Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~   作:八坂 義景

11 / 115
 ということで、便利屋68+傭兵達の襲撃...前の作戦会議です。戦闘も入れようとしたら大分長くなりそうだったので分割しました。



File09-Ab.~参上、便利屋68~

~『アビドス高等学校』校庭 ヘリポート~

side-"先生"

 

「――お疲れ様です!"先生"、ホシノ先輩...と、そちらの方は?」

「どうも初めまして、『射命丸アヤ』と言います。――詳細は後で。今は『アビドス』の協力者として覚えておいてください」

「"アヤが味方であることは私とホシノが保証するよ。――アヤネはヘリへの燃料補給が終わったら、そのまま上空からの偵察をお願い!"」

「分かりました!」

「アヤネちゃん、あまり無理はしないでね~。もしかしたら、向こうは対空火器を持ってるかもしれないからね」

 

 ヘリから降り、燃料補給の準備を済ませて着陸の誘導を行っていた整備担当の娘(元"カタカタヘルメット団"団員の一人で、不良になる前はヘリの整備に従事していたという)の出迎えを受け、アヤネにそう指示を出してからホシノとアヤを連れて、空から見えていた、陣地を構築している最中の校舎の敷地正面の大通りに向かう。

 

「――いやはや、到着早々大変なことになりましたねぇ。傭兵だけなら兎も角――"便利屋68"も居るとは」

 

 アヤはそう言って面倒な状況だと言いたげに頭を掻く。

 

「アヤちゃん的に、"便利屋68"の娘達の中で脅威になりそうな娘は誰かな?」

「ほぼ全員高い戦闘力を持っているので誰が抜きん出て、という方は居ませんね。何より問題は..."便利屋68"は"社長"たる『陸八魔アル』さんの下で()()()()()()()()()を持っている点ですね。彼女がやられようものなら――()()()()()()()()()らしいですよ。なので、斬首戦術はオススメしませんね」

「"...アヤがそこまで言うなんて、便利屋の娘達はかなり強いんだね"」

「うへ~、これは"カタカタヘルメット団"とは比にならない相手になりそうだね~」

 

 ホシノの問に答えたアヤの言葉を受けてより気を引き締める。

 


―――今日―――

 

465

 ん、先生 

 緊急事態  

 

シャレ先

 どうしたの? 

 

 

465

[凄い大盛りのラーメンを食べる"便利屋68"の隠し撮り]

 この写真の娘達が午後から襲撃してくるって 

 しかも、傭兵も沢山雇ってるらしいよ 

 

 

シャレ先

 本当の話なんだね? 

 分かった 

 なるべく速く戻るよ 

 

 

465

 私達は防衛準備を進めておくね 

 


 

 

―――『シャーレ』での用事を終え、お昼を食べてお土産を買ってから『アビドス』に戻ろうとした矢先に、シロコから届いた『モモトーク』のメッセージを受け、お土産を買うのは止めて急いでヘリに戻り、燃料消費も構わず全速で飛ばして『アビドス』に戻って来て今に至る。

 

「――"先生"、ホシノ先輩!ヘリが見えてたけど思ったより速かったじゃねぇか!」

「"ネイト、お疲れ様。――状況は?"」

 

 校門を通り抜けると、陣地構築用の資材を運び終えたのか空のリヤカーを引っ張るネイトに声を掛けられて足を止める。ネイト越しに大通りを見やれば、土嚢やバリケードを設置する皆の姿が見える。

 

「校舎への損害をなるべく食い止めようってんで、正面の通りで迎撃用の陣地を構築してる最中だ。こんなのは初めてだったが、その道のプロが居るおかげで順調だ!あそこのファミレスだった空き店舗を前線司令部ってヤツとして借りて、ミヤコとかシロコ先輩が作戦会議の準備をしてる。先生達の到着を待ってるから早く行ってやってくれ!」

「流石ミヤコちゃん達だね~。アヤネちゃんのヘリがもうすぐ偵察に出るから、それまでは状況確認と陣地構築を進めよっか~」

「"分かった。...アビドス(ここ)の生徒になったばかりなのに、こんな事態に巻き込んでしまってごめんね、ネイト"」

「謝る必要はねぇ。――()()()()()()()()()()()()()()()為なら何だってやるって、皆覚悟を決めてるからな。それじゃ!」

 

 ネイトは私の謝罪をそう断り、リヤカーを引いて倉庫に向かう。

 

「...あれがごく最近アビドス(ここ)の生徒になった方々の一人ですか。事態が事態とは言え、少々気負い過ぎでは?」

「ネイトちゃん達は()()()()()()()()で学校を中退して"カタカタヘルメット団"に流れ着いた経緯があるからね~。...でも気負い過ぎて空回るかもしれないし、よく見てあげないとね~」

「"そうだね。――取り敢えず、前線司令部に行ってみようか"」

 

 二人を連れ、ネイトが示していた看板を下ろしたファミレスだった空き店舗に向かう―――

 


~空き店舗 前線司令部~

side-ミヤコ

 

「"――アヤネ、偵察の結果は?"」

 

 "先生"とホシノ先輩からアヤさんを紹介された後、校舎周辺の詳細な地図を広げたテーブルを囲む面々―――"先生"、ホシノ先輩、シロコ先輩、モエさん、そして私ミヤコ―――の中で"先生"が作戦会議の音頭を取り、偵察を終えて校舎のヘリポートに一度帰還して機内に待機している為、ドローンが投影するホログラムで会議に出ているアヤネさんを指名する。

 

『――ヘリによる偵察の結果、傭兵凡そ百名と多数のジープ、[M2戦車*1]三輌がこの空き地に集結していることを確認しました。また、迫撃砲らしきもの三門が据えられていることも確認しました。MG装備の傭兵を確認しましたが、対空火器は保有していないようです』

「[M2戦車]...旧い安物だけど、砲以外に機銃も装備しているから厄介な戦車だねー」

 

 アヤネさんの説明に合わせ、モエさんがそう呟きながら地図に情報を書き込み、駒代わりのおはじきを置いていく。

 

『また、遠目だった為はっきり確認できていませんが...傭兵の代表らしき方々と話している()()()()()()()()()()()()()()()()()()の姿も確認しています。――偵察情報は以上です』

「その特徴は間違いなく『陸八魔アル』さんですね。しかし..."便利屋"メンバーだけでも充分戦えるにも関わらず、装甲戦力持ちの傭兵まで集めるとは...今回の()()には余程力を入れているようで」

 

 アヤネさんの説明をそう補足したアヤさんはそう言って珍しいと言いたげに眉を上げる。

 

「"力を入れられるとこっちとしては不都合だけどね...さて、私達の勝利条件は()()()()退()し、()()()()()()()だ"」

便利屋達(向こう)が具体的にどんな依頼を受けたかは分からないけど、マトモに運用できている『アビドス』の校舎は現状ここだけ。ここを喪えば、学校としての拠点を完全に喪失――『アビドス高等学校』が()()()ってことになるからね~。

 当然そんな状況にはさせないけど...襲撃を撃退した時点で()()()()()()()()()()()()()おじさん達の勝ちだよ~。じゃ、早速作戦を練ろっか~」

 

 私達の勝利条件を"先生"がホシノ先輩と共に説明し、私含め皆さんの表情が真剣になる。

 

「歩兵の数だけで向こうは百以上に加えて戦車が一個小隊分。対してこっちは、アヤネのヘリで空の目は確保できるけど、実際に戦う歩兵は五十にも満たない――ん、マトモにぶつかれば圧し潰されるね。

――あ、そうだ。"先生"、トオルさんから伝言がある。『撃退が厳しければ最悪時間を稼げ。俺ができる限り効果的な仕込みを行う』...だって」

「"時間稼ぎか...その為にも戦車を如何にして撃破するか。まずはそこが重要になりそうだね。――モエ、戦車の撃破に使えそうな武器はある?"」

 

 シロコ先輩の言葉を受け、"先生"はモエさんに尋ねる。

 

「対戦車地雷は今も敷設中。チェコの針鼠(対戦車障害物)も有り合わせのもので作って設置してるけど...傭兵の練度次第では見抜かれて無力化される可能性はある。でも、シロコ先輩のドローンにHEAT弾頭のロケットを積んだり、ミユの狙撃で覗き窓を撃って乗員無力化を狙ったり――まぁ、最悪()()()()()()()()()()()()()()()()()も撃破できると思うよー。ロケランでもあれば良かったんだけど...これが私達が戦車に対して打てる手かな?」

 

 "先生"の問いにモエさんはそう答える。―――"対策委員会"のメンバーで最前線に立つホシノ先輩、モコウ先輩は揃って高い戦闘力を持っている。ホシノ先輩はショットガンと盾で攻めと守りを両立し、モコウ先輩は銃弾数発の被弾程度なら()()()()()()()()()()の治癒力を利用して被弾しても倒れる事無く迫って苛烈に攻め立てる。モコウ先輩の戦闘スタイルは危うく見えるものの、本人はしっかり退き時を見極められているので敵に回すと非常に厄介だ。

 また、二人は卓越した神秘も有している為、弾に神秘を纏わせれば戦車の天板程度なら余裕で撃ち抜ける事は確認している。

 

「"私としてはあまり危険なことはさせたくないけど...最悪に備えてその案も入れておこう。戦車対策はこんな所かな?"」

「えぇ。モエさんの言う通り、私達に使える手はこれが限界でしょう。――次は対歩兵ですね。まず、対戦車兵器対策で随伴歩兵が付く筈です。戦車は強力ですが、反面乗員の視界の悪さもあるので、それを補う為に歩兵を随伴させるのは定石ですから」

「主戦場は陣地を構築してるこの大通りになるだろうけど、派手にやってる最中に裏路地から浸透されて...っていう可能性はあるねー。地図を見ても、構築中の陣地の後方や、校舎に侵入できちゃう路地は幾つかあるし」

 

 モエさんはそう懸念点を挙げて地図上の細い路地を幾つか指し示す。それらは確かに陣地の後方や校舎へ展開出来る位置へと繋がっている。

 

便利屋達(向こう)がどれだけ事前に偵察しているかにもよるけど...これは土地勘があるおじさん達"対策委員会"メンバーが相手をする必要があるかな~」

「"アヤネのヘリで空からの目もあるし、"シッテムの箱"でも動きを捉えられる筈だから、私が指揮を執りながら裏を取ろうとする動きを見付けたら報告するよ。じゃあ、ホシノ達"対策委員会"は遊撃で配置――シロコ、どうしたの?"」

「――ん、"先生"。ネイト達元"カタカタヘルメット団"の娘達の指揮も必要。戦意は旺盛だけど...相手は装甲戦力持ちの大部隊。傭兵達に比べてもまだ戦い慣れていないだろうから、経験のある娘が前線で指揮を執るべき」

「"...確かにそうだね。戦場全体の指揮は私が執るけど、全体を見る分細かい所まで目を配れない可能性がある。...ホシノ、指揮を執れそうな娘は?"」

 

 手を挙げたシロコ先輩の意見に"先生"は頷き、ホシノ先輩に尋ねる。

 

「う~ん、そうだねぇ...一部隊十人前後、合計三つの部隊に分けて、"RABBIT小隊"からミヤコちゃん、サキちゃん。"対策委員会"からユメ先輩とセリカちゃんを指揮官として充てるのはどうかな~?

 "RABBIT小隊"はおじさん達と同等かそれ以上に経験豊富だし、セリカちゃんはツンツンしてるけど仲間想いだから、発破をかけられる筈。ユメ先輩は...正直指揮は下手だから、前線の士気を維持する為の要だね。盾で守って弾受けを務めるのはおじさんより上手いし、どんな状況でも前向きなユメ先輩なら適任だと思うよ~」

「それがいいかもねー。私はオペレーターとしてアヤネちゃんのヘリに乗るし、ミユの狙撃は必要だしね」

「――分かりました。"RABBIT小隊"としては異論はありません。サキさんにとってもいい経験になるでしょう」

 

 ホシノ先輩の提案に頷く。"RABBIT小隊"ではポイントマンを務めているサキさんだけど、小隊長()が居ない場合に指揮を代行した事も何度かある。教範を重んじるが故に想定外に弱い所はあるけど、『アビドス』の状況故にゲリラ戦に通じている"対策委員会"の皆さんと共に戦う事でその欠点も改善されつつある。

 

「"大通りに展開させる歩兵部隊はどうやって戦わせようか?"」

「戦車の撃破ができるか否かによりますが...二部隊が前線を構築し、一部隊は一段後方で待機し、弾薬消費や損害が増えたら交代して前線を維持し続ける。そして敵の撃破には拘らず、相手を陣地に近付けさせない制圧を徹底させましょう。防衛陣地は四段で構築させていますから、敵の攻撃が激しい場合は一段下がって体勢を立て直すこともできます。その分校舎が近くなってしまいますが...防衛戦で重要なのは、秩序を保って前線を維持することですから」

「流石ミヤコちゃんだねぇ。おじさんはこの案でいいと思うよ~」

「ん、私も賛成」

『私も賛成です』

「私も賛成だよ。"先生"も居るけど、オペレートと上空からの監視でサポートするから安心してねー」

「流石『SRT』在籍だけはありますねぇ。私も賛成です」

「"私も賛成するよ。――さて、最後にホシノ達についてだけど...アヤ、説明をお願いするよ"」

「任されました。――では、私から"便利屋68"メンバーに関して知り得る情報を皆さんに提供します」

「必要があれば"RABBIT小隊"も補足します。『SRT』では"便利屋68"は()()()()()()としてリストアップされていますから」

 

 "先生"は次の課題へと進め、アヤさんに説明を促し、私は説明の補足を名乗り出す。私に頷いた彼女はテーブルに六枚の写真―――"便利屋68"メンバーの顔写真を広げる。

 

「"先生"とホシノさんには伝えてありますが、"便利屋68"は各人が傭兵達より遥かに高い戦闘力を有し、尚且つ"社長"の下で高い結束力を築いています。個人戦でも集団戦でも手強い相手となるでしょう。

――『陸八魔アル』。個性豊かなメンバーをまとめ上げるカリスマを持つ"社長"です。戦闘員としてはメンバー最強と言えるでしょう。得物はSR[ワインレッド・アドマイアー]。これを()()()()()()()()()()()()()()()()()()狙撃技能の持ち主で、神秘を込めて撃てば()()()()()()()()()()()()()にもなるという情報もあります。

 戦闘力は高いですが、何より厄介なのは――"便利屋68"メンバーは総じて()()()()()()()()()()点でしょう。彼女が撃破されれば()()()()()()()()()()()()()()()()()()程です。なので斬首戦術はオススメできません」

「恐らくミユさんが相手をすることになると思いますが、撃破ではなく足止めに専念させましょう。()()()()()()が通用すればいいのですが...」

 

 ミユさんと同じ狙撃手であれば、狙撃の基本は熟知している筈。それに、射点を特定出来ずとも範囲攻撃で巻き込んで撃破出来る可能性もある。彼女には狙撃の都度射点を変える事を徹底させねば。

 

「――続いて、『鬼方カヨコ』。メンバー最年長で"課長"を務めています。最前線に立ちがちな"社長"に代わって一段後方で指揮を執るのが基本ですが、HG[デモンズロア]での戦闘も可能で――寧ろ彼女に得物を使わせる方が脅威でしょう。彼女の持つ雰囲気か神秘かは分かりませんが、彼女と相対した者は()()()()()()()()()()()()と言います。指揮に徹してくれればありがたい所ですが...」

「傭兵がやられれば出て来るかもね~。士気を落とさないように指揮官の皆に頑張ってもらうしかないかな?」

「"傭兵がやられた時点で退いてくれればいいけど...襲撃に傭兵を雇う程に力を入れているならその可能性は低いかな。私も指揮でできることをするよ"」

 

 "先生"はそう言って『鬼方カヨコ』の写真を見る。無愛想で社交的には見えない表情だけど、そんな表情を浮かべる彼女を慕わせる『陸八魔アル』という人物はかなりのカリスマを持っている様だ。

 

「――次は、『浅黄ムツキ』。アルさんとは幼馴染らしく、よく悪戯を仕掛けたりして白目を剥かせる程に仲が良いようです。"室長"を務めていますが、実態は"便利屋68"の戦闘員ですね。MG[トリックオアトリック]での弾幕だけでなく、誘い込んで地雷で嵌めたり()()()()()()で意表を突いたりと、悪戯好きの性格に準じる戦闘スタイルを主に取ります。

――後、これは以前"便利屋68"を取材した時に感じた私見ですが...恐らく()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と思われます。アルさんが撃破された場合何をするか分からないのが実に怖い所ですね」

「悪戯好きでトラッパー...この娘の相手はノノミ先輩かなー?意外とそういうの見抜くから適任じゃない?」

「そうだね~。MGとミニガンの対決はどっちが勝つか見物だね」

 

 『浅黄ムツキ』の相手はノノミ先輩で決定する。モエさんの言う通り、ノノミさんはおっとりして優しい様に見えて、相手の隠し事や感情の機微を見抜く直感を持っている。戦闘中に何か仕込まれても見抜いて対応出来るだろう。

 

「――続いては、二人纏めて説明します。まず、『伊草ハルカ』。"便利屋68"最年少で"平社員"ですね。内気で自尊感も低い娘ですが、発想力は飛び抜けていて恐ろしい娘です。しかし、即断即決が過ぎる所があり、独断独自解釈で突発的に行動して盛大にやらかすことが多々あるようです。SG[ブローアウェイ]を凄まじい連射速度で撃つ点も恐ろしいですが、一番の脅威は爆破戦術でしょう。"便利屋68"のメンバーでも気付けない内に仕込んでしまうので、これもまた盛大なやらかしの大きな要因にもなっています。

 二人目は『依神シオン』。同じく"平社員"です。最後に紹介する"会計士"とは双子で姉に当たります。彼女も内気で自尊心が低い為か、ハルカさんとはかなり仲が良いようです。AR[貧者の備え]を装備していますが、戦闘力は明らかにメンバーの中で一番低いですね。銃撃戦では脅威にならないでしょう。――しかし、彼女の恐ろしさは()()()()()()()()()()()()()()()()()()点にあります」

「"()()()()()()()?"」

 

 アヤさんの説明を聞いていた"先生"が尋ねる。

 

「えぇ。彼女自身の運気か神秘かは分かりませんが、彼女が居るか居ないかで明らかに()()()()()()()()()()()()()()()()んです。この不運が作用し、()()()()()()()()()()()()()()()()ケース、この不運に起因して"便利屋68"がやらかすケースが多数確認されています。また条件は不明ですが、"便利屋68"のメンバーすら巻き込んで不運をもたらし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ケースも確認されているようです」

「自分も仲間も含めて不運にする、か...そりゃあ自尊心も低くなる訳だね~。でも運が絡む勝負事に不運をもたらして図らずも不利にさせるのは厄介だね~。...シロコちゃん、おじさんも付くけど行けるかな?」

「ん、何か仕掛ける前にやっちゃえば問題ない。...でも、ホシノ先輩が一緒なら心強い」

 

 『伊草ハルカ』『依神シオン』の相手はシロコ先輩、ホシノ先輩がする様だ。一緒に居る、相対すると不運になると言うのは不思議だけど、物事には少なからず運という要素が絡む以上非常に厄介だ。

 

「――最後に、『依神ジョオン』。シオンさんとは双子の妹であり、"便利屋68"の財布を預かる"会計士"です。"社長"自ら交渉を行うより、彼女が交渉を行うと()()()()()()()()()()()()()()為、依頼請け負い時の交渉は主に彼女が行っています。――まぁ、()()()()()()()()()()()()()()()()トントンになってしまうんですが。

 戦闘面では、HG[バブリーバレット]を用い、射撃の腕は高いですが...恐ろしいのはギャルみたいな容姿でステゴロを交えてくる所でしょう。銃撃戦が基本の中で、メリケンサックと化した指輪で殴られたり、頭突きをされたりで意表を突かれてやられた者は数知れません」

「銃を使うのが当たり前だからこそ、意表を突けるんだね~。...これはモコウ先輩が適任かな?SGだけじゃなく、近接攻撃もよく使うから相手取れると思うよ~」

「近接攻撃手段はあくまで最後の手段だと思いますが...いえ、基本的にはそういう認識だからこそ効果的なんでしょうね。心得がある方であれば負けることはないでしょう」

 

 『依神ジョオン』の相手はモコウ先輩で決定する。

 

「"――今打てる手はこんな所かな?アヤはどうする?"」

「私は遊撃で動きます。()()()には自信があるので、駆けて飛んで翻弄させてみせますよ。"先生"の指揮には従いますが、指示がなければ私の判断で動きます」

 

 アヤさんは遊撃として配置される事になった。―――これで、"便利屋68"メンバーが攻撃を仕掛けて来た場合の対策は出来た。後はこの作戦を皆さんに―――

 

「――話し合い中にすまねぇ!ちょっといいか?!...ゼェ、ゼェ......緊急事態だ!

 

―――すると、ネイトさんの声が聞こえて来て皆さん一斉に振り向く。空き店舗の入り口が開いていて、走ってき来たのか息を切らしたネイトさんが立っている。

 

「"ネイト、どうしたの?"」

「...ふぅ...それがよぉ、陣地を作ってたら――」

 


 

~校舎前の大通り 防衛陣地最前線~

side-"先生"

 

「――こちらの呼び掛けに応えてくれたこと、感謝するわ。私は『陸八魔アル』。"便利屋68"を経営する"社長"よ。気軽にアルと呼んでくれてもいいわ」

「"私は連邦捜査部『シャーレ』顧問。気軽に"先生"って呼んでね"」

 

―――緩やかな風で微かに砂煙が漂う中。背後にメンバーを従えた"社長"―――アルとお互いに自己紹介を交わす。私が連れて来たホシノ、ユメ、モコウ、ミヤコ、セリカは銃をいつでも構えて撃てる様に手を添えて後ろで控えている。更に後ろの陣地では皆が防衛体制を整えて様子を見守っている。

 

「"――それで、態々私達を呼び出した目的は?"」

「戦端を開く前に挨拶をしておこうと思ったの。普通ならこういうことはしないだろうけど...何せ彼我の戦力差は歴然。だから()()()()()()前に私達"便利屋68"を知ってもらいたいの――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()為にね!」

 

 アルはそう言って不敵な笑みを浮かべる。どうやら彼女は既に勝った気でいる様だ。―――それにしては、()()()()()()()()()()()()()()()()()()のが気になる。

 

「――あ、"先生"気付いちゃった?アルちゃんってばこんな風にカッコつけてるけど、直前まで罪悪感で迷ってたんだよ?『柴関ラーメン』ってお店で、ラーメン一杯分のお金しかなかった私達に皆がお腹一杯になれる量をサービスしてくれた恩を仇で返すことになっちゃうからねー、くふふ!あ、私は『浅黄ムツキ』、便利屋の"室長"だよ。よろしくー!」

「ち、ちょっとムツキ?!」

 

 アルの背後から私を覗き込む様にひょっこりと顔を覗かせたムツキがネタを明かす様に説明すると、アルの不敵な笑みが崩れて慌てた様な表情を浮かべる。

 

「――えぇ、そうよ!"大将"の気遣いに仇で返すなんて...!この恩知らず!」

うぐっ...ふ、ふふふ...どんな依頼も請け負い、成功させるのが私達"便利屋68"のモットー。なるほど恩を仇で返す形になるけど...これが便利屋というもの、現実なのよ!...でも、一応謝っておくわ。これが戦端を開く前にやっておきたかったことだし、あの『柴関ラーメン』は今まで食べたどのラーメンよりも美味しかったしね。――貴女達の大切な学校を襲うことになってしまってごめんなさい」

 

 セリカの言葉に一瞬苦悶の表情を浮かべるけど、開き直った様にまた不敵な表情を浮かべ―――申し訳無さそうな表情を浮かべて頭を下げる。

―――どうやら、アルの心根は優しい性格の様だ。あの不敵な笑みも物言いも自分を強く見せる為の演技なのだろう。しかし、依頼達成の為に感情を抑えて熟す便利屋にはなり切れていない様に見える。..."便利屋68"の娘達は悪い娘達では無さそうだ。

 

「"申し訳無いと思っているなら退いて欲しいけど――"」

「――それができるならそうしているわ。弱者を甚振るなんて()()()()()じゃないし。でも、私達にも生活があるの。日々を生きるにはお金が必要。

 ――今回の依頼、"『アビドス高等学校』から生徒達を追い出す"ことで今まで以上に高額な報酬が得られるの。だから、ずっと後ろで待機させている傭兵達を資金が許す限り雇って成功率を上げている。――分かるでしょう?ここで退いたら私達は文無しなのよ。社員を預かる"社長"として、退ける訳ないじゃない」

「"――分かった。なら、私達は全力で抵抗する。私は『アビドス』の苦境の当事者ではないけど、今は『アビドス』の顧問――困っている生徒達を助ける先生だからね"」

 

 そう返してアルを見つめる。片や大切な学校を守る為、片やお金の為―――お互い、退く理由は無い。

 

「――五分、時間をあげるわ。その間に準備しなさい。ま、何をしようと私達が叩き潰すけどね!覚悟しておきなさい!」

 

 アルはそう言い残し、メンバーを率いて大通りを去っていく。

 

「うへ~、随分自信満々だったね」

「"それだけ戦ってきたんだろうし、彼女達も依頼遂行の為に打てる手は打ったんだろうね。――なら、こっちも持てる全てを以て抵抗するだけだよ"」

 

 ホシノの言葉にそう返し、皆に振り向く―――

 

「"相手は手強いけど、君達が力を合わせれば必ず『アビドス高等学校』を守り抜ける。他の誰もが信じなくても――私だけは皆を信じる。――さぁ、戦闘準備だ!"」

 

『『『『『おーーーっ!!!!』』』』』

 

 砂埃が微かに舞う昼下がりの青空に、皆の意気軒昂な掛け声が響き渡った。

 

 

―――to be continued―――

 

 

*1
米軍初の制式量産型中戦車。37mm砲と機銃装備




ということで次回、便利屋68と傭兵達との戦闘です。ゲームと違って大部隊同士でドンパチです。戦闘描写大変だぁ...()

・ざっくりした配置
総指揮:"先生"
ヘリ:アヤネ、モエ
遊撃:アヤ
戦車三輌+傭兵達、カヨコvsネイト達+ユメ、セリカ、ミヤコ、サキ
アルvsミユ
ムツキvsノノミ
ハルカ、シオンvsホシノ、シロコ
ジョオンvsモコウ

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。