Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~   作:八坂 義景

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百花繚乱水着イベ復刻したので初投稿です。水着ナグサ白いな色々...あんな儚げな見た目で結構自己肯定感高いってマ?EXスキルが眩しいしさぁ...それでメモロビサムネのエロさよ。

後、紅魔郷リメイクが出るみたいでおったまげた。あの東方原作がコンシューマで遊べるってマ??長らく見付からなかったのに、バックアップ見付かったの早苗さん奇跡使った?
妖々夢以降の仕様であるエネミーマーカー、低速時当たり判定表示実装。新規ドットグラフィックに新モード、そしてBGMの神主セルフアレンジ。すげぇ時代になったぜ...リメイクに合わせて新サークル立ち上げたみたいだし、好評なら残る三部作リメイクワンチャン...?

さて、いよいよ調印式典です


File112.ET-22~調印式典①~

~"連邦生徒会"オフィスビル "連邦生徒会長"執務室~

side-(ユカリ)

 

「――"連邦生徒会長"。出立準備、完了いたしました」

「――ご苦労様、リン。ラン、『トリニティ』までの道程スケジュールは?」

 

―――自身の執務室に入室したリンの報告を受けて頷き、傍に控えるランに尋ねる。

 

「――『トリニティ総合学園』自治区まではヘリでの空路にて移動。自治区到着後、式典会場である『通功の古聖堂』までは現地分室にて用意した専用車にて移動します」

「結構。『SRT』の護衛の状況は?」

「――直衛である"FOX小隊"は準備完了してヘリポートにて待機中。周辺警備を行う"Кролик小隊"は、『トリニティ』に先行して警備体制の確認等を行っています」

「よろしい。――『ブラックマーケット』への()()()が通ったおかげで"Кролик小隊"を動員できたのは僥倖ね」

 

 リンの報告に頷く。

 

―――『...いいだろう。()()()()はしておく。だが、所詮一時的なものだ。調印式典が終わったらすぐに戻すことだ』

 

―――本来は"FOX小隊"のみを私の直衛として随行させる予定だったけど、『トリニティ』で起きた()()()()()を受けて念の為護衛を強化するべく『SRT』から追加の人員を求めるにあたって、部隊特性や練度、任務状況等から"Кролик小隊"に白羽の矢を立てた。

 しかし、彼女達を動員する事は『ブラックマーケット』の監視役が一時的に居なくなる事を意味する。そこで、()()()()を利用して『ブラックマーケット』で()()()()()()()()()()()()()に働きかけ、マーケット内の活動を抑える様にした。

 加えて、『SRT』候補生、訓練生の実地、実戦的訓練としてサグメ"教官"が指揮統括する部隊も送り込んで()()にも備えさせている。万が一"Кролик小隊"を呼び戻す事態が起きたとしても、彼女達が戻るまでの時間稼ぎは可能な筈だ。

 "Кролик小隊"にはリンの報告通り、先行して『トリニティ』に現地入りさせ、今頃は『トリニティ』内の治安状況や会場である『通功の古聖堂』周辺の脅威調査を始めている事だろう。

 

「――さて、準備ができているなら行くとしましょうか」

「「はい」」

 

 リンとランを連れて執務室を出て、ヘリポートに向かう―――

 

~"連邦生徒会"オフィスビル ヘリポート~

 

「――準備は完了しております、"連邦生徒会長"」

「ありがとう、ユキノ。――道中、調印式典での護衛は任せるわ」

「お任せください」

 

―――エンジンの騒音が響き、ローターの風が吹くヘリポートに着くと、ユキノ達"FOX小隊"が敬礼して私達を出迎え、ユキノの言葉に頷いてランと共にヘリの機内に乗り込み、ユキノ達四人が続いて乗り込む。

 

「――リン、私が居ない間のオフィスビル(ここ)の留守は任せるわ」

「お任せください。――『エデン条約』調印式典の成功を祈っております」

「――管制の許可が下りました。離陸します」

 

 リンが頷き、それを確認した様にパイロットがそう宣言してヘリが離陸を始め、リンは風で髪とコートを靡かせながらこちらを見上げて私達を見送る姿が小さくなっていく―――

 

 

―――そう...皆、覚悟は決めているのね。

―――いいでしょう。では、これから私達が行うことを説明するわ。

 

 


~『ティーパーティー会館』首長(ホスト)専用テラス~

side-ナギサ

 

「...いよいよ、ですね」

「あぁ、遂にこの時が来た」

 

―――中の紅茶を飲み切ったティーカップをソーサーに置いて呟くとセイアさんは静かに頷く。遂にこの日が来た。出来得る限りの準備を進めて来て、他に出来る事も無い事を確認している。しかし、それでも緊張は拭えない。

 

「...緊張しているのかい、ナギサ」

「当然でしょう。この日の為に交渉、協議...様々手を尽くしてきましたから。しかし、その成果が一瞬で無に帰す可能性は否定できません。...ミカさんに協力していた『アリウス』についても、調査の進展はありませんでしたし、尚更です」

 

 セイアさんの言葉にそう返す。―――式典を挙行するこの日まであまり日数が無かった事もあったとは言え、"正義実現委員会"からも人員を借りてまで自治区の至る所を捜索し、生徒達から事情聴取を行ったものの、『アリウス』に関わる情報は何も出なかった。

 『アリウス』がどの様な学校なのか。何故ミカさんに協力したのか―――その実態が分かればミカさんに対する()()を下す貴重な判断材料になる。加えて、あの夜セーフハウスに侵入したルイズさんが私に尋ねたあの質問の意図も未だに分かっていない。あの聞き方はまるで、私が、桐藤家が『アリウス』について―――

 

「――ナギサ様、セイア様。『SRT特殊学園』の方がご挨拶申し上げたいと、面会を求めております」

「――『SRT』...今朝"連邦生徒会"が先行して派遣した方々ですね」

「あぁ、確か"Кролик小隊"と言ったか」

 

―――今日の側役の一人であるツカサさんの報告を受けて思考を止める。今朝、"連邦生徒会"からメールが届き、式典に参加する"連邦生徒会長"の護衛として追加派出されたという"Кролик小隊"が、警備体制の確認等を目的として先行して派遣される事は把握している。どうやら到着した様だ。

 

「メールへは返信して、満足するまで確認するようにと伝えたが...律儀なものだ。――通してくれ。ナギサ、構わないね?」

「はい。――"連邦生徒会"側が護衛の増派を行い、警備体制の確認作業を求めるのは私達に原因がありますから」

「承知いたしました」

 

 私達の承認の言葉にツカサさんが頷き、扉の傍に付く側役二人に合図を出す。二人は頷いて扉を開き―――

 

「――『SRT特殊学園』、"Кролик小隊"。小隊長『優曇華院イナバ』以下三名。"連邦生徒会長"の命により警備体制確認、会場周辺の事前調査に参りました」

 

―――長い兎耳を伸ばし、防弾ベストやポーチで武装した四人の生徒がテラスに入室し、一歩前に立つ紫色の長髪が特徴的な生徒がそう名乗って後ろの三人と共に敬礼する。

 

「よく来たね、『SRT』の"Кролик小隊"。現"ホストリーダー"の『百合園セイア』だ。トリニティ(こちら)の不手際で連邦生徒会(君達の上司)には要らぬ迷惑を掛けることになって申し訳ない」

「謝罪の必要はありません。式典を成功させる為に、我が"連邦生徒会"も油断せずすべきことをしているだけですから」

 

 セイアさんの自己紹介に続いた謝罪にイナバさんはそう返す。

 

「――今朝方メールにて我々"Кролик小隊"来訪の目的は伝えられているかと思われますが、確認、調査にあたって何かしら要求事項等はありますでしょうか」

「特にはないよ。君達の懸念が払拭されるまでよく確認してくれ。"正義実現委員会"にも話は通してある」

「了解いたしました。――改めまして、本日はよろしくお願いいたします。では、失礼いたします!」

 

 イナバさんの問いにセイアさんはそう答え、イナバさん達四人が揃って敬礼し、踵を返してテラスを退出する。

 

「『シャーレ』の"RABBIT小隊"もだったが、真面目そうな娘達だね。まぁ、そうでもなければ"連邦生徒会長"の()()は務まらないだろうが。――しかし、彼女達のになら安心して任せられそうだ」

「えぇ。――"連邦生徒会"側の護衛増派と警備体制や現地の確認...いきなりの要求ではありましたが、こちらとしても僥倖でしたね。

 手を尽くしているとは言え、他者でなければ気付けない不手際や緩みが見付かる可能性もありますから」

 

 セイアさんの言葉に頷く。―――ミカさんに協力していた『アリウス』なる勢力。彼女達が『カタコンベ』を利用して『トリニティ』に潜入していたことが判明した事で警備体制を大元から見直さざるを得なかった。

 日も少なく、"正義実現委員会"の人員だけでは手が足りない体制となり、"トリニティ自警団"も大々的に動員して何とか体制変更に対応させている。

 故に、"正義実現委員会"、"トリニティ自警団"の努力でも見落とした体制の穴を"Кролик小隊"に見付けて貰う。これで式典の成功により近付く。

 

「さて...会場入りの前に大聖堂に行くとしよう」

「えぇ。サクラコさん達も待っているでしょうから」

「既に出立準備は完了しております」

 

 紅茶を飲み干したセイアさんの言葉に頷くとツカサさんが合わせた様に準備完了を伝える。―――特段敬虔という訳では無いけど、調印式典の成功、『ゲヘナ』との協調が続く未来を主に祈るゲン担ぎ位はしておきたい。

 

「では、行きましょうか」

「あぁ」

 

 セイアさんと共に椅子から立ち上がり、テラスの出入口扉へと歩き出す―――

 

 

―――最後の確認よ。作戦に参加したくないなら、不安があるなら退出して。止めはしないわ。

―――そう...本当に、強い子に育ったわね、皆。

 

 


~『トリニティ』自治区境界近傍 幹線道路~

side-レミリア

 

「――もうそろそろ『トリニティ』自治区か」

「――そうね。トリニティ(あそこ)特有の様式の建物も遠目に見えてきたわ」

 

―――"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"幹部専用リムジンの車内。向かい側に座るマコトの言葉に頷いて窓から外を見れば、『トリニティ』の白く格式高い雰囲気を主張する建物郡が遠目に見える。

 

「――()()"連邦生徒会長"が提案を持ち込んできてから、反発もトラブルも度々起きて、()()であわや空中分解まで陥りかけたが...遂にここまで来たな」

「えぇ。後は調印文書と握手を交わすだけ...とは言え、どうしても緊張してしまうわね」

 

 マコトの言葉で胸中の緊張を再認識し、併せて生じた喉の乾きをグラスに満たしたぶどうジュースを口に含んで潤いを流し込む。

 

―――この日まで色々な苦労があった。『トリニティ』で、"ティーパーティー"の首長達から猜疑、()()の眼差しばかり向けられた初会合。

 『エデン条約』の噂が広まり、()()()()()()()()()()()な『トリニティ』への()()()()()()を持った者や、統制強化を懸念した者達の()()への対処。

 『トリニティ』との仲介をよく務めていた()"連邦生徒会長"の突然の()()による混乱と、それに乗じた()()()()の再燃。

 

―――色々な苦労を重ねたけど、『トリニティ』側も歩み寄りを見せ、()"連邦生徒会長"も条約締結に向けた仲介を引き継いで役目をよく果たし、そんな三者間の成果が今日この日、結実しようとしている。少なくとも、ゲヘナ(こちら)側に不安は無い。問題は―――

 

「しかし...まさか、調印式典目前で『トリニティ』内でクーデターが起きるとはな。結果としてクーデターは失敗し、条約締結の意思が変わらなくてホッとしたが...」

「ニュースでは首謀者は"パテル分派"の『聖園ミカ』だた報じられていたけど...パテル分派(あの分派)は"ティーパーティー"内屈指の『ゲヘナ』嫌いで有名。締結目前でクーデター決行はタイミングが妙だけど、組織風土を考えればクーデターを起こす動機になり得るわね」

 

 マコトの言葉に頷く。―――『トリニティ』でクーデターが起きた事は驚きだったけど、首謀者が"パテル分派"の首長(ホスト)と知った時は納得した。トリニティ(向こう)も条約締結の為に意思統一を図っていた筈だけど、長らく『ゲヘナ』嫌いを組織風土としていた分派の反発を抑える事は難しかった様だ。もしクーデターが成功していたら―――

 

「――いや、それがどうにも単なる条約への反発ではなさそうだ」

「...どういうこと?」

 

 私の問に対してマコトは車内を見回す。―――このリムジンには私とマコトしか乗っていない。運転席側とは防音壁で隔てられていて、"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"から出席するサツキ、イロハ、チアキ、イブキ、フランは後続車に乗って随行していて、このリムジンにしっかりついて来ている筈だ。マコトがこんな動きを見せるという事は―――

 

「――()()()()()()()()()()から仕入れた情報だが、どうやら『聖園ミカ』は『エデン条約』締結阻止の為にクーデターを起こした訳ではないようだ」

 

 私以外に聞き耳を立てる者が居ない事を確認したマコトはそう切り出す。―――マコトの政治的立ち回りの上手さの原動力の一つが、『ゲヘナ』内外に広く構築している()()()()()情報網だ。長らく対立していた『トリニティ』内にすら情報網を構築し、今回の『エデン条約』締結にあたっての交渉や協議でも情報網は大いに役立った。

 さきの『聖園ミカ』によるクーデターに関する情報も仕入れているのは流石だ。だけどその表情は―――

 

「...なら、どんな動機で?」

トリニティ(向こう)()()()混乱していて、詳しく探れなかったが――」

 

 マコトは瞑目してグラスのぶどうジュースを一口飲む―――

 

「――『アリウス』なる学校、或いは勢力が『聖園ミカ』のクーデターに関わっていたらしい」

「――『アリウス』?知らない学校ね」

「だろうな。私もそれを仕入れた時は嘘だと思ったからな。だが、どうやらクーデターに協力した者達は事実所属をそう名乗っていたそうだ。裏付けの為に私も『ゲヘナ』内で調べてみたんだが...情報は()()見付からなかった」

「...()()()の所には行かなかったの?」

「勿論行ったさ。それでも成果なしだった」

 

 私の言葉にマコトは肩を竦める。―――『トリニティ』と同様、我が『ゲヘナ』にも"図書委員会"があり、その委員長を私の親友が今は務めている。『トリニティ』と比べれば規模は劣るものの、高い自衛能力で以て蔵書を守っていて、『ゲヘナ』の歴史や記録を比較的安全に保管出来る場所でもある。そんな"図書委員会"でも情報、記録が一欠片も無いとは。

 

「だが、今日まで時間がなかったからな。時間は掛かるが、図書館の奥に保管している古い蔵書も探してみると言っていた。その結果次第だな」

「奥の蔵書ね...状態は悪そうだけど、もしかしたら放置されていたが故に残った情報があるかもしれないわね」

「あぁ。式典が終わったら彼女の下に行くつもりだ。だが...」

 

 マコトは私の言葉に頷き、眉を顰める。

 

「...『聖園ミカ』のクーデターは失敗した。だが、それで終わりではない気がしているんだ。――件の『アリウス』の者達は捕縛されていたが、()()したらしいという情報を昨日仕入れていてな。首謀者である『聖園ミカ』は大人しく収監されているらしいが...」

「...()()何かを仕掛けてくる可能性は否定できないわね」

 

―――マコトの情報から推測すれば、首謀者であった『聖園ミカ』と『アリウス』なる勢力の思惑は()()()()()可能性が高い。

 聖園ミカ(首謀者)()()()()大人しく収監されているのに、アリウス(その協力者側)()()した。これはアリウス(協力者)側には脱走する理由があり―――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()事を示している。

 

「だが、我々に出来ることは自衛の強化位だ。『トリニティ』もクーデターを受けて警備は強化している筈。

――分かっているだろうが、気を付けろよレミリア。歴史的偉業を成し遂げる場で、クーデターのことを突っつく真似はしないようにな」

 

 マコトの言葉に頷く。―――調印式典。長らく対立関係にあった者達と文書、握手を交わす場でクーデターを槍玉に挙げて批判するつもりは毛頭無い。

 

「えぇ、分かっているわよ。――『ゲヘナ』の留守、()()()があった場合の()()()()の指揮はアコ、サクヤ達に預けてあるけど...」

「...アイツも理性はあるだろう。ヒナから()()()()任された以上は真面目に励むのがアコだ。それにサクヤが居るからな。大丈夫...な筈だ」

 

 私が言わんとする事を察したマコトは遠い目を浮かべつつそう返す。―――護衛兼、条約締結に向けての協議に携わった者として"風紀委員会"からヒナと委員会内の精鋭一個分隊相当が随行している。

 先述の通り、アコは"風紀委員会"行政官(次席責任者)として『ゲヘナ』に残って然るべきであり、()()()に備えた予備部隊をサクヤと共に預けている。

 ヒナに随行出来ない事に対し、()()()()()()憤激して反対したものの、ヒナがピシャリとアコに留守を任せる()()を出した上で信頼の意思を伝えた事で、アコは()()()溜飲を下げた。

 今頃はサクヤやイオリ、チナツ達はアコのグチグチとした不満に付き合いながら私達の()()を待っている事だろう。

 

『――こちらヒナ。もうすぐトリニティ側検問に着く。対応に備えて』

「了解よ。――いよいよね」

「あぁ、いよいよ現地入りだな。会場である『通功の古聖堂』は修繕中の現場しか見れていない。"カイザーコンストラクション"が主導して手掛けたという修繕の結果、『トリニティ』側の()()()()が楽しみだな、キキッ」

「えぇ、そうね」

 

 先頭車両に乗り組んでいるヒナからの報告に答え、マコトの言葉に頷きながら、検問ゲートと施設が近付く景色を窓から眺める―――

 

―――皆、()()()()()()()に付き合ってくれてありがとう。

―――では、作戦準備を始めましょう。

 


~『アビドス』校舎 "廃校対策委員会"部室~

side-モコウ

 

『クロノス"報道部"の川流です!――"先生"!遂にエデン条約調印式典を迎えますが、何かご感想、ご意見等はありますでしょうか?!』

『"私自身は条約締結に直接の関わりはありません。ですが、長く歴史として積み上げてきた対立を止め、お互い歩み寄ろうとする姿勢、意志を示したゲヘナ、トリニティ両校の生徒達の努力に心から敬意を表します。このキヴォトスで連邦捜査部顧問に就いて日が浅い身である私としては、この式典が成功に終わることを、この条約がゲヘナ、トリニティ両校の関係深化の足掛かりとなることを切に願うばかりです"』

『おぉ、なるほど...!ご回答ありがとうございました!』

 

―――委員会の部室に据えたテレビが『エデン条約』調印式典の中継を映していて、画面では現地入りした『シャーレ』の"先生"が『クロノス』や他メディアの記者連中大勢に囲まれ、大量のマイクやレコーダーを突き付けられ、カメラのフラッシュが焚かれる中でいつもの柔和な雰囲気で『クロノス』のリポーターからのインタビューに応える姿が映っている。

 普段と違ってワイシャツには青いネクタイを締め、その上には『シャーレ』ロゴをあつらえた腕章をはめた、"連邦生徒会"のそれによく似た白い軍服みたいなロングコートを羽織っていて、これから調印式典に参加するのだと見て取れる。

 

「"先生"すごいね~。あんなに囲まれちゃって...」

「大変そうだな"先生"も。キヴォトスに来た時期的には『エデン条約』には殆ど関わってないだろうに意見を求められるなんてな。主役の連中がまだ会場入りしてないからだろうが...」

 

 ユメの呑気な言葉にそう返す。―――中継が始まってからあまり時間は経っていないが、主役である『トリニティ』の"ティーパーティー"、『ゲヘナ』の"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"はまだ会場である『通功の古聖堂』なる場所には到着していない。先に到着したのが今画面の主役になっている"先生"で、『クロノス』とかのメディア連中はネタを求めて"先生"に集っている。

 

「『クロノス』の定点ライブ映像もすごいですね~。古聖堂は"ティーパーティー"や"正義実現委員会"の方々が沢山集まっていて準備も仕上げみたいですよ♪」

 

 ノノミがこちらに向けたスマホの映像を見れば、『通功の古聖堂』と広場を収めた定点カメラのライブ映像が映っていて、ノノミが言った通り"ティーパーティー"やら"正義実現委員会"やらが聖堂を出入りしていたり、広場にバリケードや柵を設置して、既に来ている観衆の誘導や整理も進めている様子が見える。

 

―――ガラッ...

 

「――おう、戻ってきたか。巡回お疲れさん」

「皆おかえり~」

「三人共、おかえりなさい。今麦茶を淹れますね~‪☆」

「お疲れ様です!」

「お疲れさん、先輩達」

「お疲れ様、皆」

 

―――部室の引き戸が開き、学区内の巡回に出ていたセリカ、ネイト、ナレコの三人が入って来て、ノノミが立ち上がって部屋の隅の流し台の隣に据えた冷蔵庫に向かう。

 

「部室にはモコウ先輩とユメ先輩、ノノミ先輩だけ?」

「あぁ。シロコはまだツーリングから戻ってない。ホシノは隣の部屋で昼寝。アヤネは屋上でアンテナの整備中だ」

 

 各々空いた椅子に座り、セリカの問にそう答える。

 

「シロコ先輩、どこまで走りに行ってるんかね...っと、テレビは『エデン条約』調印式典の中継か」

「あら、映ってるのは"先生"ね」

 

『"○○新報"です!つい先日ここトリニティでクーデターが起きていますが、はたしてこのエデン条約に何かしら影響が起きるでしょうか?!』

『"...クーデターとエデン条約には何の関わりもなく、条約締結は必ず行うと、トリニティ、"ティーパーティー"から発表があった筈です。

 私からその件について言えることは何もありませんし――先程申し上げた通り、生徒達が条約締結を推し進めると決めた以上はそれを応援するだけです"』

 

―――ネイトとナレコの言葉を受けてテレビを見れば、何処かのメディアの記者が"先生"にそんな質問をぶつけ、"先生"が()()眉を顰めてそう返答する様子を映している。

 

「...一瞬だったけど、"先生"ムッとしてた?」

「あぁ、それっぽく見えたな。クーデター...確か、"ティーパーティー"の首長(ホスト)が首謀者だったってヤツか。...どうしてその件で"先生"、『シャーレ』の意見が必要なんだ?」

「...依頼で『トリニティ』に暫く滞在してたらしいし、"ティーパーティー"が()()()()()()()()()()情報に繋がるネタを掘り出したかったんだろう。それにしたって言い回しが直球だ。"先生"じゃなくとも不機嫌になるさ」

「はい、どうぞ~♪..."先生"も大変ですね~。あの方からすれば純粋に条約締結をお祝いしたいでしょうし、それに水を差すような、式典と無関係な質問は嫌ですよね」

 

 ノノミがお盆に私とユメの分も加えた麦茶のグラスを乗せて戻って来て、私達の前に並べながらテレビを見て眉をひそめる。

 

『しかし、完全な無関係とは言えないでしょう!クーデター勃発のタイミングは明らかに条約締結に関わっているように見えました。"先生"、シャーレが鎮圧の応援に加わったという情報もあります!ならば何かしら目撃されていたのでは?!』

『"鎮圧の応援に加わったことは事実ですが、あくまで"正義実現委員会"からの依頼に応えただけであり、それ以上申し上げられる情報はありません。――そろそろ会場に行かなければなりませんので、これ以上調()()()()()()()()質問がないようでしたらここで失礼します"』

『あ、待ってください!まだ聞きたいことが――』

『質疑応答は終了です!道を開けてください!』

『ほら前を開けろ!』

『はいはい今はもう終わりだよ!散った散った!』

『み、道を開けてください...!』

 

 尚も食い下がる記者の質問にそう答えて"先生"が質疑応答を一方的に切り上げ、記者連中の食い付きをミヤコ達"RABBIT小隊"が抑え込んで道を作り、"先生"はその道を歩いてすり抜けて行き、その背中が追いかけようとする記者連中、連中を止めに入る"正義実現委員会"の群れの向こうに消える。

 

「おぉ、上手いこと逃げたな。ミヤコ達が大変そうだが...っと、『クロノス』のカメラが――」

 

『――こちら風巻です!こちらの映像が見えますでしょうか?!ゲヘナ、トリニティ両校の兵員輸送車が広場に入りました!ご覧下さい!両校生徒会の儀仗兵が次々整列しています!いよいよ準備も大詰めです!』

 

―――中継カメラが切り替わり、古聖堂正面を収めた緩やかで広い階段前を映す視点へ変わる。

 "先生"にインタビューしていた褐色肌のリポーターとは違う、『クロノス』の眼鏡を掛けたリポーターがそう囃し立てる先では、『トリニティ』校章を誂えた旗、『ゲヘナ』校章を誂えた旗を何本も掲げた"ティーパーティー"、"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"の連中がそれぞれ整列する様子が映し出されている。

 

「おぉ、すげぇ絵面だな...今までケンカしてた連中が向き合って並んでるぜ」

「どっちも凄い数ね...」

 

『――こちら川流です!たった今、"連邦生徒会"の専用車が古聖堂前に到着しました!...あ、"連邦生徒会長"です!本式典来賓であるシャーレの"先生"が出迎えています!』

 

―――再びカメラが切り替わり、古聖堂右手の広場の一角。移動したらしいさっきの褐色肌のリポーターが興奮した様に囃し立てる先で"連邦生徒会"の紋章を誂えた白いリムジンのドアが開き、『SRT』の部隊なのであろう、狐耳の武装した生徒四人が先行して降りて整列する。

 数秒して直立不動となり、"連邦生徒会"特有の白い軍服みたいな制服を纏った、パーマ掛かった長い金髪に"連邦生徒会"の制帽を被った生徒―――現"連邦生徒会長"『八雲(ユカリ)』が姿を現した瞬間四人が敬礼し、(ユカリ)会長がそれを一瞥して軽く答礼して歩き出し、その先で同じくミヤコ達の敬礼に送られながら歩み寄った"先生"と微笑み合って握手を交わし、何か言葉も交わす様子が映る。

 

「"連邦生徒会長"も会場入りか。後は主役連中だが――」

 

―――ガラッ...

 

「ふわぁ~...お、セリカちゃん達も戻ってたんだねぇ。お疲れ様~」

「おぅ、起きたか。お疲れさん、ホシノ」

「おはよ~ホシノちゃん」

「お疲れ様です、ホシノ先輩!」

「お疲れさん、先輩」

「お疲れ様、先輩」

 

―――また引き戸が開いて欠伸をしながらホシノが入って来て、眠そうに目を擦りながら空いていた椅子に座る。

 

「あ~、そういえば『エデン条約』の調印式典って今日だったっけか。『トリニティ』と『ゲヘナ』の娘がズラッと並んで対面してるし、"先生"もめかしこんで凄いねぇ」

「ずっと対立してた『トリニティ』と『ゲヘナ』が握手する...すごいことだよね~」

 

 テレビを見て中継内容を察したホシノの言葉にユメが頷く。『トリニティ』と『ゲヘナ』の協調―――報道された条約内容は両校間での治安維持協力が主だが、それだけでも今まで考えられなかった事だ。ここ『アビドス』の苦境を助けてくれた連中だし、それが協調するなら凄い事だが―――

 

「『トリニティ』と『ゲヘナ』の協調なんて歴史的偉業を、直接じゃないがこの目で見れるなんてな...このまま式典が終わればいいが」

「...モコウ、何か気になってるの?」

「あくまで私の勘だけどな。数日前に起きたクーデター。鎮圧されたとは報道されてたが...それで終わりじゃない気がする」

 

 首を傾げるユメの言葉にそう答え、テレビを見る―――

 

 

『――えー、たった今情報が入りました!両校主賓が待機所を出発したそうです!間もなく調印式典が始まります!』

「――()()()()()予感がするんだ」

 

―――挨拶を終えて古聖堂の正面玄関前に並ぶ"先生"、"連邦生徒会長"達を背景にした褐色肌のリポーターがそう宣言する様子を見ながら言ちる。

 

 


~聖堂街近郊 廃礼拝堂~

side-シンキ

 

「――こちらです、シンキ様。ここは既に"アリウススクワッド"が確保しています」

「ありがとう、ユメコちゃん。っと...」

 

―――ユメコちゃんが『カタコンベ』の出入口を開き、彼女と私を護衛する娘達に続いて石段を登って地上に出る。暗所から日向に出たことで視界が一瞬白飛びする。瞳孔が順応すると、()()()()()()()廃墟と化した礼拝堂と、青空が見える。

 

()()()()...何時振りかしら。()()()もこんな空だったわね」

 

―――『おめでとう。遂に()()()()が実現したわね。私は離れてしまうけど、何かあったら――――』

―――『何故...!私達の()()は認めたでしょう?!貴女は一体何を考えているの...?!』

 

「――"母さん"、こっちだ」

「シンキ様、行きましょう」

「...!えぇ、分かったわ」

 

―――脳裏にフラッシュバックした()()()()()を思い返していると、私を出迎えに来ていたらしいサオリとユメコちゃんが声を掛けて来て我に返り、二人について行く。嘗ては扉があったであろうアーチを潜って礼拝堂の外に出る。

 

「――あの一際大きな建物が『通功の古聖堂』。調印式典の会場だ。どうやら、式典がもうすぐ始まるようだ」

「...外観が新しい。ルイズが言っていた通り、修繕していたのね...」

 

 サオリが貸してくれた双眼鏡で、彼女が指差した先に聳える聖堂―――『通功の古聖堂』を眺める。礼拝堂は少し高い丘に建っているおかげで聖堂周りの広場も見下ろす事が出来る。『トリニティ』、『ゲヘナ』の校章を誂えた旗が何本も掲げられていて、()()()の様に煌びやかに賑わっている。

 

「――シンキ様、各部隊の配置は完了しております。ご命令があればすぐにでも行動を開始します」

「分かったわ。――二人共、作戦は把握しているわね?」

「はい」

「あぁ。何度も確認したからな。()達もそれぞれ動ける筈だ」

 

 ユメコちゃんの言葉に頷き、確認すれば二人揃って頷く。

 

「結構。...式典の様子を見れる手段はある?」

「――これを。ルイズから借りたものだ」

 

 サオリが差し出した片手で持てる薄い長方形の板――スマホと呼ばれている情報端末だ――を受け取る。画面には『通功の古聖堂』を映した映像が映っていて、『トリニティ』、『ゲヘナ』の生徒達が大勢整列している。

 

「...もうすぐみたいね。――各部隊に通達。行動準備、合図があるまで待機」

「了解いたしました。――各隊、戦闘用意」

「了解した。――私も受け持った部隊の所に戻る」

 

 画面を見ながら指示を出し、ユメコちゃんが通信機で指示を出し、サオリがそう言って丘を足早に降りていく背中を見送る。

 

「...いよいよね。もう、後戻りはできない。...『ゲヘナ』の子達を巻き込んでしまうのは申し訳ないけれど...()()()()()の。全ては――」

 

 

 

 

「――()()()()()()()()()を正すために」

 

―――to be continued―――

 

 




ということで、調印式典が始まります。
感想、評価、お気に入り、栞、ここすきは大歓迎です。作者が喜びでわっぴ~します。
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