危険な個性を持って生まれたら   作:れる

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学級委員長決め

平日朝、火水はいつも通り雄英へ登校すると校門の前に多くの報道陣が押し寄せているのを確認した。登校する生徒たちにカメラやマイクを向けて無理やりインタビューを受けさせている姿に思わず顔をしかめた。しかし通学には正門を通るしかなくしぶしぶ突入すると、例にもれずマイクを向けられた。

 

「教師としてのオールマイトはどのような感じですか?」

 

「まだ受けてないのでわかりません、楽しみです。」

 

生徒の通学を妨害するような連中に素直な受け答えをする義理もないと適当な受け答えをし、報道陣を抜け出して雄英の敷地内に逃げ込んだ。

 

クラスに入り自分の席に着席すると先ほどのことを思い出し、深くため息をつくと後ろの席の飯田君が声をかけてきた。

 

「むっ、朝からため息とはどうしたんだ、もしや体調でも優れないのか?」

 

「ああいや、校門前で報道陣に囲まれなかった?ああいうの慣れてなくてさあ…」

 

「確かにボ…俺も驚きはしたな。しかし天地くん、将来ヒーローになれば多くのインタビューを受けることになるぞ、今のうちに慣れておくべきだ。」

 

「アーウンソウダネ、ガンバリマス」

 

飯田くんの言い分もごもっともだが慣れていないものは慣れていない。そもそもうちの担任は緑谷くんいわくメディア露出しないヒーローだそうだ。絶対に自分も将来そうなろうとひそかに心に誓い、飯田くんには聞こえないよう再び小さくため息をついた。

 

 

  ◆

 

 

「昨日の戦闘訓練おつかれ。Vと成績は見せてもらったぞ。」

 

相澤先生がプリントの束を片手に教壇に立ち、チャイムが鳴り終わると同時に話し始めた。訓練の講評があるのかと思ったが、爆轟くんと緑谷くんへの注意を行っただけでその他全体への言及はなかった。

 

「さて、HRの本題だ。急で悪いが今日は君らに……」

 

突然区切られた言葉に緊張が走る。抜き打ちテストでもするのだろうか、何も準備してないからやめてほしいなと考えながら次の言葉を待つ。

 

「————学級委員長を決めてもらう。」

 

「「「学校っぽいの来たー!」」」

 

予想外の言葉に火水は思わず気が抜けてしまった。テストでなくて良かったが学級委員長か、めんどくさいから誰かやってくれないかなと考えていると、次々と手が挙げられた。

 

(学級委員って先生の雑用押し付けられ役じゃん、なんで皆やりたがるの…)

 

「静粛にしたまえ!!多を牽引する重大な仕事だぞ…!周囲からの信頼あってこその聖務…!真のリーダーを皆で決めるというのなら…これは投票で決めるべき議案!!」

 

「そびえたってんじゃねーか!なぜ発案した!!」

 

真剣な表情でもっともらしいことを言う飯田くんだったが、そんな彼の右腕はまっすぐと上に伸びていた。まあ正直1番似合ってるよ。

 

そんな彼の提案にクラスの皆は不満だったのか口々に文句を言いだした。しかし飯田くんは「ここで複数票とったものこそが真にふさわしい人間!」と力強く答えた。相澤先生は時間内に決まれば何でもいいというスタンスで、寝袋に入ってしまった。

 

他に代案はなさそうですぐに投票が行われた。火水は誰に投票しようか少し考え、さらさらと名前を書いて箱に票を入れた。

 

すぐに開票が行われ黒板に結果が記入されていった。

結果は、緑谷くんが3票、八百万さんと葉隠さんが2票で以下1票と0票。トップの得票数を獲得した緑谷くんはとても驚いている様子だ。

 

「2票がふたりいるじゃん、この場合はどうなんだ?」

 

「時間もないしじゃんけんにしようよ!ヤオモモもそれでいい?」

 

「再投票する時間もありませんし、仕方ありませんね。」

 

決選投票をするには時間がないためじゃんけんで副委員長を決めることとなった。葉隠さんはどこからか持ってきたじゃんけん用のプラカードを手に戦いに臨んだ。そしてこの勝負には見事八百万さんが勝利し、学級委員長に緑谷くん、副委員長に八百万さんが就任した。

 

 

  ◆

 

 

「天地くん、学食いこ!」

 

昼休み、いつも通り教室で弁当を食べようとリュックから取り出そうとしていると葉隠さんから声がかかった。

 

「ごめん今日も弁当だから…」

 

「今日は衝子ちゃんと一緒に食べるし、天地くんも連れて行くって言っちゃった!それに学食で弁当を食べちゃいけないって決まりはないよ!」

 

ほら早く早くとせっつかれ、まあ今日ぐらいはいいかと思い弁当を片手に席を立った。

 

かくして、途中で反町さんと合流し学食へ向かった火水たち、女子2人が料理を受け取り席に着いた。

 

「A組も委員長決めだったんだ。私たちも今日決まったの、拳藤さんって女の子。」

 

「うちは緑谷くんって男子、副委員長は私も候補だったけどじゃんけんで負けちゃったー」

 

対面に座っている2人が今までの出来事について談笑している一方で、火水は会話に混ざらず黙々と弁当を食べていた。

 

「天地くんでしょ、私に投票してくれたの。」

 

不意に声がかかり、箸を止め顔を上げると2人がこちらを見ていた。どうやら自分が葉隠さんに投票したことを気づいている様子で、特段隠すことでもないし素直に答えた。

 

「そうだけど、よくわかったね。」

 

「だって0票の人たち見たら私に入れそうな人は天地くんくらいだったし。で、なんで私に入れてくれたの?」

 

「別に深い理由はないよ、明るくて元気のある人がいいかなって思ったから葉隠さんにいれただけ。」

 

葉隠さんに投票した理由を伝えると彼女は押し黙ってしまった。返答もなかったため再び弁当を食べようとすると、向かいの席から箸が伸び自分の卵焼きを連れ去った。

 

「…ねえ何してんの。」

 

「おいし〜!一人暮らしだから天地くんが作ったんだよね、料理男子だー。衝子ちゃんも食べてみなよ。」

 

「え、ええと…」

 

勝手に人の楽しみを奪いさらには他人にも勧める様子に、反町さんも困った表現で俺と葉隠さんを交互に見る。さすがにイラッとしたがここで怒っても卵焼きは既に葉隠さんの胃の中。わざとらしくため息をつき弁当箱を反町さんに差し出すと、彼女は恐る恐る卵焼きを受け取った。

 

「わ、本当に美味しい。私は料理全然だから羨ましいなあ。」

 

「…どうも。」

 

「もー怒んないでよー友達同士のちょっとしたじゃれ合いじゃん!」

 

葉隠さんがけたけた笑いながら副菜のお浸しを渡してきた。それ自分がいらないだけだろ、と思ったが渋々受け取った。それよりも気になったことがある。

 

「友達なの?俺たちって。」

 

「「え…?」」

 

何気なく聞いた一言に2人は凍りついたように動かなくなった。言い方間違えたかと感じ補足しようとした。

 

「ああ、ごめん。今まで友達いなかったから、友達になってる基準がわかんなくて…」

 

「びっくりしたー嫌われてるかと思ったじゃん!!」

 

葉隠さんは机に身を乗り出しぷんすこと怒りを露わにし、反町さんはというと頭を何度も上下に振っていた。

 

「でもなんとなくわかる気がするな。天地くんって話しかけたら喋ってくれるけど深く関わってはくれないよね。…なんで?」

 

「…まあちょっと色々事情があったから。」

 

「そっか。じゃあ私たちが友達1号と2号だね!」

 

「え?…いやでも俺は…」

 

他人と深く関わらない理由を答えないでいると追及はしないでくれた。その代わりに唐突な友達宣言をされ火水は困惑した。

 

「深く考えなくてもいいんじゃない?友達なんて気づいたらなってるものだし!」

 

「私もその、友達になってくれると嬉しいな…」

 

「…なんでそこまでして俺に関わってくれるの?」

 

男子の友達が欲しいなら他にもいっぱいいる。こんな無愛想なやつに関わってくれる理由がわからなくて、ついつい聞いてしまった。

 

「だってせっかく一番初めに仲良くなった男の子なのに、いつも楽しくなさそうにしてるもん。私はこんなだから潜入系のヒーロー目指してるんだけど、それ以上に人を笑顔にさせるヒーローに憧れてるんだ。だから卒業まで何回も天地くんを笑わせてあげるから!楽しみにしててね。」

 

目の錯覚だろか、声を弾ませながらこちらに語り掛ける彼女の内側がきらっと光った気がした。目をこすり改めて彼女を見るといつも通り透明な少女が座っているだけだ。

 

「それって葉隠さんの信念ってやつ?」

 

「え?いや~そんな大層なものじゃないけど、でもそうだね、目標かな?」

 

「そっか、ありがとう。反町さんもそんな感じなの?」

 

「私はそんな大層な理由はないよ。でも友達になることに理由なんてないんじゃないかな?あっでも嫌だったら全然友達になってくれなくても…」

 

「嫌なんてことはないから安心して。でもそっか、ありがとう。」

 

理由はない、か。同年代との関りを積極的にしなかったからそんな単純なことだなんて考えもつかなかった。少し怖いことはあるけど、この優しい人たちに答えてみよう。

 

「うんうん!じゃあ天地くんは放課後マックにもスタバにも行ったことないんだね。早速今日行ってみる?どこ連れて行こっかなー」

 

葉隠さんが腕を組み今日の放課後に思いを馳せていると突然食堂内にけたたましい警報が鳴り響いた。

 

『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外へ避難してください。繰り返します。セキュリティ3が————』

 

「うわ!なにこれ、セキュリティ3って何⁉︎」

 

「きゃあ!な、なにが起きてるの…?」

 

突然の事態に女子2人は声を上げて驚きを隠せない様子だ。火水も声は出さなかったものの周りをキョロキョロ見渡していると、上級生らしき人たちが慌てて出入口に向かっていた。

 

「私たちも逃げよう!」

 

「う、うん急がないと…」

 

周りに釣られて慌てて立ちあがろうとしたが、火水は2人の腕を掴み落ち着くよう促した。

 

「落ち着いて、今下手に動くと怪我するよ。それにあんな状態じゃあ出られそうもないし。」

 

「わっ、本当だ。みんなパニックで出入口が塞がっちゃってる…」

 

「い、行かなくてよかった…ありがとう天地くん。」

 

別に、とだけ返して再び辺りを見回す。状況が落ち着いたら行動しようかと思ったが、いまだに喧騒が止まない。どうしたものかと考えていると、どこかで聞いた男子生徒の声が食堂内に響いた。

 

「ねえあれ見て!」

 

葉隠さんが袖を向けた方を見ると、飯田くんが出入口の上で非常口のピクトグラムのポーズをとりながら、皆に落ち着くよう声を上げていた。

 

 

  ◆

 

 

「やっぱり委員長は…飯田くんがいいと思います!」

 

午後、他の委員会決めの始まりに緑谷くんが学級委員長を辞退し飯田くんを推薦した。相澤先生は何でもいいから早く決めろといった様子で、珍しく火水と意見が合致した。その後は滞りなく各委員会の担当が決まり、午後の授業は先ほどの警報の影響で休止となった。

 

火水は早くに帰ろうとしたが、途中で葉隠さんに呼び止められた。話を聞くとどうやら早速マックに連れて行ってくれるらしい。いつもより早く学校が終わったし、他に用事もないため了承して、反町さんと合流してからマックへ向かった。

 

初めて友達と遊んだ感想は、楽しかったとだけ言っておく。

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