Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~   作:八坂 義景

107 / 115
 新イベ解禁されたので初投稿です。ストーリーはホラーしつつも新規供給たっぷりのトンチキでしたね。ヒマリの出番は少なかったけど濃かった。スチルのあれは単に新たな特異現象を見付けて嬉しそうにしてるだけというね...ホントこの天才ハッカーは。
 スチルの新規の子はミレニアム、羽咋ツバサ!元疑似科学部、今はモー超常現象研究所所長!まさかの部活動すら完全新規!しかし全身ビジュが思っていたより小さくてたまげた。サイズが合ってないのか萌え袖のシャツにショーツとは...いい...体格に見合った貧弱体力は兎も角、その顔はなんだその疲労困憊を目一杯表現した顔はいいぞもっと見せて。
 そしてミライは後輩思いだなぁ。自分のせいで信じ込みやすくなってしまったツバサにちょっと責任感じていたようで。まぁそれでも悪魔の証明盾にあくどい商売してる詐欺師であることに変わりはないけどな!
 ストーリー初手で"先生"逮捕されてて草。しかもイオリのアレで...
 コノカの自室スチルの妙にリアルな生々しさよ...片付けられてはいるんだが、普段一人だしこのくらいはいいっしょ感たっぷりの散らかり具合がすっごいリアル。そして脳筋故に怪談怪異みたいな殴って解決できないものには弱くてビビってるのは可愛いね。
 そしてしれっと告知にも居なかった完全新規その2、新たなる七囚人らしい密井キョウコ。他と違って明確にヴァルキューレに復讐しようとしているらしいが...
 そしてオチ!すっげぇ既視感で迫りくる合体怪談!もう構図が某ガンガー!それを一撃でぶっ飛ばすコノカすげぇ!
 更に矯正局所属生徒、しかも局長が!垂れエルフ耳でおっとりしてそうだが身長だいぶ高そうなミスズ!口振り的に矯正局もブラックっぽそうだが...これは...もしかする??カルバノグ来る??

さて、遂に状況が動きます。


File101.ET-12~トリニティの長い夜①~

~"補習授業部"合宿所 教室~

side-ミヤコ

 

「...これ...嘘...ですよね...?」

「――いや、どう見ても...これは"ティーパーティー"からの正式な通達だ」

「当日になって、こんな時間に...こんなに変更されるなんて...ナギサ様に聞いてみます!えっと...これじゃない...あった...!

「...六〇点でやっとギリギリなのに...九〇点なんて...満点を取れって言ってるも同然じゃない...!」

 

―――午前中も、午後も試験用紙が届かず、"ティーパーティー"に問い合わせても『確認中』の一点張りで妙な状況に戸惑っている内に夜を迎えた教室。

 唐突に"ティーパーティー"から発された通達による重苦しい沈黙をヒフミ先輩が破り、アズサ先輩がヒフミ先輩の言葉にそう返すとヒフミ先輩はスマートフォンを取り出して電話を試みる。その隣ではコハルさんがスマートフォンを食い入るように見つめて何度もスクロールして通達を読み込んでいて、()()()()()項目を確認して震えた声を零す。

 

「――『トリニティ』公式サイトにも"ティーパーティー"から別の通達出てるね。...機密情報が絡む会議をやるから自治区内外の出入り禁止...だってさ。ヘリも漏れなく対象みたい」

「そんなバカな...!だったら何で試験会場まで変えているんだ?!」

 

 私の隣ではモエが『トリニティ』公式サイトに掲載された情報を共有し、サキが信じられないと声をあげる。

 そんな様子を見ながら『モモトーク』で共有された――私達『シャーレ』はあくまでサポート役である為、補習授業に関する通達は"先生"と"補習授業部"の皆さんに向けてのみ行われているからだ――"ティーパーティー"からの通達を改めて確認する。

 


通 達

 

 諸般の事情、及び補習授業対象者の成績向上に伴い、第三回特別学力試験について以下の変更を実施する。本措置は通達発信後より即座に適用される。

 

・合格基準

 六〇点から九〇点に基準引き上げ。

・試験会場

 補習授業部合宿所より、以下の会場に変更する。

 会場名:ゲヘナ第三自然公園

 住所:ゲヘナ学園 ○○○○――――

・試験時間

 22:00~23:00

 注:試験時間に間に合わない場合は全員不合格とみなす。

 


 

「...(やはり...どう見ても"補習授業部"の皆さんを()()()不合格にさせようとしている。二回目までは普通に、特に変更もなく進んでいたというのに何故今になって...)」

 

―――内容を読み込めば読み込むだけ困惑が強くなる。確かに"補習授業部"の皆さんの成績は向上しつつあるものの、それでもコハルさんとハナコさんの直近のテストの成績は六〇点(元の合格点)()()()()であり、このタイミングでの合格基準の大幅な引き上げはかなり厳しい。

 更には試験会場と試験時間の変更。今の時間ではすぐにでも移動しなければ『ゲヘナ学園』の自治区へは入れない。しかし、"ティーパーティー"の命令により自治区境界は出入り制限が掛かっている。―――どう見ても、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「...駄目です...ナギサ様にも、"ティーパーティー"の窓口にも繋がりません...!」

「――私もダメだね。すぐ不通通知が鳴るから、問い合わせが殺到して回線がパンクしてるんじゃなくて...そもそも()()()()()()()()()()()()()()()っぽいかなー」

 

 ヒフミ先輩が顔を青ざめさせて"ティーパーティー"に何も連絡が取れないと報告し、いつの間にか先輩と同様に問い合わせを試みていたらしいモエもスマートフォンを耳から離して机に投げ出す様に置いて肩を竦めながら推測を挙げ、サキとアズサ先輩が首を傾げる。

 

「問い合わせを受け付けないって...それは組織としておかしいだろ。疑問が出るような通達なのにそれに答えようとしないなんて...」

「どういうことだ...?それじゃあまるで――」

 

 

 

 

「――遂に、仕掛けてきたようですね」

「ふふ...そうみたいですね。()()()()()()私達を合格させないという意思表示...私だって()()()()()()()()()ようなことはしないというのに...♡」

「この期に及んで何バカなこと言ってるのよハナコ!!このままじゃ私達は()()()()()()()()()()のよ?!」

 

―――ふと、静かにスマートフォンを見ていたキクリさんとハナコ先輩が落ち着いた様子でそう言葉を漏らし、ハナコ先輩の言葉にコハルさんが反応して泣きそうな表情で声をあげる。

 

「えぇ、そうですねコハルちゃん。――()()()()であったら、試験の受験は絶望的だったでしょう♡」

「何当たり前のことを言ってるのよ?!私達だけでできることなんて――」

 

 

「"――皆、一旦落ち着くんだ"」

 

―――コハルさんの声を遮る様に、教壇の方でアヤ先輩と何か話し込んでいた"先生"の声が教室に響く。その眼差しは隣のアヤ先輩揃っていつにも増して真剣なそれで、確かな決意を宿している。

 

「せ、"先生"まで何を言ってるの?!試験を受けられなきゃ皆退学なのにどうしてそんなに落ち着いて――」

 

 

「"――大丈夫だ。()()()()()()()()()()()()。私には――『シャーレ』にはそれを可能にするだけの力があるからね"」

「せ、"先生"...?」

「――『シャーレ』が有する超法規的権限。"先生"は基本的に受動的にしか権限を使っていないので分かりにくいですが、能動的な行動――『シャーレ』が行動し、介入することは、自治行政権を有する生徒会であろうと止められません。今回の場合は、"ティーパーティー"が如何に境界を封鎖していても『"補習授業部"の試験受験の為』で通せますから」

 

 "先生"はそう宣言を挙げ、戸惑うヒフミ先輩に対してアヤ先輩が『シャーレ』が持つ権限について改めて説明する。―――"先生"は『生徒の為にならないから』と権力の濫用を嫌う為、『シャーレ』が持つ超法規的権限を能動的に行使する事はあまり無い。

 しかし、今回は"ティーパーティー"側が何故か"補習授業部"に()()()()()()()()()と試験内容の変更や自治区境界の封鎖を仕掛けて来た。

 

「"君達"補習授業部"が試験を合格して復帰できるようにサポートするのが今回の依頼だ。――これまで『シャーレ』が()()()()依頼の成功率は百パーセントなんだ。大丈夫――()()、君達には試験を受けさせる"」

 

 "先生"はそう言って微笑みながら"補習授業部"の皆さんを見回す。―――"先生"は、"ティーパーティー"からの不可解な通達の調査よりも"補習授業部"の皆さんが()()()()()()()()()()()()()―――依頼の遂行を優先するつもりの様だ。とても"先生"らしい選択だ。

 

「"さぁ、試験に必要なものを準備して!会場に着けたとしても、受験に必要なものがなかったら意味がないからね"」

「は、はい...!」

「...了解。――()()()()()()()()()()()()()()()()()。約束は守らないと」

「――承知いたしました。...まずは試験の受験、合格を優先しましょう」

「ふふ、分かりました♡...ほら。私達だけでは無理だったでしょう、コハルちゃん?」

「そ、そうね...『シャーレ』が、"先生"達が居なかったら...合格基準はすごく上がったけど、絶対に...!」

 

 手を軽く叩いた"先生"の音頭を受け、"補習授業部"の皆さんが慌ただしく筆記用具やテキストをバックパックや鞄に詰め込み始める。先程まで"ティーパーティー"からの通達により漂っていた絶望的な雰囲気は晴れた。しかし―――

 

「――"先生"。試験会場、『ゲヘナ』までの移動手段はどうしますか?私達にはヘリがありますが...ヘリでの移動は目立ちます。『シャーレ』の権限があったとしても――出入り制限が敷かれている中でのヘリは迎撃される可能性が高いかと」

 

 "先生"の下に歩み寄り、移動手段についての懸念を挙げる。―――モエが共有した『トリニティ』公式サイトに掲載された"ティーパーティー"からの自治区出入り制限はヘリも対象だ。車両よりも速いけど遥かに目立ち、『シャーレ』の権限で航行許可を無理矢理取ったとしても誤認されて迎撃される可能性が高い。

 

「"確かにそうだね。ヘリが駄目なら車だけど――"」

 

 

 

 

こ、こちら"RABBIT4"...!"正義実現委員会"の方が来ました...み、皆さんに会いたいと...

 

―――ふと、インカムに合宿所の警備に付いているミユから通信が入る。

 

 

―――時を少し遡る―――

 

~"正義実現委員会"本部 "参謀"執務室~

side-ハスミ

 

ドンドン...!

『――どうぞ。そんなに荒く叩かなくとも在室中だ』>

 

―――"参謀"執務室のドアをつい荒くノックしてしまい、中のメグムから皮肉気な返事が返って来る。

 

「...ハスミ、落ち着け。ドアに当たった所で事態は変わらない」

「分かっています...!」

 

 私の後ろをついて来ているツルギの言葉にそう返しながらドアを開ける―――

 

 

「――やはりお前だったか、ハスミ。...ほう、ツルギも一緒か」

 

―――執務机で報告書を見ているメグムが顔を上げて分かっていた様な澄ました表情を私に向け、ツルギに対しては珍しいと眉を上げる。

 

「...流石に()()()()を受けて適当に流すことはできない。――知恵を借りたい。お前のことだ...()()()()()()()()()()()()()()()()()も使って、色々と()()を入れているだろう」

 

 ツルギはそう言って瞳を細めてメグムを見据え、対するメグムは「ふむ」と漏らして執務室をザッと見回す。

 

「...答える前に、部屋の外を確認してくれるか?下手に漏れると色々()()()だからな。確認したら『外出中』のプレートを提げて鍵を閉めてくれ」

「分かりました」

 

 メグムの頼みに頷き、ドアを少し開けて廊下に顔を出して左右を見回す。―――姿も気配も、誰も居ない事を確認して執務室に引っ込んでドアを閉めて施錠する。

 

「――すまんな、ハスミ。さて...まず、"ティーパーティー"から発信されたこの命令だな」

 

 メグムは充電スタンドに置いた"正義実現委員会"の赤いロゴを誂えた黒いタブレットを手に取って画面を弄り、私達に画面を向けて置く―――

 


緊急命令

 『エデン条約』に関する機密事項が関わる特別会議の実施に伴い、機密保持の観点から夜間~早朝の"正義実現委員会"の活動を以下に制限する。

 

・自治区境界全検問の封鎖、及び維持

・車両、人員の自治区への出入りの完全規制

 

 尚、上記時間帯の活動制限に伴い、自治区内警備は"ティーパーティー警務室*1"及び"ソーサーナイツ"に一時的に移管することとする。

 

"ティーパーティー"ホストリーダー

桐藤ナギサ


 

「何度見ても理不尽な命令です!境界での出入りの制限は兎も角――自治区内警備を"ティーパーティー警務室"と"ソーサーナイツ"だけにするなどと...!我々"正義実現委員会"を――治安維持組織をこうも蔑ろにするとは!」

「落ち着けハスミ。――ツルギ、お前はこの命令を見て何か感じたことはあるか?」

 

 内容を見てまた怒りが湧いてきた私の吐き捨てる様な言葉を聞き流す様にメグムが窘め、彼女はそのままツルギに目を向けてそう尋ねる。

 

「...そうだな...私達の仕事を代行する連中は"ティーパーティー"隷下。つまりは()()()()()だ。これは明らかに――()()()()()()()()()()。『エデン条約』が絡む機密事項だなどと理由付けしているが...間違いなく言い訳、カバーストーリーだろう」

正義実現委員会(私達)()()()()()何か、ということですか...『エデン条約』は既に、内容に関しては合意済。これ以上何を詰めると?」

「さてな。だが――"ティーパーティー"の...いや、ナギサの考え、狙いは明らかに異常だ。全く...らしくもない。こうも狙いが露骨な策を講じるとは。余程()()()()()と見える」

「...何を焦る必要が?『エデン条約』は既に具体的な内容も合意済。調印式典を行う『通功の古聖堂』も修繕は終わっています。これ以上何を――」

 

 

コンコン...>

『ツカサでございますよぉ。()()()()()()()があって寄ったついでに顔見せに伺いました』>

 

―――背後のドアがノックされ、メグムの()()であるツカサの声が聞こえてくる。

 

「――来たか。ハスミ、鍵を開けて入れてやれ」

「...分かりました」

 

 来る事を分かっていた様に澄ました表情を浮かべたメグムの頼みを引き受け、ドアに向かって鍵を開錠して扉を開ける。

 

「――おや?ハスミ先輩に...これはこれは――ツルギ先輩までご一緒でしたか。"正義実現委員会"が誇る三巨頭が一堂に会しているとは...一体どういう風の吹き回しで?」

 

 扉を開ければ予想通り、"ティーパーティー"の制服を纏ってベレー帽を被ったツカサが居て、私越しにメグムとツルギも視認したのか意外だと言いたげに眉を上げながら入室する。

 

「貴女なら既に知っているのでは?...状況を考えれば()()顔見せではないでしょう」

「そんな怖い顔をしないでくださいよぉ。せっかく可愛い後輩が久しぶりに来たというのに...私、悲しいです」

 

 ツカサを見下ろして瞳を鋭く細めれば、()()()()()()耳と尻尾を下げてよよよと泣く素振りを見せる。

―――相変わらず何処か胡散臭く、素直に信用出来ない印象を抱かせる娘だ。()()()()()()でこの"正義実現委員会"に加入した時から、委員会内ではその胡散臭い振る舞いで委員の娘達から距離を取られていて、半年も経たずに"ティーパーティー"へと転部した時は"ティーパーティー(そちら)の方が水が合うだろう"、"メグムの人を見る目も劣化した"などと囁かれた程だ。しかし、メグム自身悪く言われているにも関わらずどこ吹く風と言わんばかりに平然としていたのは、幼馴染の親友として不思議に感じていた。

 

―――『そうか...情報感謝する。おかげで我々も動きやすくなる。――これからも頼むぞ、ツカサ。......おっと。いつの間に来ていた、ハスミ?』

―――『...何をしていたのですか、メグム?その口振りは明らかに...!』

―――『お前からしたら許せないだろうな。だが――悲しいことに、ひたすら正義を示すことが叶わないのがこのトリニティだ。治安維持組織とて、政争や派閥争いとは無関係で居られん。ならば...誰かがその方面で動かねばなるまい?』

 

―――その振る舞いの理由を知ったのは報告書の提出に出向いた時だった。メグムがツカサと連絡を取り合って()()()()()()()()()()()()を得ている瞬間を目の当たりにして、ツカサの転部が()()()()()()()()()()()()である事を知った。

 その時はメグムの正義とは言えない行為に怒りを示したものの、この『トリニティ』の校風を考えれば政治的立ち振る舞いも必要だろうとメグムに諭され、事実ツカサが"ティーパーティー"に潜入して以来私達の活動が()()()()()()()()事もあって内心正義とは言えない行いに反感を抱きつつ、しかし『トリニティ』ではそうするしかないことも分かっていて黙認している。

―――閑話休題。

 

「――それで?こうして直接面会に来た辺り、かなり重要な情報のようだが」

「――はい。"ティーパーティー"...というよりはナギサ様が――――」

 

 メグムが報告を促すと、ツカサは泣くフリを止めて真面目な表情を浮かべて私達に向き直って報告を始める―――

 

 

 

 

「――――以上が、ナギサ様が仕組んでいた謀略です」

「...ふむ...」

「...私もきな臭さは薄々感じていたが...そうか...」

「...馬鹿な...!確かにコハルの成績は悪いものでした。だからと言って――その成績の改善を建前として、"補習授業部"の制度を悪用し、あまつさえ――トリニティを裏切ったなどという容疑を一方的に掛けて他部員共々退学に追い込もうとは!"ホストリーダー"と言えど許せません!」

 

―――ツカサから"ティーパーティー"内で起きた謀略について説明を聞き終え、メグムとツルギが落ち着き払っている反応を示した事も相俟って激情のままに机上に拳を打ち付けながら"ホストリーダー"代行へ―――らしくない謀略を巡らせようとしているナギサさん(同級生)への怒りを吐き捨てる。

 

―――コハルの成績は確かに進級が厳しい状況ではあった。しかし、"飛び級制度"の突破を目指して身の丈に合わない範囲の履修を前に苦戦しているだけで、基礎から丁寧に教えていけば充分勉強は出来ると―――私達で面倒を見てあげれば充分改善出来ると見ていた。

 しかし、そんなコハルの成績不振をも利用して"補習授業部"を設立した目的が救済措置ではなく、トリニティを脅かし得る裏切り者の隔離と炙り出しなどと言う、コハルにはまるで無関係な目的であった。

 勿論、他四人に対しても理不尽な謀略であるし、何より―――私達から見てもかなり贔屓にしているヒフミさんすら平然と退学に追い込もうとしている事が異常だ。

 

「落ち着けハスミ。...後輩を利用されたことへの腹立たしさは理解するが、ここで怒った所で事態は何も改善しない」

 

 更に怒りを吐き出そうとすると、ツルギが私の肩を軽く掴んで窘めてくる。ツルギは私の怒りが理解出来ないのかと抗議すべく振り向けば―――普段通りの人相が悪い仏頂面に煌めく真っ赤な瞳が()()()()()()()()()()()()()()()のが見えた。ツルギも私と同様に怒っているのだと感じ取り、激発した怒りが治まっていく。

 

「――そうだ。ツルギの言う通り、行動を起こさねばならない。..."ティーパーティー"、"ホストリーダー"代行からの命令である以上は遵守せねばならないが...」

「...どうせお前のことだ。さっきまでの沈黙で策を考えただろう。私は――"正義実現委員会"は、これから()()()()()()()?」

「まず第一に目指すのは――」

 

 

 

 

「――コハル達"補習授業部"の支援だ。ナギサの謀略に理不尽に巻き込まれた者達を助けるぞ」

 

 


~『トリニティ』自治区境界付近 道路~

side-"先生"

 

「"――ありがとう、イチカ。私達も移動手段をどうしようか悩んでいたんだ"」

「お礼ならこの車を用意したメグム先輩に言ってくださいっす。...先輩が何を考えているかは自分にはよく分からないっすけど――コハル達"補習授業部"が、()()()()()()()()()()()()()なんて状況は私でもどうにかしたいって思うっすから」

 

―――イチカがハンドルを握る()()()()()()ワゴン車の車内。助手席からイチカに顔を向けて謝意を伝えると彼女はひらひらと手を振りながらそう返し、バックミラー越しにコハルをチラリと見る。

 

「これは...この答えで......あれ、違う...?!...お、落ち着くのよ私...!まだ本番じゃないんだから...!」

 

 私もコハルの方にチラリと目を向けると、授業で使っていたノートを開いて齧り付く様に一心不乱に読み込んで試験前の追い込みを行っていて、不安そうに瞳が時々揺れるけど、諦めた様子は無さそうだ。

 

―――『どうも"先生"、こんばんはっす。前の"美食研究会"捕縛以来っすね。メグム先輩――正義実現委員会(ウチ)の"参謀"からの指示で、"補習授業部"の皆さんを試験会場まで送り届けに来たっす』

 

―――合宿所の警備を受け持っていたミユの報告を受けて外に出ると、"正義実現委員会"所有には見えないごく一般的なワゴン車の前に、"正義実現委員会"の黒い制服ではなく、何処かの運送業のアルバイト用制服らしき服を着たイチカが居て、メグムからの指示で"補習授業部"の送迎に来たと理由を挙げた。

 ミヤコの懸念を受け入れてヘリ以外の移動手段を模索していた私達にとっては渡りに船で、準備を終えた"補習授業部"の皆を乗せ、監督として顧問の私が、護衛兼サポーターとしてミヤコとアヤが同行し、アヤの献策で"補習授業部"が留守である事を気取られない様にサキ、モエ、ミユを合宿所に留守番兼『トリニティ』内動向の報告要員として残して出発して今に至っている。幹線道路ではなく入り組んだ道路を走っていて、"正義実現委員会"が詰めているという検問所を目指してワゴン車は走っている。

 

「――検問所に付いてる娘達には、既にメグム先輩から指示が伝わってる筈っす。出入りのどちらも制限してるんで、向こう側も引き返す車ばかり――私達はそれに紛れて自治区外に出るっす」

「"随分慎重だね。今も幹線道路じゃなくてこんなに入り組んだ道を走っているし..."」

「..."ホストリーダー"代行――ナギサ様の監視、諜報の目を避ける為...とメグム先輩は言ってたっすね。今のルートも先輩から貰ったルートに従ってるんで、多分この辺りは諜報が緩いんでしょう」

 

 イチカは私の問にそう答えながら、展開したドリンクホルダーに貼り付けている地図をチラリと見る。ネット上の地図をプリントアウトして赤のマーカーでルートを示したものの様で、土地勘が良いのか迷いなくハンドルを操作していく。

 

「"...諜報、監視か。ナギサは普段からそういうことを?"」

「自分は詳しく知らないっすけどね。――メグム先輩が正義実現委員会(ウチ)()()()()()()()()()を受け持ってるもので、"ティーパーティー"内の動向には随分と詳しいのでその受け売りっす。...最近は自分から見ても、"ティーパーティー"の姿をあちこち見かけるんで...()()()がナギサ様に()()()()()()()()()()()()んすかねぇ」

「"()()()...()()()()()()()()()()()()ことかな?"」

「ご存知でしたか。――通報を受けて現場に駆け付けた時はマジでてんやわんやの大騒ぎだったっすよ。一時は()()()()()()()()()()()()()()()なんて恐ろしい情報まで出回る程で...幸いそれについてはすぐに否定されたっすけど、それでも意識不明の重体。"救護騎士団"が預かって治療してたんすけど――今度は()()っすよ。騎士団も警備は強化してた筈なんすけどねぇ...途中で正義実現委員会(自分ら)は本業に戻ったっすけど、しばらくはこっちも結構な人員を割いて捜査に協力したっすね。"ティーパーティー"は"サンクトゥス分派"を主体に、今もそこそこの人員が捜索に割かれてるっすよ。それでも見付かってないんで一体何処に行ったのやら...」

 

 イチカは私の言葉に眉を上げながら頷き、セイア襲撃、失踪に際する"正義実現委員会"の対応についてそう説明する。本来の"ホストリーダー"への襲撃、その後の失踪は混乱を引き起こし、"正義実現委員会"も大変だった様だ。今もセイアは行方不明で捜索中であり、見付かっていない。―――しかし、セイアについて話を聞く度に脳裏に妙な違和感を覚える。まるで()()()()()()()()()()()様に―――

 

 

「――っと、検問が見えて来たっすね」

 

―――イチカがそう声をあげて前方を指差す。前方の道路には確かに"正義実現委員会"の娘達が屯していて、その中の一人―――畳んでも尚大きな翼を持った人影がこちらに気付いて手を振って停車の合図を出す。

 

「――お疲れ様です、イチカ、"先生"。..."補習授業部"の部員は全員連れて来ているようですね」

「お疲れ様っす、ハスミ先輩」

「"お疲れ様、ハスミ。――私達の送迎を支援してくれてありがとう"」

 

―――停車してイチカが運転席側の窓を下ろすとハスミが顔を覗かせ、彼女の労いに対して謝意を伝える。

 

「お礼は試験を無事終えてからメグムに直接伝えてください。...彼女の正義の示し方に思う所はありますが、彼女なしにはこういった支援はできなかったでしょう」

「"分かった。試験が終わったらお礼をしに伺うよ"」

「では、車内もあらためさせていただきます。"補習授業部"支援の一環とは言え、一応検問ですからね」

 

 ハスミの宣言に頷き、イチカがコンソールのドア開閉ボタンを押してスライドドアを開く。ハスミは前から回り込んで後部車内を覗き込んで確認する様に見回し―――

 

「...は、ハスミ先輩...!」

「――コハル。試験会場までの送迎は私達で支援します。後は...貴女の努力次第です。合格基準も引き上げられてしまったようですが...必ず合格できると信じていますよ」

「...っ...も、勿論です!必ず合格して"正義実現委員会"に復帰します...!」

「その意気ですよ。焦らず、緊張せず、落ち着いて全体を見通し、ただ一点の目標を穿つ――すべきことは狙撃と同じです」

「は、はい...!」

 

―――コハルを労い、緊張が少し和らいだ彼女を確認して微笑みながら頷き、ドアから離れる。イチカはハスミが離れた事を確認してドアを閉じる。

 

「――確認終わりました。怪しいものはありません。...改めて、コハルを――"補習授業部"をよろしくお願いいたします」

「お任せくださいっす!」

「"――任せて。必ず試験を受けさせて、全員合格させるよ"」

 

 運転席側に戻って来たハスミの言葉にイチカと揃って頷き、ハスミも頷きながら検問側に顔を向けて手を振って開通の合図を出す。

 検問のゲートが上がって道路が開通し、イチカは窓を上げながらワゴン車を走らせて検問を抜けて行く。

 

「――検問を抜けたら、この先のハイウェイに入って一気に『ゲヘナ』まで飛ばすっすよ」

「"分かった。時間的余裕は欲しいからね。――『ゲヘナ』に入るのは大丈夫かい?検問を通れたとしても、私達の目的を知らなければ怪しまれるかもしれない"」

「それについては、メグム先輩が"風紀委員会"に連絡を入れてる筈っす。確か――」

 

 


~『トリニティ』自治区内 ミカのセーフハウス~

side-ミカ

 

コンコン...コンコンコン...コンコン...>

 

「――来たかな?...うん、大体時間通り」

 

―――私が幾つか保有しているセーフハウスの一つ、その寝室。ドアが意図的なリズムでノックされ、スマホで時間を確認してから立ち上がってドアに近付き、偽装した覗き窓を開けば柔らかな糸目が―――ルイズちゃんの目が私を見つめる。

 

「――Vanitas vanitatum, et omnia vanitas.」

「――Plenitudo plenitudinum, et omnia plena.」

 

―――合言葉の合致を確認してドアを開けて中にルイズちゃんを入れる。

 

「こんばんは、ミカ。貴女の派閥(パテル分派)の娘の伝言を受けて来たわ。――遂に決行するのね?」

「うん。――どうしてか分からないけど、ナギちゃんが自治区内の警備を緩めちゃったからね。仕掛けるなら今しかない」

 

 ルイズちゃんの言葉に頷く。―――"正義実現委員会"全戦力を自治区境界の封鎖に回し、自治区内は"ティーパーティー警務室"とテンちゃんの"ソーサーナイツ"が代行する。『エデン条約』に絡む機密情報を扱う会議の為なんて理由を挙げているけど―――"パテル分派"首長(ホスト)である私には会議開催の通達なんて()()()()()()()し、警備体制変更の通達が来た時にテンちゃんと電話で話したけど、"サンクトゥス分派"首長(ホスト)代行でもある彼女にも通達は来ていない。

―――何が狙いなのかは私には分からないけど、警備体制が薄くなった今がチャンスだ。

 

「分かったわ。――目指すのは『ティーパーティー会館』かしら?灯りが点いていたのを見かけたから、公式サイトの通達通り会議中みたいだけど...」

「ううん。会議も嘘だし、間違いなく会館には居ないよ。...パテル(ウチ)の娘を使って調べてみたら、ナギちゃんが持ってるセーフハウスに居るみたいなんだ。それも――()()()セーフハウスに()()()()()()()()()()にして、ね」

 

 ルイズちゃんの言葉にそう答える。―――"ティーパーティー"屈指の武闘派である"パテル分派"だけど、何も荒事しか出来ない訳じゃない。まがりなりにも"ティーパーティー"を主導する三大派閥の一角。政争の為の諜報はそれなりに出来る自負がある。その諜報網を使って、件の通達が発される少し前からナギちゃんが()()()()()()()()()に移動している事を確認している。

 私やセイアちゃんよりも沢山のセーフハウスをあちこちに保有しているナギちゃんだけど―――その中には偽装がとりわけ巧妙で、ナギちゃんが()()()()()()()()()()場所がある。

 本来なら私なんかじゃ気付けなかったそのセーフハウスの存在に気付けたのは―――セイアちゃんが襲われて以来だ。()()()()()()()()()()疑心暗鬼、『エデン条約』締結への焦りが逆に偽装や警戒を緩めてしまったみたいで、ナギちゃんがそのセーフハウスに入る所を私は一度、偶然目撃した。以来そのセーフハウスをマークして様子を見ていたけど、最近のナギちゃんが度々利用している事を把握した。

 

―――護衛は最低限、且つ"ソーサーナイツ"ではなく"フィリウス分派"内のナギちゃんが信用している娘。セーフハウスに居るのはナギちゃんただ一人。きっと疑心暗鬼がそうさせているのだろうと考えると、ソーサーナイツ(テンちゃん)すら信じられていない様子は幼馴染の親友としては不安になるけど―――()()()()()を成功させるには大きなチャンスだ。

 

「...そんな行動を取っている理由は分からないけど、なるほど仕掛けるには大きなチャンスね。――それで、私達はどう動けばいいのかしら?」

「――ナギちゃんが今閉じ籠ってるセーフハウスの近くに礼拝堂があるんだ。...場所はここ。ナギちゃんが居るセーフハウスはここね。ルイズちゃんには、あちこちに潜伏してる皆を礼拝堂に一度集めて欲しいの。移動は各グループごとに、変装は礼拝堂に着くまで解かないでね?」

 

 スマホの地図を開いてナギちゃんが閉じ籠っているセーフハウスと、その近くにある礼拝堂の位置関係を示しながら行動方針を明かす。―――『カタコンベ』でシンキ先生から預かった『アリウス』の娘達には"ティーパーティー"の制服を貸して"パテル分派"所属の娘に変装させ、四、五人グループで分散させて今まで潜伏させて来た。その娘達の間の連絡や物資補給を行っていたのが目の前のルイズちゃんで、これから決行する()()()()()に際する移動の指示も彼女に任せる。

 

「通達にある警備体制の変更時間がタイムリミット。"正義実現委員会"が自治区境界――遠方に居て、自治区内で何か起きてもすぐには動けない今がチャンスだよ」

「成程...分かったわ。分散範囲が少し広いからちょっと時間は掛かるけど...できる限り速く向かわせましょう」

「うん、任せたよルイズちゃん」

「じゃあ、早速伝えに行くわ。――私達も全力を尽くす。ミカ、貴女もどうか...決心を揺るがさずにね」

 

 ルイズちゃんの言葉に頷き、彼女を送り出してその背中を見送ってからドアを閉め、テーブルに置いている[Quis ut Deus(愛銃)]の下に向かう。

 

「――もう、取り止めるなんてできない。後戻りはできない。ナギちゃんがどうしてカバーストーリーを流してまで、"正義実現委員会"まで遠ざけて一人で閉じ籠っているか分からないけど...()()()()()()()()()()ナギちゃんが悪いんだよ?」

 

 そう自分に言い聞かせる様に呟きながら[Quis ut Deus(愛銃)]を手に取り、予備マガジンをスカートの下のホルダーに挿入し、残る一本を手に取って本体横の挿入口に嵌め―――

 

 

 

 

 

 

―――ジャキッ...!

 

「――『トリニティ』の()を暴く為に。『アリウス』の娘達の為に。ナギちゃん..."ティーパーティー"ホストリーダー代行『桐藤ナギサ』――貴女を倒すね」

 

―――コッキングレバーを引いて初弾が薬室に入った音を確認し、[Quis ut Deus(愛銃)]を捧げ銃の様に持って銃身を額に当てて瞑目し、改めて()()()()()決行を決意する。

 

 

―――to be continued―――

 

 

*1
当作品オリジナル部署。"ティーパーティー"施設の警備が任務




ということで三回目の試験と同時にミカ達も動き出します。トリニティの長い夜が始まる...

感想、評価、お気に入り、栞、ここすきは大歓迎です。作者が喜びでわっぴ~します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。