車に詰められたブラッド達は耳栓と被り物をさせられどこかに連れていかれる事になった。
車に揺られてどこかへ向かう中、話しをする者は誰一人としていなかった。
そんな事は今まで慣れていたブラッド達だが、膝に乗せられているリサはこの空気に慣れていないのか、震えているが気丈に振る舞おうとしているのを感じ、ブラッドはリサを抱き寄せる。
リサは次第に震えが収まり、大人しくなる。
少しして、ようやくその場に着いたのか1人ずつ車から降ろされる。
ブラッドも降ろされて、被り物が外された。薄暗くジメジメしている。だが妙に小綺麗でどこかの研究所のようにも見えた。
『さて、お前達はオリバー・オリーブ・ニッケルズの人質としてここに来て貰ったが、その前に…あの戦車とヘリは我々カイザーコーポレーションの物だ。どこで取ったか答えて貰おうか?』
「俺達が取ったわけじゃない。プレゼントだ」
フライがそう答える。
『ほう?だとしたら心優しい誰かがお前達にうちの戦車をプレゼントしたと?ふざけてんじゃねぇぞ!!』
「ぐふっ!?」
突然隊長格が怒りフライの腹に蹴りをかます。倒れたフライの髪を掴み地面に何度も叩きつけた。
『んな見え見えの嘘に騙されると思ってんのか!?早く言えよテメェらが取ったんだろ!?』
あれが本性なのか叩きつける力も強くなっていく。スティッキーがリサの目を塞ぎ、テリーは既に涙目だ。
「取ったのは俺だ」
ブラッドがそう言い、隊長格がゆっくりとコチラを見る。
「コイツらは本当に関係ない。俺が取っただけだ」
『……テメェ何言ってんのかわかってんのか?』
ゆっくり近づき至近距離まで顔を合わせ、脅すように言う。
『黙ってりゃ痛い目に合わなくてすんだんだぞ?バカみてぇに仲間を守る為にヒーロー気取りですってか?』
おかしくなったのか、次第に笑いが込み上がる隊長格のオートマタはブラッドの胸倉を掴んで持ち上げる。
『なら最高級のおもてなしを受けさせてやる。幸せすぎて意識飛ばすんじゃねぇぞ?』
そのままブラッドは隊長格のオートマタに連れていかれた。
「あ、アイツ…自分から…」
「動いちゃ痛いぞ?今はじっとしてるんだ…」
「……こういうところは変わんねぇなアイツ…」
「スティッキー、ブラッドっていつもああなの?」
「あぁ、俺らがいじめっ子にやられた時も自分が主犯だと言って庇ってくれたんだよ。子供の頃からああいうところは何も変わってねぇ…」
助けに行きたいが、武器も身柄の自由もここがどこかも分からない。そして監視も2人いるので下手に動いたらどうなるかも分からない。
「クソ…オレイサじゃなくてもこんなのはいつも付き纏う問題なのかよ…」
「……ホホッ」
今まで黙っていたネルンが急に小さく笑い出す。すると突然体を丸めて具合が悪そうな声を出した。
「う……うぅお…」
『おい、どうした』
「腹がいたい…すまない、後ろの手を前にするだけでいい。手錠は外さなくていいから手を前に向けさせる事は可能かな?」
『……まぁ、武器もないのを確認したし、それくらいなら…』
兵士が腕を後ろに縛っていたネルンの腕を前にした。
『これで大丈夫か?』
「あぁ、助かるよ」
ネルンが感謝を言った瞬間、ネルンの指から極太のレーザーが放たれた。ネルンのフィンガービームだ。兵士の一人は頭を狙われてそのまま体と別れを告げた。
『な……な!!?』
「甘いレモンティー!」
もう1人はフィンガービームが腹を貫き上半身と下半身が離れた。
「悪いが、我々はここの住民達とは"少しばかり"事情が違うのでね。先に行かせてもらうよ、ホホッ!」
そのまま兵士の頭にフィンガービームを撃って黙らせる。
「さて、我々はここから脱出しなければならないぞ諸君!やる事はまだ山程あるのだ。こんな所いる意味は無いぞ!」
そのままネルンが各々の拘束をフィンガービームで外していく。
「我々の武器は多分オリーの事務所に放置されたままであろう。なので、それぞれの武器はこの場から現地調達しなければならない」
「なら、これを有難く使わせて貰おうか」
スティッキーとフライが見張りの銃を拾い装備した。
「テリーは大丈夫か?」
「僕?僕はこれで行くから」
そう言って扉の前に立ち、腕を振り上げる。
「ホホッ、スティッキーにリサ嬢。少し下がった方が身の為だぞ?テリーの奴は本気でやるそうだ!」
「ホワッホワッホワホワホワワワ!!!」
テリーは腕を交互に振り上げるダンスを行い、その勢いのまま姿勢を崩し倒れ込む。
その瞬間、テリーを中心に爆発が発生し、施設内でアラートが鳴り響いた。
「久しぶりにやったなー、ホットダンス」
「ホッテスト・ダンスじゃないのか?」
「フライ、あの技はこんな場所じゃ巻き込まれちゃうよ?」
「我々の中で随一の威力を誇ったホッテスト・ダンス!あれはいつ見ても凄まじいの一言だ!ホホホ!」
「よし、それじゃ俺達がやるべき事は3つだ」
「ブラッドを助け、オリーも一応連れて行って、ここを脱出。あとあの隊長格の股を蹴り上げてやる」
リサが指の骨を鳴らしながら宣言し、元男の全員が股を内股になった。
「二手に別れるか?」
「安心性が無いが…ここは我々も知らない場所ではある。少しここらの資料を拝借していけば公的機関にチクるだけでどうにかなりそうな気もするが…如何せん今は脱出が目的。二手に別れよう!ホホッ!」
そして、テリー、ネルン、リサのチーム。フライ、スティッキーのメンバーに別れそれぞれブラッドとオリーと脱出出来そうなものを探す事にした。
「ブラッド!」
「居ない!テリー!」
「ここも居ない…」
3人は部屋を開けてブラッドが居ないか探していた。たまに部屋にオートマタの兵士がいるので部屋に押し入り拘束して武器を押収するが、一向に見つかる気配がなかった。
『くそ!他の奴らは何をしてる!』
兵士が騒ぐがここに来るまでの兵士達は全員拘束したので暫くはこの異変の対処は進まないだろう。
「ふむ、これは中々黒い事実が書いてあるかな?興味深い、貰っておこう」
「予備のカギ見つけたよー」
「なぁ、ダクトからどこかに行けないか?」
リサが見つけたダクトの通気口を見つけたが、狭く人1人が精一杯だった為断念した。
そんな風に部屋を探していき、ネルンはテリーに話しかける。
「テリー、なにかおかしいと思わないか?」
「おかしいって何が?」
「この施設だよ。見受けられるにカイザーコーポレーションの施設だろう事は武装と今まで取ってきたこの証拠でわかった」
ネルンは選りすぐりの黒い情報を詰め込んだバッグを叩いてみせる。
「だが、同時にきな臭い部分もある。これは本当にあの会社の意思なのか?と」
「カイザーはなにかと黒い噂は絶えないからやりそうだと思うけど?」
テリーは違和感を感じないようだ。その事にネルンは頭を唸らせる。
「いや、どうも…嫌な予感しかしない。まるで俺達が来ることが決定されているように、俺達以外の何かもここに来るようにされているのではと……」
ネルンが真面目な話から自分語りに逸れない。その事実が余程の事態だとテリーは嫌でも理解した。
そしてお互い無言の時間が続き、遂にそれらしき部屋を見つけた。
「他とは違い、やけにこの部屋だけ厳重だな」
「入って下さいって言ってるようなものだね」
「行こう」
ドアを開ける。中には…
額から血を流すブラッドの姿があった。
『!?動くな!!!』
コチラが扉を開けたのを認識した瞬間隊長格がナイフをブラッドに向ける。
『テメェらがどうやってここまで来たか知らねぇが、動いてみろ!コイツの顔が更に傷物になるぞ!』
その瞬間、リサの表情が"無"になった。
「ふむ……明らかに一部隊にしては越権行為に近しい事をしている。お前、本当にただの一部隊の隊長か?」
ネルンが聞くが、隊長格は受け答えをしない。寧ろ喚き散らすばかりで話を聞いていないように見えた。
「リサ、下がって。僕が前に出る」
「待て、テリー。出るんじゃない」
「いや、いい」
その瞬間、リサが前に出た。テリー達はなにかが違うリサの雰囲気に無意識に後ずさる。
「私がやるから、邪魔しないでね?」
普段の男勝りな口調では無い、女性らしい口調になり部屋に入っていくリサ。
隊長格はそれも気が付いていないのか遂にナイフを振り回すまでに発展した。
『あ゛ぁぁ!?来るんじゃねぇぞ!?俺の華々しい世界まで後少しなんだからよォ!?あ゛ぁ!?』
「…………」
普段は前髪に隠れているリサの目がチラリと覗く。目が限界まで広げられており隊長格を見て離さない。
「あなたは、この世界にはいらないわね」
そう言うとリサはどこからともなく、仰々しい装飾が施された剣を取り出した。そのまま隊長格にズブリ…と深く突き刺す。
『あが…あ…ぁ…ぁぁ?』
「さようなら」
そのまま上に切り上げ、隊長格は二度と動かない鉄屑となった。
「………」
「リサ…俺は大丈夫だがあれは…リサ?」
「ね、ねぇリサさん?さっきのは…」
すると、リサが力を失ったかのように倒れた。
「リサ!?」
「だ、大丈夫!?」
「鍵はどこだ!さっきのはなんだ!?くそ…考えることが多い!」
謎は多く残されたが、ブラッドは発見された。
「フライ、ここから地下だぞ」
「入口は見つけたが、ありゃ突破するのは困難だな。今はなんでも欲しい。見に行くぞ」
一方スティッキー達は3人と別れ1チームとして動いていた。既に施設の出入口は発見したが、そこからしか入れなくやけに厳重だったので今は脱出に有効な物を探していた。
「まだ来て新しいな」
「あぁ、足跡がある」
地下には出入りした形跡があり、スティッキー達は注意深く地下へ潜っていく。
地下に着くと、そこは牢屋になっており、囚人が何人かいた。
「お!おお!フライ!助けに来てくれたのか!」
オリーが檻に収監されており、フライが来たのを喜んでいた。
「全く、面倒事に巻き込んでくれたなオリー」
「いやー借金は10,000クレジットだと思ってたよ!」
朗らかに笑うオリーに初めてフライはブラッド以上の殺意が沸いた。
「あぁ、そうそう!馴染みもいたよ!」
「何?」
他の檻を見てみると、2人収監されていた。
1人は魚の頭を被った刺青をした少女。もう1人は鳥の頭を被った少女だった。
「カープ!?ギース!?」
「フライか…」
「こんな場所だけど久しぶり「ブリィィ!!?」……今こんなところで洒落言えなくて出し渋り…」
まさかチームメンバーである2人がこんな所にいるとは思わなかったが、少しでも突破できるなら解放しない手はない。丁度鍵が壁にあったので全員を解放した。
「ありがとうオリゴ糖」
「助かる…」
「よし、1回ブラッド達の所へ合流するぞ。あぁそうか、ギース、カープ。ブラッドのやつもここにいるんだ。1回会えるか?」
「ブラッド…」
「ブラッドいるの?大丈夫なの?大丈夫なら是非会いたい。そして楽しく和気あいあい」
「今のブラッドは大丈夫だ。おかしくなんかない」
「よし、見張りは居ないな。早く行くぞ」
スティッキーが廊下の様子を見ながら指示を出すが、カープとギースは行こうとして立ち止まる。
「どうした?」
「カープ、僕、僕…見捨てられない、出られない」
「アァ…でもギース、アレは…」
「分かってる。理解してる。あれは危険、開けられん」
「なんの話しだ?」
スティッキーがカープにどういうことか聞く。ギースは韻を踏んで喋るのでイマイチ理解できないのだ。
「俺達がここに来た、なら、
そう言って力無く奥の扉を指さすカープ。
「僕達、最初に辿り着いたアビドス。慣れ親しんだ環境はネガティブ。だがある日発見したんだそれは、有り得ないこの世界のイレギュラー…」
「おかしい…おかしい…もうこの世界も地獄だ…」
魚の頭を抑えて蹲るカープ。泣いているのか震えているギース。見たことがない反応にフライも流石に恐怖が勝る。
スティッキーが鍵を開ける。
中は開けない方がいい。
そう心の声が聞こえる。だが、ここで開けなければ、なにか後悔しそうな気がした。
意を決して、扉を開ける。
そして、扉を開けても後悔した。
「ア゛ァ……ア゛ア゛ア………ァ…?」
それは、この世界では絶対に出るのは有り得ないと思われた存在だった。
それは、一言で表すなら肉の塊だった。まるで1つの生命体の脂肪が一気に肥大化したような姿。
だが、前と違うのは性別のせいか筋肉質であるということ。首はとても長くなり、空を思わせるような色の髪はくすんで、泥だらけで、血もついて荒れに荒れてしまっていた。身体を支える四肢は筋肉により膨張している、だが四肢のうち片方の腕は切れていた。身体は人間時代と変わっていないのか肥大化した形跡は無かった。
人
「…おい、冗談だと言ってくれ」
「嘘だろ…」
「言っておく、この子は安全。だから殺さないで」
「……元は誰かわからねぇ…だが…こんなになっても俺達の命は助けてくれたのは本当だ」
「なんで…コイツがここにいるんだよ……」
そう、奥の扉にしまわれていたのは……
「えへ……えへへへぇ……」
他でもない、ジョイミュータントだったのだから。
ようこそ、Lisaの世界へ。
こんな話、ほんへに比べればまだ序の口です。