シャドウガーデンとじゃれあいから何時間か経過した。
その間オレは、辺り一体の散策に勤しんでいた。
廃墟や森を抜けると町があったのだが、これがまた変わっている。
中世ヨーロッパのような外観をしているくせに、水道が繋がっていたり、街灯のようなものが開発されている。
「これも"魔力"の力か」
"椅子"に座った状態で、体内の魔力を巡らせる。
散策ついでに魔力を使用することに不備がないよう、自身の遺伝子を少し組み替えていた。
「あのまま使っていたら燃費が悪すぎて、御免こうむるところだが、これでかなり無駄な消費は抑えられるはずだ。
だが、現状はオレの力の下位互換……精々魔力を使う相手に対しての嫌がらせ程度にしか、使おうとは思わないがなァ?」
あの猫耳にやったように相手の魔力に同調して、流れを狂わせる。
――それにしてもあの時のアイツのあの顔、最高だったなァ。
射殺す程の鋭い目付き――オレはあの目を知っている。
オレをこの世界に追放しやがった
「だが、あれらが愛や平和の為に戦うようなヤツらかァ?
………………ないナ!!
表面に綺麗に膜が貼っているだけで、あれの戦う理由はその奥のもっと汚いもののハズだァ。
金、権力、プライド、復讐」
――この後お目にかかる"主様"への承認欲求……トカナァ?
「フハッハッハッハハハハ!!!!
俄然、楽しみになってきたねェ!!」
「ヒッ!!!
頼む命だけは……ッ!?
あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙、ぁ」
椅子にしていた盗賊達も空に舞う灰となって消えた。
「消滅毒も試せたし、あとは寝て待つとするかァ〜」
――――――――――――――――――――――――
「顔が変わるおじさん?
なにそれ、宇宙人?」
「手から煙がボォォォって出て、なくなったら顔が別のヤツに変わってたのです!」
「デルタ、嘘はダメだ」
「嘘じゃないのです!!」
僕は部屋でモブ式奥義の改良アイディアについて策を練っていたのだが、デルタがなんか……凄いテンションで部屋の中に突撃してきたので、今、話を聞いている。
どうやらシャドウガーデンとしての活動の一環で、
――ん? この気配は……
「アルファ、どうしたの?」
「気配遮断、ゼータに教わって上達したと思ったのだけれど……やっぱり、あなたには通じないようね」
ドアの前にいたアルファが、ドアを開け語りかけてくる。
「そんなことないさ。
気づいたのはドアの前に立った時だったし、上達はしてると思うよ」
「ふふっ、ありがとう」
本当に美人さんだよね〜。
アルファの大人になった姿が楽しみだ……僕との遊びの頻度が減っちゃったのは悲しいけど。
「アルファ様〜!
ボスがあのおじさんのこと信じてくれないのです」
「なんて説明したの?」
「煙で顔が変わるおじさん!!!」
「……あってはいるけど、それじゃあ説明不足すぎるわ」
「えっ、本当にいるの!?
宇宙人おじさん」
「ウチュ?
それかは分からないけど、顔が変わるおじさんは存在するわ。
私がここに来た理由も、彼についての話をしに来たの」
「うそーん」
そこから始まった昨夜の全貌の説明。
少々、いやかなり!
僕を除け者にしてそんな楽しいことやってたのかと文句を言いそうになったが、ボスとしての面子もあるので飲み込んだ。
「要約すると……誘い出した教団関係者の中にその顔変おじさんが隠れてて、その人に襲いかかったゼータが返り討ちにあって、交渉せざるを得ない状況になったってことだよね」
「えぇ、その認識で大丈夫よ。
……ごめんなさい。
唐突な事だったとはいえ、遅れを取ってしまった。
私がもっとしっかりしていれば……」
「アルファ様は悪くないのです!!
メス猫が弱いのが悪いのです!」
「それにしてもあのゼータをね〜。
スーツの制御を封じたってのも気になるけど、本当に何者なんだろ、そのおじさん?」
「そう……あなたでも情報を掴んでないのね。
やっぱり彼からの"協力関係"は断った方が――「いやその提案、受けよう」どうして?
ゼータの毒はさっき話した通り、回復してる。
はっきり言って、現状彼と組むメリットが見つからないのだけれど」
アルファからの冷静な言葉に対し、スーツを展開、シャドウとしてこの問答に挑むことにした。
「アルファ、君はさっきからメリットの話しかしていないが、交渉が決裂した際のデメリットも理解しているか?」
「……えぇ、勿論。
最悪、あれと戦うことになるでしょうね。
けど、対策なら考えているわ。
昨日ような一方的なことにはならない」
「甘いな。
確実性がないそれは、策とは呼べないぞ。
それに闇の深さを理解していないお前達には、そいつには勝てない」
「――っ。
確かにあれが全力だったとは思えない態度だった」
「だろうな。
実力が未知数な以上、敵対するより形だけでも協力という状況にしておいた方が、安全なのは確かだ」
「流石ね、あなたのおかげであの子たちを危険に晒さずに済んだわ。
ありがとう」
微笑みが僕に向けられる。
――よしよし、何とか丸め込めた。
僕が成り行きとはいえ、作ったシャドウガーデンという組織。
七陰という、四天王的なポジションもできた!
しかし、まだまだ完璧とは言えない。
シャドウガーデンに足りない要素の1つ。
それは……………………やる気ないけど強いおじさん枠だ!!!
今のシャドウガーデンも少数精鋭感があっていいんだけど、如何せん女の子しかいないからな〜……と思ってたときに現れたゼータを倒した謎おじさん――逃がさない手は無い!
「その交渉、僕もついて行こうか?」
「いいえ――ここまでお膳立てしてもらったし、それに答えが了承なら戦いにはならないし、大丈夫よ」
「………………分かった」
――こっそりついて行こ。
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七陰が昨日の廃墟へ到着した、それと同じく木の上から飛び降りてくる男が1人。
「待ってたぜェ〜、シャドウガーデンの皆さま方。
いい答えが聞けることを期待してるぞ」
オレの態度に猫耳以外はなんとも言えない顔していた。
猫耳は尾を逆撫で、あれは相当切れてるなァ。
実に愉快、愉快。
「我々、シャドウガーデンが出した結論を伝えさせてもらうと、あなたが提示してきた協力関係――その要求、承諾させてもらうわ」
「おォ〜、やったぜ!
これで行動しやすくなるってもんだ」
「と言っても、シャドウガーデンは現状大きな組織じゃない。
しばらくは戦力として戦場に出てもらうだけつもりだけど問題は?」
「特にない。
要は命令通り、仕事をこなせばいいんだろ?
オレは誰の命令も受けないが、これは1種の取り引きだ。
報酬が貰えるなら文句は言わん」
「その報酬なんだけど、あなたとしては何がお望みなの?」
「とりあえずは金銭だな。
恥ずかしい話、無一文でなァ、金がいる。
それと情報だな。
これはばっかりはいくらあってもいいからなァ」
金髪は顎に手を置き、数秒固まる。
「分かったわ。
すぐには用意出来ないかもしれないけど、未払いなんてことにはしないから安心して」
「それはありがたいねェ。
それじゃ、これからよろしく」
オレは手を差し出た。
猫耳以外と握手を交わし、最後に金髪と握手をした時にあることに気づいた。
「確か……アルファだったか?
要求って程でもないんだが、1つお願いしてもいいか?」
「……?
え、えぇ、酷い内容でないなら問題は無いけれど」
その言葉に口角が釣り上がる。
「そうか、ありがたい!」
オレはアルファの後ろにある木に向けて、スチームブレードを投げた。
「何を……――ッ!?」
「いやァ〜、気になってたんだよォ!!
お前らのボスの実力がなァ?
これから命を預けるかもしれないのに、姿も見せないってはどうなんだァ、相棒?」
呼ぶ声に答えるように裏から出てくるローブを被った少年。
しかし、内包する魔力は莫大なものだ。
ハザードレベルで考えても、5.0は確実にあるなァ。
例えるなら…………『核爆弾』ってとこかァ?
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気配は完全に消してたはずなんだけどやるな〜、顔変おじさん。
それに何あれ、魔力量も凄いけどその中によく分からないエネルギーがあるように見えるんだけど。
――例えるなら…………パンドラの箱?
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何はもとあれ、アイツは……
「「想像以上の化け物で安心したよ」」