目覚めて最初に見たものは死闘の末、勝ち取った荒野ではなく、うざったく夜空に輝く星々どもだった。
「……最悪だ」
宿敵の口癖が漏れてしまうほど、『新世界』でのオレの気分は終わっていた。
「あの荒野にいないということはオレは負けたんだろうな」
地球の命運をかけた戦い、白いパンドラパネルの存在を知らなかったオレは仮面ライダー共……いや人間という愚かで愛すべき存在にしてやられたわけだ。
「……いや待てよ。
なら、なぜ生きてる。
戦兎の話から察するにオレは、『
冷静になり、思考回路が巡り出すとそれに呼応するように周囲の違和感を感じ始める。
「そもそもここは地球なのか?
空気中の物質は大方同じだが、なんだこれは。
オレも知らない未知のエネルギー……こんなもの、地球には存在しなかったぞ」
よくよく観察してみると、未知のエネルギーはオレの体内にも存在していて、人間の血液のように体全体を循環している。
体に触れて分かったことだが、俺の今の姿は地球での生活で重宝していた
だがこれは大した問題じゃない……本当の問題はオレのハザードレベルが3.0まで下がっていることだ。
これでは究極体は愚か、フェーズ1にすらなれない。
せっかくそこにパンドラボックスも落ちてるって言うのに………………ン?
「パンドラボックスあるじゃねェか!?
オイオイオイ、悪運続きだったがようやく運が回ってキタか!!」
ボックス自体のエネルギーは消失しちまってるが、その中には"アレ"があるはず、オレは急いで蓋開ける。
「あったァーーー!!!
オレのドライバーに……トリガーも!!
流石に石化はしてるがセットで中に入ってるなんて、随分と気前がいいじゃねェか!」
前の世界では
それにこれで大体オレがここに来た理由も分かった。
戦兎はオレを新世界を創造するエネルギーとして利用した。
あの天才物理学者のことだ、緻密な計算のもとにオレを完全に消費できるよう、作戦を用意していたはずだ。
……が、それはあくまで俺が『月を吸収するまでの姿』を元にした作戦だ。
新世界のエネルギーとしてオレは完全には消費されなかった。
しかし、ムカつくことに奴らが創った世界は『オレ』がいない世界。
白いパンドラパネルは発生する矛盾を排除しようとし、打ち出した答えが"オレを並行世界への追放する"こと……そんなところだろう。
「さて、これからどうするか?
ドライバーが使えない以上、前回と同じよう力を取り戻すために動くことになるんだが……石動の生身だけじゃ、流石にめんどうだよなァ。
他に何か――おッ!」
再び目を落としたパンドラボックスの中にはトランスチームガンが入っていた。
「ライダーシステムと比べると心許ないが、生身よりは遥かにマシだな。
ボトルはオレの体内で生成してッと――
戦力の方はこれでいいとして、情報が全く足りないな。
地球の並行世界なら恐らく、人間が存在しているはずだ。「貴様、そこで何をしている!!」探す手間が省けたな」
夜に紛れるための黒装、ご丁寧に口までマスクで隠して……怪しさ満点なやつが来たな。
「助かった、ちょうど迷子だったんだ。
アンタ、悪いが近くの町まで案内してくれないか?
世の中、助け合いだろ?」
「無理な相談だな。
目撃者は全員殺せと言われている。
恨むなら自分の運のなさを恨むんだな!」
勝利を確信しているのだろう、オレに剣を向け、男はニタニタと笑みを浮かべている。
その光景を前にオレも思わず、吹き出してしまった。
「フハッハッハッハハハ!!!
いいねェ、その愚かさ!
オレの大好きな人間のままで安心したよ!」
「気でも狂ったか!?
愚かなのはお前の方だったな、死ねぇ!!!」
振り下ろされる剣を半身で躱し、腕を掴む。
「喜べ!!!
この世界で初めてお前はオレの正体を知る人間となれる!!!
その体、少し借りるぞ!」
「何を言って――うぁあああ!?」
体をスライム状にした後、男の体内に潜り込んだ。
「………………アァー、あァー、ゔん。
お前、余程意思が弱い人間だったんだなァ。
石動は10年以上もったぞ。
まッ、使い捨てだからどうでもいいか。
情報、情報ッと」
まずは未知のエネルギーの正体についてだ。
「魔力って名前か。
確か石動の記憶の中にもあったな。
前の世界でも過去に研究されていた分野だが、科学が台頭してきた現代ではオカルトやファンタジーに分類されるようになり、想像上の産物になっていた、アレか!?」
この世界では、身体能力を強化したり、エネルギー源を生成したりする力のようだ。
オレの元来持つ力と似たような扱いなら習得は差程難しくないだろう。
それに解析を進めていけば色々と応用が聞きそうな使い道を見つけれそうだ。
「だいたい掴めてきたぞ。
この世界は科学力の代わりに魔力が発達した世界ってとこだな。
生まれ持った才能が明確に力の差を産む、それ故に争いも多発する!!
実にオレ好みの世界――楽しませてくれるじゃねェか!!」
興奮冷めぬまま、情報収集を続ける。
「ディアボロス教団――こいつの組織の元締か。
……世界を裏から操る組織ねェ、難波のジジイが目指した完成系がこんな感じかァ?
オレから見れば、愚かとしか思えんが組織だが、組むとしたらここか――それとも「何をだらだらしている!! さっさと定位置につけ!!」ハイハイ〜」
全ての情報を閲覧し終えたオレは、呼びに来た男の指示に従い、ある現場まで向かう――もう1つの組織も見れそうだしなァ。
現場にはこいつが聞かされた情報通りに、<悪魔憑き>の護送の痕跡があった。
しかし、鉄格子や馬車の残骸を見るにここが襲撃されたのは数年前のことだ。
このことを鑑みるにこの護送を邪魔した"連中"が、ここを拠点にしていたのは間違いないだろう。
「だが、今、重要視すべきなのはそこじゃない。
何故、数年前に襲撃された鉄格子や馬車の残骸がご丁寧に残っているのか」
突如、村を囲うように火の手が回る。
「答えは簡単だァ。
餌を撒いて、獲物を
「ディアボロス教団との情報共有が、積極的に行われていない――だからこそ、お前たちはこういう誘いにも乗ってくる」
声がする方を見上げると、そこには金色の髪を夜空になびかせる少女がいた。
「何者だ!」
こちらの隊長の問に答えるように、少女ぞろぞろと仲間らしき奴らが6人――上の廃墟から降りてきた。
「――我々は『シャドウガーデン』。陰に潜み、陰を狩る者……!」
――さァ、ゲームスタートだ!!
『シャドウガーデン』