貞操観念逆転世界における人妻の対義概念について 他   作:ちくわサンド

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それは百合だと思うんだ。







※と言っておいてなんですが内容は百合モノじゃないです。NLモノです。この作品のテーマは、あべこべ世界の「少女漫画」です。



貞操逆転世界における薔薇の対義概念について

百合、という言葉がある。女性同士の恋愛関係、及びそれを題材にした作品などのことだ。

 

最近はGLとか他にも様々な言葉で表現されることもあるかもしれないが、基本的に最も通じる呼び方はこれだと思う。とは言っても、関係ない人と会話をするときはまずこの言葉を使うことはないし、関係ある同好の士と会話をするときもわざわざ言ったりはしないけど。

大切なのはその登場人物が女の子に限定されるということ。間違っても百合の間に男が割り込んだりはしてはいけない。それは大罪である。

 

そしてその百合を好む人々のことを世間では腐男子と呼ぶのだが、何を隠そう僕はその腐男子。

 

女の子同士が恋愛する作品やシチュエーションが大好物で、中学の頃インターネットを初めてからはずっとハマっている。可愛い女の子同士が恋愛関係になるやつとか、カッコいい系の女の子と可愛い系の女の子の組み合わせとか、年下と年上の組み合わせだとか。受けはどっちだとか攻めはどっちだとかを想像するのが好きで、同じような趣味を持つ友達とそういう話をするのが好きだった。

百合好きは奥が深く、大っぴらにできない分仲間同士の結束が強い。学生の頃からみんなでいろんなイベントに行ったり、アニメや漫画を鑑賞したり。一般的には日陰者の僕だけれど毎日を楽しく過ごしていた。

 

しかし、百合というのは世間にはあまり受容されていないジャンルだ。

一昔前と比べると相当風当たりが和らいだとも思うが、それでもまだまだスポーツものとか日常ものみたいな他のジャンルと比べると声を大きくして言うことのできるものではない。喧伝したいと思うわけではないし楽しいことをやることに後悔はないが、なんとなく別の可能性もあるのかなと思っていたのは事実だった。

 

 

そんな僕の中学卒業が見えてきた時期にある転機が訪れた。母親の仕事の都合で転勤が決まり、家族で東京に引っ越すことになったのだ。

 

僕はそれに当初は喜んでいたものの、様々な課題がやってくるということに頭を抱えることとなる。嬉しい点は、好きなアニメグッズなどを買いに行く際に今より何倍も便利になること。電車だけで様々なアニメショップ巡りをすることができるようになるというのは、地方住みにとっては革命と言ってもいい。

 

しかし喜ばしい事ばかりでもない。田舎とまではいかないが東京に比べたら何倍も地方に住んでいたオタクの僕が、東京の高校でやっていけるだろうか。

 

当然ながら今まで一緒にいた友達とは離れ、一人で高校に乗り込むことになる。地元の高校ならばメンバーはほぼ今とは変わらないから何も心配いらないし、なんとなく僕は進学後もそうなるだろうなと思っていただけにこれには相当頭を悩まされた。

 

結論として、今のままではやっていけないと判断。それ以降は友人たちの力も借りて僕は高校入学までに一念発起した。

 

動画サイトで服や髪の勉強をしたり、眼鏡をやめてコンタクトにしたり、オタクっぽい話し方をやめて丁寧な口調を心掛けたり、流行りの話題についてチェックしたり。

 

同時に都会のレベルについて行けるように勉強も頑張り、運良く良い高校にギリギリ合格することができた。

 

その後は更に見た目を変えることに注力し、短い春休みが終わるころにはオタクらしい雰囲気を誤魔化すことに成功した。

とはいっても表面だけなんだけれども。今でも地元の友人たちとは通話で百合談義をしているし僕の部屋なんかは百合キャラのグッズでいっぱいだが、少なくとも学校ではその要素を出してはおらず、その結果、新しくできた友達から僕は普通の男の子だと思われている。

 

とはいっても、東京に元からいるような派手な子たちと同じようには振舞えない。なので僕は「多少こなれているがどっちかというと真面目な男子」を目指して頑張った。髪は染めたりはせずにちょっとアイロンを使ったストレート、あまり服のボタンを外したりはせずにきっちりとしつつ、先生の手伝いも進んでこなす。けれども真面目になりすぎない程度には会話を盛り上げるように。

 

かくして東京ではオタクとギャルの中間で擬態行動を取りながらそれなりに上手くやれるようになって早数か月。

僕はお淑やかで一般的な男子として振舞ったり、休日は誰にも合わないように変装してオタクショップを巡ったり、依然とは違った意味で毎日を楽しく生きていた。特に買い物関係は本当に凄い。地元の友人にはそれはもう羨ましがられたり、お使いを頼まれたりもした。

 

 

そんなふうに学生生活を送っていたある日、今度は高校生活の中で転機を迎えることとなる。

 

先生が僕のことを職員室に呼び出すと、あろうことか生徒会に入らないかと勧誘してきたのだ。

一年生の募集は四人なのだが、今年は立候補者が少ないらしく一人足りないとのこと。

 

冗談じゃない。

僕は勉強はもともと平均程度にはできたので、(学校にいるときだけ)オタク活動を抑えた分勉強をするようになってからはそこそこ良いと言える成績になった。というよりも、オタク活動をしなくなった分学校での時間の使い方が分からなくなっていたため、とりあえず勉強をしていたと言った方が正しいが。

 

そのせいで本当は全然そんなことないのにも関わらず真面目で勉強ができる大人しい優等生タイプだと思われてしまったのだ。僕の狙いはどちらかというとちょっと真面目、くらいだったのに…。

 

勿論僕は本来ならそんなキャラじゃないし、放課後の時間が無くなってしまうのも躊躇われたので断ろうとした。僕は百合イベント巡りやグッズ集め、そしてそのためのバイトに忙しいのだ。

 

ただし、先生の方も中々引いてくれなかった。僕は当然百合趣味のことは言い出せなかったのでアルバイトを盾に断ろうとしたのだが、曰く、バイトは現役の生徒会の人たちも両立してやっており生徒会の仕事は簡単なものが多いのでそこまで負担にはならないから、だとか。

他にも、生徒会長になれば有名大学への推薦に箔が付き、そうでなくても生徒会委員を務めるだけで三年生になった時には結構プラスに働くとか、今でしかできない経験だからやっておいた方がいいとか。

他にも盾になるものがあればよかったのだが、僕は残念なことにその他委員会にも部活にも入っていない。普通なら断ったら引いてくれるはずだろうに、どうも先生は粘ってきた。僕以外に候補がいないというわけでもないだろうに。

 

そんなこんなで先生と肉薄していた時、先生が気になることを口にした。

 

曰く、他の二人は女子だが、もう一人は男子のため男一人ということにはならない、だとか。

 

勿論僕の興味を引いたのは男子が一人というところではない。

 

僕が興味を示したところに勝機を見出したのか、先生は他の候補者について教えてくれた。本当はあまりよくはないのだが、別に何か問題が起こるわけでもないし、候補といっても対抗馬もないので信任投票になるのだが、とわざとらしく前置きをして。

 

僕はその女子二人の正体を知って、大きく心が揺さぶられた。

 

うちの学校はそこそこ有名な高校で、様々な人が集まってやってくる。部活動や行事にも力を入れており、学生中心の活動が活発なのが売りだ。そしてそれは受験の段階でそれなりに勉強ができる人に選抜されるということもあって、比較的優秀な人が多い。

 

 

その中でも一際目を引く、有名な二人の名前がそのリストにはあった。

 

 

 

この時は考えつかなかったんだ。積極性があることで有名なこの学校で、生徒会が一枠空いているという不自然さを。…僕はその選択を…

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

 

 

「はい、じゃあ今日の議題はこれで最後ということで、解散にしまーす。今日の仕事はあとは来週の合同会議用の資料のホチキス止めだけだから、手の空いている人は何人か残ってくれると助かるな。勿論、部活とか他に用事のある人はそちらを優先してもらって大丈夫だよ」

 

生徒会長の解散の一言に、会議用のテーブルについていた生徒会役員は思い思いのリアクションをとる。腕を伸ばしてリラックスする人、早速部活道具を担いで挨拶をするやいなや足早に去る人、バイトがあるのでと伝えて下校する人。

 

毎月一度ある委員会合同会議。生徒会が主催する各委員会の報告会のようなもので、事前に各委員会から提出された議題や資料なんかをまとめて小さな冊子にするという仕事がある。

 

そこまで大変な仕事でもないし、と会長は言っているが全員分をつくるのは一人でやればそれなりに時間がかかるだろう。

 

残ったのは僕を含め五人。二年の会長と書記さんと、僕が()()()()()()()二人と、僕。

 

「毎回残ってくれてありがとうね、桜坂さん、雪野さん、坂野くん」

 

僕たちの名前を確かめるようにそういう会長。もう入って二か月ほど経つのだから流石に名前を間違えられるようなことはない。

会長は先ほどまでの正しい姿勢から一転、背もたれに体重を預けてだらっとした雰囲気になる。元々どちらかといえばいい加減な人なのだが仕事の時は覇気があって、相変わらずの切り替えの早さに未だ驚く。

 

足を抱えて椅子の上に胡座をかこうとして、側にいる書記さんに注意されている。胡座は流石にスカートが危ない。この場における男性である書記さんと僕としてもちょっと気まずかったので、注意してくれて助かった。

 

坂野、と呼ばれたところで僕と目が合った。三人それぞれに目配せをして最後に僕の名前を呼んだからだろう、僕はにこっと笑って当たり障りのない返事をする。

 

「大丈夫ですよ、僕は部活には入ってませんし、今日はバイトもありませんから」

 

 

そう、僕は結局なんだかんだ生徒会に入った。

とはいっても、別に生徒会活動に異議を見出したとかそういうことではない。教師を安心させたかったというわけでも、進学に箔をつけるでもない。

 

 

僕の()()()()()()だ。

 

僕は隣に座る二人の女子のことをチラッとだけ見た。僕が生徒会に入ることになった最大の要因であり、お目当てでもある二人。

 

 

桜坂凛音と、雪野和華。

 

 

僕と同じ一年の生徒会のメンバーにして、一年書記と一年会計の役職についている。

ちなみに僕ともう一人の男子は庶務だ。

 

この二人は僕の学年でも最も有名で人気者な二人と言ってもいいだろう。

 

そして百合好きとしてはどうしても反応してしまう推しポイント満載の激熱な二人なのだ。僕は入学当初から密かに追っていて、どうにか情報を得れないものかと陰ながら奮闘していた。

 

僕は桜坂さんと雪野さんの推し活がしたいがために、生徒会に入った。

 

まず何といっても胸熱なのが二人は生まれたときから隣同士に住む幼馴染ということ。幼馴染百合は最高に尊いジャンルの一つだ。保育園、小学校、中学校と家族のように過ごし、お互いがいるのが当たり前の人生を過ごし、かけがえのない友情はやがて愛情へと昇華する…元祖にして至高の要素。これが嫌いな百合好きなんていない(断言)。

 

そしさらに尊いことに、二人はいつも競い合っているライバル同士ということで有名だ。ライバル百合は最高に尊い(以下略)。テストの点数ではいつも一位と二位を独占していて、ほんの数点で勝ったり負けたりを繰り返しており毎回勝負をしているらしい。前回の中間テストでは桜坂さんが勝ったらしくしばらく桜坂さんの機嫌がよかった。逆に雪野さんはそうとう悔しがっており、何かとつけて愚痴られたり鬱憤晴らしに付き合わされたりした。

 

運動でもその関係は同じで、二人とも僕と同様に部活に入っているわけでもないのにとても運動神経がいい。運動部顔負けのセンスを二人とも存分に発揮して、体育の時間なんかで暇さえあれば勝負をしている。この前のテニスの授業なんて二人だけで異次元の戦いを繰り広げていて、クラスメイトも先生も授業を忘れて大興奮で観戦してしまった。

 

僕なんてぽーんぽーんと緩いラリーをするのが精いっぱいで、それでさえ怪しいところがあり二人を随分呆れさせてしまったのだ。そのままでは成績評価が危ないと思ったのか二人に懇切丁寧に教えてもらうことでなんとか常人程度にはできるようになった。あの時はヤバかった。主に二人の時間を割かせてしまったという自責の念で。

 

付け加えて言うなら、容姿もめちゃくちゃ良き。桜坂さんは少し明るい栗色のストレートロングの髪を腰まで伸ばしており、雪野さんは黒髪のやや長いウルフカットといった具合だ。そして二人とも女子の中でも背が高く桜坂さんは170後半、雪野さんはなんと180あるらしい(桜坂さんはそのことを少し気にしていて、いつか抜かすと意気込んでいる)。この世界では男子の方が平均身長が低く、僕はその中でも低い方のため二人と並ぶと明らかにへこんで見えるのであまり隣に立たないようにしている。当然僕なんかが隣にいるより、二人だけの空間の方が大切だからだ。

 

顔立ちは実は少しだけ似ていて、二人ともやや釣り目をしていてシュッとした顔立ちだ。とはいっても系統は違い、桜坂さんは優しい王子様系とでもいうのだろうか、活動的で慕う人も多い印象を受ける。目元はクールだけど表情は笑っているタイプだ。半面、雪野さんはその苗字の通り雪のように冷たく無口で、桜坂さん以外には他の誰も寄せ付けない格好良さが見て取れる。あえて言うなら氷系王子様だろうか。まあそれがいいという人も多く両者とも男子人気が非常に高い文句なしのモテ女子なのだが、お互い以外には興味がないのか男子と浮ついた話は入学してから一切聞かない。

 

そういうところもとてもいい。

 

僕の最推しの組み合わせである。このままずっと攻守をぐるぐる交代させながらいつまでも仲良くしていてほしいものだ。

 

 

勿論、みんなの言いたいことは分かっている。百合の間に挟まることは大罪だということだろう?百合好きとしては同じ生徒会に入るというのは過干渉ではないかという意見ももっともだ。

 

しかし待ってほしい。百合好きとして、この二人が同じ生徒会に入って切磋琢磨をし、お互いをパートナーとして特別に思ったり、普段の何気ない仕事をする日常でいちゃついたりといった最高の展開を見届けるという選択肢を見逃すことができるだろうか?

 

…できなかった。僕は、見たいっ!!!

 

待ってほしい。つまり、僕はモブ男子Aとして最低限の義務を果たしながら働きつつ、この二人の関係性を見守りたいのだ。生徒会室にあるこの観葉植物のようにひっそりと。それくらいならきっと百合の神様も許してくれるに違いない。

 

なお、地元の友達にこの件を話したら有罪(ギルティ)だった。僕は甘んじてその判決を受けいれた。反省はしている、後悔はしていないというやつだ。

 

 

そんなこんなあって、僕は先生にまんまと説き伏せられて生徒会に加入することとなった。

当初は不安要素もあったものの意外とそこまで難しかったり忙しかったりすることもなく、文化祭などの行事でちょっと忙しくなるくらいですんでいる。バイトとの両立も現状問題ない。

 

むしろこの程度の労働で質の高い百合を見ることができるのでお得ですらある。

 

 

そして僕と彼女たち二人が残っている理由だが、この二人は何と次期生徒会長になりたいそうなのだ。

 

ふふ…いいねぇ、とてもいい…(オタク特有のにちゃ笑いを必死に隠してポーカーフェイスを気取る図)。

たった一つの座を争う展開好き好き侍、拙者そういうの大好きでござる。

個人的には生徒会長になった方が敗れた方を役員として従えて椅子に座りながら「ほら、負けましたって、いってごらん?」「くっ…誰がお前なんかにっ…」みたいな上下関係百合展開もとてもいいっ…!

 

…こほん。というわけで、この二人はなるべく現会長の仕事を手伝ったりすることで今から生徒会長としての仕事を覚えておこうとしているらしい。この学校は選挙制であり、後継指名制ではないから有利とはならないものの今から仕事を覚えようとするその姿勢には百合抜きにしても凄いと思わざるを得ない。

 

本当に、彼女たちは凄い。モブとはいえ僕なんかが隣に座っていることすらおこがましいと我ながら自省する。…私は観葉植物…一枚のプラスチックの葉っぱ…その空気を光合成することすらおこがましい…。

 

 

「あの…坂野くん…?」

 

書記さんにそう声をかけられて現実に引き戻される。危ない、ちょっと妄想に沼りそうになっていた。僕は誤魔化すように席を立つと生徒会室の棚に近づきつつ、高校に入ってから多用してきた必殺ナチュラルつくり笑いを浮かべて返事をする。

 

「あっ…!すみません、ホチキス止めでしたよね?確かこの辺にあったはず…」

 

そういって僕は棚にある業務用ホチキスを探した。

 

生徒会に入って初めて知ったのだが、この世には業務用ホチキスなるものが存在する。穴あけパンチみたいに使うことができて、針を使わずに書類を止めることができる優れモノだ。

 

しかし、業務用というだけあってそのホチキスはまあまあデカくて重い。小さくて重めのデスクトップパソコンくらいある。流石に僕の非力な腕でも持ち上げられないとは言わないが、足とかに落としたらマジでヤバいやつである。

 

確かこの辺に…。

 

そう思いながら戸棚を物色する僕。それの閉まってある位置を発見するのに少しだけ時間がかかった。

 

結構、上の方にあるな…。

 

確かいつもはもうちょっと下の方においてあったはずだが、最後に使った人が置き換えたのだろう。別に定位置があるわけでもないのだが、なんとなくいつもと違うので違和感がある。

 

まぁとれるだろ、と軽く考え背伸びをして指先で棚の淵ぎりぎりまで持ってくる。

若干底面がはみ出したのを確認して底を持てばいけるはず…。

 

ズル…ズル…と、段々こちらに来る業務用ホチキス。

 

 

今思い返せば、最初っから別の人にお願いすればよかったと思う。僕の身長で手を伸ばしてギリギリだった高さにあるそれは、少し目算が狂うだけで簡単に重心を取り違うもので。

 

あっ、と思ったころには棚からはみ出しすぎて、その重さを存分に発揮して重力落下しようとする業務用ホチキスの全容。

 

僕は何とかそれが僕の頭を直撃しようと反射的に掴もうとするが、ただでさえ鈍い運動神経がさらに慌てた状態では上手く仕事をしてくれるはずもない。

 

一瞬の間もかからずにぶつかることを覚悟して体勢が崩れ、大きくしりもちをつくように体重が後ろに逸れた。

 

 

ぶつかるっ…と思い目を閉じる。

 

 

…、しかし、いつまでたっても衝撃が訪れることはない。それどころか、しりもちをつくことすらなく、重心を後ろに倒したまま床に立っていた。

 

 

自分の体の状態に違和感を感じて恐る恐る目を開けると、二つの綺麗な顔が左右からこちらを見下ろすように目の前にある。

 

その奥には、彼女たちの腕で右と左からしっかりと支えられている重たいホチキス。彼女たちの腕と身長では、それを抑えることくらいなんてことないのだろう。

 

そして彼女たちのもう片方の腕は、左から桜坂さんが、右から雪野さんが僕の腰に回して、僕が倒れないようにしっかりと支えてくれていた。

 

彼女たちに挟まれるように腕の中に固定され、何も反応できなくなる僕。

 

「大丈夫かい!?和音(かずね)、どこか怪我をしてはいないかい!?…あぁ、よかった。大丈夫そうだね。全く、あまり心配させるようなことをしないでくれ」

 

桜坂さんがその艶やかな髪を傾けながら、少し声を荒げて心配した口調で言う。

 

「和音、三上先輩は横の書類を取ってって言ってた。ホチキスは私たちがとるつもりだったの。…またぼうっとしてて話を聞いてなかったでしょ、和音の悪い癖だよ」

 

雪野さんがハスキーさを感じる少し低い声で、けれどもちょっと言い聞かせるように言う。

 

二人の腕は僕の腰と背中を右から左から支えており、まるで花束を抱えるかのように優しく、そしてしっかりとした感触が伝わってくる。

僕が経験したことのないいい匂いがして、覗き込む二人の目が僕を捕らえて離さない。

 

 

 

あぁ…神様、やっぱり僕は大罪を犯してしまったようです。

 

 

 

 

 





百合に挟まる男は大罪!大罪です!
…これ?これは百合じゃないです。単なるラブコメです。

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