危険な個性を持って生まれたら   作:れる

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USJ編 その2

「ヴィランンン!?バカだろ!?ヒーローの学校に入り込んでくるなんて、アホすぎるぞ!」

 

「現れたのはここだけか、学校全体か…何にせよセンサーが反応しねぇなら向こうにそういうことができる個性がいるってことだな。校舎と離れた隔離空間、そこに少人数が入る時間割…バカだがアホじゃねえ。これは何らかの目的があって用意周到に画策された奇襲だ。」

 

轟が冷静に状況の分析を行う。彼の言う通り、街中で騒ぎを起こすヴィランとは違い決して無計画での侵入ではない様子だ。

 

「13号、避難開始!センサーの対策も頭にあるヴィランだ…上鳴、お前も個性で連絡試せ!」

 

相澤は指示を出すやいなやヴィランたちに向かって飛び出した。一対多にもかかわらずヴィランたちを華麗にいなしている様子に、避難中の生徒たちから感嘆の声が上がった。

 

「させませんよ。」

 

しかしその行く手を阻むかのように黒モヤのヴィランが立ちはだかる。

 

「初めまして、我々は(ヴィラン)連合。僭越ながらこの度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせていただいたのは平和の象徴、オールマイトに息絶えていただきたいと思ってのことでして。」

 

そのヴィランの言葉に誰かの息をのむ音が聞こえた。

 

「しかしどうも、オールマイトの姿が見えない…まぁそれとは関係なく—————今の私の役目はこれ。」

 

ぶわっと黒いモヤが広がり生徒たちを取り囲もうとしていた。

 

「その前に俺たちにやられることは考えてなかったか!?」

 

そう叫びながら切島、それと同時に爆轟が飛び出しヴィランに攻撃を与えた。しかしモヤが胡散しただけ全くダメージが与えられていない様子だ。そして2人が飛び出したせいで13号の射線上に入ってしまった。

 

「ダメだ!どきなさい2人とも!」

 

13号が叫ぶもすでに手遅れだった。

 

「生徒と言えど優秀な金の卵…散らして、嬲り殺す……!」

 

次の瞬間モヤが広がり、生徒たちを飲み込んだ。しかし集団の後方にいた火水は近くにいた葉隠の腕を掴み、後ろへ飛んだ。

 

「あ、ありがとう天地くん…でも、皆が……」

 

「…消えた皆が気がかりだけど、今は目の前の問題を解決しないと。」

 

クラスメイトの大多数がいなくなり、残ったのは13号と数人の生徒のみ。対していまだ相澤が交戦中の大勢のヴィランと目の前の黒モヤのヴィラン、さらには通信手段が絶たれているのが現状だ。それともうひとつ気がかりなことがある。オールマイトを殺すと言っていたが、その手段がわからない。どうもチンピラの寄せ集めにしか見えないにもかかわらずあの自信ありげな態度、火水は一抹の不安を感じた。

 

 

  ◆

 

 

「皆は!?いるか!?確認出来るか!?」

 

「散り散りにはなっているがこの施設内にいる。」

 

飯田くんがすぐさま現状確認を行い、障子くんが個性で皆の居場所を確認した。

 

「委員長!君に託します。学校までかけてこの事を伝えてください。」

 

13号先生は飯田くんに学校へ救援を呼ぶよう声をかけた。警報も鳴らず携帯も圏外な状況であり、それらを妨害可能な個性のヴィランが見つからない現状、USJから脱出するほかない。だが飯田くんは他のクラスメイトを置いていくことに躊躇っているようだ。

 

「行けって非常口!!」

 

「外にさえ出られりゃ追っちゃこれねえよ!!お前の足でモヤを振り切れ!!」

 

「救うために個性を使ってください!!」

 

しかしクラスメイト達や13号先生が彼の背中を押し、飯田くんは覚悟を決めた顔に変わった。一方火水は、ヴィランに聞こえないよう小声で葉隠さんに話しかけた。

 

「葉隠さん、皆のサポートがあるから大丈夫と思うけど次善策として念のため、飯田くんの後を追って。葉隠さんなら絶対に気づかれずに脱出できるから。」

 

「うん、わかった。天地君もサポートお願いね。」

 

「いや、あの黒モヤを下手に散らすとどうなるかわからない。…それに気がかりなことがある。レインコートはそこら辺に置いといて。」

 

そういうやいなや火水は駆け出し、出入口とは反対のセントラル広場へ向かった。

 

「なっ…待ちなさい!天地くん!!」

 

後ろから13号先生の声が聞こえるも、それを振り切って相澤先生の下へ向かった。

 

 

  ◆

 

 

嫌な予感ほど当たるもので、階段を駆け降りた先で火水が見たのは脳がむき出しの黒いヴィランに相澤が痛めつけられている姿だった。ついには押さえつけられそうになり、慌てて個性を発動させヴィランを突風で押し飛ばした。

 

「相澤先生!大丈夫ですか!?」

 

「…なぜここにいる、避難しろと指示しただろうが…」

 

相澤の元へ駆け寄ると、息も絶え絶えな様子で返事をした。彼の体の状態を確認すると、頭部から血を流しており、手足も変な方向に曲げられている。

 

「お叱りなら後でいくらでも聞きます。今は先生と一緒に脱出しないと…」

 

「俺のことは…いい…それより早く逃げろ…」

 

「逃すわけないだろ。」

 

相澤の体を支えようとすると、いつの間にか近づいていた手だらけのヴィランがにやけながらそう告げた。

 

「大人しく逃げてりゃよかったものを、よくもノコノコやってきたな。…まあちょうどいいや、お前とそいつの死体をオールマイトへの手土産にしてやるよ。」

 

「随分と自信満々だな、その黒いやつが対オールマイトの秘策ってやつ?」

 

「ああそうさ!対平和の象徴用改造人間『脳無』!!お前みたいなガキじゃ倒すどころか逃げられもしねえよ!!」

 

手だらけのヴィランは両腕を大きく広げ、心底楽しげに語った。事実、先ほどの突風で脳無とやらを遠くに飛ばそうとしたが、思いのほか踏ん張られてしまった。誇張なしに対オールマイト用のヴィランなのだろう。

 

「へぇそう。じゃあ試させてもらいましょうか、ね!」

 

火水は2人のヴィランを巻き込むように竜巻を発生させた。しかし脳無が手のヴィランを突き飛ばし自身だけが上空へ飛ばされた。7メートルほど持ち上げて背中から地面に叩きつけられたた脳無だったが、全く効いていないといった様子でむくりと起き上がった。しかも砂塵ごと巻き上げて体表面にできていた細かな擦り傷もあっという間に消えた。

 

「…普通の人間なら骨折どころじゃ済まないんだけど。てか傷もすぐに治ってるし、なんだよこいつ…」

 

「ハハ!良い個性持ってるみたいだが相手が悪かったな。こいつは『ショック吸収』の個性、高いところから落としたくらいじゃあなんてことねぇよ。んで、傷が治ったのは『超再生』のおかげさ!」

 

気分がいいのかご丁寧に個性を喋ってくれるも、それでこちらの状況が有利になることはない。厄介なことにUSJは天井が覆われた閉鎖空間。さっき以上の威力がある竜巻を発生させることが難しい。火水は額に一粒の汗が流れてきたのを感じた。

 

「まずはお前からだ、じゃあなガキ。」

 

(やばい…!)

 

頭に警報が鳴り響き、瞬時に個性を発動させた。しかし次の瞬間、グシャリという嫌な音とともに強い衝撃が体に加わり、意識を手放した。

 

 

  ◆

 

 

「天地くん!」

 

「おい天地!生きてるよな!?」

 

「天地ちゃん、返事をして!」

 

どれくらい意識を失っていたのだろう、自分を呼ぶ声が耳に届き火水は目を開けた。目を動かすと緑谷くん、峰田くん、蛙吹さんが焦った表情で自分を覗き込んでいる。体が痛むし左腕の感覚がない、さらに全身がびしょ濡れだ。

 

「ここは…?」

 

「よかった、気がついた!ここはUSJの水難エリア、さっき天地くんが飛ばされてきたんだよ。すごい怪我だ…一体何があったの!?」

 

緑谷くんが説明をしてくれた、どうやら意識を失っていたのは少しの間だけだったらしい。首を動かしセントラル広場を見ると、いまだに倒れている相澤先生が見えた。火水はまだ無事な右腕を相澤に向け、個性を発動させる。

 

「誰か、相澤先生を…」

 

火水の個性により相澤の体が持ち上がり、こちらに向かって飛んできた。それに気づいた蛙吹さんが舌で相澤の体を巻き取り、静かに地面に下ろした。

 

「おいおい、健気だなあ!そんなズタボロになっても先生を助けようとするなんてよお!」

 

手だらけのヴィランがニヤニヤしながらこちらに近づいてきた。それに相対するように緑谷くんが立ち上がり、拳を向けた。

 

「む、無理だろ緑谷!相澤先生と天地をこんなにした奴らだぞ!!」

 

「でも動けるのは僕たちしかいない…僕が助けるしかないんだ…!」

 

いつも見ていた緑谷くんの背が火水には大きく見えた。しかし気力で実力差が覆されるわけではないし、さらに最悪なことに脳無との相性が悪すぎる。

 

「緑谷…くん。脳無…黒いやつの個性は『ショック吸収』。…さらにどういう訳か『超再生』の複数個性持ち…君との相性が…」

 

「はあ!?なんだよそれ!チートじゃねえか!!そんなの勝てるわけ……」

 

「そうそう、お前らには無理だ、大人しく諦めとけ。」

 

「それでも、やらないと…!絶対に助けるんだ…!!」

 

ヴィランの個性を聞き、それでもなお緑谷くんは臆することはなく立ち続けた。

 

「緑谷くん、ありがとう…あとは、任せて…」

 

火水は力を振り絞って上体を起こし、そのままふらふらと立ち上がった。

 

「天地くん…!無理しちゃダメだ!安静にしてないと…!」

 

「無理すんなよ死にかけ!お前の風を起こす個性が脳無に効かないのは理解できただろ。」

 

手だらけのヴィランは余裕なのか、特になにも仕掛けてこず悪い笑みを浮かべながら見下しているままだ。ならちょうどいい、確かに竜巻は意味がなかった。

 

「…誰が、風を起こすだけの個性って、言ったよ…」

 

「え、天地くん、それってどういうこと?」

 

火水がぼそりと呟いた言葉に一番近くにいた緑谷だけが反応した。火水はそれを無視して言葉を続ける。

 

「みんな、俺のそばから離れないで。」

 

そう言うと火水は右腕を後ろに向けた。すると背後から唸るような音が鳴り響き、ヴィランを含めた全員が困惑の表情を浮かべ周囲を見渡した。その様子を尻目に後ろに向けていた右腕をそのまま頭上へ持ち上げた。

 

「は…?」

 

誰が漏らした言葉だろう、緑谷もヴィランも全員が目を丸くして火水の背後を見つめた。

 

「なんで、天地の個性って風を操る個性なんじゃ……」

 

火水の背後、水難ゾーンの水が意思を持つかのように立ち上がり、水の壁を形成していた。

 

「対オールマイト兵器が…生き物でよかったよ…」

 

火水は頭上に持ち上げた右腕を、そのまま前方へ振り下ろす。すると立ち上がっていた水の壁が崩れるように倒れた。

 

「この…クソガキがああああ!!」

 

避けようもない大質量の水は火水たちの周囲を綺麗に避け、それ以外のあらゆるものをすべて飲み込んだ。

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