傷だらけな多重人格の青年は泥臭くもVtuberとして呼吸をする 作:村上トオル
「はい、という訳で勝ったロウガ君に聞きたいだけどさ!!ズバリ、今回の勝因は?」
「そうですね、俺としてはやっぱり奏多やサユと言った競争相手が居てくれたからこそ此処までこの短期間の間で成長出来たんだと思います」
「ほう?成長ですか!!」
ハクはきっと俺の成長を凄く喜んでくれている。
内心凄いワクワクしているのが俺には伝わっていたから……。
「はい、ゲームを続けていくって言うのは自分が強くなることにも繋がると思うんですよ。仲間と一緒にやっていて繋がりを強くなったり、自分の実力が強くなったりそういうもののおかげで俺は強くなれたんだと思います」
「くぅ~!!いいねぇ、そういうの……!!第四戦目も期待しているね!」
本当、相変わらずだなハクは……。
でもそういうところが
◆
さっきの第二戦目、第三戦目を見てて私はサユが前に言っていたことを思い出していた。
それはサユがその日、メアさんのお披露目配信の打ち合わせを終えて私の家に戻って来たときのことだった。サユは何処か楽しそうにゲームをしていた。彼女はいつもゲームを楽しそうにしているのなんていつものことだけどその日だけはどうしても気になった。
『どうしたの?』
『いや……あの二人は絶対面白くなるやろうやな……って思ったんや』
竜弥君と恭平君とゲームで戦ったという話はもうそのとき聞いていたからその話で笑っていたのを知ったときはやっぱりそうだったんだと頷いていた。微笑みながらもそう言う紀帆の姿はまるであの二人の成長を願っていると言わんばかりの様子だった。あの二人と戦って紀帆の中で自分を成長させてくれるようなものがあったからこそ彼女はこれから先のあの二人のことが気になって仕方なかった。
現に奏多君はその片鱗を何度も見せていた。
プロになるという強い意志が彼を強くしていたのは勿論だけど、きっとこの戦いや今までの紀帆達との戦いが彼の眠っている実力を呼び覚ますことが出来たんだ。
そして、ロウガ君……。私は彼のゲーム実況者時代の実力を知っている。彼の動画や配信をいつも見ていた訳じゃないけど、それでもゲーム実況者時代彼がかなりの実力をあったのを知っていたし、ストリーマー大会に出たら絶対に爪痕を残すだろうというのも思っていた。実際、彼は一度だけそういう大会に出たことはあってそのときは一度他の元プロとかを押しのけて優勝したりして見せていた。だから彼の実力がこんなもんじゃないということを知っていたからこそ今こうして彼が覚醒したことが本当に嬉しく思う。
さっきの三戦目は本当におめでとうと賞賛したい。
でも、それも此処までだよ。奏多君やロウガ君が覚醒したようにサユにだってまだ伸びるものはある。
見せてみせてよサユ……!!
◆
第一試合はウチとロウガの試合となっていた。
ウチはその試合を待ちながらも好物のお菓子を口の中に入れていた。チョコレートを口の中に入れて糖分を摂取することによって、ウチの脳は活性化されようとしていた。不思議と自分の目もさっきより目が冴えているような気がしていた。チョコにそんな効果があるとは思えんけど、きっともっと他の理由があったと思うんや。
間違いなくその理由は……第三戦目のロウガの動き……。
あいつの動きにはほんまにびっくりこいたと言ったところやった。ああいうFPSにおいては守備に徹するタイプだと分析済みやったからああやって攻撃的になって戦いを挑んでくるのはほんまに予想外やった。
そして、第四戦目の格ゲー、ウルファイ。
奏多との死闘はもうほんまにウチは盛り上がり過ぎて目の前にあるアケコンを叩きそうになっていた。結果的に勝ったのはウチやったけどほんまに熱くなり過ぎて今すぐシャワー浴びたい気分になってきたで、ほんまに……。その後の奏多対ロウガも滅茶苦茶暑かったしなぁ……。勝ったのは確かロウガやったな。
「まあ、そのおかげでウチは……ようやく体が温まって来たところなんやけどな……!!」
あの第三目の最後の戦い、ウチは自分の中でまだ伸びるというものがあったということに驚きを隠せなかった。正直これ以上もう上なんてものは存在しないと勝手に思い込んでおったけど、それは間違いやったんや。
何故なら、人間の限界なんてものはこの世には存在しないからや……。
それを今からこの試合で見せてやるでロウガ……!!
ウチが選ぶキャラクターはいつも通りのキャラクター。
俊敏な動きが出来るこのキャラに決まっとる……!変に調子がええからって違うキャラを選ぶの愚策もいいところや……!!ウチがキャラを選ぶと、そのまま試合が始まる。
「勝たせてもらうでロウガ……!!」
今の発言はフラグに聞こえるかもしれへんけど、フラグのフの字もない発言や。
何故なら、今の発言はウチ自信を鼓舞させるための発言やからや……。勝利する為の自分自身を勇気付ける行動の一手。自分自身を落ち着かせる為の一声。さて、この行動がどう出るかは今から証明されることや……!!
「なるほどなぁ、そうきたんやな……!!」
ロウガが選んだのはこのゲームの顔とも言えるキャラ。
そのキャラで来たということはロウガもいつ通りという訳やな。燃えてきたで……!!
最初の一戦目が開始される合図と共にウチとの距離を置いて遠距離攻撃をしてきたのはロウガやったけど、ウチは物ともせずにロウガのキャラの間合いと攻め込むことに成功する。ウチが操作している「ヴァーミリオン」はウチの手の中でまるで意志を持つかのように動き回り、ロウガのキャラ「カイ」を翻弄させている。俊敏なダッシュで懐に潜り込むことで、立て続けに繰り出される連撃がロウガの「カイ」を削り取るたび、彼女は満足げに笑った。
思わず挑発をしてしまいそうになるが、ウチは勝利への確信を帯びさせながらも自分自身の闘志を燃やし尽くしていた。目にも止まらぬ速さの攻撃は、間合い管理も完璧で、ロウガがカウンターを狙う隙すらも与えないでいた。
「これで終いや……!!」
説明するのは面倒やから、此処では即死コンボという名前で紹介しておくで。
この一ラウンド目は出来る限り、ロウガに何もせず終わらせるという展開をして見せた。あいつは今覚醒しとるやから、何かをさせるのはほんまに危険な行為や。今だって、ウチの攻撃の隙を狙おうとしていたしなぁ……。少し可哀想やけど、堪忍や。
『ラウンド2!!」
開始の合図と共にウチは同じ戦法でやることは変わらなかった。
本来だったら格ゲーに同じ手を使うのは悪手もいいところやけど、ウチはほんまにロウガに何もさせたくないあまりこのまま同じ戦法でロウガに挑もうとしていた。迷いのない攻撃で1ラウンド目と同じ俊敏な攻撃を仕掛けていた。その速さはまさに圧倒的やった。ダッシュ、フェイント、そして裏周り──。その全てが完璧に計算されていたと言っても過言ではないかもしれへん。実際、この即死コンボをガードで固めるだけの単純作業で越えられる訳がなかったんや。今にもほくそ笑みそうになっている自分を抑えていると、ロウガは……。
「なんやと……!!?」
ロウガは迷いを見せることはなかった。ウチが使う「ヴァ―ミリオン」が裏周りを仕掛けるタイミングを完全に見切っていたんや。カウンターとして空中アッパーを繰り出すと、ウチが使っているキャラクターが釣遊に浮き、高々と打ち上げられる。その一撃が決まった瞬間、もうウチの第二ラウンドの敗北が決められたようなもんやった。
ロウガの「カイ」は打ち上げた「ヴァーミリオン」に迫撃のコンボを繋げていく。空中攻撃からの地上への追撃、そして画面端まで追い詰める怒涛の連撃。その動きには迷いがなく、全てが計算されたかのような完璧な攻めやった。ウチが……ウチが負けるやと……!?さっき奏多には勝てたんやで……!!?まさかあいつ覚醒しながらも成長してるっていう主人公補正を持ってるんか!!?
「そんな……そんなの……おもろいやないか!!」
必死に割り込もうとするが、ロウガはそれすら予測して対応していたんや。彼の「カイ」は圧倒的な攻めを続けて、締めは王道キャラの代名詞である超必殺技──。炎を纏った拳を叩きこむ必殺技、『龍轟拳』。叩きこまれてウチは敗北していた……。
「ほんまにロウガはあああああああ!!やってくれるなああああああ!!!」
配信中やなかったら、今頃机の上を叩いてる頃やなほんまに……!!
奏多もそうやけど、此処まで熱くさせてくれたのはほんまにマナや結衣ちゃんを除いて四人目やで……ロウガ……!!割とおるなぁ!!?
『第三ラウンド……!!』
「ヴァーミリオン」が素早く動き始めていたが、その動きはさっきまでとは違い一気に仕掛けるのではなく、小刻みに間合いを詰めたり離したりする独特な動きと変貌していた訳やけど、これには理由があった。ウチは此処に来て戦術を変えたんや。すぐにバレるやろうけど流石に三度も同じ手に掛かるほど愚かな奴やないと思っていたからや。そう、ウチは近づいては一発入れて、すぐに離れる『「ヒット&アウェイ」の動きに徹していたんや。
きっと今頃実況側も騒いでる頃やろうな……。
まあ、今のウチにはそこまで気にしてる場合とちゃうけどな……!!
攻撃や距離を置いたりしているうちにロウガはウチの動きが変わってきていることに気づき始めていた。だけど、ウチはこれまで以上に隙を見せつけないようにしていた。即死コンボの場合背後に回ったりせんといけんかったから多少隙が出てしまったやけど、今はもう違う。手元の操作は一切乱れてへん。正直、ヒット&ウェイって頭使うから嫌いやけど勝つためにはしゃあないし、やるしかないんや。
「それは効かないでロウガ」
大技を狙おうとする動きを見る度、ウチはそれを読み切りかわしてカウンターを叩きこむ。
試合時間も残りわずかとなり、ロウガの「カイ」の体力ゲージは半分を切っていた。反撃のチャンスを伺うロウガは強気のジャンプ攻撃で一気に攻めに転じようとしていたやけど……。
「甘いわ!!」
狙いすましたように高速ステップで相手の裏を取り、一撃を叩き込む。
更にそこから、空中コンボへと繋ぎロウガが操作する「カイ」の体力を一気に削り取ろうとする。ロウガは最後の悪あがきをしようとしていたが、ウチはそれを許さず空中から地上へ、更にはダッシュ攻撃で追撃を重ねてそこから一気に大技を決めて……。
『KO!!!』
この第四戦目の勝者はウチとなったのであった……。
奏多……ロウガ、格ゲーでの勝負はウチの勝ちや……。