危険な個性を持って生まれたら 作:れる
「続いての対戦は…Cチーム対Hチーム!!」
いよいよ火水の順番となった。相手はHチームの蛙吹さんと鳥っぽい見た目の常闇くんだ。Cチームはヴィラン側であり、八百万さんとともに地上階へ移動した。
「ではよろしくおねがいしますわ。それにしても訓練とはいえヴィランとは…」
「確かにヒーロー志望としては微妙かもね。まあ俺としては個性の関係で今回はヴィラン側で助かったよ。」
「天地さんの個性は、先日のテストを見たところ風を操る個性でしょうか?」
「まあ、そんなところかな。屋内だとあまり力が発揮できなくてね、攻める側じゃあ満足に戦えなさそうだったし。」
八百万さんに自身の個性について聞かれるがはぐらかすように返事した。
「なるほど。私の個性は『創造』、素材や構造を正確に把握していればなんでも物体を作り出すことができます。ですのでトラップを作成して各階に設置しますわ。」
「すごいね、とっても助かる。…余裕があったらでいいんだけどさ、ガムテープとか作れたりする?」
「ええ問題ありませんわ。何に使用するつもりですの?」
火水の個性とは関係なさそうな物の作成依頼に少し困惑気味のようだ。
「窓に貼りたくてね。」
「ああ、風圧で窓ガラスが割れるかもしれないからその対策ですのね。私もお手伝いしましょう。」
火水の考えを即座に理解したようで手伝いを申し出てくれた。
「ありがとう、けどトラップのほうを優先でいいよ。テープ貼るのは最悪核兵器が置いてある部屋だけでいいし。」
「わかりました、では次に作戦についてですがどのような方針にしましょうか。」
「それなんだけどさ、大まかに決めるだけで各々で動くようにしない?」
「と言いますと?」
「ほら、俺たちはお互いのことわかっていないし。そんな状態で連携なんてできないからさ、自由に動くほうが俺はありがたいかなって。」
そう言うと彼女は納得はしていないような表情だったが、しぶしぶといった様子で了承してくれた。火水はありがとうと礼を言い1階へ降りた。
対戦相手が見える入り口前まで来ると、その様子を警戒したようで相手チームの2人がこちらを睨んできた。
『では両チーム準備はいいかな?ではCチーム対Hチーム、戦闘訓練開始!!』
オールマイトのアナウンスがインカム越しに聞こえ、訓練が開始された。しかし対戦相手の2人はなぜか姿を晒した火水に警戒したようで動くことはしなかった。そんな彼らに手を振ると右手を人差し指だけ立てて握った。そのまま指をくるくると回すと周囲から風がとどろく音が響いた。その様子に慌てた2人は火水に攻撃を仕掛けようと接近したが、突如として発生した風の壁に遮断された。
◆
「うおおおお!轟もすごかったけど天地の個性もやべえ!!」
モニタールームでは火水が起こした現象の全容が捉えられていた。
「竜巻で建物を包むなんてどうしようもねえよ…反則だろあんなん…」
火水は訓練開始と同時に個性を発動させビル全体を竜巻で飲み込んだ。車すら簡単に持ち上げるほどの威力を持つ竜巻に、対戦相手はどうする手立てもなさそうで呆然とその様子を眺めているしかなかった。
一方火水チームはというと突然のことに驚いた八百万が火水に連絡を取っていた。
「天地さん!このようなことをするなら事前に連絡してください!!」
「ごめんね、うっかりしてた。怪我とかない?」
「窓ガラスは割れていますが、貼っていたガムテープのおかげで破片は飛散していません。しかしそういうことではなくてですね…」
「ほんとごめん、とりあえずヒーローチームの足止めには成功してる。2人の個性がよくわからないけど対抗手段はなさそう。」
さすがに何も伝えなかったのはよくなかったなと自戒しつつ、現在の状況を伝える。八百万さんは他にも文句を言いたかったようだが、訓練中なこともあり、ため息だけついて意識を切り替えてくれた。
「わかりました、今はいいでしょう。お二方の個性ですが蛙吹さんは『蛙』で、常闇さんはわかりませんが、影から何かを操っているのを昨日確認していますわ。そうなるとお二人はこの竜巻の突破手段がなさそうです。」
「了解、じゃあもう終わりかな。この竜巻を攻略できないし、仮にできても時間はもう十分に稼いでる。八百万さんのトラップでうまく進行できずにタイムアップかな。」
「最後まで油断はしないでください。…それにそのトラップですが天地さんの竜巻のせいでいくつかダメになっています。」
声を低くしながらそう返され、思わず苦笑いを浮かべた。
「あはは…すみませんでした。」
「もう!本当に気をつけてください!で、この竜巻はいつ収まるのですか?そのタイミングで相手からアクションがあると思われます。」
「いつ、ねえ…まあとりあえず制限時間は余裕で超えるかな。」
それだけを告げ連絡を終了し、相変わらず風の壁で遮断されている出入口を見つめる。いまだ相手の影も形も確認できないが、先ほど油断するなと注意されたため1,2階の見回りを行った。
◆
『終了~!ヴィランチームWIN!』
オールマイトの終了アナウンスが室内に響いた。その声を聞き火水は個性を止めインカムで八百万にお疲れとだけ伝えモニタールームへ戻った。結局ヒーローチームは竜巻を打開する手段がなかったようでそのまま制限時間となり訓練が終了した。
「今回のMVPは天地少年だね!個性による時間いっぱいの足止め、とても強力な妨害で言うことなし…と言いたいところだが、どうもチーム内通話を聞いているとそのことを味方に伝えていなかったようだね。八百万少女が事前に知っていれば、室内のトラップが壊れないよう工夫を施していただろう。それに対策をしていたとはいえ窓ガラスが割れれば怪我をしてしまうかもしれない。それはヴィランとしてもヒーローとしても気をつける必要があるね。必ずしも連携をとる必要はないが、最低限の連絡を心がけてくれ!!」
「わかりました、ありがとうございます。」
褒められはしたがそれ以上に注意を受けてしまった。当然と言えば当然なことだ、隣の八百万さんも「全くですわ」と言わんばかりの表情に気恥ずかしくなり小さく舌を出した。
その後は特に大きなトラブルもなく進行していき全5組全ての訓練が終了した。オールマイトからの総評としては「初めての訓練にしちゃ上出来だったぜ!」とのことだった。
◆
「放課後は皆で訓練の反省会しねえか?」
下校時間になり皆が帰る準備をしている中、ツンツン髪の男の子…切島くんだったかが大声で呼びかけた。どうやら大半のクラスメイトは乗り気なようで次々に参加を表明していた。火水はそれを横目に帰り支度を済ませてリュックを背負い席を立った。
「あれ、火水くんは参加しないの?」
教室を出ようとすると葉隠さんに呼び止められた。
「あー、この後スーパーで卵の特売があるから確保しないと。」
「「「主婦かよ‼︎」」」
「それどこのスーパーなん⁉︎うぅ…めっちゃ行きたい…」
教室内にツッコミが響く。仲良いなあと思いくすりと笑みをこぼした。
「あはは、そういうことだからごめんね。麗日さん…だっけ、おひとり様2パックまでだから1つ麗日さん用に確保しとくね。」
火水はそれだけ言うと教室を後にした。後ろから「ほんまに⁉︎ありがと〜」と聞こえたので振り返らず手を振って足早に去った。
◆
「3戦目もすごかったよなー天地の個性。正直相手じゃなくてよかったわ。」
「ええ、ですがその反面屋内だと使いづらいと仰っていました。」
「へぇーそんな弱点があんのな、天地の個性の…えーっとあれ?あいつの個性名なんだっけ?」
「言ってたっけ…葉隠は?仲良さそうだし知ってる?」
「そう言われると聞いたことないや!何て名前なんだろー」
「ま、本人いないし今度でいいか。じゃあ次なんだけど…」