Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~   作:八坂 義景

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 ロア追跡編2章解禁されたので初投稿です。
 『カニと戦いに行く』という端から見たらアホっぽい字面。ニコ操作の探索パートとは気合入ってんね。ロアの原因は港の警備業務独占を目論んだカルパッチョの噂か。そして思っていた以上にでっけぇドラム缶ガニ!でも某マジオスみたいに艦艇の残骸を纏っているのはドラム缶関係ないな...そして倒され食べられるって...お前来週そうりきでしょ...しかしカニ鍋スチルのカニの量よ。出所祝いの焼肉といいRABBITよりいいもん食ってんねFOX。
 ヒノム火山地下、アビスはやっぱ何かあるよなぁ...コクマーも本来は探査船だった筈だし。そしてまさかのトリニティ図書委員会にチエル副委員長、ネームド3人目?!カタコンベに行って3ヶ月以上行方知れず、アビスに入ろうとしてゲヘナと揉めかけたり...破天荒な人のようで。
 そして本物と同等の実務能力、しかし一部は超えている可能性もある連邦生徒会長...偽物が本物に劣る道理はない。偽物でも本物を超えればそれは本物と言える。やっぱり怪しいところもあるな...

 そしてミニストーリーまさかのハルカフォーカスで便利屋68過去回?!思っていたより普通な過去だったなハルカ。それとしてイジメは良くないが。ムツキとハルカっょぃ。今回はしっかりアウトローしてるアルちゃんカッコイイ。ムツキは人選んで悪戯、揶揄うけど、それ故にこの時のことを後悔してるんだなぁ...

さてさて、調印式典前の閑話その1です


File110.ET-20~束の間の平穏①~

~『シャーレ』オフィスビル 屋上~

side-アヤ

 

「...SNSは若干下火にはなったけど、まだあのクーデターの話題は尽きてないわねぇ。状況とタイミング、『トリニティ』の校風を考えれば()()()()を疑うのは仕方ないけど」

 

―――朝の『シャーレ』オフィスビル屋上、翼を広げて朝日と風を浴びながらスマホで『モモッター』を始めとするSNSをサーフィンしてトレンドを確認しながら言ちる。

 "先生"が"連邦生徒会"から提案された、『エデン条約』調印式典への来賓としての参加受け入れを表明して二日程経った今日。

 ミカさんが決行し、失敗したクーデターに対するネット上の反応はまだまだ強火で、"ティーパーティー"の会見で出た情報から考察した動機から、()()()()()()()()()()荒唐無稽な憶測まで、様々な情報が飛び交っている。

 

「...『トリニティ』発信のアカウント、書き込みもそこそこ見られるし、()()()()()()()()()()()()()()()()連中も居るっぽいわね」

 

―――私の隣でスマホを忙しなく弄っていたハタテが()()()()()で得た情報と、そんな推測を挙げる。

 

「生徒会へのクーデターなんて()()()()()()()()だし、まず間違いなく首長(ホスト)の座は()()()()()。でも――()()()()()()()は厳しいでしょうね」

「伊達に"パテル分派"の首長()をやってた訳じゃないものねぇ。パテル分派(あそこ)はとりわけ実力至上主義だし。だからこそ――()()()聖園ミカ(最大の実力者)()()()()()()に陥ってる」

 

―――過去にも何度か"ティーパーティー"への取材を行った事もあるけど、ミカさんはナギサさん、セイアさんと違って感覚的、口より手が出やすいタイプではあるものの、"ティーパーティー"構成分派の一つ、且つ行政の主導権を握る三大分派の一角を率いるだけの頭脳、政治力も併せ持っていると感じていた。

 実際、クーデターを決行したあの日まで()()()()()()兆候にすら気付けなかったのだから、権謀術数渦巻く『トリニティ』の上位陣に相応しい能力の持ち主だ。

 

 故に―――そんな大人物の実質的な降板は"パテル分派"を麻痺させている。主導権を握る三大派閥の一角が崩れて生まれた空席。それを見逃す派閥は居ないだろう。

 

「"フィリウス"、"パテル"、"サンクトゥス"――長らく続いた三頭政治の均衡が崩れた。"パテル"の後釜を狙う。これ幸いにとフィリウスとサンクトゥス(残る二大派閥)を蹴落とす。...『トリニティ』の政治界隈は大荒れ必至ね」

「だからこそ、ミカさんの処分は即断できない。ナギサさん、セイアさんにとって幼馴染の親友(大切な人)でもあるし、さっき言った通り権限剝奪は当然として...恐らく退()()()()()()()()()()んじゃないかしら」

「...政治的にも、感情的にもそれを目指したいところよね。他派閥は納得しないでしょうけど...そこは桐藤ナギサ、百合園セイア(幼馴染の親友二人)の手腕次第ね。個人的にはこっちを応援してあげたい所だけど――」

 

 ハタテの言葉に対してそう返せば、彼女はやれやれとため息を吐いてそう漏らす。私も心情的にはナギサさん、セイアさんを応援したい所ではある。だけど―――

 

「――私達は他の、組織、思想に()()()()()()()()()ような、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()連中とは違う。誰よりも速く、()()()()()()()()()()――真実を突き止め世に明かす。忘れてないでしょうね?」

「当たり前じゃない。私達は対抗新聞(ダブルスポイラー)なんだから。情報は複数のソースで比較してこそ、その真贋を判断しやすい。...速さじゃアンタには及ばないけど」

 

―――ハタテは私に向き直って頷き、自嘲する様に苦笑する。

 

「ついでに情報の鮮度もね。日和ってると、"ヴェリタス"に一目置かれるくらいのハッキング技能が腐るわよ?」

「う、うるさいわね...!アンタが思ってる以上にハッキングは色々大変なのよ!――ほ、ほら!時間的にそろそろミヤコ達も来るだろうし戻りましょ!」

 

 私の言葉を誤魔化すようにハタテは頬を赤らめて反論し、無理矢理話を切り上げてツカツカと階段に向かう背中を見送る。

 

「...文はいいんだけどねぇ。それだから私に一歩遅れるのよ、ハタテ」

 

 相変わらずの幼馴染だと一人言ち、部室に戻るべく歩き出す―――

 


~『シャーレ』オフィスビル 部室~

side-"先生"

 

「――おはよう、"先生"」

「――おはようございます、"先生"!」

「"――いらっしゃい、アズサ、ヒフミ"」

 

―――部室の自動ドアが開き、今日の"当番"であるアズサとヒフミが入室してきて挨拶を交わす。相変わらず熾烈な"当番"シフト予約だけど、二人は昨日奇跡的にキャンセルで空いた枠で今日のシフトに入っている。

 

「――おはようございます。お二人は今回が初めての"当番"ですね。私は『シャーレ』正規部員、"財務管理者"の『早瀬ユウカ』です。業務開始前に、"当番"について説明しますね」

「『阿慈谷ヒフミ』と言います!本日はよろしくお願いします!」

「『白洲アズサ』だ。今日はよろしく頼む」

「こちらこそ、よろしくお願いしますね。では、早速説明を始めます。まず、"当番"の仕事内容ですが――――」

 

 ユウカが二人の下に歩み寄って自己紹介し、"当番"について説明を始める。―――ユウカが正規部員となってから、初めて"当番"に就いた娘への説明や案内を行う様になった。業務の中に特に難しいものがある訳ではないけど、事前に内容をある程度覚える事で業務は円滑化する。

―――閑話休題。

 

「――――説明は以上となります。ご質問、確認等はありますか?」

「特にありません!」

「私も大丈夫だ」

「分かりました。では――改めて、本日はよろしくお願いします。"当番"用デスクはあちらです」

 

―――ユウカの説明が終わり、二人が私の左方に並ぶデスクに足を運ぶ。

 

「――ヒフミさん、アズサさん到着と...おや、後一人来ていませんね」

 

 自身のデスクに座るアヤが出勤をチェックしていて、おやと眉を上げて報告する。

 

「"時間的にはまだ余裕はあるけど...今日来る娘は、ヒフミとアズサ、後は――"」

 

 

「――"先生"、"当番"の方をお連れしました」

「射撃訓練を終えたタイミングで、ロビーで出会してな。道中で人助けをして遅れたそうだ」

 

―――部室のドアが開き、ミヤコとサキが姿を現してそんな報告を挙げる。その二人に続いて―――

 

「――"先生"、遅れてしまってごめんなさい。お婆さんが運んでいた荷物の運搬を手伝ったら思っていたより距離があって、時間が取られてしまったわ」

[シャンハーイ]

[ホーラ-イ]

「"始業時間に間に合っているから大丈夫だよ、アリス(Alice)。遅れたとしても、そういった理由があるなら咎めることはしないよ"」

 

―――今日の"当番"、残る一人であるアリス(Alice)が姿を現し、彼女の謝罪に続いて二十センチ程の大きさの人形二体、[シャンハイ]と[ホウライ]も頭を下げるけど、謝罪の必要は無いと返して微笑む。

 

「...あぁ、何とか間に合ったのね...ならいいのだけれど――」

 

 

「...!」

「...あら?」

 

―――ふと、アリス(Alice)がアズサと見つめ合う。アリス(Alice)が不思議そうに見つめる一方で、アズサは驚いた―――()()()()()()()()()()()様に目を見開いてアリス(Alice)を見つめている。

 

「...ん?何かあったの?」

「アズサ先輩とアリス(Alice)先輩...何かあったのかな...?」

 

 アリス(Alice)の後に続いて入って来たモエとミユも不思議そうに二人を見る。

 

「"――二人共、何処かで会ったことがあるのかい?"」

「...いや...これが初対面だ。...人形が自律して動いているなんて初めて見た。その学生証は『ミレニアム』か」

「えぇ。――『ミレニアム』二年生、『真神アリス』よ。この子達は[シャンハイ]と[ホウライ]。見ての通り、こうして動けるの。...完全に自律して動ける機能、AIモデルはまだ開発中だけど」

[シャンハーイ]

[ホーラ-イ]

 

 私の問いにアズサはそう答え、アリス(Alice)も頷いて自己紹介し、[シャンハイ]と[ホウライ]が揃って頭を下げる。

 

「わぁ、すごい...!――あ、私は『トリニティ』二年生、『阿慈谷ヒフミ』です!」

「おぉ、これはすごいな...同じく『トリニティ』二年生、『白洲アズサ』だ」

「ヒフミ、アズサね。今日はよろしくお願いするわ」

「"これで今日の"当番"は全員だね。改めて、皆よろしく。――よし、時間だ。今日の業務を始めよう"」

「本日の書類は既に仕分け完了済です。」

 

 三人が仲良くなれそうだと頷き、始業時間を確認して音頭を取る―――

 

 

 

 

「――[シャンハイ]、その書類の束を"先生"に渡して」

[シャンハーイ]

 

―――業務開始から一時間程経った頃。アリス(Alice)の指示を受けて[シャンハイ]が書類の束を抱えて浮かび上がり、私の下へと運んで来る。

 

「"ありがとう、[シャンハイ]"」

[ハーイ]

 

 書類を受け取った私のお礼の言葉に[シャンハイ]はそう答えて頷き、フヨフヨと浮かんでアリス(Alice)の下へと戻って行く。

 

「――いつ見ても、よく出来た人形型アンドロイドね。これでまだ未完成って言うんだから驚きよ」

「本当にすごいです!音もなく浮遊して、自分より少し大きな書類の束も余裕で持ち上げて運ぶなんて...!」

「ふふ、お褒めの言葉ありがとう。...でも、指示への応答、それに合わせた動作はこんな人形でなくともドローンで充分。自分で考え、提案し、対応して動く――完全に自律して動けるようになるにはまだまだよ。表情を動かす機能も搭載しているけど、全然使わないしね」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()自身の作業を終わらせて小休止中のユウカの言葉にヒフミが手を止めてコクコクと頷く。

 アリス(Alice)は二人の言葉に対して微笑むけど、まだまだだと続けて[シャンハイ]と[ホウライ]を見る。

 

[シャンハーイ?]

[ホーライ?]

 

 二体は揃って首を傾げる動作を返すけど、確かに表情は一切変わっていない。だけど、アリス(Alice)が目を向けると『どうしたの?』と言わんばかりに首を傾げる姿は可愛らしく、よく出来た反応だと感じられる。これでまだ未完成だと言うのだから驚きだ。

 

アリス(Alice)さんは、その[シャンハイ]さんと[ホウライ]さんのような人形を開発しているんですか?」

「えぇ。私の研究テーマは"人間と遜色ないレベルの思考モデルの開発"――所謂AIの開発がメインだけど、この子達みたいな人形の作成も研究の一環兼、趣味の一つよ。AIだけでは、その思考から生まれた動作を反映する身体()がなくては意味がないもの。この子達は素材から関節、中身まで動作の円滑化の為にかなり改造してしまっているけど...」

 

 アリス(Alice)は一度言葉を切ってデスクの下に置いていたショルダーバッグを引き出してチャックを開けて中を探る―――

 

「...こういった、普通の人形もたまに作っているわ」

「こ、これは...!」

「おぉ、『ウェーブキャット』だ...!」

 

―――取り出したのは『モモフレンズ』のキャラクターの一人である『ウェーブキャット』のぬいぐるみ人形で、十センチ程の大きさながら特徴的なうねうねした長い胴体がしっかり表現されていて、アリスの指に摘ままれてゆらゆら揺れる様子を見てヒフミとアズサが揃って瞳を輝かせる。

 

「大して宣伝はしてないけど、外注で色々な人形を製作することもあるの。これが結構依頼も多くて、趣味の域を逸脱しない程度に抑えているけど、そこそこの稼ぎになっているわ。

 この子はそんな依頼で製作していて、完成目前で依頼主側のトラブルでキャンセルされちゃって、こうして私が持っているのだけど...『ミレニアム』だと人形のコレクターなんて見つからないから、貰い手がなくてね。

 今日は『シャーレ』"当番"だから、他の学校の娘にもしかしたら欲しい娘が居るかもしれないと思って持って来t「もらっていいんですか?!」

 

 アリス(Alice)が人形について説明する言葉を遮っていっそう瞳を輝かせたヒフミがアリス(Alice)の目の前に迫り、アリス(Alice)は一瞬たじろぐけどすぐ平静に戻る。

 

「...え、えぇ。私は人形製作の参考、参照にする為に見るだけで『モモフレンズ』のファンではないけれど、そんな私が持っておく位なら大事にしてくれそうな娘に託したいの。...ヒフミ、貴女は『モモフレンズ』の大ファンみたいね?それも――『ペロロ様』が推しの」

「はい!『モモフレンズ』そのものは勿論、『ペロロ様』は特に大好きです!」

 

 アリス(Alice)はヒフミのデスク下に置かれたリュックサックをチラリと見て尋ねると彼女は大きく頷く。

 

「そんなリュックサックを持っている位だものね。――そんなファンなら、この子を任せられそうね。どうぞ、大切にしてあげてね」

「わぁ...!ありがとうございます!」

「よかったな、ヒフミ...!」

 

 ヒフミになら任せられると微笑んだアリス(Alice)から『ウェーブキャット』のぬいぐるみを受け取ったヒフミは満面の笑みを浮かべてお礼を言い、アズサと共にぬいぐるみをしげしげと眺める。

 

「ふふ、気に入ってくれそうね。製作者として嬉しく思うわ」

「よかったわね、アリス(Alice)

 

 安心した様に目を細めるアリス(Alice)を見てユウカも微笑む。

 

「――アリス(Alice)さん!折角ですから、人形製作の依頼をしてもいいですか?!」

「私も依頼したい!...私は特に『スカルマン』が好きなんだ」

「えぇ、いいわよ。――基本的に『モモトーク』で依頼、交渉用サイトのリンクを送るから、IDを交換してもいいかしら?」

「勿論です!ついでに『ミレニアム』の方とも交友関係を繋げますし、いい機会です!」

「あぁ、私も構わないぞ」

 

 アリス(Alice)の確認に二人共頷き、スマホを取りだしてID交換を始める。―――私は以前、アリス(Alice)が"当番"に来た時に『モモトーク』のID交換のついでにサイトを紹介してもらっている。

 交換を行う三人を横目に眺めながら自身のスマホでサイトを開く―――

 


あなたの日常に彩を

七色の人形工房

製作:真神 アリス

 

・欲しい種類の人形が無い...

・推しの人形が無い...

・壊れてしまったけど直せない...

 

 そんなあなたのお悩み、お願いに応えます。チャット、映像通話による一対一での交渉にも対応(注:要予約)。

 


 

―――サイトにはアリス(Alice)が従えている[シャンハイ]、[ホウライ]を始めとした、彼女が製作、修理したのであろう様々な人形の写真や依頼者のレビュー等が実績として掲載されている。

 レビューは軒並み絶賛の内容ばかりで、一方サクラ、詐欺疑惑払拭の為か不満や要望も掲載しているものの、対応の長さや期間の長さ等、個人故の必然的な問題ばかりで、製作した人形の品質については一切不満は見受けられない。彼女の人形製作の腕はかなりのものの様だ。

 

「――ものによっては交渉やヒアリングが必要になるのだけど、対応は全て私一人だけだから、製作も合わせて時間が掛かる可能性があるの。そこはどうか容赦してちょうだい」

「それ位は大丈夫です!では、"当番"が終わったら依頼させてもらいますね!」

「私も待つのは慣れている。大丈夫だ」

 

 アリス(Alice)の注意事項に対して二人は大丈夫だと頷く。

 

「ふふ、いい娘達ね。――さて、そろそろ業務に戻りましょうか。ユウカは()()()()()早いけど、私達はまだ残っているわ」

「はい!」

「あぁ、そうしよう」

 

 アリス(Alice)の言葉に二人は頷き、デスクに戻る―――

 


~『D.U.外郭地区』 空きテナントビル前~

side-ヒフミ

 

『"――こちら"先生"。現地に着いたみたいだね。輸送車は見つかったかい?"』

「こ、こちらヒフミ。確かに、奪われた輸送車が停まっています。ここに犯人が――」

「――ヒフミ、敵に気取られると良くない。こういう時はコードネームを使うんだ」

 

―――不良の集団が屯しているという空テナントビルの前。"先生"からの通信に応えているとアズサちゃんが真面目な表情でそんな指摘を挙げる。

 

「そ、そこまでするような状況でも...」

「確かに、集団と言っても五、六人の小規模な集団のようだ。だが...だからと言って侮ると足元を掬われかねない。対策は万全を期すべきだ」

「――少し過剰な気もするけど、油断しない心掛けそのものは重要ね。"先生"の指揮があるとはいえ、実際に対処するのは私達なのだから。折角の提案だし、この場はコードネームでやり取りしましょうか」

 

 私の言葉に対してもアズサちゃんは意見を曲げず、アリス(Alice)さんもアズサちゃんに()()()()()()()()()眼差しを向けながら賛意を示す。―――この場には私とアズサちゃん、アリス(Alice)さんの三人だけ。一対二で私が不利だ。

 

「...わ、分かりました。では...私はペロロ様...じゃちょっと分かりやす過ぎるかな..."ペロ"と」

「――私は"ペンギン"と呼んでくれ」

「私は..."ドール"で行こうかしらね」

「分かりました。――"先生"、私達は任務中コードネームを付与します。私は"ペロ"、アズサちゃんは"ペンギン"、アリス(Alice)さんは"ドール"と呼んでください」

『"了解。――今のところ、件の不良集団は動いていない。気取られて逃走されないように気を付けて"』

「分かりました」

 

 声を抑えて応え、通信を一度切る。

 

―――午前分の机上業務を終え、少し浮いた時間でお昼ご飯の準備をしながら、アリス(Alice)さんにどんなお人形を依頼しようかと考えていた時に『シャーレ』に舞い込んだ緊急の依頼。

 ここ『D.U.外郭地区』の小さな銀行の現金輸送車が不良集団に襲われ、車両ごと現金が奪われたという。

 妙なのは、この依頼の後に『ヴァルキューレ』から()()()()()()不良の暴動が起きた事による『シャーレ』への救援依頼が舞い込んだ事で、"先生"やユウカさん達は二つの事態の関連性―――強奪した現金輸送車から確実に現金を奪う為の陽動の可能性を推測した。

 

―――『わ、私達三人で奪われた現金の奪還ですか...?!』

―――『"現金輸送車を襲った娘達を油断させる為だ。陽動を仕掛けたということは...ヴァルキューレだけじゃない――私達シャーレが動くことも意識したんだと思う。

 そこで、敢えて"RABBIT小隊"やアヤ達主戦力を暴動鎮圧に回す。輸送車強奪と暴動が繋がっているなら、その情報は輸送車を奪った娘達にも共有される筈だ。君達の偵察次第になるけど...その結果次第で連携、油断の有無が分かる。

 私は全体の指揮でビルを離れられない。気取られない隠密行動と情報収集、そこからの奇襲が前提になるけど、輸送車追跡とかのサポートはこちらで行うよ"』

 

―――"先生"から指名された時は上手く役目を果たせるか不安だったけど、アズサちゃんとアリス(Alice)さんが乗り気だった事もあり、"当番"である私達が()()である現金輸送車、もしくは現金の奪還を受け持っている。

 "先生"の『シッテムの箱』で輸送車の位置を特定して追跡し、こうして空きテナントにたどり着いた。

 

「――不良達を探す前に、輸送車を確認しましょう。ほとぼりが冷めるまで輸送車を隠して、輸送車ごと現金を持ち逃げする可能性もあるわ」

「――確認は私と"ペロ"で行う。"ドール"は見張りと、不良達の位置特定を」

 

 アリス(Alice)さんの言葉にアズサちゃんは頷き、役割を割り振るとガスマスクを装着する。

 

「了解したわ。――[シャンハイ]、[ホウライ]」

[シャンハーイ]

[ホーラーイ]

 

 アリス(Alice)さんの指示で人形二体が浮かび上がり、アリス(Alice)さんが赤縁のメガネを取り出して掛けると仮想画面が浮かび上がる。

 

「こ、これは一体...?」

「――[シャンハイ]、[ホウライ]の視界、スキャニング結果を投影するスマートグラスよ。さ、貴女達も輸送車の確認を」

「あぁ。――行こう、"ペロ"」

「わ、分かりました」

 

 アリス(Alice)さんの説明に驚いているとそう促され、輸送車へと向かう。見た所は人の気配は無い。先行するアズサちゃんが私の方に手を伸ばして足を止めさせると、車体下を覗き込んだり、車体を触ったりする。

 

「――ブービートラップの形跡なし。後部コンテナに鍵も掛かっていない...不用心だな。ヒフミ、近付いていいぞ」

「は、はい...!――じゃあ、中を見て見ますか?」

「あぁ。――開ける時は静かにな。トラップがなくとも、軋む音、動作音で気取られるかもしれない」

 

 アズサちゃんの忠告に頷き、協力して静かにコンテナの扉を開け―――ケースの一つすら無い、空っぽの荷室が私達を迎える。

 

「――空っぽ、ですね...」

「――輸送車を使うつもりがないのか?だとしたら...とりあえず、"ドール"の下に戻るぞ」

 

 結果を確認して静かに扉を閉め、アリス(Alice)さんの下に戻る。

 

「――おかえりなさい。首尾は?」

「――輸送車は空っぽだった。多分、輸送車で逃走するつもりはなさそうだ」

 

―――アリス(Alice)さんの下に戻ると、スマートグラスを掛けた下で目線を時々動かしながら[M4A1(アサルトライフル)]を点検していて、私達に気付いて顔を上げて首尾を尋ね、アズサちゃんが報告する。

 

「――本当にそのつもりみたいね。"先生"に報告するわ。そのついでに貴女達も聞いて。――"先生"、こちら"ドール"」

 

 アリス(Alice)さんは報告にやはりと頷き、インカムに触れて"先生"に通信を繋ぐ。私達もインカムを弄って回線を合わせる。

 

『"――こちら"先生"。偵察が終わったかい?"』

「えぇ。――テナント四階に件の不良達を確認。数は事前情報通り六名。現金が詰まったケースを配分している様子だったわ。周囲に見張りもなし。――見事に油断しているわね。シャーレ(私達)を出し抜いたつもりでいるわ」

『"成程...よし、やり方は君達に任せる。現金はできれば全て奪還してほしいとのことだ。油断せずにね"』

「了解よ」

 

 "先生"の指示にアリス(Alice)さんは頷き、通信を切る。

 

「――"ドール"、他に入口はあるか?」

「この玄関と、反対側に非常階段があるわ。不良達が居る四階の部屋の出入口は一つだけ。部屋内には非常階段に繋がる非常扉が一か所...退路を塞いでの挟み撃ちができそうね」

「よし、それでいこう。――突入は私と"ドール"で。非常扉は"ペロ"が塞いでくれ」

「わ、分かりました...多分、二人の負担が大きいと思いますが大丈夫ですか?」

「本気を出さざるを得ない状況は避ける性分だけど――こういう必要な場面ならできる限り手を尽くすわ」

「私も大丈夫だ。――全力を尽くそう」

 

 作戦と各人の役割を決定し、お互いに頷く―――

 

 

「...こちら"ペロ"。非常口に鍵は掛かっていませんでした」

『――一応、退路として確保していたようだな。それが今回は逆に目標(ターゲット)を詰ませることになるが』

 

―――非常扉のドアノブを静かに回すと開きそうな手応えがあり、うっかり開けてしまわない様に戻して二人に報告する。

 

『――こちらも突入準備完了。"ペンギン"がフラッシュバンを投げるから、こちらの合図で突入して』

「分かりました...!」

 

 アリス(Alice)さんの指示に頷き、[マイ・ネセシティ]を改めて確認し、扉に耳を当ててみる。

 

「よーし、これで配分はいいな?」>

「あぁ。後はさっさとずらかるだけだ」>

「『ヴァルキューレ』も『シャーレ』も仲間が陽動してる今の内だ」>

 

―――扉越しに不良集団の会話が聞こえる。どうやら現金の配分が終わったみたいだ。タイミングとしては―――

 

カランッ...>

バンッ...!

 

「――っ...!」

 

―――フラッシュバンの炸裂音が聞こえ、覚悟を決めて扉を開けて[マイ・ネセシティ]を構える―――

 


~『D.U.外郭地区中央駅』 駅前広場~

side-アリス(Alice)

 

「――本当に、久しぶりだな。アリス(Alice)

「――えぇ。...本当に久しぶりね、アズサ。まさか貴女も()()に出ていたなんて」

 

―――"当番"を終えた帰路。『D.U.外郭地区中央駅』の駅前広場の一角にあるベンチに並んで座り、そう切り出したアズサの言葉に頷く。

 

―――()()、『アリウス』を出て数年。新たな人生を歩む為に連絡手段を全て絶っていた為、アズサも()()()()()『トリニティ』、()()()()()の一生徒として過ごしていた事は『シャーレ』で出逢うまでは知らなかった。

 

アリス(Alice)()も鈍っていないみたいだな」

「貴女こそ、全然変わってないわね。おかげで不良達を一人も逃がさず鎮圧できたわ」

 

 アズサの言葉に微笑む。

―――現金輸送車を襲った不良達の鎮圧はすぐに終わった。アズサのフラッシュバンで怯んだ所を突いて突入。不良達は咄嗟に非常扉から逃げようとしたものの、そこはヒフミが立ちはだかって封鎖済。突然の状況で不良達が困惑して抵抗出来なかったこともあったけど、()()()()()連携は鈍っておらず、迅速に鎮圧、現金も全て奪還出来た。

 そのヒフミは駅の近くにある『モモフレンズ』ショップに入っていて、私達は先行してこうして駅前で彼女を待ちながら会話を交わしている。

 

「――『トリニティ』での生活はどう?」

「...『アリウス』とは色々勝手が違って最初は戸惑った。勉強も"()()()"から教わった範囲が合わなくて覚えるのが大変で、最近まで"補習授業部"に入れられていた。

 ()()()()()もあったけど――ヒフミのような友達を作ることができた。『モモフレンズ』を好きになれたのはヒフミのおかげだ」

 

 私の言葉にアズサはそう答える。―――『アリウス』の状況を考えれば、"()()()"の献身的な教鞭の内容と『トリニティ』の勉学は合わなくて当然だろう。だけど、ヒフミの様な友人を得られた事はアリウス(同郷)の人間としては嬉しく思う。

 

「そう...辛い思いはしていないなら何よりよ」

「...そういうアリス(Alice)はどうなんだ?『アリウス』を出る時に"()()()"から贈られたその人形をそこまで改造している辺り、『ミレニアム』によく馴染んでいるみたいだけど...」

 

 アズサはそう尋ねて私のショルダーバッグに収まる[シャンハイ]と[ホウライ]を見やる。

 

「――最初は貴女と同じように、『アリウス』とは何もかも勝手が違いすぎて大変だったわ。でも、運良く私を助けてくれた人と出会ったの。それから中学校を一緒に卒業して、『ミレニアム』進学で彼女とは道を違えたけど...今も腐れ縁で繋がった友人よ」

 

―――『...お前、ここらじゃ見ない顔だな。もしかして、私と同じ中学に進学するのか?...折角だ、一緒に手続き行こうぜ。私は――』

 

―――『アリウス』とまるで違う景色、システム、制度。"()()()"の教育の賜物で()()を決意した覚悟が揺らぎそうになった時に出逢ったのが『霧雨マリサ』だった。

 アリウス(素性)がバレない様にと控えめに過ごしたかったけど、彼女の興味津々で快活な性格は私に事ある毎に話しかけ、首を突っ込んで来た。最初は煙たかったけど、一緒に過ごす内に馴染んできて―――友人となるのに時間は掛からなかった。

 『ミレニアム』進学してからマリサは"エンジニア部"へ入部し、私も誘われたものの、噂に聞いていた()()()()()を嫌って単独で活動する事を選び、"教授"にスカウトされて"岡崎研究室"に入ってからも、彼女とは食堂で出会せば一緒に食事を取る程度には仲を保っている。

 

「そうか...人形作りは『アリウス』に居た時から時々やってたけど、どうしてそんな改造をするようになったんだ?」

「『ミレニアム』の見学に行った時に、試験中のアンドロイドを見かけて、[シャンハイ]と[ホウライ]が自律して動けるようになれば面白そうと思ったのがきっかけよ。

 "()()()"の贈り物――()()()()()()()()()()()を弄ることへの躊躇いもあったけど...物言わぬ人形が自分で動いて、会話を交わす――そんなイメージを形に出来れば"()()()"も喜ぶかなって思ったの。

 肝心のAIモデルはまだまだだけど...必ず実現させてみせるわ。幸い、()()()()()()()()()()()()もあるしね」

「そうか...本当に、元気そうでよかった」

 

 アズサは私の答えにうんうんと頷き、目を伏せる。―――その雰囲気からは()()()()()()()()迷い、躊躇いを感じられ、『トリニティ』で()()()()()()のだと察する。最近のニュース見た()()がもしかしたら―――

 

「...ねぇ、アズサ」

「...なんだ、アリス(Alice)?」

「...答えられたらでいいわ。貴女は――――」

 

 

 

~『D.U.外郭地区中央駅』 改札ホール~

 

「――ここでお別れね」

 

―――駅構内の改札ホールに入り、『ミレニアム』行きの路線が走るホームへの案内板を見てそう言ちる。『トリニティ』行きの路線のホームは少し奥の方に進まなければならず、ここでヒフミとアズサと別れる事になる。

 

「またいつかお会いしましょう、アリス(Alice)さん!お人形の依頼もお願いしますね!ちょっと()()()()()()()()()()かもしれませんが...」

「帰ったら改めて吟味させてもらうけど、できる限り要望には応えるつもりだから安心して」

「ヒフミ、うんうん唸ったり、内容を何度も書き直していたからな...完成が楽しみだな。――よかったら、『トリニティ』に遊びに来てくれ。案内したいし、友達も紹介したい」

「えぇ、『トリニティ』に足を運ぶことがあったら、その時はよろしくお願いするわ」

 

 ヒフミとアズサの言葉に頷いて微笑む。

 

「では、ホームに行きましょうか。改めて、今日はありがとうございました!」

「あぁ。...また会おう、アリス(Alice)

「えぇ。――また会いましょう、ヒフミ、アズサ」

 

 ヒフミとアズサの言葉にそう返し、二人は歩き出す―――

 

 

「――アズサ」

「...!」

 

 アズサを呼び止めると彼女は足を止めて振り向く―――

 

 

 

 

「――()()()()()()()()()()()。"()()()"が、『アリウス』の皆が何をしようとしているか分からないけど――せめて、()()()()()()()()()をしましょう」

「...うん。そうする」

 

―――アズサは小さく頷き、踵を返してヒフミの後を追うように足早に歩き出し、雑踏の中にその背中と飾った白い翼が紛れていく。

―――アズサから聞いた、彼女が『トリニティ』に編入された()()()()()とその顛末。それを思うと―――

 

 

「――"()()()"達はどうするつもりなのかしら。『トリニティ』で起きたクーデターが失敗したら、次は...」

 

―――そんな呟きは改札ホールの喧騒に消えていく。

 

―――To be Continued―――

 

 




ということで、アズサとアリス邂逅でした。次回はトリニティになります。
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