危険な個性を持って生まれたら   作:れる

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雄英体育祭 その3

午前のプログラムが全て終了し、昼休憩。火水たちはいつも通り開いている学食に来ていた。あの後、せっかくだからチームで食べようとしたが、心繰はこれ以上仲良くするつもりはないと1人離れた。

 

「いやー最後まで行けちゃったね。」

 

「そうだね。でもすごき緊張してる…最後の種目何だろう。」

 

「んー、例年通り1対1のバトルとか?ってことは私めっちゃ不利じゃん!!」

 

いつも通り女子2人が和気あいあいとしゃべっている一方で火水は黙々と昼食を食べていたが、ふと気になることがあり口を開いた。

 

「そういえばさ、体育祭始まる前吠え面かかせるとか言ってたけどなんでチーム組んだの。」

 

「いや~ほらチーム戦なら確実に勝てそうな人と組むべきだし!ぼこぼこにするのはそのあとでいっかな~って…」

 

「ふーん、さっきの話だとバトル形式みたいだけど俺に勝てそうなの?」

 

そう言うと葉隠さんはぴゅうと口笛を吹きそっぽを向いた…気がした。

 

「はあ、反町はどう?次の種目自信ある?」

 

「え!?私なんか全然…それに天地くんと絶対に当たりたくない…」

 

「最後まで残ったんだからもっと自信持ってもいいのに。」

 

「うっ…さっきもクラスの人に応援されたけど、やっぱり不安で…」

 

反町さんは本当に自信がないようで俯いてしまった。どうしたものかと考えていると先ほどまでそっぽを向いていた葉隠さんが口を開いた。

 

「衝子ちゃんは自分から戦うのが苦手なんだよ。だから戦闘訓練でも苦労してるんだって。」

 

「ヒーローになるには避けられないことなんだけどね。情けないけど勇気が出なくって…」

 

「別に情けなくはないでしょ。」

 

いまだ気落ちしている反町さんの言葉を否定するように火水は即答した。

 

「でも…」

 

「別に積極的に戦うのがヒーローのすべてじゃないよ。ってか戦うのが好きなヒーローなんて嫌だし。それに戦うのはあくまで最終手段でしょ。」

 

矢継ぎ早にでる火水の言葉に2人は静かに聞いていた。

 

「戦うのが嫌いって気持ちを変える必要はないよ、今の優しいままでいいよ。だから最終種目がバトルで、もし戦いたくないなら辞退してもいいと思うよ。」

 

「うん、ありがとう天地くん。そんなふうに言われたの初めてで嬉しいよ。それに出場辞退もしない。そんなことしたらなりたいヒーローに慣れないしね。」

 

「そっか、反町さんのなりたいヒーローって?」

 

「それは…まだ恥ずかしいから自信がついたらね…」

 

反町さんは照れくさそうに笑いながら返事をした。まだ幾分か表情はかたいがもう顔が下に向くことはなさそうだ、そう感じ取り満足しているとふと別の視線を感じた。

 

「…なに葉隠さん、何か言いたいことでも?」

 

「天地くんってたまにいいこと言うよね。」

 

「たまにって…まあそれはどうも。」

 

「いやー私もバトル自信ないなー誰か慰めてくれないかなー」

 

「…頑張ってね。」

 

「なんで私のときだけそんな雑なんだこらー!」

 

あまりの面倒くささに適当に返事をすると、怒った葉隠さんが左頬をひねってきた。

 

「痛い痛い!!不安じゃなさそうだしいいかなって、ってかさっきぼこぼこにするとか言ってきた人に励ましの言葉なんて言うか!」

 

「私にも言ってほしい!」

 

「わかったわかった!全国放送だから体操服脱がないでね。」

 

「それはアドバイス!ってかそれだと私のアイデンティティなくなる!!」

 

「あはは…」

 

その後、怒れる葉隠さんをなんとかなだめているうちに昼休憩がいつの間にやら終わってしまった。

 

 

  ◆

 

 

昼休憩が終わり、午後の部。いきなり最終種目というわけではなく、誰でも参加可能なレクリエーションが行われるらしい。普通科を中心に多くの生徒が参加を表明し、午前と同じくプレゼントマイクが会場を盛り上げている————がそれとは別に気になることがある。

 

『どーしたA組!?』

 

『なにやってんだあいつら。』

 

チアガール姿で両手にポンポンを持って、A組女子全員がスタジアム内で立ち尽くしていた。…心なしか全員の表情が死んでいる。

 

「何故こうも峰田さんの策略にハマってしまうの私…」

 

膝から崩れ落ちる八百万さん。どうやら騙されたらしく、火水のすぐそばではわかりやすく喜ぶ加害者と思わしき2名。

 

「アホだろアイツら…」

 

「まぁ本戦まで時間開くし、やったろ!!」

 

「好きね透ちゃん。」

 

性格とマッチしている葉隠さんはやる気らしく、1人だけ飛び跳ねポンポンを振り回している。

 

『さァさァ、皆楽しく競えよレクリエーション!それが終われば最終種目、進出4チームからなる総勢16名からなるトーナメント形式!一対一のガチバトルだ!』

 

昼休憩で話していた通り、最終種目はバトルらしい。大丈夫だろうかと反町さん…ついでに葉隠さんを思い浮かべるが、本人は不安そうになりながらも出場するとは言っていた。これ以上の心配はかえって失礼かと思い、自身にことに集中すべく意識を切り替えた。

 

 

  ◆

 

 

「それじゃあ、くじ引きで組み合わせを決めちゃうわよ。組が決まったらレクリエーションを挟んで開始になります。レクに関して進出者16名は参加するもしないも個人の判断に任せるわ。温存したい人もいるだろうしね。んじゃ、1位チームから順に決めていくわよ。」

 

ミッドナイトの言葉通り、1位の轟チームのメンバーから順に壇上へ上がり一人ずつクジを引いていく。

 

「16名全員にくじを引いてもらい…組み合わせはこうなりました!」

 

第一試合 緑谷vs心繰

第二試合 轟 vs瀬呂

 

第三試合 反町vs上鳴

第四試合 飯田vs発目

 

上位ブロックには先ほど同じチームだった2人の名前が見える。様子を見てみると心繰くんはどこか不敵な笑みを浮かべている一方、反町さんは不安そうだ。続いて下位ブロックのメンバーが発表された。

 

第五試合 芦戸vs天地

第六試合 常闇vs八百万

 

第七試合 葉隠vs切島

第八試合 麗日vs爆轟

 

見事にA組同士での潰し合いになった下位ブロック。互いに実力を知っているからこそ露骨に嫌そうな顔をする人が数名。特に麗日さんは対戦相手を見て悲鳴を漏らしている。

 

「ぎゃー!切島くんかよ!」

 

「おお、葉隠か!女子だからって手加減しねーぜ!!」

 

葉隠さんも同様に苦手な相手らしい。姿を隠して攻撃しても硬化相手では特に意味はなさそうだ。まあただでやられることはないだろうし、応援はしておこう。

 

「天地相手かー、一回戦くらい楽に勝ち上がりたかったけどなー」

 

いつの間にやら隣に来ていた対戦相手の芦戸さんが愚痴をこぼしてきた。

 

「皆最後まで勝ち上がった人たちばかりだから、誰が相手でも楽には勝てないと思うよ?」

 

「そうなんだけどさー、うちのクラストップ3に最初から当たりたくなかったよー」

 

「トップ3って大げさな…」

 

過大な評価に思わず肩をすくめた。しかし芦戸さんはそうは思っていないようで、いやいやと手を横に振った。

 

「クラスの皆言ってるよ、自信持ちなって。だからちょっとだけ手加減とか…」

 

「あはは、ありがとう。でも手加減はできないかな。」

 

「くそー、もうこうなったら当たって砕けろだー!」

 

うおーといいながら芦戸さんが走り去っていった。どうやらそのままレクリエーションの応援に行くらしい。元気だなと思い控え室へ向かおうとすると再び声をかけられた。

 

「やっほー天地くん。同じブロックになったね。」

 

「うん、でも当たるのは準決勝になるけどね。」

 

「なんだよ、そこまでいけないって?」

 

「そんなこと言ってないけど…」

 

わかりやすく葉隠さんの声が低くなったところで慌てて否定するも、そっぽを向いたままだ。

 

「まあ、私は戦えるタイプの個性じゃなのはわかってるよ。でもその分試合では観客にアピールするから!!」

 

「あー確かに相澤先生はプロヒーローにアピールする場だって言ってたもんね。」

 

「そうそう、私にとっては最終種目は勝ち負けじゃないから!……で、どう?」

 

突然両手に持つポンポンを振りながら、何かを問いかけられた。相変わらず主語を抜かした質問に困惑するも、ここで聞き返すとさらに不機嫌になると思い返答する。

 

「あーまあ似合ってるんじゃない?葉隠さんの明るい性格とマッチしてると思うよ。」

 

ひとまず今の姿を褒めてみる。普通では着ることのないチアガール衣装のことに言及しておけば大丈夫だろうと素直に感想を伝える。すると先ほどまでせわしなく動かしていたポンポンがぴたりと止まった。どうしたんだろうと思い再び声をかけようとすると、突然ポンポンをこちらの顔面にわしゃわしゃと押し付けてきた。

 

「ちょ…な…なに、やめて…」

 

「私も応援行ってくるわ!天地くんはせいぜい対戦まで休んでな!」

 

じゃあねーと言いながら葉隠さんは走り去っていった。その様子に思わずため息をつき、ようやく控え室へと向かった。

 

 

  ◆

 

 

控え室に入るとすでに緑谷くんが待機していた。

 

「あれ、天地くんは後半戦だよね。もう来たんだ。」

 

「うん、別にやることもないし、先に入ってリラックスしておこうかなって。」

 

「そっか、確かにこんな大勢の前で戦うなんて緊張するもんね。あっそうだ、天地くんに聞きたいことがあるんだった。」

 

聞きたいこととは何だろう。ああそっか、個性教えるとか言いながらまだ言っていなかったな。

 

「俺の個性のこと?」

 

「いやいや!それは天地くんのペースで教えてくれればいいから…そうじゃなくって僕の対戦相手のこと、確か天地くん騎馬戦でチーム組んでたよね?どんな人なのかなって…」

 

予想外の質問に思わず目を見開く。どうやら対戦相手のことで不安らしい。

 

「なるほど対戦相手の情報を事前に手に入れたいと。普通科相手でも容赦なしだね。」

 

「えっ!?いやまあそうなんだけど言い方が…」

 

「ごめんごめん、悪い言い方だったね。そうだな、一応さっきのチームメイトだったしただじゃあな。俺の質問に答えてくれるならいいよ。」

 

「えっと、僕に答えられることならなんでもいいよ。」

 

火水はその返答に満足して首を縦に振ると、彼の対戦相手である心繰について教える。

 

「彼、心繰くんの個性は『洗脳』。彼の問いかけには注意してね。」

 

「個性まで教えてくれるの!?ありがたいけど…よかったの?」

 

「聞いてきたのは緑谷くんじゃん…って冗談冗談。まあ学食のとき気まずい雰囲気になった謝罪も込めて。」

 

あたふたとうろたえる緑谷くんの様子に、いい反応するなあと笑う。

 

「いや謝らないといけないのはこっち…でもありがとう。じゃあ僕の質問って何?」

 

「爆轟くんの個性。君たちって幼馴染だったよね?」

 

「かっちゃんの個性?えっと個性名は『爆破』で、掌の汗腺からニトロみたいな汗を出してそれを爆発させるんだ。それで…」

 

「ああ、そこまででいいよ。ありがとう。」

 

必要以上に教えてくれそうで思わず彼の言葉を遮った。こと個性の話になるとどうも彼はノンストップになるようだ。

 

「でも天地くんがかっちゃんと当たるとすれば3回戦目だよね?そんなところまで見据えてるんだ…」

 

「芦戸さんの個性は詳しく知らないけど、自信なさそうだから相性はいいんだろうし、2戦目はどっちも戦闘訓練でなんとなく知ってるからね。…それに俺の個性を皆に教えるのは体育祭で上位入賞したらって決めてる。優勝して発表したほうが格好はつくでしょ?」

 

「そっか…そこまで覚悟を決めてるんだね。僕も、天地くん当たるとしたら決勝だけど絶対に負けないよ!」

 

それに対して静かに頷くと右手を握り緑谷くんの前に突き出した。彼もそれを理解したようで左手を握りこちらのこぶしに優しく重ねた。

 

控え室では会場の様子がモニター中継されており、レクリエーションは盛り上がりを見せている。それが終わればいよいよ最終種目、火水はリラックスするべく椅子に座り目を閉じた。

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