「シャドウどうして!?」
木に刺さっているナイフをシャドウが引き抜く。
「心配だったから着いてきたんだけど、まさかバレるとはね〜」
「悪くはなかったが、オレにはちょっと通じないなァ」
シャドウは引き抜いたナイフを彼に向けて投げる。
「返してくれるのか?
優しいね〜、それともおじさん相手は可哀想とでも思ったか?」
「違うよ。
僕、後で文句言われるの好きじゃないんだ」
シャドウはスライムスーツから剣を作る。
「へぇ〜」
彼も懐からゼータに毒を打ち込んだ銃を取り出す。
「「…………」」
相対した2人は動かない。
2人を隔てるものは何も無い、だが動かない。
両者、互いの出方を伺っている。
というかお互いに不敵な笑みを浮かべている。
こうなってくると緊張するのはこちら側だ。
シャドウの勝利を疑っている訳ではない。
だが、相手はゼータすら赤子扱いした男……激しい戦闘が始めるのは予想するまでもなく決定事項だ。
隣に目線を向けると、他の七陰も同じように緊張している。
「……んぐ」
特にデルタが額から汗までかいていた。
その汗が頬を伝い、地面へ落ちた時――
「「―――ッ!!!」」
戦いの幕が切って落とされた。
動いたのはシャドウ――瞬きのうちに間合いを潰し、彼へ切り込んだ。
しかし、彼もそのまま切られる程やわではない、しっかりとその剣をナイフで受け止めている。
「やるな。
しかし、油断大敵だ!!」
スーツから展開されるのは刃。
シャドウが得意とする魔力操作による不意打ち。
1本の刃が彼の首を狙う。
「おっと、流石アイツらのボス!
魔力操作は比較にならねェな!」
窮地だと言うのに余裕そうな台詞を吐く彼。
それもそのはず、彼に迫っていた刃が既に無くなっていたのだ。
「私が切りかかった時もそうだったけど、主からの…それもあの距離の攻撃を撃ち落とすとか。
あの男どんな反応速度してるの……」
「もっと、気になるのは、あの銃。
マスターの、魔力で、強化されてるスーツを、簡単に、壊した――興味深い…!」
こちらの考察など追いつく暇なく、戦闘は進行する。
至近距離での斬撃に格闘――両者高い領域にいることが伺えるが、装備の差でシャドウの方が優勢だった。
「お前とこの距離でやり合うのは得策じゃない、な!!」
シャドウが蹴り飛ばされるが、すぐ体勢を立て直し、切りかかる。
『アイス! スチーム!』
「凍てつく刃、堪能しろよォ?」
彼はナイフを地面に突き立てる。
すると地面が次第に凍結していき、それはシャドウの足にも伝っていく。
「魔力もなしに…どういう原理?
――って、あれ?」
シャドウが拘束を破壊し、攻撃を再開しようとした時、彼の姿はなくなっていた。
「逃げた……いや、いるな」
シャドウの魔力探知は森の中を動き回る彼の魔力を捉えていた。
『ライフルモード』
次の瞬間飛んできたのは銃撃、先程よりも威力が上がっている。
――いい腕してるなぁ〜。
軽口を叩きながらも銃撃を見事に躱し、彼のいる方向へ直進していく。
『フルボトル!』
銃撃が一瞬止んだ隙を逃さず、シャドウは距離を詰める。
目の中には既に彼の姿を写している。
『スチームアタック!』
銃口がシャドウを捉え、銃撃が発射される。
しかし、シャドウはそれすら軽々と避けた。
「お前と正面からやり合うつもりは無いと言ったろォ!」
「何?」
彼の叫びと共に避けたはずの銃撃が、軌道を変えた。
「まさか、誘導弾ッ!!」
背後に迫る銃撃を避けることが出来ず、シャドウはそのまま直撃を食らった。
シャドウの姿を確認したいが、黒い煙が立ち上り、見ることが出来ない。
「どうせ死んじゃいないだろ?
協力相手として、申し分ない実力の持ち主だった。
なかなか楽しめ「まさかこの世界で誘導弾なんてものを拝めるなんてね。正直驚いたよ」…ヒュ〜」
徐々に煙が晴れ、シャドウの姿が見える。
その姿には、多少傷は負っているものの、大きな傷などはない。
「冗談だろ?
ロケットまで使ったっていうのに」
ここに来て、彼の余裕が少し崩れた。
彼は見誤ったのだ。
陰の実力者――その実力を。
「あれだけのものを見せてもらったんだ、僕も最強で答えるとしよう。
まだ納得してないけど……」
――…かつて核に挑んだ男がいた。
「周囲の魔力が……」
――男は肉体を鍛え、精神を鍛え技を鍛えたが、それでも届かぬ、遥か高みに核はあった。
「ハザードレベル5.0は過小評価だったか。
こりゃ〜、ミスったなァ!」
――諦めきれぬ男は狂気の修行を重ねた末、あるひとつの答えに辿り着く。
[問題]核で蒸発しないためには?
[答え]核になればいい
「『アイ・アム・アトミッ「降参」クもど』……えっ?」
膨れ上がった魔力が急激に萎えていく。
「だから降参だ。
気持ちよくなってるところ悪いが、今回のオレの目的はお前の実力を知ることだ。
ここで殺されてやるつもりは無いし、そもそもふっかけたのがオレとはいえ、オレ達同盟関係だろ?
なァ、相棒?」
「えぇー…確かにそうだけど、そうだけど〜」
「これから長い付き合いになるんだ。
やり合う機会なんていくらでもあるだろ?」
「…………まあ?」
「それにお前が放とうとしてた最後の技、オレなら改善案も提示できると思うぜ」
「何!? 本当か!?」
「あぁ、核程度で終わらせるには惜しい技だ。
お前はもっと上を見れる。
ってことで今日のところは帰る」
「あぁ…うん。
ん? そういえば――」
銃を手に持ち、帰ろうとした彼に僕は気になっていたことを聞く。
「君、名前なんて言うの?」
――みんな"彼"とか"アイツ"とか"顔変おじさん"とかで呼ぶから名前知らないんだよね〜。
「そういやァ、お互い名乗ってなかったな?
オレのことはスタークと呼べ。
お前は?」
「我が名はシャドウ。
陰に潜み、陰を狩る者」
「……そうか。
これからよろしくシャドウ。
「あぁ、チャオ」
煙とともにスタークがいなくなる。
――ん? チャオ?
聞き慣れた……訳では無いが聞き覚えのある挨拶に脳が回転する。
――アイツ転生者じゃね?
「だからノリ良かったのか〜」