような気がしていたがその闘志は邪念があった。
「絶対に取ってやる、絶対に取ってやる……!!」
恭平をぎゃふんと言わせてやりたいという確固たる意志がその闘志を見せていたが、先ほどより冷静さが無くなっているのが見て取れていた為、アームの微調整を怠った香織は一瞬「あっ」と言っているのが聞こえてくると……。
「ああ……!!クソがああああ!!」
「香織……一発で取れなくて辛いのは分かるが一旦落ち着こうな……」
「なんか色々と忙しい人やな……」
「ボウリングのときもこんな感じの人だったんで……」
一発で取れなかった香織は絶望しながらも今にも泣き叫びそうになっているのを俺は宥めていると、亜都沙が若干引きながらも彼女のことを見ていた。恭平はと言うと、困惑していた。
「くそぉぉぉ!!ちょっともう一回見てて!!今度はちゃんと取るから!!」
「え?あ、ああ……」
その後も香織はクレーンゲームを続けていたが、一度崩れた戦法は通じることなく香織は更なる絶望の渦へと呑まれていくと、ただ集金されていくようにして香織は次から次へとクレーンゲームへと金を入れるだけの単純作業へと変わり果てていた。
「なぁ、竜弥あの子止めへんくてええの?」
「まあ、そろそろ流石に止めた方がいいよな……」
少ししたら治るかもしれないと期待していた俺だったが、香織の様子が全く治らず俺は周りをウロウロとしながらもクレーンゲームに失敗して次の筐体へと移動している香織がいる方向へと向かおうとしていた。
「これでいいのかい?」
誰かの話し声が聞こえてくるのと同時に、香織の声色が戻ったような声も聞こえて来ていた。
「そうそう、それでいいの!!というか、凄いじゃん!!こんな簡単に取るとかさ!!?」
「それほどでもないよ、これぐらいなら簡単に取れるよ」
「爽やかな顔して意外と煽るタイプ!!?」
「そ、そういうつもりはなかったんだけど……気に障ったのならすまなかったね」
聞き覚えのある声と香織の話し声が聞こえてくる。
その方向に向かうと、そこでは黒髪の男が景品を取り出して香織に渡していた。彼は香織に取ったフィギュアを手に渡すと、香織は此処がゲーセンだということを忘れて大はしゃぎしていた。此処に来てようやく勝利の美酒を飲むことが出来た彼女を横目に俺は黒髪の男の方を視認していると、俺に気づいたのかこっちを振り向いたのを見て俺は誰なのか気づいた。
「竜弥……?此処で会うとは奇遇だね」
「え……?二人共知り合いなの?」
「彼とは縁があってね……」
「へぇ、そうなんだ」
俺は秀治の方へと歩いて行くと、笑顔を俺に向けていた。
その笑顔は俺のことを本気で心配していた秀治の姿はなかった。秀治は俺に聞くことはなかったが、分かっていたのかもしれない。俺がもうあのとき感じていた辛さと言うものが無くなっていたことに……。
「本当に奇遇だな秀治、いつもみたいにアーケードゲームをしていたのか?」
秀治の部屋で気絶していたことを思い出していた後に俺は秀治に話しかける。
高校時代、秀治はよくアーケードゲームのところで格闘ゲームをしていることが多かった。
「そうだね、今日も五戦ほどしてきたところだよ」
「全勝だったんだろ?」
「いや、そうでもなくてね……今回は一敗だったよ」
「そうなのか?秀治にしてはかなり珍しいな」
秀治のゲームの腕前は高校時代の俺とほぼ同じレベルだった。
親がよく昔のゲーム機で格闘ゲームをしている影響もあってか、秀治は子供の頃から格闘ゲームに触れていた。それもあってか、高校時代は無敗の高校生と呼ばれるまでになっていたが俺と出会い、一戦を交えて初めて秀治は敗北を味わっていた。本人は本当に悔しそうにしていたが、俺の名前を聞いた後に握手を交えてはにかんでいたのを俺は今でも覚えている。
「ちょっと色々あってね……まさか彼女が東京に来てるなんて本当に想定外だったよ」
「彼女……?」
「ああ、キミもよく知っている人物じゃないかな」
秀治は本当にゲームに強い方だから、どんな奴に負けたのだろうかと興味が湧いていると、自分がよく知っている人物という話を聞いて俺は更に興味が湧いていた。
「俺も……?」
「ああ、ほら今階段を降りて来てる。そこの彼女さ……」
秀治が指差ししている方を見ると、階段の方から見覚えのある人物がそこには下へと降りようとしてきているのを確認してから、俺は自分の体が本能的に反応を示していた。
「紀帆……!」
見覚えのあるウルフへアー。
その髪型を視認してから俺は紀帆だということに気づいた。階段を完全に下りきった彼女はにんまりと笑いながらもこう俺に言って来ていた。
「此処で竜弥と会うとはおもろい話やな……どうや竜弥?ウチとあのときの決着つけへぇんか?」
「ああ、望むところだ……!!!」