Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~   作:八坂 義景

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矯正局長のミニスト、ライブ告知出たので初投稿です。
 よくミニストに収めたレベルで情報沢山でしたね。お労しいミスズ局長、七囚人が七囚人たる所以、刑務所というよりは更生施設であったり...何より七囚人以外に脱走者を出していないのは恐怖や統制故にではなく、慈悲のある更生とミスズの優しさによるものだというね。今のゲヘナからはそりゃ矯正局入りは出ないでしょう。温泉とか美食の在り方はマコトが望むゲヘナの在り様だから。

さて、もうすぐ夜が明けそうです...


File105.ET-15~トリニティの長い夜⑤~

~『トリニティ』自治区 礼拝堂周辺~

side-サリエル

 

ドォォォンッ!

 

きゃっ?!こ、こちら第四班、マリー!グレネードランチャー(GL)の爆撃により壊滅状態です...!』

 

―――礼拝堂を囲う我が"シスターフッド"の包囲の輪。私の位置の反対側から爆発音が聞こえて来て、インカムに第四班のマリーから壊滅報告が入る。"正義実現委員会"の様に()()は得意ではない我が"シスターフッド"には装備が乏しく、付近の店舗等が屋外に置いている看板やテーブル、ベンチで即席のバリケードを構築しているが、礼拝堂内に立て籠っている()()()()()()()グレネードランチャー(GL)の火力投射を防ぐには厳しい。

 だが、包囲の輪を崩しては()()()()()()()のが狙っているであろう現"ホストリーダー"代行―――ナギサの下へ向かうだろう。それは止めなければならない。

 

「――すぐ後詰を送る。動ける者に負傷者を後送させろ。北側の空き家に"救護騎士団"が野戦病院を構築しているからそこに運べ」

『り、了解いたしました...!』

「――さて。サクラコ、行けるか?」

「――お任せを。包囲の輪を崩す訳にはいきませんから」

 

 交戦を嗅ぎ付けたミネ達"救護騎士団"が近くの空き家を拝借して構築した野戦病院への後送を指示し、サクラコに目を向けて第四班の後詰を頼めば素直に頷いてシスター達を率いて走り出す。

 

「...しかし、我々だけではどうにも包囲の維持で精一杯だな。礼拝堂の中ではまだ()()が交戦中。その状況が見えないのはもどかしい」

 

 サクラコを見送り、礼拝堂に目を向けて言ちる。

 

―――『こんばんは、テンシ"総長"。...珍しいですね。このような夜更けに訪ねられるとは』

―――『こんばんは、二人共。...サクラコも一緒なら都合がいいわ。――貴女達"シスターフッド"に頼みがあるの』

―――『ほう?こんな夜遅くに私だけでなく、サクラコも共に居て都合がいいとは..."ティーパーティー"首長(ホスト)代行としてか、それとも――"ティーパーティー"の騎士として、我々に何か御用かな?』

―――『夜更けの突然の訪問は申し訳ないわ。だけど――"正義実現委員会"が()()()()()()()()()()にある以上、すぐに動かせる数が多い戦力は貴女達"シスターフッド"以外に居ないの。実は――――』

 

―――奇しくも夜間当直でサクラコと一緒となり、最近はお互い多忙であったが故に少々久方振りにプライベートに(幼馴染の友人として)語らいながら『大聖堂』の巡回を行っていた所にやって来たテンシ。

 最初は我々の下に訪ねてきた理由が分からなかったが、テンシが告げた()()()()()()()()()()()()()()()にはサクラコ共々驚かされた。サクラコは純粋に"聖園ミカが()()()()()()()()()()()()()()()()()"と信じていたが故に。私は―――まさか聖園ミカが()クーデターを起こすとは()()()()()()()()が故に。

 "パテル分派"のゲヘナ嫌いは誰もが知っている事実だが、ナギサの尽力、締結推進派が多数であった事もあって『エデン条約』締結に消極的ながら賛成している。嘗て独立していた時は『ゲヘナ』との戦端を度々開く程に過激だったが、派閥争いや政争を経て理性的になっている。

―――故に、まさか()クーデターを敢行するとは予想外だった。ゲヘナ嫌いの武闘派たる"パテル分派"ならば、『エデン条約』締結推進が提案された時点で動く筈だからだ。

 

 信じられなかったが、クーデターが事実なら止めなければならない。そうして半信半疑でテンシと共に礼拝堂に向かえば、聖園ミカと―――"パテル分派"の者達に()()()集団が集まっていた。

 聖園ミカも『トリニティ』内ではトップクラスの実力を有しているが、彼女の指揮下で動く"パテル分派"メンバーに()()()者達の戦闘技能は異質だ。裏の勝手口側からシスター達を追い出した上で爆撃して潰し、狭い礼拝堂内での我々の包囲に対しても即座に銃撃と爆撃を行って次々シスター達を倒し、動揺と混乱が広がる前に私とサクラコで後退を指示しなければ早晩壊滅していただろう。

 "パテル分派"の流派でもなく、『トリニティ』式の戦闘教練とも異なるもの。()()()()知識、情報から考えれば、あの者達の正体は―――

 

~♪

「――む?...もしもし。"シスターフッド"、天城だ」

『――こちら"正義実現委員会"参謀、飯綱丸だ。...事態は我々も把握している。そちらの状況は?』

 

―――スマートフォンの着信音を聞いて思考を止め、電話に出れば"正義実現委員会"参謀『飯綱丸メグム』が状況を尋ねて来る。

 

「――礼拝堂を包囲中だが、我々は治安維持組織ではないからな。正直に言ってこのままでは厳しい。...しかし、それを聞いてどうするつもりかな?"正義実現委員会"は"ティーパーティー"からの命令で自治区境界の警備に就いていて、事態を把握しようとも動けまい?」

 

 状況を報告し、メグムの目的は()()()()()が敢えて尋ねる。―――メグムは"参謀"として委員会の作戦立案、指揮を行うその裏で、()()()()()を一手に引き受けている。武力を有する治安維持組織は中立公正であるべきだが、この『トリニティ』ではそれが難しい。政治的しがらみがある故に柔軟性を欠き、それ故に"トリニティ自警団"が組織されていて、"正義実現委員会"は黙認どころか協力しているのがその証左だ。

―――閑話休題。

 

『――現在、我々"正義実現委員会"はシャーレ指揮下にある。"補習授業部"の試験も上首尾に――実質()()()()で終わったのでな。協力を要請したら"先生"は快諾してくれたよ』

「...成程。『シャーレ』が有する超法規的権限ならば"ティーパーティー"と言えど拒否できない、か。流石は"正義実現委員会"の頭脳、政治屋。

――だが、今は"正義実現委員会"の増援はありがたい。"ティーパーティー"からの命令、他の場所での異常事態発生を鑑みれば丸ごとは動かせないだろうがね」

『先行して我が"正義実現委員会"の()()()()()と粒入りの精鋭を送っている。その内そちらに到着する筈だ』

 

パタタタタ...>

「...そのようだね。――増援の派遣、感謝する」

 

―――左耳にこちらに近付きつつあるヘリのローター音が聞こえ、"正義実現委員会"からの増援がもうすぐ到着する事を察して謝意を伝える。

 

『どういたしまして。――私は委員会全体の指揮があるからそちらに行けないが、委員会の精鋭達を送っている。"ティーパーティー"屈指の武闘派の長が相手であろうと、鎮圧は確実だろう。――では、頼んだぞ』

 

 通話が切れ、スマートフォンを仕舞って夜空を見上げると、"正義実現委員会"のロゴマークを側面に描いた黒いヘリのシルエットが視界に収まる―――

 


~礼拝堂内~

side-テンシ

 

ゴォッ...!

 

「――はっ...!」

 

バゴンッ...!

 

―――ミカが繰り出した隕石に"緋想の剣"の切っ先を突き立て、弱点を突かれた隕石は粉砕され、その先のミカの姿を顕わにさせ、そのまま剣を構えて肉薄する。

 

「――!」

 

 ミカは[Quis ut Deus(サブマシンガン)]を撃って弾幕を張って防ごうとするけど、その程度の銃弾は()()()()()()()()()。銃弾を()()()()()ミカに迫り―――

 

「――はぁっ!

「わっ...!?」

 

―――剣を振り下ろし、ミカは咄嗟に躱して後ろに飛び退く。

 

「逃がさない...!」

 

タタタ...!

 

「きゃっ?!」

 

 左手に携えている[有頂天の贈り物(愛銃)]を構えて連射し、体勢が整っていないミカは腕で顔を覆って防ぎ、腕に幾つか薄い赤の擦り傷が走る。

 

「――やっぱり硬いわね。近距離なら[9mm]でも効果的な筈なのだけど」

「...()()()()()()()()テンちゃんが言うと煽りに聞こえるんだよね。私も人より力持ちで頑丈だって自負はあるけどさ...テンちゃんの硬さ、力は()()()()()()()()()()()()()んだって自覚ある?」

 

 [有頂天の贈り物(愛銃)]を構えたまま言ちると、自身の腕の擦り傷を一瞥して私に呆れた眼差しを向けながらミカはそう反論する。

 

「不利を感じているなら、抵抗を止めて降伏して欲しいのだけれどね」

「――降伏勧告への返事は、言葉で返す必要はないよね」

 

 ミカは目を細めて[Quis ut Deus(サブマシンガン)]を構え直して銃口を私に向けて狙い澄ます。

 

「――無駄な言葉だったわね。決行に踏み切った以上、制圧されるまでは止まらないのでしょう」

「そういうこと。尤も――制圧されるつもりは更々ないけど...ねッ!」

 

カッ―――!

 

―――瞬間。[Quis ut Deus(ミカのサブマシンガン)]の銃口にピンク色の閃光が瞬く。それを視認してすぐに"緋想の剣"を正眼に構え―――

 

 

ギィンッ...!

 

「っぐ...!」

 

―――()()()()()()()()[9mm弾]を刃が受け止めるけど、凄まじいエネルギーの衝撃で吹き飛ばされそうになりながらも辛うじて耐える。そしてすぐに剣の()()を発動する。

 

―――礼拝堂内外の人の数から集めた()()()()()()()()()()()()()()()へと変換。これで―――

 

カランッ...

 

―――()()()()()()()()、神秘を失った銃弾が落ちる。

 

 

「――ふっ...!」

「――?!」

 

―――瞬間。私が"緋想の剣"で凌いだ隙を突いてミカが目の前に迫っていて、彼女が振り抜いた左の拳に対して咄嗟に身体を捻って躱す。

 

「――()()()()()()()()こと、忘れてたの?銃撃戦なんて()()()()()()だけど、()()使()()()()()()は私が得意とすることだ、よッ!」

ガッ...!

「ぐっ...!」

 

―――続けて繰り出されたミカの蹴りを腕で防ぐ。それでも()()()()()()()()由来の威力は腕にビリビリと衝撃を走らせる。―――()()()()()()とも、フルプレートアーマーと同様に衝撃までは完全に和らげる事は出来ない。

 

「ほらほら!小さい頃みたいに喧嘩しようよ、久しぶりにさ!『アリウス』の娘達がこうして舞台を作ってくれてるんだし!」

 

 ステップを踏んで私から離れたミカは挑発する様に不敵な笑みを浮かべ、かかって来いと言わんばかりに両腕を広げる。―――背後にチラリと目を向ければ、『アリウス』の娘達は礼拝堂内から追い出された後に包囲を敷いている"シスターフッド"の迎撃を続けている。

―――"シスターフッド"が荒事がそれ程得意ではない事は分かっていた。だからこそ、できる限りシスターを動員して貰い、数の暴力で以て不得手を補おうとした。

 しかし、『アリウス』の娘達はミカが言った通りに、私の想定以上に強かった。裏口から入ったシスター達はすぐに追い出されてグレネードランチャー(GL)の爆撃で裏口が潰され、シスター達も射撃や爆撃で次々倒されていった。サクラコ、サリエルの後退指示がなければそのまま壊滅していただろう。

 

―――そして、追い出された"シスターフッド"の娘達は礼拝堂を包囲しているものの、『アリウス』の娘達の迎撃を前に包囲の維持が精一杯。故にミカが言った通り、私はそんな『アリウス』の娘達の後ろで彼女と相対している。

 

「喧嘩、ね...確かにこうして貴女とやり合うのは久しぶりね」

「でしょ?それに――仮にテンちゃんが嫌がったって、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()私を止めるには()()()()()()()()()()

「...全く、その通り――」

 

 

『――こちらサリエル。()()()()()()()。そのまま聞いてくれ。――()()()()()()()()()()()()。現在、"正義実現委員会"が増援を送り込んでいる。おかげで我々の()()()()()()()()()()。この情報を受けて君がどう動くかは任せる』

 

―――インカムにサリエルからの報告が入る。どうやら『シャーレ』がミカのクーデターに気付いた様だ。"補習授業部"の合宿所が()()()()だったけど、"先生"達なりに動いていたらしい。恐らくサリエル、あるいは"参謀"メグム辺りの入れ知恵だろうけど、状況を変えるチャンスだ。

 

「――えぇ。その通りね、ミカ。久しぶりに思いっきり喧嘩しましょうか」

「...やる気みたいだね。それでこそだよ、テンちゃん」

 

―――[有頂天の贈り物(愛銃)]のマガジンを交換し、"緋想の剣"の切っ先をミカに向けて宣言し、()()()()()()目を細めたミカも[Quis ut Deus(サブマシンガン)]を構える―――

 

 


~礼拝堂付近 仮説指揮所~

side-"先生"

 

「――お疲れ様です、"先生"、"補習授業部"の皆様。検問以来ですね」

「"――そちらこそお疲れ様、ハスミ。増援に感謝するよ"」

「お、お疲れ様ですハスミ先輩...!」

 

―――"シスターフッド"が仮説指揮所として借り上げた閉店したカフェの店内で"正義実現委員会"増援の代表として指揮所に入って来たハスミと挨拶を交わし、私の後ろに立つ"補習授業部"の面々の中で緊張した面持ちのコハルが続けて挨拶する。

 

「第五班は一度後退!"RABBIT1"、第三班連れて前に――――」>

「はい...増援は到着したっす。制圧はまだっすね――――」>

 

 指揮所内には私と"補習授業部"の他には私を補佐するオペレーターのモエと"正義実現委員会"の伝令役であるイチカが居て、ミヤコは包囲を維持出来る様に指示を飛ばしていて、イチカは都度メグムへ情報伝達を行っている。

 他には、上空ではアヤが空の目で戦況を俯瞰していて、ミヤコ、サキ、ミユは"シスターフッド"の包囲に混ざって支援を行っている。

 

「――"補習授業部"の試験結果についてはメグムより聞いています。よく頑張りましたね、コハル」

「ん...あ、ありがとうございます...えへへ...先輩に褒められた...

 

 ハスミはコハルの挨拶に微笑み、彼女の目の前に歩み寄って優しく頭を撫でて労う。"補習授業部"ではそう言った労いを拒否していたけど、委員会の先輩(ハスミ)相手だとやはり素直になれる様だ。

―――閑話休題。

 

「"――ハスミ、"正義実現委員会"の増援の規模は?"」

「――イチカに伝達した通り、幹部からは私とツルギ。三年生を中心として優秀な娘達を三十名、二個分隊相当。私以外の人員は外で待機中です。ご命令があればすぐにでも展開可能です」

「"分かった。――君達には、"シスターフッド"と合同での礼拝堂への再突入に加わってもらう"」

 

 ハスミの報告に頷き、『シッテムの箱』から展開したクーデター現場―――礼拝堂周辺をマッピングし、生徒達の動きを光点でトレースしたたホログラムの立体地図を見上げる。

 "シスターフッド"達味方を青い光点で、ミカと麾下のクーデター勢力を赤い光点で判別していて、礼拝堂を沢山の青い光点が囲み、赤い光点は礼拝堂内の窓や正面玄関傍に集まっていて、その迎撃陣形の中では赤と青の光点一つずつが()()()()()()()()()()

 

「――メグムからクーデター勢力と鎮圧に動いている方々の情報は聞いていますが...礼拝堂内を動き回っている赤と青の光点はやはり...」

「"...そう、ミカとテンシだ。再突入はテンシを救援することも狙いでね。私達が到着する前に"シスターフッド"も再突入を試みていたけど失敗している"」

「そこで我々、ということですね」

 

 ハスミの言葉に頷く。

―――私達『シャーレ』と"補習授業部"が礼拝堂(現場)に到着した時から既にミカとテンシの交戦は始まっていて、時折爆発音や轟音が礼拝堂内から聞こえて来ている。

 クーデターの首魁(ミカ)を制圧出来れば、"シスターフッド"を迎撃しているクーデター勢力も首魁(指揮者)を失って瓦解する筈。しかしクーデター勢力の迎撃は激しく、弾薬が減って来たのかグレネードランチャー(GL)な爆撃は減少しているものの、再突入の動きに気付く度に的確に火力を投射して牽制して来るおかげでこれまでの再突入の試みは失敗しているのが現状だ。

 

「"ただ...礼拝堂を包囲しているけど、裏の勝手口側は戦端を開いた時に破壊されていて後背を突く手段は取れない。だから突破口は正面の出入口扉しかないけど、そこは当然クーデター勢力が強力に防御している"」

「つまり、敵の銃火を凌いでの突破ですね。であれば――適任が居ます」

 

 ハスミはそう言って外に―――装備点検を行っている"正義実現委員会"からの増援の娘達の中で目立つ、若干猫背でボサボサの黒い翼と長髪の後ろ姿に目を向ける。

 

「"トリニティの歩く戦略兵器"――被弾しても回復する特異な能力を持つツルギ委員長なら、成程適任ですね♡」

「被弾が避けられない吶喊からの乱戦はツルギが得意とする局面ですからね。――"先生"としては思うところがあるかもしれませんが、強力な敵の防衛線を突破するには最適です」

「"――分かった。ツルギを中心とした部隊を編成して突破を図ろう。アロナ、礼拝堂正面の出入口扉付近のクーデター勢力の人数、装備を探って"」

『アロナにお任せください!――索敵完了!結果を反映します!』

 

 ハスミの言葉に頷いて方針を決定し、アロナに正面の出入口扉付近のクーデター勢力を調べさせる―――

 

「"――――作戦はこれでいいかな?"」

 

―――作戦を構築し終え、疑義を尋ねれば沈黙が返って来る。礼拝堂内でテンシを支援してミカを制圧する必要があるから、突破の際はできる限り被害を減らす事を目指したけれど、ハスミやハナコの指摘もあって上手く立案出来た様だ。

 

「"疑義はないみたいだね。――じゃあ、各員配置に付いて!クーデターを鎮圧するよ!"」

 

『『『『了解!!』』』』

 

 私の号令一下、皆が一斉に動き出す―――

 

 

『――こちら"RABBIT1"!敵部隊の迎撃が激化傾向にあり!弾幕、爆撃が包囲陣全体に及びつつあります!』

『あらあら♡クーデター勢力(お相手)はこちらの作戦に()()()()みたいですね。ついさっきまでは銃撃や爆撃は下火だった筈ですが...ここぞとばかりに動いてきましたね♡まるで我慢して溜め込んd『何バカなこと言ってるのよハナコ!エッチなのはダメ!』――あら?クーデター勢力(相手)はこちらの動きが変わることを見越して、()()()溜め込んでいたと考えていたのですが...コハルちゃんは()()を溜め込んでいたと考えたんです?』

『う、うるさい!ハナコこそ誤魔化さないでよ!』

『――落ち着きなさい、コハル。ハナコさんもあまり揶揄わないでください。仲が良いことは結構ですが...後輩を弄られる様を間近で見せられては、穏やかでは居られませんよ』

 

―――作戦準備を始めて数分。インカムに入ったミヤコからの報告を皮切りに、クーデター勢力と相対しているとは思えない会話が交わされる。

 ハスミ、ツルギ達"正義実現委員会"と"補習授業部"が"シスターフッド"の包囲網に加わってから礼拝堂内に立て篭もっているクーデター勢力の動きが変わった。ハナコは相変わらずだけど―――彼女の推測は鋭い。

 

「"ハナコ、今は作戦遂行に集中するんだ。――でも、君の推測はもっともだ。シッテムの箱(こちら)の地図でも礼拝堂内の敵配置が正面出入口付近に集中している様子が見えている"」

『..."正義実現委員会"の増援や補習授業部(私達)が包囲に加わって包囲網の一部が()()()()()いますから。クーデター勢力(あちら)が何処まで気付いたかは分かりかねますが...()()()()()()()()()ことは察したのかと』

「"増援の到着だけでなく、こちらの動きの()()まで見抜くとはね...どうにも、クーデター勢力は()()()()()()ね"」

 

 ハナコを窘め、キクリの言葉にそう返す。―――包囲網に人が増えている事から増援を見抜く事は簡単だろう。異質なのは、包囲網の一部の厚さを見てそちらへの銃撃、爆撃による制圧、牽制を一気に強化した動き方だ。こちらの作戦に気付いた様に、火力の一点集中で対応して見せる。

 クーデター勢力の容姿は"ティーパーティー"の制服だ。ミカの下で動いているなら()()()"パテル分派"、武闘派組織の娘達だろうけど、それでもより専門的組織である"正義実現委員会"程に戦術や戦略は練られていない筈だ。『トリニティ』のカリキュラムにもそぐわず、まるで―――

 

「"――クーデター勢力の詮索は後にしよう。幸い、()()は気取られていないみたいだ。――ツルギ、そちらの準備状況は?"」

『......こ、こちらはもうすぐです。...おい、ヒナタ。急げ

...もう少しです...!...よいしょ、っと...!こ、こちらシスターヒナタ!準備完了しました...!』

 

―――思考を作戦指揮に戻し、()()―――ツルギ達()()()()部隊の準備状況を尋ねれば、緊張した様な声色のツルギの後にヒナタが緊張した声色で準備完了を告げる。

―――クーデター勢力が制圧火力を投射している正面出入口側は()()。本命はヒナタのグレネードランチャーによる壁面発破に合わせたツルギの吶喊だ。警戒と迎撃の為にある程度人員は配置されているけど、正面出入口側に比べれば薄い。

 ツルギの横っ面を殴り付ける様な吶喊で敵陣形が乱れた所で、包囲から再突入へ転換。一気呵成にクーデター勢力を制圧してテンシを救援してミカも制圧―――これが立案した作戦だ。比較的単純な陽動作戦だけど、幸いクーデター勢力(相手)は気付いてない今がチャンスだ。

 

「"よし、それじゃあ――"」

 

 

 

 

「――"先生"、鎮圧指揮中に失礼いたします」

「"――イク?...皆、少し待機。クーデター勢力への注視は怠らないように"」

 

―――作戦決行の合図を出そうとした瞬間、カフェの出入口にイクが姿を現し、ミヤコ、ツルギ達に待機を指示する。

 

「"...何かあったのかな?確か、"ソーサーナイツ"は自治区内警備に就いていた筈だけど――"」

 

 

 

スッ...

 

「――それについては、私から説明を」

「"――な、ナギサ...?!"」

「ま、マジ...?!」

 

―――イクの後ろから、寝間着らしき服の上に"ティーパーティー"制式のコートを羽織り、ブロンドの長髪は整えているものの髪飾りは留めておらず、憔悴した様に顔色が悪いナギサが姿を現し、モエと共に驚く。

 

「突然の訪問となったことは申し訳ございません。...クーデターについては私も把握しております。――かく言う私も、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ので」

?!...何があったんだい?」

「あまり時間もないでしょうから、簡単にご説明しますね。私は――――」

 

―――ナギサ説明中―――

 

「――――以上が、私が巻き込まれた事態の顛末です。イクさんが気付かなければ私はどうなっていたか...」

「"そんなことが..."」

 

 ナギサの説明を聞き終える。―――まさかミカに()()()()()が居たとは予想外だ。ただ、ナギサの説明から考えれば()()()()()―――ルイズなる生徒は独自に動いている様だ。クーデターには関わっていたのだろうけど、()()()()()()()()()()、聞きたい事を聞いて退散したということは、彼女には別の思惑があったのかもしれない。

 

「――勿論、ルイズさんはクーデターへの関与が強く疑われるので捜査しなければなりません。しかし...今はクーデターを鎮圧することが最優先であることは私も承知しております。...そこで、私はクーデターの首謀者――ミカさんと、()()()()()()()のです」

 

 ナギサは黄色い瞳に確かな決意を宿して私へそう頼み込む。ナギサとミカは幼馴染の親友。その関係性を頼みにして説得を図りたいのだろう。でも―――

 

「"――それは危険だ。クーデターの目的は"ホストリーダー"の打倒...つまりはナギサ、君を害するということ。目の前に打倒すべき目標が現れて、見逃す筈がない"」

「その危険は承知しております。ですが――被害を抑えられるなら、説得も一つの手だと思いませんか?勿論、ミカさんの下へ向かう為に礼拝堂内に立て籠もっているクーデター勢力を突破する必要がありますし、そのお邪魔をするつもりはありません。――礼拝堂内に突入してミカさんを止めた時に、私にお話させてほしいのです」

「――ナギサ様の護衛は私にお任せください。勿論、対話が望めない場合はナギサ様の安全を最優先に行動します。その為に"ソーサーナイツ"が居るのですから」

 

 私の懸念にナギサは理解を示して尚、ミカとの対話を望み、イクが"ソーサーナイツ"としてナギサの護衛を徹底すると宣言する。

 

「"...分かった。作戦を少し変更しよう。皆に――"」

 

 

 

「――"先生"!"救護騎士団"のミネ団長が、"先生"にお会いしたいと面会を求めて...って、ナギサ様?!」

 

―――作戦の決行について、指揮所の近くに"救護騎士団"が設置した野戦病院へ伝令に向かったイチカが戻って来て面会の要請を報告して来て、ナギサ、イク、モエと共に振り向くとイチカはナギサの姿を認めて驚いた声をあげる。

 彼女の後ろ、カフェの出入口に目を向ければ、青い髪と翼が目立つ人影と―――女性としては高身長な彼女の後ろに()()()()()誰かが居るのが見える。

 

「"――面会?これから作戦を少し修正して、再突入を始める所だったんだけど..."」

「それが...その作戦の()()()()()()()()()()()()ので、できればすぐにお会いしたいとのことっす」

「"...分かった。――各員、もう少し待機。...作戦変更の必要が生じた。待機中は敵クーデター勢力の動向を注視しておいて"」

『――"RABBIT1"、了解』

『...了解しました』

「"よし...イチカ、中に入れていいよ"」

 

 作戦に関わると言うなら無視は出来ない。ミヤコ、ツルギ達には少し待機する様に指示し、イチカに促す。

 

「了解っす!...ミネ団長、入っていいっすよ」

「――失礼致します。...おや、ナギサ様も居られたのですね。装い的に就寝中に事態を知ったのですか?」

「...そうです。クーデターの目標である身としては、動かず籠っているのが最上の安全なのでしょうが――クーデターの首謀者がミカさんと聞いては籠っていられませんから」

「...イク副長、"ソーサーナイツ"を護衛としていなければ()()していたところでしたよ。しかし、"ティーパーティー"の同僚であること以上に、幼馴染の親友であるが故に気が気ではないことは理解できます。――ですが、どうか軽挙な行動は慎むようにお願い致します」

「...えぇ、分かっています」

 

―――カフェの出入口に顔を覗かせたイチカに続いて、白いナース帽を被ったピンクのメッシュが走る青い長髪、濃紺と白のワンピースの制服の腰回りにピンクのポーチを巻き、背中に青く大きな翼を伸ばした生徒―――『蒼森ミネ』が入って来て綺麗な所作で頭を下げ、ナギサに気付いてそんなやり取りを交わす。

 

「さて――お初にお目にかかります、『シャーレ』の"先生"。"救護騎士団"団長、『蒼森ミネ』と申します。クーデター鎮圧の指揮で忙しい中、面会の時間を設けていただき感謝に堪えません」

「"こうして対面するのは初めてだね、ミネ。君のことは色々な生徒から聞いているよ"」

 

―――ミネはナギサとの会話を切り上げて私に向き直り、お互い自己紹介を交わす。

 

「"私達『シャーレ』が到着する前から野戦病院を設置して負傷者の回収、応急処置に従事してくれてありがとう。クーデター勢力(相手)が結構強くて負傷者が出ているけど、君達のおかげで戦力減少を抑えられているよ"」

「『救護が必要な場に救護を』――それが我が"救護騎士団"の理念ですから。怪我人、病人が出るならば何処であろうとすぐに駆け付けます」

 

 野戦病院について感謝を述べると、ミネは当然の事だと答える。真面目でキッチリとした娘の様だ。―――閑話休題。

 

「"――さて。私に面会したいそうだけど、"救護騎士団"に何か私の助力が必要かな?"」

「...私ではなく、こちらの方が"先生"にお会いしたいと要望されたのです。どうやら私に隠れて見えなかったようですが...いえ、()()()隠れていたのですか?」

 

 ミネは私の言葉にそう答えて振り向く―――

 

 


~礼拝堂内~

side-ミカ

 

「――何故私達に言わなかったの?!」

 

―――"緋想の剣"を突き出しながらテンちゃんが吼える様に尋ねてくる。

 

「おっと...!――言ったところで皆分からないなら、共有したって無意味だからだよ!テンちゃんが『アリウス』について何も知らないなら()()()()()誰も知らないってことだもの!ナギちゃんでさえきっと、ね!」

 

 剣の切っ先を躱し、[Quis ut Deus(愛銃)]を突き出して牽制射をばら撒きながら言い返す。

 

「そうやって決め付けて!まるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()!――幼馴染の親友は信じられないの?!」

 

ギャリ...!

 

 弾幕を躱して"緋想の剣"を振る度にテンちゃんが吼え、[Quis ut Deus(愛銃)]で三撃目を受け止めて鍔迫り合いに持ち込む。

 

「ナギちゃんはセイアちゃんの件からずっと()()()()()疑心暗鬼でさ!『アリウス』のことを話して、私の話だからって聞いてはくれるだろうけど...疑うだけならまだいいよ。でも――疑念を拗らせて、()()()()()()()()()()()()()()()ことになったら?」

 

―――[Quis ut Deus(愛銃)]を押し上げて鍔迫り合いを解き、回し蹴りでテンちゃんを蹴飛ばして距離を取る。

 

―――『トリニティ(貴女達)()()()()()()()()()()アリウス(私達)が生きていたことに気付き、()()()()()()攻撃を――アリウスの生徒(愛しい子達)()()()なら、自衛するしかないでしょう?』

 

「――アリウスの娘達(あの娘達)()()理不尽な攻撃に晒される!私言ったよね?――『アリウス』の娘達を助けるって!優しさよりも疑念を強めてる今のナギちゃんには言えない!」

 

―――シンキ先生が『アリウス』で私に()()()()()()()について話した時に浮かべていた()()()()()()()()()()()暗い表情を思い返して[Quis ut Deus(愛銃)]のグリップを強く握りしめて吼え、神秘をチャンバー内の弾に込める。

 

「...疑心暗鬼を拗らせているナギサに話したくないというのは分かるわ。だから尚更、私のことを信じてくれない貴女のことが。何より――」

 

 

「――()()()()()()()()()()()()()()()が許せないッ!」

ダッ...!

 

 そう吼えながら"緋想の剣"を構えて吶喊するテンちゃんに銃口を向けて狙い澄まし―――

 

―――タタタ...!

 

「――?!

 

―――吶喊の体勢からおもむろに構えられた[有頂天の贈り物(テンちゃんのサブマシンガン)]の銃撃に反応出来ず、[Quis ut Deus(愛銃)]の狙いを解いて腕で防いで―――

 

ギャリ...!

「っち...!」

「っぐ...!」

 

―――目の前に迫った切っ先を[Quis ut Deus(愛銃)]で受けて防ぎ、また鍔迫り合いに持ち込む。

 

「――テンちゃんは優しいね。私が皆に隠れてコソコソ動いて、こうしてクーデターを起こしてるのに、それ以上にテンちゃん(自分)の方が悪いなんて考えるなんてさ...!」

「当たり前でしょう...!幼馴染なら、親友なら――悩んでいて、困っているなら助けになるべきで、しょッ!」

 

ガッ...!

 

「わっ...?!――このッ!」

「っぐ...!」

 

 "緋想の剣"で[Quis ut Deus(愛銃)]が押し上げられて隙を晒しちゃうけど、咄嗟に蹴りを繰り出して追撃を防ぎ―――

 

チャキッ...!

 

―――お互いに銃口を向け合って対峙する。

 

「――私は止まる訳にはいかないの。セイアちゃんが襲われて、一命は取り留めたけど行方不明になっちゃったあの事件...原因は私にあるの。――アズサちゃんは確かに『アリウス』が送ってくれた協力者。でも...あの娘もあの娘で『アリウス』から()()()()()()()()()()()()んだと思う」

「...どういうこと?」

「――私がアズサちゃんに、"『エデン条約』を阻止する為に、セイアちゃんに公務ができない怪我を負わせる"ようにって指示を出したの。...でも、辛うじて一命を取り留めた大怪我も、その後の失踪も――()()()()()()()()()()()()()()()

「...道理で犯人が見付からなかったのね。あの時は完全にノーマークだったもの」

 

―――[Quis ut Deus(愛銃)]戦端を開く前のテンちゃんの尋問で明かさなかった事を白状すると、悔しそうに眉を顰める。

 

「アズサちゃんに、()()()()()()()()()をやった理由、目的を聞きたかったけど...あの娘は事件以来()()()()()()()()動くようになっちゃってさ。その上で"補習授業部"入り...アズサちゃんに構い続けたら疑心暗鬼のナギちゃんにどう思われるか分からないし、そもそも――アズサちゃんにちゃんと確認しないまま送り出しちゃった私が悪いの。

 結局――セイアちゃんに()()()()をしてまで得られたのは、ナギちゃんが代行して締結目前まで進んじゃった『エデン条約』。今更白紙にしてもデメリットしかない。だから後は――『アリウス』を助ける為に"ホストリーダー"の座を奪うしかないの」

「...それが、貴女の覚悟ということね」

 

 私の話を聞き終えたテンちゃんはそう言って瞑目して―――

 

 

「――尚更、貴女を止めなければならないわね。鎮圧が終わったら、貴女にも、ナギサにも――()()()にも色々と話を聞く必要があるから」

「...()()()?一体誰――」

 

 

ドゴォォォンッ!!

 

―――瞬間。私達の右側の壁、ステンドグラスが大きな爆発と共に吹き飛ぶ。

 

―――バッ...!

 

「キエェェェェェェ!!!!」

 

ダダァンッ!

「きゃッ?!」

 

―――爆炎の中から()()()()()()()()叫声が聞こえたと思いきや、真っ黒焦げ―――否、"正義実現委員会"の制服を纏い、黒い長髪とボサボサの黒い翼を振り乱したツルギ委員長が飛び出し、[二丁ショットガン]の斉射が直撃して私は吹き飛ぶ。

 

ドサッ...

「うぐっ...!な、何でツルギちゃん、"正義実現委員会"が――」

 

ガッ...!

「――チェックメイトよ、ミカ」

 

―――礼拝堂の床に転がり、困惑しながら起き上がろうとした瞬間、いつの間にか私の目の前に迫っていたテンちゃんが"緋想の剣"を制服のケープに突き立てて固定し、[有頂天の贈り物(サブマシンガン)]の銃口を眉間に突き付けてそう宣言する。

 

ダダダ...!>

「――制圧完了」>

「う、動かないでください...!」>

 

 出入口の方に目を向ければ、『アリウス』の娘達がハスミちゃんやヒナタちゃん達によって制圧されて取り押さえられている様子が視界に入る。

 

―――ザザザ...!

 

―――迎撃が無くなった事で"シスターフッド"、"正義実現委員会"の娘達が次々入って来る。その先頭には―――

 

 

 

 

「...え...?」

「――まさか、貴女がこのような行動を起こすとは思っていませんでした、ミカさん」

 

―――イクちゃんを傍に従えた、寝巻きの上にコートを羽織ったナギちゃんと―――

 

 

 

 

 

 

「...やぁ、ミカ。久しぶり...というには日数が些か短いが、君の()()()()()()()()私はこの通り()()()()()()()だよ」

 

―――ミネ団長を傍に従えた、()()()()()()()()()()()筈のセイアちゃんがナギちゃんの隣に立っていた。

 

 

―――to be continued―――

 

 




ということで、原作より早いセイアの復帰とクーデター鎮圧です。
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