星狩りは愚かな世界を楽しみたくて!   作:すかいスライム

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出会いは最悪な形で

 

 

 

 戦闘開始とともにオレは、廃墟の上から小さな襲撃者たちの様子を眺めていた。

火の海のおかげで真夜中だと言うのに、黒装束の奴らの血飛沫がよく見える。

 

「いやァ、それにしても、笑えるほどの蹂躙だな!

あんな子供相手に、仮にも世界を裏から操る組織の団員が勝負にすらなってないぞ!」

 

 並行世界の地球に10年ほど住んでいた身としては、目の前で繰り広げられる殺戮(show)を少々理解し難いな。

難波重工が行っていた洗脳教育のような特例はあるだろうが、そのような過去を加味しても10やそこらの子供が殺し慣れている大人を容易に仕留める程の戦闘力を獲得するのは、明らかに人間という種族の枠を超えた所業だ。

 

「そんなとんでもを可能にしちまうのが、さっきから陰の連中が使ってる魔力ってわけか」

 

 予想通り、身体能力の強化に魔力は使われているようだが、それよりオレが興味をそそられたのはアイツらが身につけてる服や武器だ。

 

「ただのスライムが魔力を通すことによって、服や武器の形へ変貌しているのか?

攻撃力、防御力、万能性、全てにおいて使用者の魔力量や制御力によって左右されるピンキリな代物だが、強者をさらに高いステージへ押し上げる兵器なのは間違いない。

ある意味、ライダーシステムとは相反する兵器かもなァ?」

 

「こいつで最後なのです!」

 

 兵器への考察に熱が入ってるうちに、隊長が肉塊になってしまった。

 

 

 

 

「やったーなのです!

最後の一人はデルタが倒したのです!!」

 

「流石、バカ犬。

数もまともに数えられないんだね?」

 

「うるさいです、メス猫!

デルタ、数ぐらいちゃんと数えられるのです!」

 

「いいや、嘘だね。

イプシロンの魔力探知でとらえた人数と死体の数が一致しない……だよね、アルファ様?」

 

「そうよ。

あと一人、教団の関係者がいるはず。

問題はないと思うけど……デルタ、警戒を「魔力ってのはそんなこともできるのか。 ますます興味が湧いた」――!?」

 

 廃墟の上にいた男は余裕たっぷりの声とともに、私たちの目の前に降りてきた。

 

こんばんは(ciao)、シャドウガーデンの諸君」

 

「あら、そっちから出てきてくれるなんて随分と殊勝な心がけじゃない?」

 

「そんなに褒めるなよ、照れるだろ?」

 

「褒めてないわよ!!」

 

「ちょ、ちょっと!!

イプシロン、落ち着いて!!」

 

 服装は私たちが倒した教団関係者と全く異ならない。

なのに何故かしら、この男から悪寒がするのは。

 

「お前らにオレから少し話が――オイオイ、犬耳。

上司の命令だからって、そこまで警戒しなくてもいいんじゃねェか?

なァ、上司さん?」

 

「えっ……!?」

 

「ウゥゥゥゥ!!!!!!!!!!」

 

 男の指先を追うように振り返るとそこには尻尾を振るい立たせ、四足で威嚇するデルタの姿があった。

 

「デルタ、落ち着きなさい!」

 

「ダメ、アルファ様!!

アイツなんかいや感じする!!」

 

 デルタの異変とともに気がついたが、デルタの横にいたはずのゼータがいなくなっていた。

正面を見ると、ゼータが男の後方に気配を断ち、回り込んでいた。

手にはチャクラムが握られてる。

 

「さっきの戦闘見てても思ったが、お前どんだけ背後取るの好きなんだよ」

 

「――ッ!?

気づいて……でも、もう遅い!!」

 

 振り抜かれたチャクラムは正確にあの男を捉えていた。

しかし、ゼータの斬撃は空を切った。

次の瞬間には既にゼータが腕を後ろに組まされ、拘束されていた。

魔力による身体強化――その域を逸脱した高速移動に私たちは息を飲んだ。

 

「こんな拘束、スーツで!!

スライムが動かせない、なんで!?」

 

「観察の時間は十分にあったんでね。

お前らの魔力の使い方、真似させてもらった」

 

「真似って……答えになってない!!」

 

「男ってのは秘密がある方が魅力的なんだよ」

 

「バカにしやがって」

 

 酷い目付きでオレを見てくる、こいつじゃダメだな。

 

「どうだァ、そっちは大人しく話を聞く気になったか?」

 

 視線を前に戻すと、奴らは犬耳を止めるのにかかりきりになっていた。

 

「うぅぅぅ、離すのです!!!!」

 

「デルタ落ち着きなさい〜!!」

 

「ベータ何とかしなさいよ!!」

 

「えっ、私ですか!?」

 

「キツい」

 

「……そうかァ。

そういう感じならオレも星狩り(オレ)らしくやることにするよ」

 

 懐からトランスチームガンを取り出し、猫耳の首裏に銃口を当てる。

 

「何を――うぁああぁぁああぁ!!!!!」

 

 騒々しかったシャドウガーデンの面々が口を閉ざす。

 

「ゼータ!? どうしたの!?」

 

 アルファに返答することなく、ただゼータは呻き続ける。

 

「お前がこっちに来たのは失敗だったな?

お前のせいでこれから始まる交渉が脅迫になっちまう」

 

「うぐっ」

 

 猫耳が吐血したタイミングで、オレはもう一度ヤツらに話しかける。

 

「今見た通り、こいつに打ったのは毒だ、それもオレが調合した特別製の。

常人なら5分もしないうちに死ぬんだが、こいつなら……まァ、大丈夫だろ。

分かってると思うが、解毒できるのはオレだけだ」

 

「……要求は何?」

 

 その言葉に思わず、口角が上がってしまう。

 

「物分りが良い奴がいるとスムーズでいいねェ」

 

 オレは地面に胡座をかいて座る。

 

「オレからのお願いはたった一つだけだ。

お前らと協力関係を結びたい」

 

「「「「「は?(え?)」」」」」

 

 突然の申し出に、シャドウガーデンの面々は思わず声が漏れてしまった。

――そりゃそうだよなァ、敵対してる組織の人間が自分たちと協力したいって言っんだから。

 

「あなた……私たちの目的を知っていて、その発言をしてるの?」

 

「いいや?

だが、『ディアボロス教団に関する全てを消し去り、世界に平和を〜』とかその辺だろ?」

 

「少々……いやかなり癪に障る言い方だったけど、大方あってるわ。

でも、どうしてディアボロス教団の関係者のあなたが私たちに手を貸したいと?」

 

 ――食いついた〜、ここからが演劇(show)の見所だな。

 

「……ん?

あァ!! そういえば言ってなかったな!

オレはディアボロス教団の関係者ではないぞ」

 

 シャドウガーデン全員からの疑惑の目がオレに刺さる。

 

「疑ってるなァ?

待ってろ、今証拠を見せてやる」

 

 そういうとオレは廃墟の陰に一旦隠れ、借りていた男の体を捨てる、そしてオレは石動 惣一の擬態に姿を戻した。

 

――やっぱりこっちのがしっくりくるな。なァ、石動?

 

 安心感に浸る前に、男の死体を持って、奴らの前へ出た。

 

「よっ!

久しぶり……でもないかァ!」

 

「えっ、誰あんた……というかどこにいたの!?」

 

「なんだ、分からないのかァ?

さっきまで話してただろ?」

 

 自分の顔に手のひらを向け、ガスを噴射。

顔が見えるようになる頃にはさっきまでの男の顔がそこには現れていた。

 

「…おぉー!」

 

「顔が変わったのです!?」

 

 好感触なのは犬耳とスライム侍らせてた陰気臭い女だけ……あとは目の前の光景に驚愕していた。

 

「理解できたか?

今のがオレの特技のひとつだ。

これで顔を変えて、こいつらの内部に潜入してたって訳」

 

 再び顔に手をかざし、石動の顔に戻す。

そして、あの男の死体をヤツらのいる方へ投げる。

 

「こいつがオレが真似させてもらった、組織の関係者だ。

どうだ、瓜二つだろ?」

 

「……確かにそうね。

あなたに特殊な技術があるのも、変装してヤツらの中に潜入してたのも分かったわ。

けど、それが教団の関係者ではないと証明することにはならないと思うのだけれど」

 

「逆に聞くがオレが教団の関係者なら、何故変装し、仲間を殺してまでここに潜り込む必要があるんだァ?」

 

「それは……」

 

 私は口を塞ぐ。

状況証拠だけ見れば、目の前の男は白よりだ。

作戦だとするなら、奴が言う通り仲間を殺す必要性は薄いし、それに奴らは私たちがここに現れるという情報を持っていなかった。

僅かな可能性にかけて、仲間すら騙し、この中に潜入するのは流石に現実味が無さすぎる。

ゼータに毒を打ったという行動も、かなりの力技ではあるが交渉材料を作る手段としては理解出来る。

事実、私たちはなんの信頼も無かった男の交渉の席に着いている。

 

「……分かった。

あなたとの協力関係、検討させてもらう」

 

「おォ〜、マジか!!」

 

「いいんですか、アルファ様!?

あんないかにも怪しい人なんかと……」

 

「ベータ、あなたの気持ちも理解出来るけど、ゼータを助けるには大人しく従うのが確実よ。

それに最終的な結論を出すのは私じゃない」

 

 ここで驚きの新事実。

金髪がリーダーだと思っていたのだが違うらしい。

 

「明日には結論は出させてもらうわ」

 

「いい返事を期待してる」

 

「この場所、この時間でいいかしら?」

 

「あァ、問題ない」

 

 金髪は「そう」と納得すると猫耳の背負い、この場を去ろうとし、仲間達もそれに続いていく。

オレも奴らの対角線上を歩く。

 

「あァ〜、そういえば――」

 

ある程度、間隔が空いた時にオレは唐突に口を開いた。

 

「その毒は一時的な麻痺毒だ。

30分程度は強力な痛みを感じるが、その後は自然に回復していく」

 

「……騙したの?」

 

「嘘は言ってないぞ。

常人なら5分でショック死してる」

 

「「「「「………」」」」」

 

「ん? どゆことです?」

 

 ――あの顔、最高だな、だから人間は面白い。

 

「それじゃあ、また明日(ciao)

 

 

 

 

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