ホシノはピタリと止まり、また糸が切れた操り人形のように倒れ込む。
「………ぁ、だ…だだだ、だ、だぃ…じょ、じょ…ぅぶ……」
クロが近づき、ホシノの安否を確かめる。気を失っていることを全員に伝えると、対策委員会の皆は安心した。
「良かった…一時はどうなるかと…」
アヤネがほっと息をつく、ブラッドは先生と少し話をして全員を1部屋に集めることにした。
「先生、あんたここに来るまでに俺達がどういう状況になってたか知ってたか?」
「"言伝だけで粗方ね、詳しいことは分からないよ"」
「ならあんたにここで何があったのかを話す。そしてこれからについて話そうじゃないか」
先生と話しながら歩いていたブラッドが振り返り、ホシノを介抱するクロを見る。クロはブラッドを見ると、手を振って返した。
ブラッドも手を振り返してクロに後を任せて対策委員会の部室に戻る。
「ん、ここに来てからブラッドは弟をよく気にかけてる」
「そうですね、クロ君も満更ではありませんし!」
「クロはいい子、でもまだ婿にあげない。ブラッドはクロの事どう思ってるの?ここに来てから一度も話してくれない」
「
ブラッドは遠巻きにクロを見る。大きな身体からはガサツな動きは見て取れず、慈しむようにホシノを抱き上げるその姿にブラッドは思わず目を背ける。
「少し、昔を思い出しただけだ」
かつて自分がバディと共に過ごしていた時期もそうだが、ブラッドはバディより前にいた
その記憶をブラッドは認めたくない訳でも無く、無かったことにしたい訳でもない。ただ今ある程度心に余裕が生まれてきたブラッドにとって、どう向き合えばいいのか分からないものだった。
彼は自分を父のように慕っていたのは知っている。
だが、自分は父という存在は地雷にも等しく、父ないし親と思われる表現は使わせなかった。
それはいいが、あの頃にもやりようはあったはずで、もう少し向き合うことも出来たんじゃないかと思う。
結局、どう振り返ろうとブラッド自身もうどうにも出来ないと思った。ただ、この世界にもし彼もまた来ており自分という存在に気がついたのなら、正面から向き合ってみようとは思った。
その時は、ゆっくりと酒でも呑んで語ろう。自分は今は未成年の身体だが。
「さて先生、一応何があったかは知ってるようだがあんたが不在の時に何があったのかをもう一度話しておこう」
対策委員会の部室に全員が集まり、シャーレからスティッキーも参加する。ブラッドがホワイトボードの前に立って何があったのか説明していく。
「まず、夜が明けてセリカとリサの2人を俺たちが護衛しながらバイト先まで送り届けた」
「……暫くあの行進をしなきゃいけないのが恥ずかしい…」
「少しの辛抱だよ?問題なかったらいつも通りになるらしいから」
「うちとしても、あまり襲われたくないからな」
セリカが顔を隠しながらイヤイヤとしている所をシロコが、ブラッドがリサを見る。
「まぁここまではいいんだが、問題は次だ。便利屋68が傭兵を連れて襲撃に来てな。まぁ理由は金欠だったからなんだが」
「…それについては俺が前の誘拐事件の折に報酬を後払いにしてくれと頼んだのが悪かった…本当に申し訳ない」
ヤザンが頭を下げるが、全員が頭を上げるよう言った。
「あれはあぁしないとダメだったのは私が1番分かってるんだから!いいのよ!」
「現状打破でできうる限りのことをして、次にその解決の鍵が問題になるのは頭が痛くなりますけどね……」
セリカとアヤネの2人がそれぞれの思いを口にする。
「まぁそれはそれとして、俺たちは第三者だが今はアビドス側の協力をしている。だが便利屋側にも恩がある為あまり積極的に対面は出来ない。なので俺たちは雇われた傭兵をメインに抵抗していたんだが…」
「その時にホシノ先輩が…」
「"成程、大体把握出来たよ"」
ようは、便利屋68の襲撃をどうにか退けられたはいいものの、今度はホシノがまたあの時みたいに暴れ始めたので、次にブラッド達はホシノを抑え込み今日に至るという訳だ。
「あの嬢ちゃんはかなり強かったが、クロと何人かだ合わせればどうにかなった。そしてその分手が空いた俺たちのチーム防衛に回れた」
「それについては助かりました。私達5人だけだったら、どうにもならなかったでしょうし」
「それならいい。無駄に多い人員腐らせるのは勿体ないからな」
ブラッドの言い草にブーイングをするチームオレイサ。ブラッドが手に拳を打ち付けると一斉に黙りこむ。
「と、ここまでが今日に至るまでの経緯。そしてここからは、これからについて話すぞ」
「これから、ですか?」
「あぁ、じゃあ先生。まずあんたがここに来た理由はアビドスの救援要請を受けてやってきたことだ。違うか?」
「"そうだね"」
「だが、現状救援らしい救援は何も出来てない。それどころか、ハプニングに次ぐハプニング。俺達は結局何も物事を達成していない。というか始まってもいないんだ」
「そういえば…そうですね」
「ん、ココ最近色々あったからすっかり忘れてたけど」
「だが、あの嬢ちゃんを切り捨てれば人数という枷は増え、他にも色々な障害もあるだろうが、自由に動けられるはずだ。だがそれも、あんたらを見てたら切り捨てることもしない。違うか?」
ブラッドの問いかけに4人は頷く。
「えぇ、私達はホシノ先輩を最後まで見捨てたりしません」
「ならいい、が。アイツが服用しているのははっきり言って違法薬物だ。何故、今まで止めなかった?」
そう聞くと顔を俯かせるが、暫くして代表したノノミはゆっくりと喋る。
「私がここに来た最初は、アメのようなものかと思ってたんです。ですけどある時知った流行りの薬物だと分かって最初は止めてホシノ先輩は辞めたんですよ。ですが…」
「裏ではずっと服用していたってパターンか」
「どうやら、そうだったようです。今思えば頭痛薬と偽って服用してたりもしてたんでしょうね。気が付かなかった私も私ですけど」
自虐を含めた雰囲気で鼻で笑うノノミ。ブラッドも服用者だったので断薬の辛さは分かる。ホシノはどうやらブラッドと同じ辞められなかった者らしい。
「正直に言おう、あの状態の嬢ちゃんを抱えるとなるとこれから先どうやったっていつ来るか分からない禁断症状に怯えながら仲間内で過ごすこととなる。早急に対策が必要だ」
「そうでしょうけど、ジョイは治す手立てが今は無いと聞いています…」
そう言われると途端に道が見えなくなる。何とかしたい、だがその手立てがない。現状から悪化しないようにする。だがそれは本人次第という分が悪いギャンブルに付き合わされてる気分だった。
そんな中、1人通信を繋げていたにもかかわらず一言も発していないスティッキーが声を上げた。
『凄いな、ブラッド』
「どうした、急に」
『前のお前だったら、ここまで具体的な意見は出さなかった。ふふふ、リーダーとしての責務を全うしてるとでも言った方がいいか?』
「やめろ、気持ち悪い。それで、お前が発言するなら何があるんだろう?」
『ある。お前ら、ブラックマーケットって知ってるか?』
「ブラックマーケット、ですか?」
『所謂、闇市って奴だ。非合法の物も流通してるが、その分希少な物も流れ着いてる。少なくとも、今のキヴォトスでは売買に関して猛威を振るってると言っても過言では無い』
スティッキーはそのままブラックマーケットについての説明を続ける。
『お前達からの情報、届いてからこちらで色々と調べさせてもらった。なんでもヘルメット団の武装も型番がおかしいものがあったそうじゃないか』
「はい、まさかそれの調査の為に?」
アヤネの問いにスティッキーは首を振る。
『それだけで行くわけがないだろう?欲しいのは一括りで言うなら情報だ。次点で資材。情報は金になる。例えば今行方不明の連邦生徒会長が何処にいるなんて情報、それだけでも各所から金が来るぞ。まぁそんな事は置いといてだ』
「……僕のヒントだって情報みたいなものなのに…」
『テリーお前は黙ってろ。つまり、そんなにお前達の先輩を助けたいなら、ブラックマーケットで調べればいいんだ。本当にあるのか?もしかしたら、上級の立場だけがジョイの対抗策を独占している、なんて噂のものがあるかもしれない』
「あっ!そっか!!」
「確かに!それならホシノ先輩もどうにかなる見込みがありそうですね!」
『過度な信用は禁物だぞ。絶対なんてものはないからな』
こうして、対策委員会とチームオレイサのブラックマーケットへ向かう事がほぼ確定となった時、1つの課題が見つかった。
「ですが、お金はどうしましょう…」
「「「あ」」」
アヤネの呟きに全員がそれに気づいたのか動きが止まる。
「ん、銀行を襲う」
そして待ってましたと言わんばかりに覆面を手にシロコが立ち上がる。
「カードは…使えませんね」
ブラックマーケットのショッピングも足がつくのであまり使いたくない。
「バイト代…だけで足りると思う?」
「……オラン、どう思う?」
「…無理じゃねぇかな」
セリカがワンチャンバイト代でどうにかならないか聞くが、返ってきたのは無慈悲な回答。
『まぁ安心しろ、資金については宛がある』
いつもは余計な出費と借金が嵩んで行く現状に嘆いていたスティッキーがそのようなお金を用意出来たのか!?と驚きながらもブラッド達は首を傾げる。
『現地の事は現地の奴らに任せようぜ。俺達は如何に身バレしないかを考えればいい』
その言葉でもピンと来ないのか頭を傾げ続けるブラッド達にスティッキーがどういうことか説明した。
『これは優先度が低かったから後回しにしてたんだがな、実は先日、電話越しだが
「…まさか」
『かつての仲間の1人、ブラックマーケットに居たらしいぞ』
どっかの会社に入社しました。
まだ新人なのでペースも遅く、仕事も少ないですが楽しいです。ここから先辛いことあると思いますが頑張りますわ。
オリー
鬱病保持者。TP系。だが、とにかく状態異常が豊富すぎる。恐怖や盲目、眠り出血なんでもござれ、ただし戦闘時にお茶は飲んでおこう。自前でTPを回復する術がないので攻撃しながら切れた状態異常をすかさずぶち込むのがオリーの運用方法なのかもしれない。鬱病なかったらなぁ…予備アタッカーとして機能したのかなぁ…?