テリーと名乗る人物も現れた為、リサは一旦落ち着いて話が出来る場所が必要だと言い、そういう事でどこか食事に行こうという事になった。
「じゃあ、僕いい場所知ってるんだ!」
テリーがそう言って、自分の学校であるゲヘナの近くに新しく出来たパスタ専門店が美味しいと言っていたので、全員でその場へ行った。
「4名様ご案内しまーす!!」
オートマタの住人がいい笑顔でブラッド達を案内する。新しく出来たのにも関わらずその店は異様に客が少なかったので変に感じたが今から話す内容によっては聞かれない方がいいと思ったブラッドは気にしない事にした。
「それで、本当にお前はテリーなのか?」
「さっきからそうだと言ってるよ〜ブラッド!」
テリーは犬のように人懐っこい笑顔で答える。並の男性であったならその笑顔で堕ちていただろうが、この場にいるのはリサを除いて全員元男。正体が割れている相手にとっては意味は無い。
「それで…今まで何していたんだ?」
「ブラッド、僕達チームが君を止める為にランドー軍の本拠地まで乗り込んだよね?」
「……あぁ」
ブラッドがターディと船を作り、仲間たちに黙って出発した日…テリー達も各々材料を探しブラッド達の後を追いかけて行った。
追いついた頃には、ブラッドがバディと出会いランドー軍と逃げようとしている場面だった。
女がいない世界で、ブラッドが隠れて女を育てている事は旅をして知ってしまった。テリーはあの時人類の為と銘打って行動したが、そんな事はちっとも思っていない。
本当は、暴走するブラッドを止めたかった。だから最後まで旅の間強くなったテリーは己の技をブラッドに放たなかった。
だが友情で止まるほど、あの時のブラッドは甘くは無い。テリーは無残に殺されてしまい、残りの仲間達も蹴散らされた。
次にテリーが目覚めたのは、丁度ゲヘナ学園に入学する頃だった。
「これが、君と対立した時に起きた出来事だよ」
テリーの言葉にスティッキーは顎に手を当てて考え込む。
「ふーむ…どうも俺達の意識はそれぞれバラバラに目覚めているようだ」
「お待たせしました〜、ペペロンチーノ2人前、カルボナーラ1人前、ボンゴレビアンコ1人前で〜す!」
丁度料理も来て、全員が食事を開始した。
「そういうスティッキーはいつだったんだ?」
「俺か、俺は10歳くらいだ。まぁ寒い場所だったよ」
「もしかしてレッドウィンター?」
「お、よく知ってるな。……それにしてもこのカルボナーラ美味いな」
ま、入学早々不登校だけどとスティッキーは付け加えた。
「そりゃ、僕はヒントマスターだからね!他校についてもよく知ってるよ!」
「ふむ…」
「どうしたリサ?」
「いや、そうだな…テリー。あんた、ゲヘナ所属なんだろう?」
「うん、そうだよ?」
「だったら、部活どこか所属してるのか?」
「ゲヘナだったらどこかに所属するものなのか?」
ブラッドがリサ疑問を問いかける。
「いや?あそこはキヴォトスのマンモス校の1つとして数えられているから兎に角人が多いんだ。でも、入学して早々一人になるのも色々と危ない場所でもあるから新入生はみんなどこかの部活に入ってる筈」
リサの問いにテリーは拍手した。
「わー。すごいねキミ。ゲヘナの子じゃないのによくそこまで知ってるなんて。どこの学校の子?」
「私か?私はどこにも通ってないぞ?」
リサの言葉に3人は驚愕し席を立った。
「抜け出す前にトリニティ?とかいう学園に送り込むという会話が聞こえたんだが、まぁ私は私の好きに生きたいからな。逃げた」
「だ、だがリサ…それでいいのか?もっと、青春とかあの頃みたいに縛られないで色々出来た筈だぞ?」
ブラッドがリサを案じてそのような事を言う。だがリサは首を振って言った。
「知識に関しては通信を受ければ問題無い。それに言っただろうブラッド?私は私の好きに生きる。1つの学園に縛られるのも私は望んでないんだ」
「……なら今ここで俺も知りたい事を聞こうか」
スティッキーがブラッドとリサの2人に指を刺して言った。
「ブラッド、お前達の関係性は何だ?聞いてりゃただ知り合っただけじゃないだろ?」
「兄妹だよ」
リサがペペロンチーノを頬張りながら言う。ブラッドもその答えに賛同するように首を縦に振る。
「兄妹?ブラッド、お前に兄妹がいたなんて初めて聞いたぞ?」
「僕も、ブラッドはそこら辺詳しく教えてくれなかったからさ」
流石に気になった2人は、リサについて詳しい説明をブラッドに求めた。ブラッドは意を決してリサについて話す。
話終えたブラッドに、スティッキーはブラッドの頭を思い切り叩き、テリーはリサとブラッドに抱きついた。
「馬鹿野郎…!んな事一人で抱え込むんじゃない…!」
「ブラッドもだけど、君も辛い目に合ってたんだね…」
そんな2人の反応に、ブラッドとリサは顔を合わせて苦笑した。
「いらっしゃいませ〜」
「4名ですわ」
お客も増えてきたのであまり騒げなくなってきたので声のトーンを落として話す。話の話題はテリーに戻ってきた。
「それで…話を戻すけど、僕が所属したのは温泉開発部って言う部活なんだ。そこはゲヘナの生徒200人以上が所属している部活なんだけどね?」
テリーは食後の水をちびちび飲みながら話していく。
「まぁ、最初やっぱり僕は一人になるのは嫌だから、できるだけ人が多い場所に行こうとしたんだ。そこで入部したのが温泉開発部。まぁ最初は仲のいい子は出来たよ?」
3…4人くらいかな?と記憶を思い返しながらテリーは話す。
「でも僕って、温泉のことについてなーんにも分からなかった。だから基本雑用ばかりやらされててね。これって友達じゃない!って思ったんだ」
ブラッド達も食べ終えてもういつでもおあいそが出来るが、テリーの話が終わるまで待っていた。
「だから僕は自分がやっていた"ヒント"をここでも活用しよう!って思ったんだ!だから最初温泉についてのヒントを色々探して部活動の活動報告と一緒にヒントについて纏めた紙とか出してたんだ」
でも…と、テリーは顔を曇らせる。
「ヒントってね、作ると分かると思うんだけど…知識が必要なんだ。知らない事を知ったかぶりで教えるヒントと、正確な情報から伝えるヒントは天と地ほどの差がある。だから、度々ヒントを書いてた僕を疎ましく思ったのか誰かが部長に報告してね…」
『テリー…君の温泉に対する熱意は伝わっているんだが…正直に言おう!これではロマンが足りない!私達は場所が割れた温泉を掘る部活じゃないんだ!』
「そう言われちゃあ、僕がそこに居るのは…なんて言うんだろう場違いというかその場に僕は必要無かったんだって分かっちゃってね…今はこうやって他の場所を転々としてるんだ」
笑みを浮かべたテリーはあまりにも寂しい笑顔をしていた。
「……自由と混沌の学園で自由を満喫出来ないのは、寂しいものだな」
リサがテリーの背中を撫でる。テリーも限界がきたのか涙が一筋流れた。
「…………だが、そうなると俺達は学園に行ってない、もしくは行かなくなった、または弾き出された奴らが集まっているのか…」
ブラッドがそう言うと周りも確かにと納得した。
「なんだろうな…俺達、使命だのなんだので…色々雁字搦めだったなって」
スティッキーが言った。
「あの時のチームでも、好きな事はやっても…結局各々好き勝手やっただけで理解はされなかったよね…」
テリーが旅の仲間達を思い出して言った。
「なら…また作るか?」
ブラッドが提案した。
「チームを?」
テリーが聞き返す。
「そうだ。多分だが、テリーがいるならアイツらもこっちに来ているだろ。ネルンやオラン…アイツらじゃなくても不平不満を持っている奴らも多い筈だ。逆に満足してそうな奴もいそうだな、レイジとか。アイツバディを本気で狙ってたからな。女だらけの世界で満足するだろ」
それじゃあお互いどんな事をしたいか言うか…とブラッドが前置きを言う。
「俺は元々戦うのが嫌いだ。だが、コチラを狙うなら相手になる。大切なものを守る為ならな。それにリサとあの時口紅で遊んだ時やバディに化粧させられた時みたいにまたバカをやりたい」
「私はもう人生を誰にも邪魔されなければそれでいい。ここにはマーティの束縛も無い。だからあの時出来ない事ならなんでも出来る筈だ」
「俺は…オレイサみたいに崩壊しなければ別に。この世界は各々やりたいようにやっているが…俺達が暴れ回った所で漣ひとつたてる程度だろうしな…やりたい事を好き勝手にやるのは賛成だ。だがやりすぎは止める」
「僕は…オレイサでもキヴォトスでもひとりぼっちだった、でも、キヴォトスでもブラッドと会えたから孤独じゃなくなった。今回も、一緒について行くよ」
ブラッドは全員同意である事を確認した。
テリー・ヒンツが仲間になった!
「ヘルメット団みたいなもんだな」
リサが笑いながら言う。
「流石にアイツらみたいに襲って人から物を奪うのは禁止だ。基本的に争いは避けるぞ」
「分かっている。じゃあ最初何やろうか」
全員で頭を悩ませる。
「あ、そうだ」
テリーがスマホを取り出して全員に見せる。
「ブラッド、これ見覚えあるんじゃない?」
スマホには"カートレース"の文字がある。ブラッドは瞬時に察した。
「……フライか」
"フライ・ミネッツィ"
オレイサではカートレースでブラッドに負けて以降その技術を教わる為にブラッドについてきていた人物。ブラッドを極度に嫌っており、1度は他のメンバーと裏切りを画策していた人物でもある。
「カートレースって何だブラッド?」
リサがブラッドに聞く。
「ショッピングカートに乗ってレースするんだ」
「聞いてるだけだと訳分からんな…」
スティッキーが頭を抑えて首を振る。
テリーのスマホには開催場所も書いてあった。そこに向かえばフライは居るはずだ。
「よし、行くか」
ブラッド達が店から出ようとする時……
ドカアアアァァァァァン!!
と、大きな音を立てて店が爆発した。
「料理は良かったのですが、接客態度が言語道断ですわ!」
「そんなぁ…パスタ〜〜…」
「まだ10皿しかきてないのに…」
「大丈夫ジュンコちゃん?100%天然素材イカスミパスタ食べる?」
燃え盛る店を背に4人の少女達が現れた。彼女達は美食研究会。テロリストである。
「ほんと、残念でなりませんわ。ね?フウカさん」
黒舘ハルナは怒っていた。店の雰囲気、パスタまでは高評価であったのに接客態度で全てをぶち壊しにされたのだ。
愛清フウカは諦めていた。縛られ口を封じられたフウカはいつもの( 눈_눈)顔で全てを諦めていた。
「ねぇ、あの残ってるパスタ食べていい〜?」
「はしたないですわよジュンコさん」
「でも、やってる人いるよ?」
「え?」
ハルナ達が見ると、床に散らばった他のお客のパスタを手掴みで食べているブラッド達4人の姿があった。
オレイサって絶対衛生面悪いし、賞味期限、消費期限切れの食べ物とかゴロゴロあっただろ。というか賞味期限切れてない食品とか絶対貴重物だろうな……