傷だらけな多重人格の青年は泥臭くもVtuberとして呼吸をする 作:村上トオル
「え、えっと……どうする?玲菜お手洗い行っちゃったけど」
メアも俺と同様困惑していたがこればかりはそうだろうとしか言いようがない。
このタイミングでお手洗いに行くなんて怪しんでくれと言っているようなもんだ。
「まさか会議中に行くなんて、ロウガは何処行ってた?」
「俺はメアと一緒にカードのタスクをやっていたぞ」
NoAに俺がなにをしていたのか聞かれていた為、答えていた。カードが全く入らなくて焦っていたのは内緒だ。メアは素即なく出来ていたがそんなに簡単だったんだろうか。一瞬、黒というのも考えたが俺と二人っきりだったし殺す瞬間はあったはずだ。
「それは私も見ていたよ、全然通らなくてちょっとキレちゃったけど」
簡単に通せたと思っていたが、どうやら違っていたらしい。
キレていたというのは前のような人格が出ていたんだろうか。
「じゃあ二人は現状白、私は途中まで獅童と行動していたが居なくなってた……何処に行ってたの?」
「俺はパスワードのタスクをやっていたよ」
どうやら四人共も今のところ白という可能性は高い。
「どうする?玲菜に票を入れてみるか?私はそうするべきだと思うが」
「ちょ、ちょっと待ってよ!!私本当に何もしていないってば!!」
「お手洗いから戻って来たのか」
部屋の中を走って来るような音が思いっきり入っている。
それぞれが「おかえり~」と言うなか、玲菜は反論を続ける。
「確かに私が疑われても仕方ない、だけど蓮司が殺した可能性だってある!違うの!?」
「待て待て!玲菜、何故俺を疑う!俺は右下のエリアに入った瞬間奏多の死体を見たんだぞ」
どう見たってこの現状を見れば玲菜が殺したというのは間違いないはず。殺すにしても二人っきりになったところを殺すか、もしくはもう一人の人狼が居るときに蓮司も殺すべきだったかもしれないな。
「落ち着いて蓮司、此処は完全に玲菜が不利。私は玲菜に一票入れる」
場の混乱を治めようとしてきたのはNoAであった。
なんとかNoAのおかげでこの場を収めることが成功できそうだ。
「た、確かにその通りだったな……少し興奮し過ぎたすまない!俺も玲菜に票を入れるぞ」
「ま、待ってよ!私が殺したのを証明できるのは蓮司だけじゃな……なんで四票も入ってるの!?」
「覚えてろぉぉぉぉ!」
最後に玲菜の断末魔が聞こえて来ながら、表示されていたのは人狼の文字であった。
「奏多いないと会議静かだな……」
先ほどの試合かなり奏多がパッションをしていたせいもあってか、かなりにぎやかなものになっていた。その奏多が最初にやられたせいもあってかかなり静かに感じていたのだ。
「メアは安全そうだし一緒にタスクしながら行動するか」
蓮司は先ほどまで一緒に居たがどこか別のところに移動してしまっていたようだ。あの感じを見るに右上だ。
「嘘……だろ」
事件が発生した。なんとメアに殺されてしまったのだ。
安全圏だと思っていたメアがまさかの人狼だとは気づかなかったのだ。
「お疲れ、ロウガ」
「ああ、NoAさんが生きてるからあとは任せよう」
NoAは今回の会議でかなり主導権を握れていた。
彼女が英梨なら次の会議も主導権を握ることが出来るだろう。
「ああ、停電のところを一気に刺された」
人狼は妨害行動が出来る。扉を閉めさせたり、毒ガスを流したり先ほど言ってたように停電を起こせたりなどだ。
「頼む、頼む!メア様お願いします!!」
土下座しているような音が聞こえてきてそれを俺たちは苦笑いで見守っていた。
「人狼で負けたらF1カートの物真似を長時間するって約束をしてしまった……お願い、お願いします!!」
「なんでそんなことやるって言ったんだ……」
奏多が呆れたように発言する。芸風とはいえ色んな耐久配信をやっていかなければならないのは大変だ。そういうところは素直に凄いと思う。
「そういえば玲菜本当にお手洗いに行ってたのか?」
どうしても気になっていてそのことを俺は聞こうとしていた。
「し、仕方ないじゃない……ほ、本当にああ!もうなんでこんな羞恥プレイみたいなことを言わされなきゃいけないの!!」
「あーそれは悪かった……」
女性だから色々と事情があるのかもしれない。
余計なことを聞いてしまったようだ。
この試合が大きく発展したのはNoAが殺された後だった。
既に民間人側は蓮司、獅童の二人となっていた。この二人かなり不安だったが最終的に……。
「俺はマジでメアがおかしいと疑ってるんだ!一緒に行動してたときがあったけど俺のことをずっと追いかけるような素振りを見せていたし、絶対殺そうと思ってたんだ!蓮司は俺絶対白だと思う!!だって人殺すような奴に見えねえもん!これで殺すような奴なら俺は人のことマジで信用できなくなる!頼む俺を信じてくれ蓮司!!お前もRPGが好きなら俺たち友達になれるだろ!!?」」
奏多ぶりのパッションに一同全員が笑っていた。
殺したのは間違いなくメアだが蓮司目線からしたら先ほどまで人狼だった獅童が疑ってしまうの無理はない。今回の会議獅童は全くと言って喋ろうとしていなかったからだ。此処にきてようやく喋り出したせいで更に怪しくなっているのだ。
「じゃあ一つだけ聞かせてくれないか!さっきの投票は玲菜に入れていたのか!?」
「ああ、それは勿論さ!俺は玲菜に一票入れたぞ!」
「そうか!なら俺は獅童を信じるぞ!!」
「ちょっ……ちょっと待って!!え!?」
実際に獅童が玲菜に投票したかはともかく惑わされずちゃんと決断できたのはナイスだ蓮司。
そして、結果は当然メアが人狼であった。
その後玲菜が何故お手洗いへの遅延行為をしていたのかと問い詰められていたが、漏れそうだったことが判明した。なんというかドンマイとしか言いようがない。
続いて三戦目だったが……。
此処に来て大問題が発生する。
「お、俺は……どっちを選んだらいいんだ……!」
残されたのは俺含めて三人。
しかもそのメンバーはメアと獅童の二人だったのだ。メアは仲間だし、獅童は大切な同期だ。俺はどうすれば……。
「ロウガ君私信じてるからね?」
「ロウガ俺を選べ!!」
どうすりゃいいんだよ、この状況……!
何故こうなったのか、それを説明するにはNoAが生きていた頃までに戻る。
そのときは既に五人となっており、会議は難航していたのだ。それもそのはず、この場にいる誰が人狼なのか全くわからない。そんな混乱が混乱を呼ぶ会議のなか、話を切り出してきたのはNoAだったのだ。
「怪しいのは獅童、何処行ってたの?」
「あーそれが停電のとき場所が遠くて迎えなかったんですよ」
このとき、蓮司が殺されたことにより通報が起きた。
通報したのは獅童だったがそれが混乱の下になっていたのだ。人狼は自分で通報することも出来るからだ。
「じゃあ残りの三人は?」
「あっ俺はメアと一緒にタスクこなしてたぞ」
殺す機会があればメアを殺すことも出来たのかもしれない。
だけど、今にしてみれば……。
「じゃあ奏多か」
「あの……俺思うんですけどこの場で怪しいのはNoAだと思うんです」
「は?」
思いがけない「は?」の言葉に俺はビビってしまう。
これが恵梨だと考えるとガチで怖くて仕方ない。威圧的な言葉に俺は恐怖心すら感じていた。額に冷や汗が流れているのを感じていた。ヤンキー健在と言ったところだろうか。アバターの姿の刺青も相まってそっち系の人に見えてしょうがない。早脱……いや親友とはいえ女性に対して何を言っているんだ俺。
「奏多、お母さん助けてくれる?」
自分の息子である奏多に助け舟を出してもらおうとしていたが、奏多は困り果てているようだった。
「あーごめんNoAママ、全く見てないから分からないんだよね」
「は?一回通り過ぎてるよね」
「えっ?あ、ああそうなの……?ごめん、本当に分かんない」
後になって分かったことだが、奏多は本当にNoAママと会っていなかった。
いや、会っていなかったというのは間違いだ。一回だけすれ違っているはずなのだが本人が全く覚えてなかったのだ。もし、本人が覚えていればアリバイになり殺していなかった証明になっていたかもしれないだろう。
もっとも、俺が選択を間違ったせいなのだが……。
「奏多とロウガ、一つだけ言うから」
「え?は、はい……」
「な、なに……?」
俺はとてつもなく嫌な予感がしていた。
画面越しに殺意の塊のようなものを浴びせられている気がしてならなかったんだ。
「後でエンコか漁船好きな方選んで」
「こっわ!?」
ヤンキー通り越してヤクザじゃねえかと本気の殺意に俺はビビり散らかしながらもこの後絶望することになる。
「あちゃ、これはNoAママのこと怒らせちゃったよ……これでNoAママが民間人だったらお前は絶対エンコ詰めろって言われるよ。マジでどうしよう、終わったわ俺」
「ごめんなさいいい!痛いの嫌なんで漁船で勘弁してくださいい!!本当に許してください!!」
俺は床に座り込み土下座をしながら謝罪していた。
まさか自分がミスするなんて思いもよらなかったからだ。しかし、思えば反論を全くしてくれなかったNoA……様にも問題があると俺は思っていた。あそこで反論してくれれば俺の心も変わっていたかもしれないというものだった。
此処までが回想であった。
此処からは獅童がマップ中央にある緊急通報ボタンを押したことで会議が発生。二人が混乱しているなか、俺は蒸発して溶けてしまいそうなほど混乱をしていた。それもそのはず、元仲間を疑わなければならないというこの地獄のような会議に俺はどうすればいいんだという気持ちが強くなっていたのだ。
因みに奏多はいつの間にか死んでいた。その死体は誰も見ていないらしい。
見ていても俺が殺したって言っているようなもんだもんな。
「ロウガ、俺のことを信じてくれよ!さっきすれ違ったよな!?」
「ロウガ君、私のことを信じて!私だって何度もすれ違ったよ!!」
二人は俺に信じて欲しいという言葉を投げかける。
それは当然だ。どちらかが民間人なのだから。そして民間人を追放すればこの勝負負けになってしまう。
「ロウガ君、聞いて……私とのクリスマス楽しかったよね?」
「待ってくれ、俺はそんな記憶知らない」
今年のクリスマスなんて一人だったぞ。
一人でホールケーキ食べて胃もたれ起こしてたんだぞ。二度と食べないって心に誓ったばっかりなんだぞ。
「二人で一緒にケーキ食べて二人でプレゼント交換したよね?ロウガ君、マグカッププレゼントしてくれて嬉しかったんだよ?大晦日だって二人で新年祝おうって言ってお参りしたもんね」
本当に知らない。
全く知らない記憶。プレゼント交換なんてしてないし大晦日に一緒にお参りなんてしていないしそりゃメアみたいな女の子と過ごしたら楽しそうだけどって……違う。今はそんなことじゃない。
後コメント欄が「羨ましい」だの「リア爆」と言ってるように見えるのはなんでだ。
「ロウガ、俺と一緒に海行ったよね?俺の水着見てすっげえ可愛いって言ってくれたよな!それであんなことやこんなことしたよな!?」
「おい語弊を生みそうな言い方やめてくれないか……」
今ので更にキャンプファイヤーが出来そうなぐらい俺の火の手が燃え上がった気がする。
というか俺はその頃獅童とは出会ってないし、知らない……。
「ご、ごめん……。だけど俺はロウガのことが大好きだし凄い尊敬しているんだ!だから頼む!ロウガ……俺のことを信じてくれ!二人で最高のハッピーエンド目指そうぜ!!俺バットエンドは嫌だもん!!」
「ロウガ君、私の手を取って……二人で幸せをつかもう?」
こんなことを言われては俺は更にどうすればいいのか分からなくなってしまっていた。悩みに悩んだ末に俺は同期である獅童の手を取った。同期の絆はなにより代えがたいもののはず。
と思っていたら……。
「も~!ロウガ君……!」
「ロウガなに考えてるんですか、全く……!」
「奏多とロウガは後で指」
「本当にごめんなさいでした、二人共……俺このゲーム全くやったことなかったんです……」
これは本当だ。このゲームが一人で出来るというのは知っていたがそれでも多くの人とやるゲームのイメージが強かった。だから、俺はやれる機会がなかったのだ。
まさかこんなことになるとは思ってなかった……。
「引っかかったな、ロウガ」
「マジなんだな……」
目の前に表示されたのは人狼ではないという表示であった。それが何かの間違いでないかと俺は疑ったが、そうではなかった。まるで目の前で起きていることが信じられない。そう言いたそうになっている俺には理解できなかった。
「すまないロウガ!お前を騙すようなことをしてしまって!」
「いや、これ騙し合いのゲームだし蓮司……あともうちょっといい感じに言い訳してくれよ頼むよ」
もう一人の人狼は蓮司であり、嘘をつくのが下手過ぎてすぐに追放されたのである。蓮司は分かりやすかったがまさか奏多がそうだったなんて……。
「一番信じてくれそうなロウガを生かしといて正解だったよ」
「騙したのか……俺を……」
「まあ、そうなるのかな。ロウガが生きてくれれば俺のことを同期だから信じてくれると思ってたんだ、NoAを疑い始めたときとか傑作だったよ。すっげえ腹抱えて笑いそうになった、まさか此処まで気持ちいいぐらい思い通りに動いてくれるとは思わなかったな、やばいやばい腹痛い」
裏切り者が……!
俺は机の上で台パンしそうになるもそれを堪えた。
「覚えてろよ獅童、マジで殺し……刺してやるからな」
今まで頭の中では殺すって言葉を使っていたが途端に来てこれを見ているちびっこの心配を……いやもう時刻は23時を過ぎている。良い子は寝ているだろう。
「ふふっロウガ様こればかりはいい気味ね」
俺はその瞬間、殺意が芽生え始めた。
向けられていなかった矛先に今向かおうとしていたのだった。
「よしっ殺せたな……」
四戦目……。
俺は獅童と玲菜を必死に追いかけ続けて殺すことに成功した。
二人の断末魔が聞こえそうな気がしていたのでそれをBGM代わりにしながら俺は殺人鬼の俺ではなく普通の人狼の俺に戻るのであった。
「なんで私まで殺されなきゃいけないのおおおおお!!」
夏川玲菜の紹介1
お嬢さまを名乗っているのだが、口調は全くお嬢様っぽくないことが多い。
また、度々話題になっていることがある地獄の長時間耐久配信(例:全私モスキート音雑談配信、モールス信号雑談配信、セミの鳴き声長時間配信)など変なのが多く話題になっている。