あと、ついでに7票だけでもアンケはアンケ。これ曇らせシーンじゃね?と思った時に曇らせタグは付けさせてもらいます。(いつになるかは知らないが)
ヤザンとビーストボーンとも別れ、更に夜が更けた道を歩くブラッド。
こんな夜に屋台を開いている場所があり、ブラッドは椅子に座る。おでんという物らしく、未知の食べ物に少し戸惑ったが、意を決して注文をする。
「隣いいかい?」
ブラッドの右側に別のお客がやってきて座る。つばの大きい羽が着いた帽子に長いマントを羽織っていてまるで旅人のような人だ。
「大将、酒あるか?」
「未成年だろお前、これ飲んどけ」
ぶっきらぼうな大将が雑にコップとオレンジジュースを渡す。
「酒じゃないが…ま、いいだろ。アンタも飲もうぜ?」
隣の奴から飲みに誘われたので、遠慮することなく誘いを受ける。コップに注いでカチンと鳴らしてから2人で同時に呷った。
「はー…」
「随分といい飲みっぷりだこと」
「それで、俺に話しかけるなんてなんの用だ?」
ブラッドが聞く。
「……人を探している」
「警察行け、そしたら探してくれるだろ」
「それが出来たら苦労はしないんだがな…」
ブラッドは頼んだおでんが来たのを受け取り、味を噛み締める。初めて食べる物だったが、程よく味が染み込んでて美味いと感じながら話を聞く。
「……だが、ここで会ったのも何かの縁だ。どんなヤツを探してるんだ?」
「……まぁ、強いて言うならハゲ頭だな」
「はぁ?」
「おっさんで、自分の意見を決して曲げない、目的の為に全力を出す…」
そう言って帽子を取る。短く切り揃えられた黒髪巻き毛の少女。初めて目を合わせたがどこか懐かしい。いや、こいつの事は自分も知っている…
「弓一筋でしかなかった俺に、どんな形であれ助けの手を出してくれた奴だよ」
「………オラン」
ここまで言われてわからないなんてことはない。目の前にいる少女はオランだ。ジョイミュータントになった筈のオラン・ダン・ホイトだ。
オランが探しているのはブラッドの事だろう。だが、ブラッドは名乗り出る事は出来なかった。それはオランにあのような最後を迎えさせてしまった自分に自責の念があるからだ。
「今なんか言ったか?」
「……いや、何も言ってないさ」
だからブラッドは他人のフリを続ける事にした。今日ここで会った他人になり、それぞれの道を歩むために。
「ほら、飲み物のお礼だ。食えよ」
「お、悪いね」
オランに自分のおでんを分け与え、ジュースを飲み暫く何も喋らないまま時間が過ぎる。2回目の注文を終えてまたオランから話がやってきた。
「なぁ、アンタ」
「ん?」
「アンタは、もしこの世界が男だけで、女が自分だけだと知ったらどう思う?」
「………さぁな」
「まぁ、そうだよな。そんな世界ある訳がねぇか!」
ははは!と、オランが笑い声をあげておでんを食す。だがその笑い声も次第に小さくなり、神妙な声になっていく。
「でもな、もし俺だったらなまじ記憶がある分恐怖が勝つ。だがもし記憶がなかったら?俺は世界という鳥かごからなんの違和感もなく育つだろうな」
そう言ってジュースを飲み少し口を湿らせてからまた話始める。
「記憶がある分人前から出ない努力をする。自分が襲われないためにな、何せ半端な記憶でも、体験してきて完全な証明が出来る記憶でもその常識があるから、男の前に姿を表せられない。襲われるのが目に見えてるからだ。じゃあ、記憶が無い状態の女はどうだ?」
オランは声のトーンを落として言った。
「簡単だよ。誰かに助けてもらわにゃいかん。赤ん坊なら育てて貰い、子供になって常識を学び、好奇心を得て…そして親元を離れる……親は失った子供を見て、空虚な気持ちを得るんだ…所有物でもないのに…な」
オランは少し空を見上げる。泣きそうなのか目が少し潤っている。
「なぁ、少し俺の懺悔を聞いてくれないか?何…少し頭のおかしいおっさん気取りの女の話だ…」
「…………あぁ、いいぞ」
オランは少し目元を拭い、話す。
「俺はな…実はちょっとばかし後悔と…尊敬をしているんだよ、後悔は俺。尊敬は…まぁ親友と言うべき存在に、かな」
何かを思い出しているのか、オランは笑みを浮かべながら、曇った顔をしている。
「俺は家庭を顧みない奴だった。いつだって仕事と趣味一筋…元妻、娘2人がいるにも壁を作り、決して良い親とは言えない生活をしていた。ある日、いつもの日常が崩れ去り、家族とも言えぬ仲だった家族が消えた後も、酒とアーチェリーのみをして生きてきたのさ…」
残り少ないジュースを瓶ごとラッパして一気に飲み干したオランはガンッ!と瓶を叩きつけた。
「そして、いよいよ弓の腕も悪くなった。その事を親友に話すと、親友はある物をくれた。それはその時の俺にとってはありがたいものでもあった。だが、それは一つだけでも俺をその快楽の深淵へと引きずり込んだのさ」
ブラッドの顔が僅かに曇る。オランはその事を知らずに喋り続ける。
「最初は頭が冴えて仕方がなかった。それこそ痛いほどに。だが、突如考えないようにしていた後悔…家族のことが頭に浮かび、それが俺の身体を蝕み続けるのに気がついた時にはもう何もかも遅いと悟った。誰にも知らせず、誰も知らずにひっそりと…俺はあいつらに別れを告げて俺自身を捨てた。筈だったんだがな……」
「……お邪魔します」
ブラッドの隣に、新たなお客がやってきた。ブラッドはオランの方に席を近づけて出来るだけ話を聞かれないようにした。
「……少し声を小さくしような、聞かれたら大変かもだろ?」
「……ありがとうな」
そしてまた話始めるオラン。
「気がつけば、ここで目覚めた。それは俺にとってはあまりにも非現実的で…素晴らしく、そして無慈悲な現実が俺を刺す痛みの監獄でもあった」
オランは胸元を掴み苦しそうに机に突っ伏した。
「あの、大丈夫ですか?」
「心配無い。迷惑かけてすまん」
隣の客が心配そうに声をかけるが、ブラッドはすかさずなんでもないと答える。
「孤独になった俺は、かつての記憶を思い出し、ある親友を思い出した。娘の為に身体ひとつで旅をし、それでも尚、俺でも耐えられなかったあの痛みに耐えながら、娘をあの歳まで育てた1人の男を!」
そして、遂にオランの目から涙が零れる。
「その時…俺は同時にアイツをすげぇと思えるようになった。あの環境の中、襲われることなくあの世界の常識を娘に教えられた事を…俺と同じものを服用して、それでも尚屈することなく今まで生き残ってきた事を…」
そんな大層な存在じゃない。ブラッドは否定したくなった。自分も正しいことをしたと胸を張っていられるほど思っていなかったからだ。自分は不器用で、知らない事も多く、教えられる事があれしかないから…
「そして、俺は…後悔したよ。どうしてもっと、娘達や元妻と親交を深められなかったんだと。胸が痛む程掻きむしったさ。でも、痛みは一向に引かない。俺の中でいつまでも痛み続けているのさ。今もな」
胸をさすりながら、少し晴れた顔をして、ブラッドの方を見る。
「だがな、親友…ブラッドがジョイをくれたことについては恨んでは無い。寧ろ感謝してる感じだ。不器用でも、不器用なりに気を使ってくれたアイツの贈り物は、どんな形であれ、俺に罪の形を見せてくれた。俺はこの痛みを一生背負って生きていくだろう。だが、
席を立ち、ヒートアップしたのかブラッドに顔を近づかせながら唾を飛ばして話すオラン。普段のオランは基本無口で、そのオランを知っているブラッドであってもここまで激しく話すオランは見た事なかった。
「落ち着け…おい、ゆっくりでいい。息を整えろ」
「はぁ…はぁ…俺は…俺は…」
「……まぁ、そうだな…多分だが、聞いてた感じ、その男はそれを渡して…いなくなったお前を探し、見つけて後悔するだろう…」
「……そうだよな」
「でも、それでもソイツを思うんだったら、いつかは届くんじゃないか?その想いが…」
「……ふっ、そうだといいな」
「………ん」
話終わり、ブラッドはそろそろお暇するか…と、席を立とうとして…
「失礼、少々お時間いただけますか?」
隣のお客から声をかけられる。
獣耳が生えた、金髪ギザ歯の人。その人は胸元から手帳のようなものを取り出し、コチラに見せつける。
「ヴァルキューレ警察学校、公安局局長の尾刃カンナです。失礼、少々顔の拝見よろしいですか?」
「……あぁ」
これはマズイと思ったと同時に、ここで逃げれば不審度が増すと思い、ブラッドは素直に受ける。
「…………」
「……………はぁ〜〜〜…」
カンナは長い溜息を吐いた。
「すみませんが、少々署までご同行願います」
「………あぁ」
流石に観念したのか、ブラッドは特に反抗することも無くついて行こうとする。
「ちょいちょい待ちな。彼女が何かしたってのか?」
それをオランが黙って見過ごす訳がなかった。オランはカンナの道を塞ぐように前に立つ。
「……一般には、まだ公開出来ないので」
「いーや、教えてくれるまでどかないね」
「……公務執行妨害ですよ」
「それでもだ」
「……………」
カンナはひと睨み…正確には目を細めただけだが、オランを見る。そして何度目かわからない溜息を吐いて、数枚の写真を取り出す。
「……こちら、今日の某時間にある場所で撮影された監視カメラの映像です」
そこには、少し画質が荒いが何人かの姿が写っていた。ブラッド達だ。そこに写っているのは、今日の施設内で起きた出来事を撮影した物だった。
「そして、コチラの写真とコチラの方の特徴が一致していますので、少々聴取の方をさせて貰おうと思っていた所です」
「もし違ったらどうするんだ?」
「まだ公に出ていない情報ですので」
「それは俺だ」
次第にヒートアップしていく2人にブラッドはつい口を挟んでしまった。
「………そういう事でしたら…」
「だが、帰りを待つ奴がいる。話…というより、事情聴取は受ける。だから手短に終わらせてくれ」
「……分かりました、では近くの署まで」
そう言って代金を払い近くの署まで向かう。オランは最後まで着いてきた。
着いて早々、取り調べ室に来た。だが、他のヴァルキューレの生徒はいない。夜遅いので殆どが残っていないのだ。なので、ここにいるのはブラッドとカンナ、そして特別にオランも同席している。
「では、まず最初にお名前を…」
「ブラッド。ブラッド・エドウィン・アームストロング。出身校無し、年齢不明だ」
「!?」
突然のカミングアウトにオランは空いた口が塞がらない。先程話していた相手がブラッドだったと思わなかったのだろう。
「……では、少し状況の説明を。この事件ではあなた方が侵入し、施設で暴れ、貴重な物等を盗んで行ったという被害届が出されていますが、それは本当ですか?」
「暴れたのは本当だ。だが、侵入は違う。俺達は拉致されただけだ」
「ふむ…」
カンナが顎に手を当てて考え込む。どうやら聞いていた情報と違うらしい。
「詳しくお聞きしても?」
「俺達はカートレース会場から、出資者の事務所まで行った。そしたら近くにいた兵士にあの出資者は借金をしていたからお前達は人質だ、と言われ身内全員拉致されてあの場に連れてこられた。そしてそのままあの中では脅迫暴行なんでもやられ、俺達は暴れてあの場から逃げ出した。これでいいか?」
「成程…」
カンナはそう言って目を閉じ、その後幾つかの質問をして資料を閉じる。
「疑って申し訳ありません」
そう言って頭を下げる。
「どうやら、送られた内容と随分違うようで。逆に被害者はあなた達だったようですね」
「いや、わかればいいんだ」
「まぁ、上層部が何としても探し出せ、と言っていたので何かある…とは思っていましたがそういう事でしたか。元より出された資料が少なすぎたので状況を照らし合わせるだけでしたので。逮捕するなんて気もありませんでした」
「つ、つまり?」
「ただの自主的な事情聴取です」
「じゃ、じゃあ俺は早とちりしたって訳か?」
「えぇ」
カンナは淡白に答え、オランはずっこけた。
「じゃあ、もういいか?俺達は無罪だと?」
「えぇ、と言っても…気をつけて下さい。私からも進言してみますが、上が意見を曲げない、なんて事もあるかもしれませんので。今の上層部は、信用ならない」
「そうなったら身を隠すから大丈夫だ」
「一応忠告しますが、私の前で怪しい行動したら逮捕するので気をつけて下さいね」
気が付けば、少し軽口を叩けるくらいの親密度になっていたブラッドとカンナ。何かあった時の為にお互いのモモトークを…と思ったが、ブラッド自身まだスマホを持ってない為カンナの連絡先だけを貰いその場で別れた。
帰路は、オランと一緒だった。
「ブラッド、だったんだな」
「あぁ、すまないなオラン」
「何に謝ってるんだ?」
「屋台の時から正体を隠してたのと、ジョイの件だ」
「ブラッド、俺の話を聞いてたらジョイの件は気にするな。それより俺はすぐに名乗り出てくれなかった方が悲しかったぜ?」
「………」
「なぁ、アンタ今何やってるんだ?」
「………またかつての仲間に会いに行ってる」
「そのかつての仲間はアンタが言ってた施設で暴れ回ったのと関係あるのかい?」
「…………」
「黙るのは肯定の印だ。オレイサの時と同じ、わかりやすいぞ?」
「あぁ、テリー達だ。今はバディとか関係ない。本当にお互い自由にやろうとバカやってるよ」
「そうか………なぁ、ブラッド」
「なんだ?」
「なら、俺もその輪にまた入れないかい?」
「いいのか?お前…」
「いいんだ、寧ろ入れさせてくれ。1人の辛さってのは意外とバカにならねぇんだぜ?」
「………だが…」
それでも煮え切らない態度のブラッドにオランが少し考え込み…
「お節介を焼くつもりはないが…ひとりでやるつもりなら、そりゃ無理な話だぜ?」
「!」
「外は戦争だ。味方が必要になる」
その言葉は聞き覚えがあった。オランがブラッドにかけた言葉だ。
「アンタは、面倒事に巻き込まれてた。なら、少しでも手はあった方がいいだろう?」
そう言うと、オランはニッと笑い持っていた串を出す。
「それに、あんたにはおごってもらったしな」
こんな事言われては、迎え入れないなんて出来ないじゃないか。
「……また俺の目的の為に付き合ってくれるのか?」
「あぁ」
「なら、よろしく頼むよ」
「こちらこそ」
オラン・ホイトが仲間になった!
オランとも再開したブラッドは、集まる場所を教え、オランと別れた。
かなりの時間を過ごしたので、そろそろ帰ろう…そう思ったその時…誰かが前からやってきた。
黒色のスーツを着た…人ならざる姿をした何かだ。
「クックックッ…どうも初めまして…ブラッド・アームストロングさん」
「…お前は誰だ?何故俺の名を知っている?」
ソイツは、初対面にも関わらずコチラの名前を知っていた。その事にブラッドは警戒心を強める。
「私の事は黒服とでもお呼びください。今回はブラッドさん、あなたにあるお話をする為にやって来ました…」
顔を近づけ、ブラッドを見つめる黒服。心の内側まで見られている気がしてブラッドは気味の悪い感覚になる。
ブラッドの夜はまだ明けない…
この二次創作、9割かきてーから書く欲で出てる二次創作作品なんで伸びろ!って思ってる訳じゃないけどお気に入り、もしくは評価投票やしおり入ってるのを見るとこんだけLisaやってる(もしくは知ってる、知った)って人がいるんだなぁ…って感慨深いものになる。