傷だらけな多重人格の青年は泥臭くもVtuberとして呼吸をする 作:村上トオル
「さてゲームの準備の方が出来たようですね」
一戦目のゲーム、この五本勝負を盛り上げるのにはとても重要な一戦目になるというのは重々承知だった。この一戦目が面白くなかったりしたらきっとリスナーからは非難の雨が豪雨のように降り注ぐことになるだろう。アンチと戦えるなんて絶好の機会、私からすれば逃す訳にはいかないけど今回はマナも居るからそういうことを言っている場合じゃない。というか、この子のアンチとか全然見たことないけど。性格も滅茶苦茶いいからそういうの湧かないだろうなきっと……。ってマジでこんなこと言っている場合じゃない、ゲームの紹介しないといけないけどこのゲームはきっとやったこともある人が多いよねぇ……!!
「最初に選ばれたのはこのゲーム……!!最新ハード、Nexusから発売されたゲームソフト……!!ネクサススポーツです!!いやぁ、このゲーム実は私発売日にパッケージで買って遊んだんだよね!!」
『体感ゲームきちゃああ!!』
『似たようなゲームを子供の頃やってた』
どうでもいい話だけど、私は基本的にはパッケージ派。
最近のパッケージは凝ってるものや説明書が無くなってきたりしておじさんは寂しいけどめげないよ。因みにマナもパッケージ派だった。仲間がいるってのいうのは本当にいいことだよね。
「私はこのゲーム配信でやったことありますね。多種多様なスポーツ、例えばバスケットやボウリングなどと言った競技があるんですよね」
「そうそう、最大20種類のスポーツがあってクリケットとかのスポーツもあるんだよね。マナ、ゲームのルールの説明頼める?」
世界的にはクリケットの方が有名だったりして野球の方があんまりっていう感じらしいというのはこの配信をやった後に知ったりしていた。運動とかスポーツとか死ぬほど嫌いだから私そこまで詳しくないんだよね。じゃあ、なんでこのゲームを入れてたのかって言われたらその答えは今から判明することだけどさ。
「はい、ハクも言っていた通りこのゲームには最大20種類の種目が存在するのですが、その中でも真っ向勝負が出来るチャンバラを今回選ばせていただきました。真っ向勝負という名前の通り、それぞれの参加者がそれぞれの参加者と一戦のみ試合を行います。要は総当たり戦のようなものですね。そして、総当たり戦で多く勝った者がこの一戦目において1ptが加算されます」
「そうそう、あー説明してなかったけどこの五本勝負は一番ポイントが多かった人が最強ということになるからね」
危ない、この説明を全くしてなかった。
言わなくてもみんな勝敗の付け方なんてのは知っていただろうけど一応言っておかないとね。
「はい、その通りですね。説明しておいて良かったですね」
渇いた笑みをしながらも話を続けていた。
マナはチャンバラのゲームのルールのことについても話を始めていた。まあ、チャンバラだから特に内容について話すことはないけど、簡単に言えば一対一で戦ったりするという凄い単純明快なゲーム。ただ、このゲーム全体的な特徴的なこととしては体感ゲームだからコントローラーを振ったりすることになるんだよね。
残念ながら、3D化しているのが紀帆だけだから野郎二人がどんな動きをするのかは想像でしか出来ないけどまあ……あの二人ならチャンバラとかなんか得意そうだよね。特に奏多君とか日頃から傘でチャンバラごっことかしてそうじゃん。いや、これ偏見じゃないけど。
「ところでマナはよく傘でチャンバラごっことか修学旅行のお土産で木刀とか買ってたりしてた?」
「あーいや、私は買ったことないですけど今日参加している同期のマナ……というか他の同期はみんな買ったことあるらしいです。後、三人で試合とか言って木刀で勝負とかもしたことあるの見た事ありますね……気配斬りとかも」
『V-Nextってお笑い事務所?』
『音楽、ゲーム特化です!!』
『でもマナ以外大体お笑い担当な気がする……』
「ぷっ……嘘でしょ!?そんなことある!!?V-Nextはもしかしてあれなの!?なんか甘党な銀色髪の人にでも憧れている人多かったの!!?」
アホみたいな中学生が多いということが何気に判明してしまったV-Next。
もしかしてマナちゃんってV-Next最後の希望だったりする……!!?この子だけは絶対に染まらないで欲しいんだけど!!?っていうか音楽特化だとかゲーム特化とかじゃなくてお笑い集団だったの!!?
「あーどうなんですかね?」
「……マナちゃんはそのままでいてね?」
「え?は、はい……」
守らなくちゃ、このだけは守らなくちゃ……。
あの
「って話がズレまくっちゃったね……。あっ、どうやらゲームの方の準備が整ったようだね!!」
マナちゃんが話をしてくれていたけど、このゲームには攻撃と防御がある。これはまあ基本だけど、意外とこれが簡単そうに見えて滅茶苦茶難しいんだよね。反射神経とかも使うし……。
「という訳でチャンバラ、一試合目は……!!神無月ロウガ対浜羽サユ……!!」
高らかに対峙することになる二人の紹介をしていたけど、不安でしょうがなかった。
このゲームを配信でやっているところなんて全くなかったし、サユの実力の方が圧倒的だということを知っていた。だから不安でしょうがなかった。
そして、その不安は見事的中することになる。
「ロウガ、防戦一方!!」
『ロウガが押されてる……!?』
『流石にサユには勝てないって』
私情を入れ込んでしまいそうになっていた。
自分が実況だということを忘れてロウガに対して一喝を入れてしまいたくなっていた。そうなってしまいそうになっているのも仕方のないことだよ。こんな一方的にやられているロウガを見たくなかったから。知っているから、ロウガがどれだけ強い
「おっと……!!ロウガ落ちてしまった……!!」
「これは……流石に相手が悪すぎましたかね……」
ロウガ、私はこの最強決定戦を組んだのは確かに最強が見たいからという意識もあるよ。ただ、それ以外にもう一つ理由があるとしたら私は神無月ロウガが
「五本勝負の一戦目の勝者は……浜羽サユ……!!」
一戦目のチャンバラの勝者はサユ。
体感ゲームだからこういうのは体感が強い方が有利だったりする。ぶっちゃけこういう言い方はよくないけど、ロウガの方が本当にちょっぴりだけ有利だと感じていた私にとってこの結果は「マジかー」となっていた。いやまあ、サユに勝てる確率なんて低いけど……。
「それでは第二試合です、引き続き神無月ロウガ対……!!青空奏多……!!」
モヤモヤとした感情を抱えながらも私は実況を続けている。
画面に映し出されている映像を見ながらも今にも頭を掻きむしりそうになっていた。
「ロウガ君!!かなり拮抗していますね!!」
「そうだね……!!でも奏多君も負けじと防御の構えを取ってるね……!!」
その試合は凄く拮抗していた。
奏多君は瞬発力に優れていて素早い攻撃をロウガに繰り広げている。それに対してロウガは防御の構えを取りながらも適切な隙を伺っていたけど、奏多君も一筋ではいかない。彼はプロから誘いを受けるほどの実力であるのは間違いないことからこのゲームでもその才能は如何なく発揮している。何故なら、彼はがむしゃらに攻撃を全くしようとしないし、ガードもし過ぎない。この二つを守れているというのはかなり強い。これに関してはサユも出来ているけど、ロウガはあんまり出来ていない。相手の攻撃を見極めることに関してはこの試合においてはかなり出来ているけど、どれも決定打に欠けている。だから、この試合がどうなるかも目に見えていた。
「あーロウガ君此処で落ちてしまった……!!」
このゲームは防御を成功させると、怯みが発生する。それを成功させてみせた奏多君はロウガのことをそのままリング外へと突き落としていた。
「いい勝負だったけど、こればかりは奏多君を賞賛するしかないねぇ……!!」
「そうですね、続いて……サユ対奏多君ですね!!」
奏多君のことを褒めていたけど、ロウガに少しばかり落胆している自分がいた。
エゴの塊だというのは自分でも認識しているけど、私はあの頃以上のロウガを欲している自分が抑えられなかった。それにしても……。
「どうなってんの……最近の未成年って……。あーいやサユはもう成人しているか……」
最近の子達ってこんな凄いの……?
私も最近の人だけど20歳以下の子達ってこんなゲーム強いの当たり前なの……?怖すぎるんだけど……。恐怖すら感じながらも続いてのゲームを紹介し始めようとしていた。そういや、恵梨ってこの配信って見てるのかな。ロウガもそうだけど奏多君もいるから流石に見てそうだけど……。
◆
最強決定戦……。
この戦いをあの子から聞いたとき、私はこの戦いがどれほどの戦いになるのか想像が出来なかった。五本勝負の一戦目ははっきり言って浜羽サユの一人勝ちだったけど、この次からどうなるかなんてのは誰も予想できない。ロウガにしても奏多にしてもこの戦いで成長していく可能性は充分に高い。
「サユか……」
バンドを組んでロウガ……竜弥と本当に和解するようになってからというもの割とサユと話をすることが増えていた。元々彼女とは話をする機会があって奏多のこととかよく聞かれたり話をしたりしていたけど、最近は竜弥のことを聞かれることを増えてきた気がする。ゲーセンで三人で対戦したこともあって竜弥に興味が湧いたと言っていたけど……竜弥の浮気とかじゃないならなんでもいいや。サユのそういうのちゃんとしっかりしてそうだけど。
「3D芸面白かったな……」
彼女はコントローラーではなく、持ち出したのはなんと木刀だった。
修学旅行の木刀を手に取って「賢い奴には見えるんや」と言い出しながらも実際に振っていた。それに対して視聴者が「サユって馬鹿じゃん」と指摘されて、「ウチ馬鹿やないわ!!」とキレ散らかしていたのを私は笑っていたし、なにより中学生みたいなノリで木刀を振っている姿を3Dでやっているのが面白くて仕方なかった。これは本当に思うけど、ゲームも天才的に上手くて視聴者に対してノリが良いのは参考になるところが多い。彼女の強みと強さに頷きながらも第二戦が開始されるのを待っていた。
次の対決は……。
「第二戦は大人気パズルゲーム、テトラです……!!」
あっこれ恭平終わった、だってあの子……。
謎解きだとかパズルゲームとか……。
凄い苦手だから……本当に終わった。