Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~   作:八坂 義景

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デカグラマトン討伐後にストーリー解禁されましたね。とりあえず一言―――一発ぶん殴らせろクソ司祭共。デカグラが最期に笑いながらこっちの幸せを願って散ったってのによォ...!試みは失敗したであっさり捨てやがってよォ...!
デカグラも預言者達も三姉妹も、神を目指し、その礎にならんとしていた割には誰もかれも人間臭さがあって感情移入しちまったぜ...
エピローグも感動ありネタありで良かった。ゲ開はやっぱりクソゲーメーカーだったよ...皆違って皆良い。だがそれが必ずしも調和にはならないんやなって()
結局ビナーは何なん?他に感化前が不明な預言者が居るけども、お前が一番謎なんだよマキちゃん好き好き蛇さんよォ...ホントお前何なんだ???

さて。補習授業部、二回目の試験後からです


File97.ET-08~プールサイドの密会~

~"補習授業部"合宿所 教室~

side-ミヤコ

 

「――――このように式を組めば、後は簡単に解けます」

「...あ、そっか...!ここを間違ってたから何度やっても...ま、まぁ私は気付いていたわ!一応確認したかっただけだから!...でも、説明は分かりやすかったわ。...あ、ありがとうミヤコ」

「――どういたしまして。力になれたなら幸いです。...昨日の二回目の試験では惜しい所まで得点を取れていました。確実に間違いを正していけば、三回目で確実に合格できるでしょう」

 

―――コハルさんのお礼に微笑みながら答える。設立当初のコハルさんだったら『本当は分かっていた』と言い訳してばかりで、こうしてお礼を述べる事はしなかっただろう。ハナコ先輩共々、得点向上と共に部内での関係も良好になりつつある。

 

―――昨日行われた二回目の試験では、ヒフミ先輩、アズサ先輩、キクリさんは余裕を持って合格。そして、プール掃除や『モモフレンズ』の布教がリフレッシュになったのか、コハルさんは五十八点、ハナコ先輩は五十三点と()()()()()()()()()()得点で不合格となった。

 二週間後には三回目の試験が実施される。そこで全員合格を成せなければ―――五人は退学となる。後がない厳しい状況だけど、不合格となった二人の士気は落ちていない。

 

「うーん...なぁヒフミ、ちょっといいか?」

「どうしましたか、アズサちゃん?」

「この古典の問題の解答なんだけど...これで間違いみたいなんだ。意味はあってた筈なんだけど...」

「ちょっと見せてください...うーん...確かに、意味的には同じように見えますが...私はこの正答の方で書いたんですよね。多分、正答と違う内容なのでバツになったんだと思いますが...」

 

―――そんなコハルさんのサポートをしている隣で、アズサ先輩がヒフミ先輩にアドバイスを求める会話が聞こえてチラリと見る。どうやら古典の大問の答えに疑義がある様で、しかし意味としては同義の解答を書いた様で、ヒフミ先輩と揃って首を傾げている。

 

「少し見せてくれますか?...ふむ...確かに、全体的に意味は合っているように見えますが――この単語、実はこんな意味も持っているんですよ。この意味の場合だと...ほら、アズサちゃんの解答が違って見えちゃいます♡」

「おぉ...そう言えばその単語にはその意味もあったな。頻出じゃなかったからあまり覚えていなかった。ありがとうハナコ」

「そういう意味の捉え方もできるんですね...凄いです、ハナコちゃん!」

 

 そこにハナコ先輩が介入し、アズサ先輩の解答の傍にシャーペンで何かを書き込む。それを見た二人は驚き、感心した様に瞳を輝かせて謝意を述べる。

 

「ふふ、私なんかより二人が凄いですよ♡古典の大問中でも特に難しい――所謂()()()()()()()をしっかり解けているんですから♡」

「そ、そんなことありませんよ...私は本当に偶然、似ていた練習問題を直近で解いていただけで...本当にハナコちゃんはすごいです」

「あぁ、ヒフミの言う通りだ。――古典についてはハナコのおかげで分かっている所があるからな。()()()()()()()()()()()意味、解釈も付け加えて教えてくれるし、本当に詳しいんだな」

「ふふ、そんなに褒められると恥ずかしくなっちゃいます♡...勉強は苦手ですが、本を読むのは好きですから。あまり流通してないおかげで現代語訳もされていない古典文学含め、()()()読んでいたら自然と覚えていただけのこと、ですよ♡」

 

 ハナコ先輩は謙遜する様に古典が得意な理由をそう挙げる。―――理由としては納得出来るものの、やはりハナコ先輩の振る舞いには違和感を感じてしまう。多くの本を読んでいれば読み方や意味は確かに自然と覚えているだろう。しかし―――現代語訳されているなら兎も角、当時そのままの古い文体をそのまま読む事は難しい筈だ。やはり、ハナコ先輩は―――

 

「――そう言えば、"先生"はまだ戻ってきていないな。今日は全員が間違った問題についての全体的な解説をやる筈だが...」

「確か、『シャーレ』の留守番組と情報共有を行っている筈ですが...結構時間が掛かっているんでしょうかねぇ」

 

―――キクリさんにアドバイスを掛け終えたサキがそう疑問を挙げると、教壇で書類を整理しているアヤ先輩がそう答えて首を傾げる。

 


~"補習授業部"合宿所 プールサイド~

side-"先生"

 

『――――報告は以上です』

「"――ありがとう、ユウカ。ハタテと二人だけで留守番させているのが申し訳なくなるね..."」

『"補習授業部"のサポートは長期間の活動でしょう?"教授"が顧問代行を務めていますし、相変わらず舞い込む依頼は多いですが、"当番"の方々とも協力して上手く運営しているので大丈夫ですよ。

...つい最近までの私の様に、"当番"で積極的にシャーレに来られるような方はいっそ正規部員に就いてほしいと時々思いますが。広報(アヤさん)サイバー(ハタテさん)財務()...私達以外にも部門長や下部人員は必要ですから』

 

―――プールサイドのビーチパラソルの下、『シッテムの箱』でのテレビ通話。『シャーレ』オフィスビルで留守を預かっているユウカからの報告を受け、謝意を述べるとユウカはそう謙遜した言葉を返し、愚痴る様に『シャーレ』正規部員の少なさへの不満を挙げる。

 『シャーレ分室』の拡張だけではなく、より多くの正規の部員が居れば負担も減らせる。故に、公式サイトや『モモッター』でも正規部員の募集は掛けているものの、"当番"と正反対に応募者は居ない。単発バイト的な側面もある"当番"の方が気軽だからだろうか。

―――閑話休題。

 

「"部活動との兼務が厳しかったり、"当番"で充分だって娘も居るだろうし、強制はできないからね...気長に待つしかない。――さて、他に私に共有することはないかな?"」

『――あぁ、そうでした。"連邦生徒会長"より、"現在遂行中の依頼を終えたら、提案したいことがある"と言伝を預かっています』

「"(ユカリ)が?――分かった。"補習授業部"での依頼を終えたら会いに行くよ。...上手く行けば、二週間後には依頼を終えられる筈だから"」

 

 ユウカの言葉を受けて眉を上げる。―――時期、状況としては『エデン条約』絡みだろうか。どの様な内容にせよ、生徒が会いたいと言うなら応えねば。

 

『分かりました、連邦生徒会長(先方)には二週間後、もしくはそれ以降にと伝えておきます』

「"お願いするよ。――それじゃあ、引き続きビルの方は任せるよ"」

『了解しました。――"先生"も、"補習授業部"の皆さんへの指導、サポート頑張ってくださいね。アヤさん、ミヤコちゃん達にもよろしく伝えてください。それでは。失礼しました――』

 

 ユウカが通話を切り、『シッテムの箱』のホーム画面へと戻る。

 

「"...つくづく、ユウカの加入のありがたさを実感するね。まだまだ正規部員は必要だけど...ビルを預けられるだけの能力が彼女にはある"」

『そうですね!ユウカさんの事務能力や財務能力はシャーレの運営をより円滑なものにしていますから!』

「"本当に大助かりだよ...財務は加入前より厳しくなったけど、それだけ私がお金にルーズだったってことだし――"」

 

 

 

 

「――あれ、"先生"?なんで外に...」

「"――ミカ?君こそどうしてここに..."」

 

―――横から声が聞こえて振り向けば、驚いた表情を浮かべたミカが立っていて、お互いに何故ここに居るのか尋ねる。今はミユが外の巡回を行っていた筈だけど...よく見れば、制服のスカートに垣根の葉っぱらしきものが幾つかくっ付いている。

 

「――二回目の試験の結果聞いてさ。次の三回目が最後――全員合格できなかったら()()退()()だから、皆頑張ってるかなって様子見に来たの。

 もう少ししたら、テンちゃんが()()()"ティーパーティー"として様子見に来る筈だよ。――私は別に"ティーパーティー"としてじゃなくて、()()()()()()()()()だから安心して?...あ、まだ葉っぱ残ってた。――巡回の娘は見かけたけど、柵と垣根にちょっと隙間があるよね?それを利用してここまで()()()()()の」

 

 ミカはそう答えながらスカートの裾に付いていた垣根の葉っぱを落とし、『隣、失礼するね』と断って私の隣の椅子に座る。どうやらミユの巡回をすり抜けて忍び込んだ様だ。()()()()()()はミカには通用しなかったらしい。

―――閑話休題。

 

「――プール、綺麗になってるね。...この合宿所の下見は私が受け持っててさ。"補習授業部"発足前に掃除しておこうかなって考えてたんだけど、条約締結で皆忙しくてその暇がなくて...うん、ちゃんと綺麗なら景観的にもいいね。掃除は"補習授業部"の娘達が?」

「"そうだね。勉強漬けじゃ疲れるからって、部長のヒフミがリフレッシュを提案してね。総勢九人でやったおかげで短時間で終わったよ"」

 

 プールの水面を眺めるミカの問に頷く。

 

「そっか。ナギちゃんが懇意にしてるだけあって、リーダーシップもあるんだねヒフミちゃんは。...そんな娘を、失敗したら退学になっちゃう部活に入れるなんてね。――"補習授業部"に仕込んだ()()()()なんて荷が重すぎるだろうに、さ」

「"...()()()()?何のことかな"」

「あはは、誤魔化さなくても大丈夫だよ"先生"。――武闘派の"パテル分派"所属だけど、私はその首長(ホスト)だよ?腕っ節だけじゃ分派の首長(グループのリーダー)なんて務まらない。時期、状況的に"補習授業部"は()()()()()()()()()()()からね。明らかに別の目的があって設立してるじゃんね?...()()()()()()()()()()()()()()分かりやすいってこともあるけど」

 

 ミカの言葉に対してとぼけてみせるけど、ミカはクスリと笑ってそう返す。―――どうやら、彼女も"補習授業部"の設立時期の違和感からナギサが仕組んだ裏の目的に気付いている様だ。

 

「"...そっか。ナギサとは幼馴染で親友である君も気付ける位に、今の彼女は普段らしくないんだね。『シャーレ』としては裏の目的――部内に居るらしい、裏切り者の捜索には協力しないと明言しているよ。ヒフミ達にとって余計な重圧になってしまうし、裏切り者を見付けることは兎も角――無実の娘達すら纏めて排除するのはナギサにとっても良くないだろうから"」

「...私もそう思うよ。セイアちゃんのことがあったとは言え、本当にナギちゃんらしくないから。――あのさ、"先生"」

 

 ミカは私の言葉に頷き、ふと私に向き直る。ピンク色を帯びた黄色い瞳がどこか不安そうに揺れる―――

 

 

「――"先生"は、()()()()()なんだよね?『シャーレ』の活動意義としては勿論、"先生"本人も生徒の味方であろうとしてくれるんだよね?」

「"――勿論だよ。生徒の悩み、困り事、迷いに寄り添い、解決を目指す。教師は君達生徒を――子供を()()()()存在であるべきだからね。

 子供は間違うものだ。大人になってしまうと、間違い一つで大問題になることもあるし、背負う責任も大きなものになってしまう。だから――子供である内に間違い、反省することで成長になる。...だから、その間違いを指摘して、且つどうしたら間違いを正せるか考える支えになるべき大人――教師が居るんだと私は考えているよ"」

「...そっか。うん。それなら一安心だよ。...本当に()()()()...眼差しも、言葉までそっくりだなんて...

 

 ミカの問にそう答えると、彼女は安心した様に微笑みながら頷き、小さく何か呟く。

 

「"――そんな問を掛けるなら、ミカには何か悩みがあるのかな?"」

「...ううん、ただの確認だよ。『シャーレ』、"先生"について聞こえてくる、色々な噂の真偽を直接確かめたかっただけ。――じゃあ、もう一つ質問していいかな?」

「"どうぞ。答えられることなら答えよう"」

 

 ミカは私に打ち明けたい悩みは無いと答え、もう一度質問していいかと確認して来て、私は素直に頷いて促す。

 

「――"先生"は、()()()()()()()()()を持った存在についてどう思う?」

「"――所謂()()()のことかな?"」

 

 ミカは私の確認の問に頷く。―――人間の思想信条、感性は十人十色だ。誰かにとって良い事であっても、別の誰かにとっては悪い事である様に、()()()()()()()()()()()()()物事はそう簡単に実現出来るものではない。故に、少数派はどうしても世論や大多数の考えに不満を抱く。

 今現在締結間近の『エデン条約』でもそれは例外ではなく、『トリニティ』、『ゲヘナ』双方で反対派の()()()()が起きている。

 

「"――結論を言えば、()()()()()()()()()()()()()()だと思っているよ。百人全員が賛成できるような物事はそう簡単に実現できない。三人、四人...反対する者はどうしても出てくる。でも、その数の差故に反対意見は圧し潰されることが多い。状況によっては、反対する者の中で我慢できなかった者が()()()()()を取ってしまうことだってある。

 とは言え――肯定するつもりはないけど、時には()()()()()が状況変化に作用することがある。所謂()()()()()()()だね。反対する者を糾合し、直接体制側、多数派に向けて殴りかかる...ただ、これは多くの犠牲を出し、世論からの激しい批判に晒される大きなデメリットがある。それらを乗り越え、政治や行動で正当性を示して世論から迎合されれば成功と言えるけど...行動を鎮圧、制圧されればそのまま失敗に繋がる。

――君の気分を悪くさせてしまうのは申し訳ないけど、セイアの襲撃は結果としてナギサが代わって締結を推し進めることになったからね"」

「...そっか...うん、そうだよね。成功さえすればいいけど、失敗したら全てを喪う...やっぱり、多数派に対しては平和的に逆らえないのかな」

「"――いや、()()()()()()()はあくまで()()()()()であるべきだよ"」

 

 ミカは私の解答を聞いて目を伏せてそう言ちるけど、私はそう返す。―――そう、()()()()()()()はあくまで()()()()()であるべきだ。

 

「"私達は人間だ。どうしても間違い、欠点は出てしまう。それは条約も例外ではない。その間違い、問題点を指摘し、対案を提示すれば受け入れてもらえるかもしれないし...もしかしたら、()()()()()()()()()()()ことにも繋がるかもしれない。...とは言え、『エデン条約』は既に『トリニティ』、『ゲヘナ』双方で内容の合意を得た段階だ。条約そのものを取り消すのは難しい。でも、さっき言った通り条約内容の問題点や改善点を指摘することは締結後もできると思うよ"」

「...結ばれちゃっても、後から指摘、批判して改善を求める...そういうやり方もあるんだね。...でも...締結したところで()()()()は...うん。やっぱりやるしかない

 

 指摘や批判を行って改善を求める活動方法もあると説明すると、ミカはまた小さく何か呟きながら頷く。

 

「――ありがとう、"先生"。おかげで()()()()()()よ」

「"どういたしまして。...君が何をしようとしているにせよ、君の助けになれたなら幸いだ"」

 

 目を開いて謝意を述べるミカに微笑みながら答える。―――二つの質問の繋がりは兎も角、ミカに何かを決心させる要素になった様だ。ミカは椅子から立ち上がり―――

 

「じゃあ、用は済んだからこれで失礼するね。テンちゃんに見付かったら何て言われるか...巡回の娘には黙っててね?...っと、その前に。お礼に一つ大事なことを教えてあげる。()()()()()()()()()()居るって疑ってる、()()()()()()()()()()のことなんだけどさ――――」

 

 


side-テンシ

 

「...あ、居ました...!」

「――まだ『シャーレ』ビルの留守番組と話し合っていたみたいね。案内ありがとう、ミユ。引き続き、合宿所の警備頑張ってね」

「...あ、ありがとうございます...では、失礼します...!」

 

―――合宿所の外の警備を受け持つミユと別れ、掃除されて綺麗になったプールサイドのビーチパラソルの下に足を向ける。

 

「――ごきげんよう、"先生"」

「"――やぁ、テンシ"」

 

―――"先生"の下に歩み寄り、挨拶を交わす。...妙だ。"補習授業部"の五人が()()()()()()()()()()()()()()()を確認するべく、私の来訪は伏せていた。ミユが"先生"に一報入れていたとは言え―――それでも()()()()()()()()()()()()落ち着き払っている。

 

「突然の来訪、申し訳ないわ。――二回目の試験の結果は私も把握している。次――三回目の試験で()()()()できなければ、待っているのは()()退()()。いよいよ後がないこの状況で、皆サボらず、諦めずに補習授業に励んでいるかを確かめに来たの」

「"...なるほどね。――ついさっき、『シャーレ』ビルとの情報共有と今後についての話し合いが終わってね。これから予定していた補習授業を行うつもりだったんだ"」

 

 "先生"はついさっきまで『シャーレ』ビルの留守番と話し合いをしていたと答える。ミユが言っていた通りだけど―――やはり、()()()()()()()()()雰囲気に違和感を覚える。

 

「...だとしたら、丁度いいタイミングでの来訪になるわね。――()()()()()()()()()()()()、上手いこと切り上げたのかしら?」

「"...君になら話しても大丈夫か。――実は、ちょっと前にミカが()()()()ここに来てね。彼女から君が来ることを知ったんだ"」

「――ミカ...『パテルで話し合いがあるからパス』って言っていたけど、()()()()()()()()()と思ったら...」

 

 誤魔化せないと観念したのか、苦笑する"先生"の種明かしに思わず呆れたため息を零す。―――朝の首長(ホスト)会議では今私が行っている様子見に誰が行くかと話し合っていた。

 その場ではミカが()()()()()()()()()()事が何となく気になっていたけど、まさか合宿所に先んじて()()()()()いたとは。私が来る前に用を済ませて出て行った様だ。

 

「"――その反応を見るに、君とナギサにも黙っていたんだね"」

「――えぇ、その通りよ。...今までは"補習授業部"にあまり関心がない風に見せておいて、()()()()()忍び込んでまで近付くなんてね。..."先生"、無理に答えなくていいわ。ひょっとしてミカは――」

 

 

 

 

「――"補習授業部"の様子見を()()()()()()()()()()()んじゃないかしら?」

「"...何故、そう思ったのかな?"」

 

―――『隣、失礼するわね』と断り、"先生"の隣の椅子に座る。―――座面に残る()()()()()()()()()()()()()。微かに鼻を突く()()()()()()()()()香水の匂い。間違い無く()()()()()()()()()()様だ。

 

「ナギサが"補習授業部"設立を提案した時から今まで、ミカはナギサの決定に適当に賛意を示していたわ。さっきも言った通り、()()()()()風にね。補習授業を行わなければならない成績不振を気にする位の関心はあったけど。

――そんな彼女が、私やナギサに隠して"補習授業部"の下に()()()()()。...単なる様子見だけなら名乗りを挙げていた筈よ、ミカは。今のナギサは『エデン条約』で忙しい身だし、ナギサの負担を減らそうって気遣いはミカ(あの子)もできる。つまり――()()()()()()()()()()()()()()()目的も含んでいなければ、()()()で動く訳がないの」

「"――流石、幼馴染にして親友と言うべきか。...君の言う通りだ。ミカは"補習授業部"の様子見はしないで、()()()()()を目的にしていたよ"」

 

―――"先生"は私の推理を聞いて微笑み、ミカの目的を明かす。どうやら"先生"に会うのが目的だった様だ。

 

「"先生"と、ね...最近のミカは彼女らしくない様子を見せることが度々あったわ。特に、セイアが襲われて()()してからは尚更...()()()()()()()()、自責の念に駆られている風にね」

「"ふむ...あの問はその自責の念が絡んでいるのかな"」

「...良ければ、何を聞いたか教えてくれる?」

「"――私が生徒の味方であるか。少数派の存在についてどう思うか。この二つを聞いてきたね。その答えでミカは何か決心が付いたみたいだけど...まるで、()()()()()()()()()()()()()()()()ように見えたよ"」

()()()()()()()...」

 

―――『...これで構成分校は全て調査し終わったわね』

―――『はい。...まさか、()()()()()()()()()()()()()()()とは。我々の調査能力の限界もあり得ますが、各分校の生徒、住人の中で誰一人として二人を知らないのは異常です。これは明らかに...』

―――『...転校に絡む書類は二人を手引きしたミカが自ら作成、首長(ホスト)として決裁してセイアに上げて承認されている。...書類上はヴァンダル分校に在籍していたことになっていたし、書類は正当に見えた。でも、()()()()は...』

 

 "先生"の答えを受け、イクとのやり取りを思い返しながら考え込む。

 

―――『白洲アズサ』、『旅籠ルイズ』。()()()()()()により、『トリニティ』構成分校の一つ『ヴァンダル分校』から転校して来た生徒二名。しかし、イクを通した調()()で二人は()()()()()()()()()()()()()()()()()事が判明している。その後も他分校に調査を行ったものの、二人が在籍していた形跡は一つも見付からなかった。

 大書庫で調べた『ヴァンダル分校』在籍時の学籍情報の書類は確かに正当なものだった。―――書類に使われていた紙の質が()()()()()()()点を除けば。特段紙の質や特性に詳しい訳では無い。ただ、パッと見で前後の書類と比べると紙の質感、色合いが()()()()()()()()事に気付いただけだ。まるで―――アズサとルイズの学籍情報を()()()()()()様に。

 

―――『私は断固反対。あのゲヘナと握手なんて考えられない。仮にどうにか締結した所で、銃撃やらテロやらが絶えないゲヘナがちゃんと条約を守れるかも怪しいじゃん』

―――『確かに、ゲヘナの治安の悪さを考えれば、条約を結んだところで知ったことかと変わらず暴動を起こす者ばかりだろう。...だが、"連邦生徒会長"はゲヘナ(あちら)万魔殿(生徒会)も条約締結に前向きだと言っていたじゃないか。今の"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"は学園内の暴動鎮圧、統制に向けて努力している。万魔殿(生徒会)が理性的で前向きなら、これはチャンスかもしれない。...正直、私も条約を締結したところで我がトリニティとゲヘナの関係が変わるとは思えないがね』

―――『ですが、例え強力な条約とならずとも、()()()()()()()()()()()()()()()が大きな意義になるのではないでしょうか?――歴史の一部とも言えるこれまでの対立を、宥和、協調へと切り替えるのは将来の足掛かりにもなるでしょう』

―――『小さな足場でも、足を掛けられるなら壁を乗り越える一助となる、ということね。...それから、"連邦生徒会長"が挙げていた治安維持での協力だけでも大きな前進になるんじゃないかしら。――実際、ゲヘナの"温泉開発部"や"美食研究会"はここトリニティでもお構いなしに活動して問題を引き起こしていて、これまでは"正義実現委員会"が鎮圧を行ったり、"風紀委員会"が介入しようとしたりして散々揉めたでしょう?...これが改善されるだけでも大きな意義があると思うわ』

 

―――そもそも、ミカは『エデン条約』が"連邦生徒会"から提案された時点から声高に反対を表明していた。"パテル分派"そのものがゲヘナ嫌いが特に強い組織風土であり、代々"パテル分派"首長(ホスト)を輩出して来た聖園家も例外ではない。

 しかし、"ティーパーティー"は"ホストリーダー"の主導、首長(ホスト)の合議で以て方針を決定する組織である。当時"ホストリーダー"であったセイア以下、ナギサ、そして首長(ホスト)ではないけど私も賛成に回り、多数派を前にミカは最終的に渋々賛成して『エデン条約』締結に向けた活動が始まった。それでもミカは事あるごとに不満や愚痴を零していたけど、周りは()()()()()()()()()だと真剣に取り合うことはせず、私はそんなミカの愚痴を受け止めて少しでも考えを改める様に説得を図ったけど、改善は見られなかった。

 

―――自らの意思、意見に反して順調に進む『エデン条約』締結に向けた活動。恐らくミカの内心では不満が溜まっている事は察せられる。

―――分校に在籍していない生徒の引き入れや、"先生"に問うた内容を考えれば、ミカがやろうとしている事は―――

 

「"...何か思い当たることがあるのかな?"」

「...推測でしかないけどね。"先生"――」

 

 椅子から立ち上がり、"先生"に向き直る―――

 

 

 

 

「――ミカと...()()()()()()()に気を付けて。私個人の推測の域を出ないけど、この二人はもしかしたら――――」

 

 


~『通功の古聖堂』地下 カタコンベ~

side-ミカ

 

「――また構造変わった?前に歩いた道の横にこんな崩れた所はなかった気がするけど...」

「前にも言ったでしょう?『カタコンベ』は不安定な空間なの。()()でも全容は全く把握できていない。()()が知っているのは()()()()()()()()()()()()()()()だけよ」

 

―――零時が近い真夜中。工事が終わって足場が解体されつつある『通功の古聖堂』の地下に広がっている『カタコンベ』。アーチ構造の廊下の右手に真っ暗闇が広がる崩落部を見付け、私の前で先導して案内するルイズちゃんにそう尋ねるとそんな答えが返って来る。

 

―――『トリニティ』内に残されている歴史の記録を見れば、何度かトリニティ(こちら)で調査を試みていたけど、ルイズちゃんが言った不安定な構造故に行方不明者を大勢出して悉くがすぐに中止されていた。

 トリニティよりこの『カタコンベ』を多く利用しているであろうルイズちゃん()ですら詳しく知らないと言うのだから、『カタコンベ』は一体どれだけ広く、どんな風に変化しているのだろうか。興味はあるけど、それ以上に―――()()()()()()()()()()()()()()()()理由を察せてしまう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()を何とか凌ぎ、()()()()()()()()()()()()()にも関わらず防ぐ事が出来ているのは、偏にこの『カタコンベ』の存在そのものが難攻不落の障害として―――

 

 

「――()()()()()()決心は付いた?」

「――うん。()()()()()()()()そっくりな大人のおかげでね。――もう、()()()()()()()()。結果がどうなるにせよ...ここまで来たら()()()()()()じゃんね」

 

―――ルイズちゃんの問を聞いて思考を止め、そう答える。"先生"に聞いた二つの質問に対する答えのお陰で決心は付いた。

―――()()()()()()()()()()()()()()()を、()()()()()()()()()()()()()()してしまった。"先生"は『子供は間違うもの』だと言っていた。例え、()()()()()()()()()()()()()()()が間違いであったとしても、私は止まらない―――否、止まれない。

 

「...『シャーレ』の"先生"のことね。補習授業が忙しいのか私はまだお目にかかれたことはないけど...噂だけ聞いていても"()()()"そっくりだとは私も思っているわ。...()()()()()じゃなかったら、是非とも会わせてみたかったわね」

「そうだね..."先生"なら、間違いなく()()()()()()()()()()()()()()と思うよ」

 

 私の言葉から誰の事かを示したのか察したルイズちゃんはそう言って微笑み、私も頷いて微笑む。

 

―――『...貴女が()()()()()()なら、止めはしないわ。――他者が他者の意思を縛ることはできない。私のような大人が、教師の端くれができるのは、()()()()()()()に導けるように支えることだけ』

 

―――性別と性格がちょっと違うだけで、"先生"と()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。"先生"にこっそり会いに行ったのは初対面で感じた既視感を確かめる為でもあった。

 私達みたいな生徒(子供)とどう付き合うか、どう思っているか。教師としてどう在るべきか―――何もかもがそっくりだ。()()()()じゃなかったら、きっと二人はすぐに仲良くなれただろう。

 

「――っと、ここが会合地点よ」

「ここも前と違う...本当に構造が変わってるんだね」

 

―――ルイズちゃんが嘗ては礼拝堂か何かだったらしい広い空間の真ん中で足を止めてそう告げ、私も足を止めて空間を見回す。

 

―――そもそも、こうしてルイズちゃんの案内でこんな所に来たのは、彼女を通して()()()()()()()()から『私と()()会いたい』と要請されたからだ。これまでの接触、今の状況を考えれば、目的は察しが付く。多分、()()()()()()()()()()()を―――

 

「さて、時間的にはそろそろ――」

 

チカッ...

「――Vanitas vanitatum, et omnia vanitas.」>

「――Plenitudo plenitudinum, et omnia plena.」

 

―――前方の壁の崩落した穴の闇の中でライトが点滅し、聞き覚えがある声が聞こえて来て、ルイズちゃんがすぐに()()()を返す。

 

「――すまない、少し遅れてしまった。()()()()も構造が変わってしまったのでな。ルートの構築をし直していた。こちらも()()()()()()だしな」

 

―――合言葉を受けて暗闇から『錠前サオリ』達"アリウススクワッド"の四人が姿を現し、到着が遅れた理由を挙げる。大所帯という事は―――

 

「構造変化は『カタコンベ』の常でしょう?仕方ないわ。――"()()()"達は?」

「あぁ、そろそろ――」

 

 

ゾロゾロ...

 

「わーお...」

「――本当に大所帯ね」

 

―――暗闇から、白いコートの上に防弾ベストとポーチを装備し、ニーパッドとブーツを履いて[MGL-140(グレネードランチャー)]を装備した娘や、白いクロップジャケット、ショートパンツの上にハーネスとポーチを装備し、グレーのタイツとブーツを履いて[スコーピオンEVO3 Pistol(サブマシンガン)]を装備した娘―――『アリウス』の娘達がゾロゾロと三十人程出て来て、左右に整列していく。

 

「...久しぶりね、ルイズ、"ミカエル"」

「えぇ、久しぶりね『ユメコ』お姉様」

「こうして直接会うのはホントに久しぶりだね、『ユメコ』ちゃん」

 

 整列が終わると、ウェーブが掛かった長い金髪の上にメイドプリムとヘッドセットを装備し、赤いワンピーススカートの上にエプロンと防弾ベストを装備し、その上に赤いロングコートを羽織り、赤いブーツを履いた、武装したメイドみたいな容姿の『アリウス』の"生徒会長"()()を務めている『(はかり)ユメコ』ちゃんが姿を現し―――

 

 

 

 

 

 

「――久しぶりね、"ミカエル"――いえ、ミカ。()()()()()()()()()()()()()()の準備ができたわ」

「――こちらこそ、()()()()()()()()()()()()を支援してくれることに感謝しているよ――『シンキ』()()。...並んでいる娘達が――()()()()()()()()()()になるのかな?」

 

―――長い銀髪の左側頭部にサイドテールを結い上げ、白いノースリーブのタートルネックのインナーの上に白く縁取った赤いコートを羽織り、同様のデザインのロングスカートとブーツを履いた―――『アリウス』を纏めている()()であり、"校長"を務めている『魔創(まそう)シンキ』が姿を現し、青い瞳を細めて微笑みながら挙げた謝意に対して私もそう答え、左右に整列する娘達を見回しながら尋ねる。

 

「えぇ、その通りよ。皆優秀であることは私が保証するわ。私が教えたことがトリニティ(そちら)でどれだけ通用するか未知数だけど――」

 

 

 

 

 

 

「――ミカ。貴女が目指す()()()()()()()()()()()。その成功の一助になれる筈よ」

 

―――シンキ先生は頷き、私の目的達成の力になれる娘達だと宣言する。

 

 

―――to be continued―――

 

 




ということでアリウス本格登場です。今回はユメコと、アリウスを導く大人―――シンキの顔見せです。察せるとは思いますが、残る怪綺談勢もしっかり登場しますのでお楽しみに。

~登場生徒紹介~

名前:(はかり) ユメコ
所属校:アリウス分校
学年:三年生
部活動:アリウス生徒会 生徒会長代行
装備:HG(SIG Sauer P365 XL(ピュリティ・ガード))+ショートソード

名前:魔創(まそう) シンキ
卒業校:アリウス分校
役職:アリウス分校 校長
装備:HG(Webley Revolver Mk VI(Memento Mori))
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