傷だらけな多重人格の青年は泥臭くもVtuberとして呼吸をする 作:村上トオル
「あー!!メア、そっちじゃない!!そっちじゃない!!」
奏多の声が配信内で響いている……。
笑いながらもトロッコを動かそうとしているメアに対して奏多は指示をしようとしていたが、無視されてそのまま行き止まりに突っ込んだという状況になっている。それに対してサユが「なにしてんのや!」と叫んでいる声がする。
俺達は今……協力ゲームをやっている……。
このゲームは簡単に言えば、物理エンジンを駆使したアクションゲーム。オブジェクトを動かしつつステージをクリアしていくというゲームになっているのが見ての通り、こういう有り様だ。お互いふざけ合って中々進んでいないというのが現状。
このステージでは本来トロッコを利用してゲームクリアを成し遂げて行くのだが、そのトロッコが行き止まりで壊れてしまったということは此処からは歩いてゴールへと向かわなければならない。行き止まりの先に穴のようなものが無かっただけ、まだマシと考えるべきか……。こういうゲームって本来そういうのありそうだからな……。
「で、これ歩いたらどれぐらい掛かりそうなのさ?」
「そんなんウチが知りたいぐらいやわ」
「えへへ、ごめんねみんな……」
「俺はそこまで気にしてないが……」
果てしなく続いている坑道の中、俺達はひたすら歩き続けるなんてこういうことは出来る訳もなく、サユは奏多のことを引っ張って遊び始めている。
「ちょいちょいサユ、なにしてんの?これ進まないと終わらないんだけど?」
「ちょっと暇潰しに付き合えや奏多」
「いやいや、今はこのステージ終わらせる方が先決でしょ!?なに考えてんの!!?」
奏多の口から最もな意見が飛び出すも、サユはそれを続けようとする。
それに連鎖するようにしてメアまでその行動に取り付かれるようにしてサユのことを引っ張ろうとしているという地獄の連鎖が続いていた。こんな状況がさっきから何度も続いていて、奏多が何度も発狂している……。
これ終わるんだよな……?と不安になりながらも、俺達はどんどんステージをクリアしていったので杞憂で終わることになってホッとしていた。
「オラァ!!くらぇや!!最後の切り札……!!」
サユが切り札を上から放ってくる。
レーザー砲に近い、それは波動の嵐と呼ばれている。ステージ中央の上空から放たれる波動の光線は扱いにくいものだが、ハマれば大量撃墜も可能じゃない。現に奏多とメアはそれで撃墜されているようだった。
「やってくれたなぁ!サユ!!今度こそぶちのめしてやるから!!」
「なんか若干口悪くなってないサユ……?」
若干口が悪くなっているメア……。
彼女自体最近はもうほとんど口が悪くなることは減っていたみたいだけど、それでもごくまれに口が悪くなる為、最早それがレアキャラのような扱いを受けていると言っていると、俺はメアからの攻撃を受けている。彼女が使っているのは緑の恐竜なのだが、卵投げをされて遠距離から攻撃されている。因みに俺が使っているキャラはリュウガというキャラ。あるキャラと挙動や必殺技を持っているが、知識がなければこのキャラを使いこなすのは難しい。何故なら、そのキャラとは立ち回りも戦術も違うからだ。
今回はアイテムありということもあって、戦略も大幅に変わることになる。今は奏多が操作しているキャラ……。剣や弓、爆弾がメインとなっているキャラになっているが、そのキャラをボールを持っている。そして、そのボールからは……。
「なんで俺だけこういう扱いなんだよ!!」
と奏多の強烈なツッコミが炸裂したのと同時に、サユに攻撃を仕掛けられていた。
『跳ねるだけ!!』
『何もしてなくて草』
そう、コメント欄でも言われてそうだが奏多が出したのはただ跳ねるだけのモンスターだったのだ。本当にそれだけしかしないのこのモンスターの特徴であるドンマイ、奏多……。となりながらも、俺はメアと交戦する。メアが操作しているキャラのモンスターは復帰が強い。強く高く飛ぶ上に妨害に強いという最強の布陣が整っているキャラの為、俺が幾ら吹き飛ばそうとも復帰してくる。使いやすさもシンプルで操作もしやすいキャラということなので、初心者にももってこいなキャラなのかもしれない。だからこそ、頭の中でどうやって倒そうか悩んでいるがあのキャラは撃墜能力が低い。ステージ場外に引っ張り出す技がないのだ。ということは、こちらで一気に畳み掛けてしまえば、相手もやりにくいはず。まあ、こっちは着地に弱いんだが……。それでも、投げ技の吹っ飛ばし緑は高いから……こうすれば行けるよなぁ!!
「なっ!!?」
ある程度、ダメージを稼いだのと同時に俺はメアが操作していたキャラのことを投げ飛ばしてメアとの試合を終わらせることに終了する。そして同じ頃、奏多がサユによって撃墜されて俺と相対することになる。まさか、こういう形でこの組み合わせになるなんて……本当に都合のいいことなんてのは世の中あるもんだな……。
「行くぞサユ!!」
「来いや!ロウガ!!」
お互い残されている残機は1。
この勝負でどちらが一位なのか決まることになる。お互い、多少ダメージを受けているようだこれぐらい互いにハンデにならないと認識していることだろう。炎を炸裂させる技を牽制に使っているが、サユは俺の懐に入り込んでくる。そのまま、攻撃を受けることになってしまうが、俺は此処で秘策に出る。それは自分の近くに落ちて来ていたお助けフィギュアを入手して、それを使用しようとする作戦……。悪くは思うなよ、サユ……。と心の中で言いつつも、俺は……。
「!!?」
問題が生じた。
それはお助けから出たのが犬だったのだ……。それに呆気を取られていた俺はそのままサユのキャラにコンボを決められて撃墜されてしまう。なんとも呆気ない最後に俺はこう言ってしまう。
「もう一回勝負させろ!サユ!!」
こんなこと前にもあったような気がしてならない。
そう感じながらも俺は発言をしていたけど、きっと気のせいじゃなかった……。
「ほーん?まあ、ええでロウガがそれをお望みならもう一回バトル行こうやないか!!」
と言った感じで俺達の途方もない終わりなきバトルが再開されることになった。
そして、この配信は暫く違うゲームに変えたりしながらも後二時間ぐらい続いていた……。
「あー配信終わった……」
数時間以上もゲーム配信をしていたこともあって、俺は蒸しタオルで目を休めていると机の上に置いてあったスマホから通知音が響いている音がしていた。蒸しタオルを一旦置いて、それを確認するとそこには紀帆からの連絡が来ていた。それは……明日大阪に帰るという内容だった。
「明日か……」
「明日!!?」
◆
「ようやく帰るんだね紀帆……」
「なんや?風夏、寂しくて声も出んのか?」
「声なら出てるよ……」
頭を抱えている風夏……。
まあこれはいつものことやな……。
「まあ、風夏には世話になったのは本当のことやからな!ほんまおおきにな!!」
「……そうだね」
軽く返していたけど、風夏には本当に色々と世話になったのは確かなことや。
東京のホテルは死ぬほど高いから泊ろうにも泊まれへん。そんなときによく風夏はウチに寝床を提供してくれていたんや。
「風夏、本当に帰るの?まだ風夏の家に居てもいいんだよ?」
帰って欲しくないのか、渚は涙を浮かべている様子……。
うっ……ウチ普通に渚の涙に弱いからこう言われると帰りづらくなるんよなぁ……。
「風夏、後一ヶ月ぐらい同棲「その言い方はやだ」」
「ちぇー、冷たい奴やなぁ……。まあ、こういうことや渚。あんまり風夏に迷惑を掛ける訳にも行かないからなぁ。そんじゃ、ウチはそろそろ行かせてもらうで!愛もまた会おうな!!」
何も返事をすることもなく、愛はただ手を軽く挙げていた。
ああいうところ、本当にあいつらしいなぁとなりながらも飛行機を乗ろうとしていたときだった。
「来たんやな、竜弥……!恭平……!!」
遅れてやって来ていた竜弥と恭平……。
二人のことを待ち続けて、ギリギリまで居たんや。
「悪い遅れた……。それと、千里と恵梨が紀帆によろしくだとよ」
「おう、二人によろしく聞き届けたで。にしても恭平の方は遅れて来たのに挨拶も無しなんか?」
「よく言うでしょ?ヒーローは遅れてやって来るって」
「おー自分、ヒーロー気取りか?ええ度胸やな、ヒーローってのはウチみたいな事を言うんやで」
後ろからなんでそこで張り合うのという視線を送って来ている風夏と愛……。
その二つを渇いた笑みでなんとか誤魔化していると、恭平はどうやらその視線に気づいているようだった。
「じゃあ、ウチはそろそろ行くで」
「ああ、紀帆……。また何度でも対戦挑ませてやるよ」
「おう!!そんときは竜弥の妹の結衣ちゃんも頼むで!!」
竜弥や恭平もそうだけど、あの子とも中々おもろそうなバトルが出来るのは間違いないやからな。次会えるときがほんまに楽しみやで……。ウチはキャリーケースを持って歩き始めようとしたときだった。
「紀帆……!!元気で!!」
「……おう!!また会おうな恭平!!」
拳を広げつつ、ウチは恭平達に「じゃあな」と伝えながらも……大阪に帰ることにしていた……。本当濃すぎる東京の生活やったな……。やっぱ、東京も悪いもんやないやな……。
◆
「そろそろ外出ようっと……」
今日は部屋の掃除をすると決めていた日だった……。
ある程度掃除は終えたし、これから何処かに出かけようと考えてた。屋台の車とか出ていたりしたら、そういう場所で軽めに食事を済ませたいなと外へ出ると、隣の部屋で引っ越し作業をしている光景が目に入る。そういえば、隣の部屋は誰も住んでいなかったのを今思い出しながらも私は引っ越し屋さんにこう切り出す。
「手伝いますね!!」
といつものように手伝いをすることにした。
引っ越しさんと一緒に箱を持って中へと入って行くと……。
「ん?いやぁ、奇遇やな風夏……!!」
「え?紀帆……?」
自分の視力を疑いたくなりそうだった。
紀帆は一週間前、私の家での同居を終えてくれてそのまま大阪に帰ったはずなのに今目の前に再び紀帆がいる。引っ越し屋さんと共に荷物を置いた後、紀帆が「これで全部や、おおきにな!」と言っている。え?もしかして、隣に住むのって……。
「えっと……知り合いの引っ越し手伝ってたとかだよね?」
「いやいや、ウチは風夏ほど優しくはないからなぁ……」
「……え?本当に隣に引っ越してきたの?」
「ああ、せやで……。改めてよろしくなぁ、風夏……!!」
とんでもないことに……なった……。
助けて、渚……。