Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~ 作:八坂 義景
さて、前回は元不良のアビドス生が三十人くらい一気に生えました。それから三日程経った所からスタートです。
~"連邦生徒会"オフィスビル 応接室~
side-"先生"
「――では、こちらにサインを」
「うへ、りょうか~い」
ホシノはリンから『行政組織引継届』と記された書類を受け取り、内容を確認してサインを書く。
「――はい、書いたよ~。"会長"さん、確認よろしく~」
「――確認したわ。...これで、"アビドス高等学校廃校対策委員会"は"アビドス高等学校生徒会"の
「うへ、了解だよ~。――これで、『ネイト』達も正式に『アビドス』の生徒になれるね~」
「"まさか対策委員会が非公認組織だとは思わなかったよ。ユメ、モコウ、ホシノが生徒会メンバーとして名前が残っていなかったらどうなっていたやら..."」
ホシノから書類を受け取った
―――三日前に決行した"カタカタヘルメット団"
彼女達を正式に生徒として承認する為に―――実は『アビドス』を運営する正式な組織では無かった"対策委員会"を正式な組織として認めてもらう為に、アヤネが操縦するヘリでホシノと共に"連邦生徒会"のオフィスビルに足を運んでいた。
"カタカタヘルメット団"に関する情報を得る為にネイト達へ聴取したり、彼女達にあてがう家屋の調査と貸与をしたり...『アビドス』への受け入れで忙しく、三日経ってやっと空いた時間が取れた。
「――それにしても、『アビドス』最強の一角"暁のホルス"と恐れられていた面影を感じられないわねぇ。もっと冷たい、抜き身の刃みたいな印象があったのだけど」
「"――暁のホルス?"」
私達の目的が終わると、
「あら、ご存知なかったのですか?生徒の戦闘を指揮する"先生"ならば、彼女の卓越した戦闘能力を目の当たりにしている筈ですが...」
「"ホシノが戦っている所は何度か見たけど...そんな二つ名を持つ程に強かったんだね"」
「――うへ、
ホシノは眠たげな目に少しだけ怒りを宿した眼差しを宿して
「...そこを突かれるとぐうの音も出ないわね。キヴォトスの各校を纏める組織でありながら、自地区の独立侵犯の懸念から送られてくる要請や要望の多くに介入を躊躇ってきたのは事実だもの。
前の会長が『シャーレ』設立を決めていなかったら、それこそいよいよ貴女に――"暁のホルス"に
ホシノに対して
「――まぁ、『シャーレ』と"先生"のおかげでおじさん達が助かったのは事実だからね。これでお相子ってことにしよっか~」
「...そう言ってもらえると嬉しいわ」
「"――さて、用事は済んだし『シャーレ』のビルに少し寄ってから『アビドス』に戻るとするよ"」
「ついでに何かお土産でも買いたいね~。それじゃ、またね~」
「分かりましたわ。――引き続き、『シャーレ』としての問題解決をよろしくお願いしますわ」
「"先生"、ホシノさん。道中お気を付けて」
席を立って
~"連邦生徒会"オフィスビル前の広場~
「――あやや、誰かと思えば先生じゃありませんか。どうも、赴任初日以来ですね!」
―――ビルを出て広場に入った瞬間、軽く風を起こしながら目の前にアヤが降り立つ。
「うへっ、ちょっとビックリしたよ~。"先生"の知り合いかな~?」
「えぇ、そうですよ。『シャーレ』顧問の"先生"赴任の記事を最速で挙げた『文々。新聞』と言ったら、私が誰か分かりますかねぇ――"暁のホルス"『小鳥遊ホシノ』さん?」
「...新聞記者にも広まってたのかぁ。うへ~、あんまりあの頃のことは掘り返されたくないんだけどな~」
アヤも
「"...アヤ。ホシノが嫌がっているし、その二つ名で呼ぶこと、それについて掘り下げるのはやめてあげて欲しいな"」
「むむ...私が持っている情報と、特に性格の面で大きく違っているので変化が気になりますが...生徒想いの"先生"のお願いですからここは素直に聞きましょう。
――改めまして!『クロノススクール』二年生、"新聞部"所属、キヴォトス最速で情報をお届けする清く正しい『文々。新聞』記者兼編集長『射命丸アヤ』です!中々情報を得られなかった『アビドス』の方と知己を得られて光栄ですよ、ホシノさん」
「うへ、『アビドス高等学校』"廃校対策委員会"委員長の『小鳥遊ホシノ』だよ。よろしくね~、アヤちゃん」
ホシノとアヤはにこやかに握手を交わす。
「"それで、アヤはどうしてここに?"」
「記事のネタ探しですよ。前の"連邦生徒会長"が失踪した際の混乱したあの状況は良くも悪くもネタには困らなかったんですが、こうして平和になると探さないとネタが拾えないんですよ。それで"連邦生徒会"で何かネタがないかと探していたら、"先生"とホシノさんを見付けた次第です。――それで、お二方はどうして
「"うん。ホシノ達が『シャーレ』に要請を送って来てね――――"」
アヤに簡単に『アビドス』に向かい、滞在している経緯を説明する。
「"――――ということで、今は『アビドス』に滞在しているんだ。――でも、部室のパソコンに他の学校からの要請メールが溜まってるかもしれないからその確認と、ついでにシステムを
説明とこれからの予定について話し終え、苦笑しながら頭を掻く。
―――赴任当初のリンからの説明で、『シャーレ』として各校生徒に発信出来る『当番募集』という手段があるのは把握しているけど、あくまでその日だけの業務補助という単発バイトの様なもので、『シャーレ』の名声がまだ小さく、知り合えた生徒の人数が少ない現状では頼りに出来ない。一人でもいいから常駐してくれる職員的な人材が欲しいけど...
「その点は"連邦生徒会"も不親切ですよねぇ。あんな高層ビルが『シャーレ』管轄なんですから、清掃員や事務員、警備員...常駐する職員は必要でしょうに」
「"まぁ、
「...そんな話を聞いちゃうと、
「あ、でしたら私もご一緒してよろしいでしょうか?!今まで『アビドス』は一面砂漠でネタも殆どないだろうと、私所か『クロノススクール』としても注目してなかったんですが、例え少人数でも『アビドス』復興を目指すという注目を集めそうなネタは記者として逃がせません!」
ホシノの言葉を聞いてアヤは瞳を輝かせる。どうやらホシノ達"対策委員会"の活動をネタに記事を書きたい様だ。
「"――ホシノ、どうする?"」
「う~ん...支援するってすり寄って来た
「...確かに、世の中"先生"のような善性の大人よりも自分の利益の為に弱者から搾取するような
――では、見学ということで『アビドス』に数日程滞在してもいいですかね?記事のネタとして以前に、
アヤは真剣な表情で、取材では無く見学として『アビドス』に滞在したいと提案する。アヤにとって今の『アビドス』は興味を惹かれる場所の様だ。対価として滞在中は復興の手伝いをするつもりみたいだし、一時的でも人手が増えるのはありがたい。
「...うん、それなら受け入れられるかな~。つい最近三十人くらい増えたけど、人手はまだまだ必要だしね~」
「ありがとうございます。――では、暫くの間よろしくお願いしますね!」
ホシノはアヤの提案を受け入れ、アヤは嬉しそうに笑みを浮かべる。
「"それじゃあ、アヤネと合流して『シャーレ』に向かおうか"」
二人を連れて敷地内のヘリポートに向かう。さて、お土産は何を買おうかな―――
~アビドス高等学校自治区 柴関ラーメン 厨房~
side-セリカ
「――"大将"、麺あがったぞ!」
「あいよ!盛り付けてセリカに渡してくんな!」
「分かった!」
ネイトはスープを入れた丼に麵や具材を手際よく盛り付けていく。
「――よし、柴関ラーメン一丁上がり!」
「ありがと!――お待たせしました、柴関ラーメンです!」
「む、来たか。やはり普通サイズでもボリューム満点だな...ありがとう、セリカ」
一分も経たずに盛り付け終えてお盆に乗せ、私はそれを持って厨房に隣接するカウンター席に座っている注文客―――トオルさんの下に運ぶ。
―――三日前に決行した"カタカタヘルメット団"
―――『...アタシら...家に、住んでいいのか?もう、掃いても掃いても積もる砂に悩まされなくて、いいのか...?』
―――特に、ネイト達に家を与えると伝えた時は皆して号泣しちゃって落ち着かせるのが大変だった。どうやら
私達を散々悩ませている"カタカタヘルメット団"を支援しているらしい
―――閑話休題。
『アビドス』の生徒となったネイト達は積極的に馴染もうとしてくれている。ネイトは元々料理系の専門学校に在籍していたらしく、私の後輩バイトとして『柴関ラーメン』で働き始めている。接客はまだまだ日が浅い故に口調が荒くなる時があるし、立て続けに注文が入ると聞き間違えてしまったりするけど―――厨房では初日から"大将"のペースについて行ける程手際が良い。元居た学校ではその才能を妬んだ先輩達から陰湿なイジメに遭い、精神を病んで半年も通えず中退し、流れに流れて"カタカタヘルメット団"に入ったと言う。
本来やりたかった事に携わる事が出来てネイトも嬉しそうだし、同級生(年齢的には二年生だけど、本人の強い希望で一年生として編入している)でバイトの後輩が出来て私も嬉しく思う。
「――へいらっしゃい!」
「らっしゃっせー!」
「いらっしゃいませ!六名様ですか?」
―――お盆を持って厨房に戻ろうと踵を返した瞬間店の玄関が開き、再度振り向いて入って来た六人のお客さんに対し"大将"とネイトに続いて挨拶し、人数を確認する。
―――先頭に立つ、ワインレッドの長髪の後ろから角が生えた、襟と袖口に紫色のファーを飾ったロングコートを羽織った私より年上に見える人。
―――その右隣に控える、角が伸びた白と黒の髪をポニーテールで纏め、パーカーとミニスカートを纏う、無愛想な顔付きで色白な肌の、明らか私より年上に見える人。
―――左隣に控える、白い長髪をサイドテールで結い上げ、深紅のラインで縁取った黒い半袖の上着とチェック柄と黒いフリルで飾る深紅のコルセットスカートを纏う悪戯っぽい笑みを浮かべる人。
―――三人の後ろで隠れる様に立つ、紫色の髪に黒い軍帽を被り、ネット新聞とかで見た事がある『ゲヘナ学園』の軍服風の制服に似た服を纏う、臆病そうにオドオドした私と同い年に見える娘。
―――そして、オドオドした娘の隣で同じ様な表情を浮かべている―――青くボサボサのロングヘアーの後頭部に薄汚れた青く大きなリボンを纏い、頭上には[
―――その隣で呆れた様な表情を浮かべている―――額に大きな丸縁のサングラスを掛け、金髪をツインの縦ロールで結い上げ、小さなシルクハットを被る頭上に
―――六人共、明らかに
それにしても、外部と接続されている幹線道路が砂に埋もれて使えない現状でよく来れたと思う。幹線道路以外で外部から
「えぇ、この六人で全員よ。――それで、このお店で一番安いメニューは何かしら?」
「当店で一番安いのは『柴関ラーメン』、五八〇円ですね。安くて美味しい、当店が誇る看板メニューですよ!」
先頭に立つ人の問いに答えると彼女は喜色満面の笑顔を浮かべる。
「あぁ、やっと
「かしこまりました!『柴関ラーメン』お一つ――あ?え?
「えぇ、
「――へ?」
「すみませんすみません!お金がなくてすみません!」
「ごめんなさいごめんなさい...ひもじいお客さんでごめんなさい...!」
注文の確認に対し返って来た言葉に思わず変な声をあげてしまうと、紫色の髪の娘と青い髪の人が揃って謝罪をする。
普通盛りでもボリューム満点な『柴関ラーメン』でも、一杯を六人で分け合うとなれば流石に少ない。バイト代から『アビドス』の借金返済用のお金を捻出している私でも、普通の生活を送れるだけの余裕はあるのに...
「か、かしこまりました...空いているお席にどうぞ!――柴関ラーメン一丁入りまーす!」
「あいよ!」
「はいよ!」
席を案内し、注文票に『柴関ラーメン』一杯と書いて厨房に戻って注文を伝える。
「...妙な客だな。六人でたった一杯のラーメンを分け合って食べようとは」
「えぇ、そうね。そんなにお金がないのかしら...」
注文票をボードに貼っていると、やり取りが聞こえていたらしいトオルさんが少し小声で話しかけてくる。不思議なお客さんだと頷きながら食器洗いを始める。
「そもそもここらで開いてる飲食店が少な過ぎたけど...やっとお腹を満たせるわね!」
「一杯を六等分してお腹を満たせるか怪しいけどね。...
「...だ、大丈夫よ!情報が確かなら、雇った傭兵達だけでも戦力は充分上回っているのよ?成功すれば準備で溶かした資金を回収して尚お釣りが沢山来るんだから!」
トオルさんの後ろのテーブルに六人は座っていて、声が少し大きいおかげで会話が耳に入って来る。どうやら高報酬の依頼を受け、準備でかなりの額を溶かした様だ。"社長"と呼ばれたワインレッドの髪の人は自信満々に見えるけど、"対策委員会"で会計を受け持つ身としてはかなりリスキーなやり方だと思う。失敗したらどうするつもりなのだろうか―――
「へいらっしゃい!」
「らっしゃっせー!」
「いらっしゃいませ!二名様ですね?」
「ん、この二人で全員」
「かしこまりました!空いているお席へどうぞ!」
再びお店の入り口が開いてシロコ先輩とモエの二人が入って来て、食器洗いを止めて厨房を出て出迎える。どうやら日課の地区内巡視を終えて食事に来たらしい。人数を確認し、厨房に戻って白紙の注文票をバインダーに留める。―――六人のお客さんの中で、
「あ、トオルさんも居たんだ。こんちはー」
「ん、隣失礼するよ」
「――シロコ達か。時間的に巡視を終えた所か?」
「ん、午前中は特に異常なしだよ。トオルさんは、マミゾウさんと一緒じゃないの?」
「アイツは傘下企業に対する抜き打ち視察に回っている。マミゾウに金回りの誤魔化しは効かない。今回は幾つ
二人はカウンター席、トオルさんの隣に座ってメニューを見ながら会話を交わし始める。
「今日は塩にしよっかなー。勿論食後にアイス二つね!...んー...後ろのお客さん達、どっかで...」
「ん、分かった。セリカ、塩ラーメン二つとアイス三つ。...モエ、何か知ってるの?」
「かしこまりました!塩二丁!アイス三つ入りまーす!」
「あいよ!」
「はいよ!」
注文票に二人の注文を書いて注文を"大将"達に伝え、注文票をボードに貼って再び食器洗いをしながら会話に少し耳を傾ける。どうやらモエは後ろのお客さん六人について何か知っていそうだ。
「角持ちが何人か居るから『ゲヘナ』か『百鬼夜行』だと思うんだけど...あの各人個性豊かな見た目、初めて見た気がしないんだよねー」
「...どちらも態々
「ん、『ゲヘナ』はヤバい場所だって言うのはネットでよく見るね」
「キヴォトス三大校の一角にして、最高に治安が悪いことで有名だからねー『ゲヘナ』は。何回か『ゲヘナ』の外で暴れた非公認の部活の娘達を相手取って...ん?非公認?ちょい待ち確か...」
ふと、モエが何か思い出した様にスマホを弄り始める。
「...あぁ、思い出した!この娘達だ、"便利屋68"...!」
モエが小声で思い出したような声をあげ、スマホの画面を私達に見せる。私も食器洗いの手を止めて画面をよく見る。
カテゴリコード:Geh-01
組織名:
所属校:ゲヘナ学園
活動範囲:キヴォトス全域
組織戦闘力評価:S
治安脅威度:A
概要
『ゲヘナ学園』非公認部活動及び、校則違反組織。『ゲヘナ学園』自治区外に事務所を所有し、"便利屋"の呼称通り様々な仕事を請け負う。"社長"と呼称される生徒の下で非常に強力な結束力を持ち、依頼成功率は高い。
当該組織は『ゲヘナ学園』治安維持組織"風紀委員会"の指名手配組織であり、状況によっては共闘の可能性もある為留意する事。
構成メンバー
No.01
名前:
学年:二年生
組織内呼称:社長
戦闘力評価:S+
No.02
名前:
学年:三年生
組織内呼称:課長
戦闘力評価:A+
No.03
名前:
学年:二年生
組織内呼称:室長
戦闘力評価:A
No.04
名前:
学年:一年生
組織内呼称:平社員
戦闘力評価:B
No.05
名前:
学年:二年生
組織内呼称:平社員
戦闘力評価:D(
No.06
名前:
学年:二年生
組織内呼称:会計士
戦闘力評価:A
「『アビドス』の噂は聞いていたけど、本当に自治区内の殆どが砂漠に覆われているなんてねぇ」
「砂漠に埋もれてないこの辺りでも空き家が多いみたいだけど...それでも尚、生徒や住人が残ってるんだから余程愛着があるんでしょうね」
―――メンバーリストに載せられた顔写真は、正にカウンター席後ろで今も会話を交わしているお客さん六人と一致している。
「"便利屋68"...護衛から迷子探しまで、どんな依頼でも請け負い成功させる、と聞いたことがあるな。...態々
トオルさんの言葉に、私達は表情を硬くする。―――"カタカタヘルメット団"の
「...それにしても、看板メニューが五八〇円――六百円を切るなんて中々見ないわね。『アビドス』のこの現状的に利益出てるのかしら?」
「"安くて美味しい"って謳い文句はよく見るけど、実際は見た目だけだったりするんだよねー。ま、『アル』ちゃんのハイリスクハイリターンな賭けのおかげでそういう文句も言えない懐なんだけどさ」
「だから大丈夫よ!私達に加えて、『アビドス』の生徒数を上回る傭兵達も雇ったのよ?質、量共に優勢なんだから!」
お金が無いお客さんから『アビドス』の脅威へと見方が変わってしまい、和やかな会話を交わしている様子を微笑ましく眺める事も難しくなってしまった。
「っと...『柴関ラーメン』一丁あがり!」
「ありがと――って...」
「...わーお」
「ん、史上最大級」
「...前に"先生"が頼んだ時のもの以上だな」
―――ネイトがお盆に六人のお客さんが頼んだ『柴関ラーメン』を載せ、それを見て私も含め皆して驚きで固まる。確かに一杯ではあるけど...あぁ、そうだ。"大将"なら間違いなくこういう
厨房の奥で作業していただろうから六人のお客さんの会話は聞こえていないかもしれないけど、仮に話を聞いてしまっていても構わず振る舞うだろう。―――
「っしょっと...お待たせしました!『柴関ラーメン』一丁!」
「――へ?」
「...これが、一杯...?」
「...こりゃすごいね~。一人じゃ到底食べきれないボリュームだね、くふふ!」
「「あわわ...」」
「この量...明らか六人分を超えてない?」
テーブルにお盆ごと『柴関ラーメン』を乗せ、六人の驚く反応を聞きながら取り分け用の丼と割り箸を並べる。
「はい。ご注文通り『柴関ラーメン』一丁ですよ。冷めない内にお召し上がりください!ではごゆっくり!」
「ん、流石"大将"」
「六人で分け合ってもお腹いっぱいになる一杯。正に漢の気遣いだねー」
「"大将"ならこういうことをするだろうな。屋台から店舗へ...長年やっていなければ、客の事情を的確に見抜いて値段以上の気遣いをかけることはできないだろう」
そう挨拶して厨房に戻ると、シロコ先輩達も"大将"の気遣いに感心している。トオルさん、マミゾウさんが学生だった頃からラーメンを振る舞っていたと言うから、私やネイトでは到底追い付けない経験を持っている"大将"。『アビドス』の外でも充分やっていけるのに、それでも『アビドス』に留まってくれているのは"対策委員会"としても励みになる。
「...一杯は一杯ね。さぁ、いただきましょう!
"社長"の音頭を受けて"便利屋68"の面々は各々取り分けて食べ始める。
「...皆と、先生達に伝えておこっか」
「ん、それがいい。食べ終わったら急いで防衛準備しないと」
「...傭兵を雇った、と言っていたな。ふむ、もしかしたら...」
モエの提案にシロコ先輩は頷き、モエは『モモトーク』を開いて打ち始める。―――今日は午後のシフトが無くて幸いだった。シフトがあっても"大将"なら怒らないだろうけど、私とネイトもお昼を取ったら校舎に戻らないと...!
~商店街~
side-カヨコ
「ふぅ、お腹一杯ね!」
「くふふ、あんなに沢山食べたのはいつ振りだったかな~。あんな気遣いがあるお店があったなんて思わなかったよ」
「アル様すみませんすみません...!お腹が小さくてあんまり食べられなくてすみません...!」
「大丈夫よハルカ、胃袋の大きさは人それぞれなんだから!シオンなんてハルカが食べられなかった分、二人前位は食べてたし」
「お、美味しくて、沢山あったからつい...」
「姉さんって、普段は食べられる雑草の料理ばかりなせいか瘦せぎすな見た目に反してよく食べるものね」
―――『柴関ラーメン』での食事を終え、雇った傭兵達が待っている仮拠点に向かいながら会話を交わす。
「――さて、お腹も満たしたし!仮拠点で装備と弾薬をチェックしてから出撃よ!『アビドス』の娘達も、まさか
「..."社長"、アンタねぇ...」
「くふふ...やっぱり気付いてなかったんだ~?」
「...はぁ、やっぱり」
"社長"の言葉にジョオンと共に呆れたため息を吐き、ムツキは分かっていた様に悪戯っぽく笑う。
「え?え?どうしたのよ三人共?」
「...私達の後に入ってきた、明るい空色のネクタイを締めた、紺色のブレザーとチェック柄のスカートの生徒二人――あれ、『アビドス』の娘達だよ。それに...私達が校舎を襲う予定でいることに気付いてると思う。
「......な......なな...」
―――閑散とした商店街に、すっかり聞きなれた叫び声が響き渡った。
ということで、あややがしばらく『アビドス』に滞在します。
そして依神姉妹が加わった便利屋68が登場!疫病神と貧乏神の神秘持ちの加入により一層懐が厳しい状況になりましたが、それでもアルちゃん社長はへこたれない!
アルちゃん社長が依神姉妹の脳を焼く経緯についてはその内グループストーリー的なお話で掘り下げる予定。
~生徒紹介~
名前:
所属校:不良→アビドス高等学校
学年:一年生
装備:AR(
名前:
所属校:ゲヘナ学園 便利屋68"平社員"
学年:二年生
装備:AR(
名前:依神 ジョオン
所属校:ゲヘナ学園 便利屋68"会計士"
学年:二年生
装備:HG(