傷だらけな多重人格の青年は泥臭くもVtuberとして呼吸をする 作:村上トオル
感謝の言葉ってのはすげえ難しい……。
今までのことを書き記そうとしても色々と書きたいことがあり過ぎてどれからまとめればいいのかなんて途方もないことばかり考えてしまう。仕事終わりでこうやって色々と模索していると、頭痛が痛くなるなんて変な比喩表現を使いたくなるな、マジで……。
「どうしたの?静音」
「……あれ?アキラまだ起きてたのか?」
宿泊されていない部屋の一室で私が紙に文字を綴っていると、アキラが部屋に入って来ていた。
「もう深夜だけど、まだ起きてたのかよ?」
「ちょっと……眠れなくて、ほら……枕の大きさとか……布団の硬さが違うとか……眠れないとかよくあるでしょ?」
「若女将の前でそういう愚痴喋っちまうんだアキラ」
「あっ、いや……えっとその……個人の意見だから気にしないで……」
わざと困らせるような発言をすると、アキラが困っている。
ちょっと性格悪くみえるけど、やっぱアキラはこういう反応してくれるのがいいんだよな……。
「いいっていいって……!!立ってるのもアレだし、座れよアキラ」
「う、うん……」
アキラは私の隣に座りながらも、部屋の隅々を目で追っている。
こういう旅館とかに泊まったことがないのかもしれないとなっていると、私に質問を投げかけてくる。
「静音は今、何をしているの?」
「あーえっとな……。実は竜弥とか千里に感謝の手紙を書こうと思っていたんだけど、中々決まらなくてさ……。こういうのって頭に証として残して、記憶にあってもこうやってペンを移動させていくことが出来ないのはなんでだろうなってなっててさ」
こう頭で整理すると、自分がどうして何故書くという行動を出来なかったのかなんとなく分かるような気はしていた。でも、どうせならアキラの口から冷静に分析がして貰った方がより綺麗に出来そうな気がしてならなかった。
「うーん、それって……文字には言い表せないほど感情が籠っているというかそういうのじゃないのかな?」
「文字には言い表せないほどの感情が籠っている……か」
椅子に寄りかかりながらも、天井に私の手を広げながらも自分がどうして何故、感情を籠っているほどのものの何かがあるのか掴めないでいた。それが竜弥と千里の思い出のおかげだというのは掴めているけど、それでも私には何かを掴めていない気がしていた……。
「はぁ……」
部屋を出て、少しばかり旅館の外で風に当たる。
春先の風は終えており、春ど真ん中の風が肌に触れ合わせていると、誰かが玄関の扉を開けて外に出て来ていたようだった……。
「なにしてんのさー?」
「琉藍さん……」
入口から出て来ていたのは琉藍さんだった……。
琉藍さんは春だというのにオーバーサイズのパーカーで居た。どうやら、意地でも館内着を着るつもりはないみたい……。
「琉藍さんこそどうしたんですか?こんな時間に一人で」
「ん?あー私はこれから廃れた旅館の肝試しでも行こ「危ないから、やめてくださいよ……」」
どう転んでも危ないことになるのが目に見えているので私が止めると「分かってる、分かってる」と琉藍さんは答えていた。多分、この人私のことを揶揄う為にわざとこういうことをしてきたんだな……。
「そんでシズの方はどうしたのさー?」
「え?あっ……いえ、その……。ちょっと悩んでいることがありまして……」
「ふーん?悩んでることって二人に対する感謝の想いとかそういう奴?」
「まあ、そうですね」
琉藍さんが「うーん」と唸りながらも、何か声を掛けようとしてくれている。
それを待っているなんていうのは恥ずかしい行為だったけど、この人からも何か得れるのかもしれないとなっている自分がいた。
「友人には文字には言い表せないほどの感情が籠っているって」
「あー、じゃあさ……全部ぶちまてやればいいじゃん」
「え……?」
全部をぶちまける……。
いったい、それはどういう……。
「ドラム叩くのが好きなんだ私……。ドラムを叩けば叩くほど、自分の心臓が喜んでるのが分かる。魂から込められてたものが意志を通して伝わる気がする。一種の感情表現なんだよね、私の場合さぁ……。あーだから、何か言いたいのかと言われたら……」
「それがシズにとっての感情表現ならそれをぶちまけてやればいいんじゃないのかなーってこと。まあ、要は書きたいこと書けばいいじゃん?あの二人ならドン引きしたりしないだろうし」
そうか……そういうことだったんだ。
アキラが言っていた、文字には言い表せないほどの感情が籠っているってそういうことだったんだ。私は今までずっとが檻に囚われているとかそういう負の方に考えていたけど、実際には違ったんだ。直接話したいことの量が多すぎて洪水みたいになっているんだって教えたかったんだ……。
「あの……琉藍さん……ありがとうございます!!おかげで私、いい手紙書けそうです!!」
「ん、じゃあ頑張ってねぇ」
「はい、頑張ります!!」
琉藍さんから手紙の書き方を伝授した私はそのまま旅館の入口へと戻って自分がさっきまで居た部屋に戻ることを決めていた。戻る足は何処か爽快で駆け足になっていた。旅館の中を走ってはいけない。そんな母さんの話を思い出しながらも私は部屋に戻って、自分の感情を手紙に思い書き始めていた……。
◆
シズ……ちゃんと手紙の方出来てるのかな。
まあ、手紙っていうのは相手への感情をぶつけるようなものだからそんな一日で出来上がるようなものじゃないだろうけどさぁ……。
「琉藍さん……!本当にありがとうございました……!!」
宿を出る際に私はそうシズに声を掛けられる。
そこには若女将の静音というより、シズ本人自体が居たけど何処かぎこちない丁寧性を持っている静音よりもシズの方が何か面白くて好きだなとなっている自分がいた。頑張っている姿も良かったけどねぇ……。でも、何処か見捨てられなかったってのもあるんだよねぇ。竜弥への償いもあるけど、ああいう健気に手紙を書こうとしている奴を見ていると好きな演歌歌手とかヘビメタのアーティストとかにファンレターとか送るときはいつもワクワクドキドキな気分だったから。周りに演歌とかヘビメタとかそういうの好きな人居なかったから、直接書くしかなかったんだよね思いをさぁ……。
「琉藍、何か教えてあげたんだ」
「分かってるくせにぃ、エリー」
今日の深夜、私達以外に誰かが夜中外に出ていたんだよねぇ。
それが勿論、恵梨なのは気づいていたけど敢えて声を掛けることなく私は旅館の方へと戻って行った。大方、私がシズに声を掛けていなければエリーが声を掛けていたんだろうねぇ。まあ、そういうところ本当にエリーっぽいなとなれるよねぇ。厳しいけど人に寄り添える、そんなところがさぁ。因みに恵梨の隣にいる恭平はなんのことだろう?という顔をしている。
「重松楓、カエだっけ?あの子、結構面白い子だったって伝えておいてよ」
「え?は、はい……!!」
あの子も結構面白い子だった。
私の部屋を案内してくれた子だったんだけど、此処の温泉街がお化けがどうのとか廃旅館がどうのとか普通此処の従業員がそんな人を怖がらせる話しちゃう?みたいなことまで言及していて、中々独創的で面白い子だったんだよねぇ。波長が合いそうだから今度ちゃんと話してみたいたんだよねぇとなりながらも……。
「じゃあねぇシズ……上手く行くといいねぇ」
後ろを向きつつも、手を挙げながらも私はシズの健闘を祈ることにしていた。
まあ、あの感じを見た限りだときっと大丈夫に決まっているだろうねぇ。強く輝いた意志の目っていうのかな。アレがあればもう大丈夫でしょ……。さて、私も帰ることにするか……。
「ところでさエリーそのバイク、三人乗「無理、恭平下ろしたくないから自分で帰って」」
「だよねー。じゃあ、ラブラブで帰りなー。いいねぇ、恭平君若いってさぁ」
「なっ!!?」
「えっ!!?」
二人の反応を楽しみつつも、私はエリーがバイクを置いていた駐車場から離れて行くことにしていた。
「そういう関係じゃないから!!!」
というエリーの大声を楽しむも全然悪くない。寧ろ、楽しいまであるんだよねぇ。
これが……。