危険な個性を持って生まれたら   作:れる

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雄英体育祭 その2

「予選通過は上位44名!残念ながら落ちちゃった人も安心しなさい!まだ見せ場は用意されているわ!」

 

全生徒の順位が出揃ったところで、ミッドナイトが本選出場可能の順位を発表した。ヒーロー科は全員が予選通過しており、下位で滑り込んだ生徒からは安堵の声が出た。またぎりぎりで落ちてしまった他科の生徒らは落胆の声が上がった。

 

「そして次からいよいよ本番よ!ここからは取材陣も白熱してくるわ!さーて、第二種目よ!私はもう知っているけど~何かしら!?言ってるそばから…騎馬戦(コレ)よ!」

 

スクリーンに映し出される『騎馬戦』の文字とともに第二種目の内容が発表された。

参加者は2~4人1組のチームを組み騎馬を作る。基本は普通の騎馬戦と同じだが、第一種目の結果をもとにポイントを割り振りそれをハチマキにして奪い合う形式だ。またポイントを奪われても騎馬自体が崩れていなければアウトにはならない。そして当然のごとく本種目でも個性は解禁されている、ただし悪質な崩し目的での攻撃はご法度だ。

 

「最後にポイントの発表よ!当然最下位から順に与えられるポイントは増えていくわ!…そして1位に与えられるポイントは、1000万!上位の奴ほど狙われちゃう、下剋上サバイバルよ!」

 

順位が映されているモニターに、さらに各々のポイントが映し出された。そして2位のポイントを大きく突き放して1位が1000万ポイントという、昔懐かしのクイズ番組のようだ。それにつられ出場者の視線が一斉に1位である緑谷に集まった。

 

「それじゃこれより15分!!チーム決めの交渉タイムスタートよ!」

 

想像以上に短い時間に唖然とするも、生徒たちはすぐさま組みたい人の下に駆け寄った。火水も組む相手を探そうとするも、すでにいくつかの人だかりが形成されていてひるんでしまった。

 

(もっとクラスメイトと交流深めとけばよかった…そもそも他の人の個性ほとんど知らないのまずいよなあ…)

 

公開するも時すでに遅し。一応個性を知っていて強力そうな八百万を探すもすでにチームを組んでしまっている様子。どうしたものかと思い、あてもなく会場内をふらふらと歩き回った。

 

「なあそこのお前、4位の奴だよな。」

 

突然背後から声をかけられ振り向くと、逆立った紫髪の生徒がこちらをじっと見つめていた。

 

「そうだけど…なんの…」

 

用だ、そう応えようとした瞬間、口が思うように動かなくなり意識を失ってしまった。

 

 

  ◆

 

「———くん!———地くん!天地くんってば!」

 

自分を呼ぶ声と突然加わった顔への衝撃に、意識が覚醒した。いまだにもやもやする頭を左右に振り周りの様子を確認すると、葉隠さんと反町さんが心配そうにこちらをのぞき込んでいた。

 

「…あれ、2人ともどうしたの?」

 

「どうしたはこっちのセリフだよ!天地くんのことだからチームなんて組めなさそうだなって思ってたら知らない人と一緒にいるし。珍しいなって声をかけても反応しなかったし!」

 

「知らない人…そうだ、確か知らない生徒に話しかけられて、それで急に意識がなくなって。てか頬痛い…」

 

意識を失う直前のことを思い出し、名前も知らない男子生徒のことを探そうと辺りを見回した。すると苦々しい顔をしながらこの場から離れていきつつある彼を見つけた。

 

「ねえ、俺が意識を失ってたの君の個性でしょ。眠ってたわけでもないし、動いてたみたいだから…催眠術とかかな?」

 

「…そうだよ、ヒーロー科は頭の回転は悪くないみたいだな。」

 

「なんかとげのある言い方だけど。まあいいや、君も一人なんでしょ、チーム組もうよ。」

 

彼を騎馬戦のチームに誘うと、ぎょっとした目でこちらを見てきた。

 

「正気か?俺はお前に個性を使ったんだぞ。」

 

「ヒーロー科を操って味方にしようとするってことはそれで勝つ自信があるんでしょ。それに俺もまんまとやられたし。」

 

「俺の個性は『洗脳』、こんなヴィラン向きの個性を入れるとお前の評判に影響するんじゃないか。」

 

「へー強そうな個性。評判うんぬんはどうでもいいし組もうよ。…それにヴィラン向きは人のこと言えないしね。」

 

そう言い右手を開き彼の前に差し出すと、渋々といった様子で手を握り返してきた。

 

「わかったよ。だが仲良しこよしじゃない、お前のことを利用してこの種目も通過してやる。」

 

「いいよいいよ。ともかくこれで2人になって一応チームとしては出場できるのか。」

 

「ちょいちょい!男子だけで盛り上がらないでよ。それに2人じゃ不安でしょ、私たちもチームに入れてよ。」

 

先ほどまで話についていけず半ば放置されていた葉隠さんが会話に割り込んできた。

 

「葉隠さんたちも2人なの?じゃあ一緒にやろっか。」

 

「おい、勝手に決めんな。男女混合の騎馬戦で女子をチームに入れるってことはそれなりに勝算があるんだろうな。」

 

「葉隠さんはともかく反町さんはこういう競技向けだと思うよ。」

 

「私はともかくってどういうことだー!」

 

「あはは…」

 

 

  ◆

 

 

『よォーし組み終わったな!!?準備はいいかなんて聞かねえぞ!!』

 

「私が騎手やりたかったな~」

 

「すっ裸で男2人に乗ろうとするな。それに体格的にも個性的にも反町さんしかないでしょ。」

 

「うん、頑張るね。…なんか物間くんがすごく見てくるけど。」

 

「おい、本当に大丈夫なのか。」

 

競技開始前とは思えない緩み切った空気に、思わず味方になった普通科の男子、心繰が不安に駆られた。

 

『いくぜ!!残虐バトルロイヤルカウントダウン!!3!2!1!スタート!!』

 

開始と同時に複数の騎馬が一位の組、緑谷チームに襲い掛かった。それに一安心できないのが火水チーム。火水が予選で4位を取得したため合計ポイントがそこそこ高いため、狙われる可能性は高い。

 

「いきなりで悪いけど獲らせてもらうよ、衝子。」

 

「うっ、拳藤さん…」

 

目の前からポニーテール女子を騎手としたチームがこちらに向かってきた。そして恐らくは彼女の個性であろう、手を巨大化させ反町さんに襲い掛かる。しかしそれに冷静に対処するのが反町さん。彼女は両手を前に突き出すと個性『反射』で半透明の盾を展開させると、巨大なこぶしを跳ね返した。

 

「わ、私だって黙ってやられるわけじゃないよ。」

 

「知ってるよ、だからこうやって隙を伺ってたんだ。」

 

拳藤チームと小競り合いを行っていると、突如として背後から迫ってきた他の騎馬にするりとハチマキを獲られてしまった。

 

「え!?物間くん、返して!」

 

「あはは、憎きA組と手を組んだからには容赦はしないよ。残念だけど君にはここで落ちてもらうよ。」

 

「やば、早く追いかけよう!」

 

葉隠さんの掛け声とともに騎馬3人が足を動かし、ハチマキを奪ったチームを追走しようとしたがB組と思われる他チームに妨害されて追いつくことができなかった。

 

『7分経過した現在のランクを見て見よう!ってあら!?A組緑谷以外パっとしてねえ…ってか爆轟と天地あれ…!?』

 

途中経過としてモニターに現在順位が映し出された。プレゼントマイクのいう通りA組は1位の緑谷チーム含めポイントが大きく変動していない。爆轟と火水に至っては0ポイントという状況だ。

 

「あのポイント奪われないままだったら楽だったけど、こうなったら当初の予定通りか。」

 

「ってかそもそも守る気なかったじゃん、天地くん個性使わなかったし。」

 

「まあそうだけども。ってかポイント表示してくれるのありがたいな。」

 

「誰がどの騎馬か教えてくれ。ヒーロー科の奴らの名前わかんねえ。」

 

「うん、B組のほうは任せて。」

 

0ポイントになった爆轟は目を吊り上げてB組に襲い掛かっている一方、同じくポイントを失った火水たちは冷静に現状の整理を行った。

 

「じゃあひとまずはつかず離れずの位置で3位4位をマークしよう。」

 

「うん、拳藤さんと鉄哲くんはあっちだね。」

 

火水たちは周りを確認し、各所で発生している激しい交戦に紛れ込むように姿を隠した。

 

 

  ◆

 

『残り1分を切って現在轟ハチマキ4本所持!緑谷か1位の座をもぎ取ったあ!!このまま上位4チームが出揃っちまうか!?』

 

火水たちが雲隠れしているのをよそに、他のチームでは激しくハチマキを奪い合っている。そして終盤まで1位を死守していた緑谷チームも、ついに轟チームにハチマキを奪われてしまい波乱の展開が繰り広げられている。

 

「最後までモニターにポイントを表示してくれるんだね。」

 

「助かるけど、こうも激しいと見失っちゃうよ。」

 

「ちゃんと目視できる位置にいる。…そろそろ近づくぞ。」

 

時間切れ間際で、足踏みしていた火水チームがようやく動き出した。足を動かした先にいるのは現時点で3位のチームだ。

 

「おーい鉄哲!反町から話があるみたいだぞ!」

 

「あ!?こんなときに一体何の…」

 

3位の騎手、B組の鉄哲に心繰が話しかけると、彼の個性が発動し鉄哲の動きが止まった。

 

「お前の持ってるハチマキ全部こっちによこせ。」

 

そうすると動きの止まった鉄哲が再び動き出すと、保持していた全てのハチマキを手に取るとそのままこちらに渡してきた。突然のことに慌てた彼の騎馬たちが取り返そうとするも、火水と反町の個性によりそれらを弾いた。

 

「じゃ、これはありがたく貰っとくな。」

 

「ごめんね4人とも…」

 

『TIME UP!!早速上位4チーム見てみよか!!』

 

ハチマキを奪った直後にプレゼントマイクの終了の合図が会場内に響いた。一息つく間もなくそのまま順位発表を行うようだ。

 

『1位轟チーム!!2位爆轟チーム!!』

 

『3位は鉄て…アレェ!?反町チーム!!?いつの間に逆転してたんだよオイオイ!!』

 

『そして4位緑谷チーム!!以上4組が最終種目へ…進出だああ—————!!』

 

「よっしゃああ!第二種目通過だー!」

 

葉隠さんがその場で飛び跳ね、そのまま反町さんに抱き着いた。

 

「心繰くん誘ってよかったーありがとね。」

 

「別に、初見殺しみたいなもんだ。」

 

素直に心繰くんを褒めると、彼は特に嬉しがる様子もなくクールに答えた。

 

「天地くん、ほら。」

 

いつの間にか近づいていた葉隠さんがこちらに何かを問いかけてきた。

 

「えっいや何?何の用?」

 

「えーこのポーズでわからない?ハイタッチだよハイタッチ!」

 

よく見ると彼女の右袖が上を向いているのがわかった。

 

「いや透明だしそのうえ半袖だからわからんわ。」

 

「察してよそこは!まあいいけど、ほら!」

 

再び葉隠さんが手を挙げる。しかし腕の長さがわからないため自分の肩の横ほどの高さに手を挙げたままにしておくと、そこに向けて彼女が自身の手を思いっきりぶつけてきた。

 

「…なんか強くない?」

 

「気のせい!ほら心繰くんもハイタッチ。」

 

「俺はいい。」

 

「なんだよこのクール系男子どもは!」

 

『一時間程昼休憩挟んでから午後の部だぜ!じゃあな!!!』

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