危険な個性を持って生まれたら   作:れる

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試験結果

「火水、雄英からの郵便だ。」

 

入学試験から2週間ほど経ったころ、ギャングオルカ事務所に1通の封筒が届いた。事務所内の皆も気になっているようで、そわそわとこちらの様子をうかがっている。火水は差し出されたそれを片手で受け取ると、無造作に開封した。

 

「…ためらいはないのか。」

 

「え、別に。」

 

慌てている皆のことは気にもせず、中身を確認すると数枚の資料と、見たことのない小さな機械が入っていた。

 

「なにこれ。」

 

「映像を映す機械だな、ここを押すと開始するようになっている。」

 

「ふーん。」

 

テーブルの上にそれを置き、ボタンを押すと空中に映像が浮かび上がった。皆がそれに注目する中、映像が再生された。

 

『私が投影された!!!』

 

予想外の人物の登場に目を見開いたが、静かに聞き続けた。

 

『なぜ私が投影されたのかって!?ハハハ!それは私がこの春から雄英に教師として勤めるからさ!時間も押してることだし早速君の合否を発表しよう!!』

 

ちらりとギャングオルカを見ると特に驚いた様子はない。再び映像に目を戻す。

 

『天地少年!筆記は全教科平均を大きく上回っての合格点だ!続いて実技試験だが、得点は60ポイント!合格者の中でもトップクラスの成績だ!』

 

おお!という声が事務所内に響き渡る。どうやら皆が火水の合格を確信したらしい。しかしどうやら映像はそれでは終わらなかった。

 

『これだけではない!先の実技試験で受験生に与えられるポイントは、説明にあった仮想敵のポイントだけにあらず!実は審査制の救助活動ポイントも存在していた!天地少年の救助ポイントは10ポイント!うーん、試験だったとはいえもう少し周りに目を向けてあげるとよかったな!しかし合計は70ポイント!文句なしの合格だよ。天地少年、雄英で待っているぞ!!』

 

メッセージはそこまでのようで、映像がぶつんと切れた。その瞬間わっとみんなが火水のそばに近寄った。やったな、おめでとうとの言葉とにもみくちゃにされた火水は迷惑そうにしながらも口元が少し緩んだ。

 

「おめでとう、火水。あとで社長室に来い。」

 

簡潔な誉め言葉を残し、ギャングオルカは火水から背を向け遠ざかった。

 

 

  ◆

 

 

事務所の皆に散々祝われた後、火水は社長室に来ていた。社長椅子に座るギャングオルカの前に立つと、彼が話し始めた。

 

「改めておめでとう、不安がなかったと言えば嘘になるが火水なら合格すると思っていた。」

 

「ありがとう、それで?そのために呼び出したわけじゃないでしょ。」

 

「まあそう急かすな。」

 

ギャングオルカはデスクの引き出しを開けると中から小さな箱を取り出した。

 

「合格祝いだ、受け取れ。」

 

火水はそれを受け取り中身を確認すると、腕時計が出てきた。高そうな見た目におっかなびっくりしながら手に取ってみる。

 

「これ高そうなんだけど、未成年が着けていいやつ?ってかさっき合格決まったのに何で準備していたの。」

 

「さっきも言ったが受かると思っていたからだ。忙しくてなかなか準備できそうになかったので予め準備しておいた。値段は気にするな、だが大事に長く使ってくれると嬉しい。」

 

「わかった、大切にするね。ありがとう。」

 

火水は手に持った腕時計を優しく箱に戻した。

 

「それで、どうだ雄英高校のヒーロー科に受かった感想は。」

 

「まあ嬉しいと言えば嬉しいけど。でもなんていうか、その…」

 

「どうした?何か気になることでもあるのか。」

 

嬉しそうな態度を示さず、何かを言いよどむ火水の様子に、ギャングオルカは優しい口調で問いかけてきた。

 

「入試中に2人の女の子と会ったんだけどさ。1人は怪我しててもう1人がその子を助けようとしてた。正直俺は試験中に人助けしようなんて考えに至らなかった。だってそのせいでポイントが少なくなったら落ちるかもでしょ。なのにその子はそれでも人助けしてた。」

 

「ほう、それは素晴らしい少女だな。だが火水が間違っているわけではない。入試だからな、誰でも自分のことを優先すると思う。なるほど、それを測るための救助ポイントか、考えたものだな。」

 

感心したようで顎に手を当てながらそう言った。

 

「うん、その子敵ポイントは少なそうだったけど救助ポイントのおかけで受かっていると思う。でもそういうことじゃなくって、なんていうかヒーロー志望の人たちは皆ああなのかな。俺は元々ヒーロー科を受けたくて受けてるわけじゃない、なのに合格しちゃった。そんな俺が皆と一緒にいていいのかなって。」

 

「ヒーローの心構えは入学してから学んでいけばいいさ。火水は他の多くの受験生を押しのけて合格した、その中にはさっきの子と同じような心を持つ子もいただろう。だから火水、君はその子たちのためにも立派なヒーローにならないとな。」

 

「うん、あまり自信ないけど頑張る。」

 

「やれやれ、トップクラスで合格と褒められていたのにそれか。自分の個性のことで不安になっていると思うしそれも仕方ないことだと思うが。そうだな、ではこれだけは考えておけ。」

 

いつも以上に真剣な様子のギャングオルカに思わず身構えて次の言葉を待つ。

 

「自分がどうありたいか、信念を掲げるんだ。誰か目標となる人物を参考にするでもいい。自分の中に芯となるものがないと、仮にヒーローになったとしてもすぐに折れてしまうからな。」

 

「芯…信念…そんなの決まる気がしないけど。」

 

「すぐに答えを出す必要はない。学生生活の中でゆっくりと考えていけ。」

 

「わかった、難しそうだけど考えてみる。」

 

話はこれまでのようでギャングオルカは退出を促した。信念とはどのようなものか、ギャングオルカやこの事務所内のサイドキックは立派にヒーロー活動をしていると思う。だから彼らを参考にしようと考えるもなかなか答えが出せず、結局高校生活初日になっても決まることはなかった。

 

 

  ◆

 

 

時は遡り、入試試験後の雄英高校。会議室内では雄英の校長や教師陣が勢揃いしており、先ほどの試験結果の審査をしている。

 

「実技総合成績が出ました。」

 

大画面モニターに受験生の名前と成績が表示された。中でも目立つのは救助ポイント0点の爆轟勝己、そして敵ポイント0点の緑谷出久だ。彼らを中心に教師陣がワイワイと騒ぎながら講評を行っている。

 

「そして、次は合計70点で4位の天地火水。敵ポイント60点で救助ポイントが10ポイント。敵ポイントに大きく偏っていますが、それは他の受験生にも見られる傾向ですしそこまで問題ではありません。それより気になるのは彼の個性です。」

 

「うお、なんだこの個性!やべーだろこりゃ。でも試験で見たのは竜巻を起こしてただけだったよな。」

 

火水の個性に対して他にも様々な声が上がっている、入学後にどのように扱えばよいか困っているようだ。彼の話題で紛糾しているとオールマイトが声を上げた。

 

「いや、彼に関しては問題ない。一方的にだが彼のことは知っていてね、個性制御も問題ない。それに今は諸事情でギャングオルカが彼を預かっている。」

 

その言葉につられ他の教師たちは手元の資料を見直した。

 

「なぜ彼がギャングオルカの下に?それにオールマイト、彼のことを知っていると言っていましたがどのような関係が?」

 

「いや、まあその辺は話せば長くなるというかなんというか…」

 

「彼の事情に関しては追々説明するさ!ともかく彼については僕も問題ないと太鼓判を押すよ。」

 

オールマイトをフォローするように校長が割り込んだ。

 

「後で話していただけるのならいいでしょう、しっかり説明してもらいます。では彼についてはここまで、次の受験生にいきましょう。」

 

火水の話題を切り上げ会議を続けていった。

 

「…そうか、彼は雄英を選んでくれたのか。」

 

オールマイトは誰にも聞こえないよう笑顔でぼそりと呟いた。

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