Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~   作:八坂 義景

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状況はより混乱していく...


File120.ET-25~調印式典④~

~『岡崎研究室』 談話室~

side-アリス(Alice)

 

ガチャン...!

 

「――アリス(Alice)?」

「せ、先輩?どうしたんだ?」

 

―――手元に置いていたコーヒーのマグカップが倒れる音、ナルミとチユリの声が聞こえたけど、それでもテレビに映った()()()()()()()()から目を離せない。

 

『た、大変です!アリウスなる勢力の指導者らしき人物、魔創シンキさんが倒れました!その隙にトリニティ、ゲヘナ、"連邦生徒会"、"シャーレ"の要人達が脱出していきます!』

 

―――聖堂内から離脱しようとライブ映像の画面端に消えていく要人達。そして、演台の傍で倒れた人物、『魔創シンキ』を囲む『アリウス』の娘達。カメラがちょうどズームアップされ、被弾した左肩を抑えて痛みを堪える様な表情を浮かべている『魔創シンキ』の姿を映す。

 

「...なんで...どうして...」

「――アリス(Alice)?聞こえてる?」

「先輩、どうしたんだ一体?!」

 

―――聖園ミカが起こしたクーデターが失敗し、『アリウス』がどう動くか分からず不安がずっと胸中に渦巻いていた。まさか『エデン条約』調印式典の最中を()()襲うとは思わなかった。そして、それ以上に―――『アリウス』を纏め、私達に多くを教えてくれた『魔創シンキ』"校長"が()()姿()()()()なんて予想だにしていなかった。

 様々な物事に()()関わり、私達に代わって危険な事にも臨む姿は頼もしくもあり、それ以上に不安だった。私達が自分で出来ると主張すればその意思を受け入れてくれるけど、それでもかなり危険な事に臨む時は必ずと言っていいほどに()()()()()()()()()()

―――その不安がついさっき、()()()()()的中してしまった。

 

「――()()ができたわ。ミーティングには参加できないのはごめんなさい...!」

「えっ、あ、アリス(Alice)?!」

「ちょ、まっ、本当にどうしたんだ先輩?!」

 

 バッグを掴み、[シャンハイ]、[ホウライ]を連れて談話室を足早に出て廊下を走り出す。

 

―――急がなければ。安否が心配だし、何より―――()()()()()()()が幾つもある。例え『アリウス』の皆の()()で混乱状態であろうと―――

 

 

 

「いきなりどうしたのかしら、アリス(Alice)...」

「反応的に調印式典で何かあるっぽいが...お?"教授"から『モモトーク』が――」

 

 

~『岡崎研究室』 玄関ホール~

 

「...何を慌てているのよアリス(Alice)。そもそも『トリニティ』に向かう()()()()()じゃない。電車でも、タクシーでも間に合わないし、そもそも...それを使っても『トリニティ』に入れるのか――」

 

 

「――"セミナー"の三番ヘリポート。エレンが準備して待ってるわ」

「――?!"教授"...!」

 

―――玄関ホールに至り、気が動転していて気付いていなかった事に気付いて足を止める。

 どうしたものかと考えている思考をそんな言葉が遮り、ハッと顔を上げると―――玄関ホールの柱に背を預けた"教授"の姿を見付ける。用事があって研究室には居なかった筈だけど、いつの間に戻って来ていたらしい。

 

「――詮索はしない。急いでるんでしょう?さっさと行きなさい。返答は貰ってないけど、"先生"に貴女が合流することは伝えているわ」

「――ありがとう、"教授"。そうさせてもらうわ」

 

 "教授"はそう言ってフッと笑う。"教授"として持つ権限を盾にした()()()()に振り回される事は度々あるけど、今回はそのお陰で助かった。調印式典の来賓として『トリニティ』に向かった"先生"に代わって『シャーレ』顧問の仕事を代行している事も大きい。"教授"に謝意を伝え、玄関の外に―――

 

「――おっと、一言忘れてたわ」

「...?」

 

―――背後から呼び止められ、足を止めて振り向く。

 

 

 

 

「――()()()()()()()()()()()()()。私の勘だけど、今『トリニティ』で起きていることは()()()()()()()()()()と思う。だから――()()()()()()()()()()()()()()()()

「――ありがとう。そうするわ」

 

 "教授"の言葉に謝意を返し、玄関の外に出て"セミナー"のヘリポートに足を向ける。歩いて五分も掛からない位置だ。このまま走って行けばより速く着く。

 

 

 

 

「...もしかしたら、()()()になるかもしれないわね。――待ってて、"()()()"。どうか無事で...!」

 

 ライブ映像で見た"()()()"の苦しそうな表情を思い返し、歩みを走りへと変えてヘリポートを目指す―――

 


~『大聖堂』~

side-"先生"

 

―――重苦しい沈黙が支配する空間に、外で行われている迎撃戦闘の銃声や爆発音が時々響く。イクに介抱されている、大きなショックを受けた様に顔色が悪いナギサ。その隣で平静な表情を浮かべる反面、尻尾をもどかしそうに揺らしているセイア。

 私から見て向かい側で、長椅子を退けて作ったスペースに広げた『トリニティ』自治区全体の地図を見下ろすマコトとイブキ。

 私の右側で同様に地図を見下ろす(ユカリ)と"FOX小隊"。その向かい側、左側に立つ"シスターフッド"のリーダーであるサクラコと、ついさっき戻って来たサリエル。

 そして、私の周りにはミヤコ達"RABBIT小隊"と、『クロノス』の新聞記者から『シャーレ』部員に立場を切り替えてこの場に合流したアヤとハタテ。

 

―――以上がこの臨時本部に居る主要人物だ。状況の共有と、これから私達が取るべき対策を話し合う。

 

「"――状況を整理しよう。まずは"正義実現委員会"から自治区内の状況を"」

 

―――臨時の本部として借りた"シスターフッド"本拠『大聖堂』内。地図を見下ろしながら音頭を取り、まずはホログラム姿のメグムに発言を促す。

 

『では、自治区内警備を受け持つ"正義実現委員会"を代表して報告させてもらう。――式典開始時点から、アリウスと思われる武装集団が自治区内各所で同時多発で警備部隊を襲撃する事態が散発している。

 敵武装集団の襲撃は一撃離脱を徹底。追いかければカタコンベの出入口を利用して身を隠し、別の出入口から姿を現して別部隊を襲撃。――この神出鬼没さ故に今現在、通功の古聖堂で起きている事態には自治区内の警備戦力を回すことは難しい』

「"トリニティ自警団"とやらも回せないのか?貴様ら"正義実現委員会"と比べて()()()()()()()がない柔軟性がある治安維持組織だろう」

『自警団も手一杯だ。...敵は我々が未発見のカタコンベ出入口も利用しているようでな。位置は確認、目撃次第マークしているが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。故に、敵部隊を見付けるか、襲撃を受けた都度迎撃するしかない。――一部隊でも抜けば()()()()()を受ける可能性が高まる』

「成程...敵の出現、離脱地点がバラバラで、未発見の地点もある以上は広範に部隊を散らして警戒するしかないか」

 

 メグムの報告に対してマコトが疑問を挙げると彼女はそう理由を挙げ、マコトは眉を顰めて納得した様に頷く。

 

「――では、次は『通功の古聖堂』で起きた事態とその影響だな。式典中、原本への調印を執り行う寸前で、演台の目の前に開口部が生じた。恐らくアレも『カタコンベ』の出入口とやらだったのだろうな。

 そして催涙ガスによる奇襲での会場制圧。『アリウス』なる学校の"校長"だという『魔創シンキ』なる大人が姿を現し、あの声明を発表した。――しかし、その最中に彼女は()()()()()()を受けた。それによる混乱の隙を突き、こうして『大聖堂』に集まって我々は今を迎えている訳だ」

「――そして、今現在の『通功の古聖堂』は『アリウス』によって占拠されているような状態だ。我々の離脱を優先して殿を務めた"正義実現委員会"ツルギ委員長、『ゲヘナ』"風紀委員会"の空崎委員長指揮の下、"ティーパーティー"、"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"の儀仗兵や広場の警備に当たっていた者達が反撃を企図して攻撃しているが...『アリウス』側の迎撃も激しい。会場内を中継していた『クロノス』のも離脱してしまって、中の状況が分からないのが悔やまれるね」

 

 続いてマコトとセイアが『通功の古聖堂』で起きた事態の再確認と現状の説明を行い、セイアが残念そうに目を伏せる。

―――聖堂内から避難した『クロノス』の娘達は広場の近くにある建物を借りて広場の様子を中継していて、私が『シッテムの箱』から展開している仮想画面に映したライブ映像では『トリニティ』、『ゲヘナ』両校の部隊が古聖堂を囲んで銃火を交えている様子が確認出来る。

 包囲している部隊の後方では指揮を執っているハスミや、レミリア達"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"幹部の姿も時々見える。

 

「――加えて、会場で起きた()()()()を受けてけから敵――『アリウス』の者達の攻撃は激化している様だ。かく言う私も大聖堂(ここ)に戻る道中で出会して交戦して来た」

「少し遅れたと言っていましたが、そのようなことが...シスターサリエルがご無事でよかったです」

「こちらこそ、()()()()()()()()()()()()()()()があってな。一時的とは言え留守を離れたのは申し訳なかった」

 

 二人に続いてサリエルが補足する様に状況の変化と自身が見舞われた事態を説明し、サクラコが安心した表情を浮かべる。対してサリエルはサクラコにそう謝罪する。

 

「――さて、状況の再確認はできた。...時間が惜しい。本題に移ろうか」

「"――自治区内各所での襲撃。古聖堂での攻防。どこを見ても膠着状態。これを如何に打破するか..."」

 

 セイアの言葉に頷き、地図を見下ろして唸る。―――『シッテムの箱』、アロナをフルに働かせて治安維持組織、『アリウス』の動向をリアルタイムでトレースしているけど、先述の通り何処も膠着状態だ。

 自治区各所で神出鬼没に姿を現して攻撃を仕掛けてはすぐに離脱して身を隠す『アリウス』の小規模部隊と、警戒で動きが鈍い"正義実現委員会"の部隊。

 『通功の古聖堂』を包囲しているものの、包囲の輪や聖堂内の動きに変化が見られない様子。

 これらを如何に変えるか。単純だけど効果的なのは―――

 

「セイア様、ご報告が...」>

「...内密か。聞こう」>

 

「"――更なる戦力。人手がまず必要だね。今は神出鬼没な『アリウス』の小規模部隊の迎撃と、古聖堂の包囲維持で精一杯だ。特に、『トリニティ』の戦力は()()()()も同然。となれば『ゲヘナ』から増援を派遣してもらうしかないけれど..."」

「――現状、それは厳しいだろう。私の命で自衛と観衆の避難誘導に留めさせている"ティーパーティー"内からは()()()()()()()()()()()の声まで出ているようだ。...この期に及んでプライドが優先される思考が出てくるとはね」

『――先程報告を受けたが、自治区境界で待機しているゲヘナの部隊の存在を不安視している声がポツポツと挙がっている。今の混乱に乗じてゲヘナが攻め込む――ゲヘナも巻き込まれた被害者であるし荒唐無稽だが、そう疑るのも突然の状況だ』

 

 私の言葉に対し、ツカサから耳打ちで報告を受けていたセイアがそう返して眉を顰め、次いでメグムもそんな報告を挙げる。

―――『トリニティ』が持つ、『ゲヘナ』に対する感情。これが『ゲヘナ』からの増援を阻んでいる。

 メグムが言及した、自治区境界付近に待機しているという『ゲヘナ』の部隊はアコとサクヤが預かっていて、()()()に備えて動員しているとマコト、レミリアから聞いている。

 私としてもこの部隊を動かしたいし、アコからすればヒナ(敬愛する上司)の苦境を今すぐにでも助けるべく『トリニティ』に突入したいだろう。だけど――『アリウス』の迎撃で精一杯な状況で背後から『ゲヘナ』の部隊が自治区に入ってきたら?『ゲヘナ』に対する感情により、事態解決の為だと謳っても素直には信じられないだろう。

 

「...マコト先輩、イブキ達は『トリニティ』の人達を手伝えないの?イブキ、ただ見てるだけなんて...」

「――私だって協力したいさ。だが...条約調印の寸前で『アリウス』に介入されたのが痛いな。『エデン条約』を締結したという()()があれば、理由付けとして使えるんだが...」

 

 イブキが不安そうな表情でそう尋ねると、マコトはもどかしそうに頭を掻きながら答え―――

 

 

「――()()()()()()()()()()()()()()。それがあればよろしいのですね?」

「...あぁ。一番効果的なのはあの調印用原本だが、今の状況では奪還も厳しい。他に何が――」

 

 

 

 

「――()()()()()()()()()()()なり、()()()()()()()()()()()なりはありますでしょう?議事と、その内容に対する回答、意見...史上初めての試みでもあり、『トリニティ』、"ティーパーティー"の皆様も事細かに残している筈では?」

「"――文書を掲示して、セイアとマコトがそれに合意したことを示すことで条約の成立とする訳か。手順を踏んだ締結ではないけど、それでも条約を締結した事実として示せる"」

 

―――(ユカリ)の言葉に、私を含めた誰もがハッとした表情を浮かべる。条約調印を示す文書はあの原本だ。だけど、それ以前に条約内容については両校の合意を得ている。それを再確認して締結したとアピールする。そして、締結された『エデン条約』を発効して『ゲヘナ』の部隊を動かす。

 

「――強引な締結は後ろ指を差されるだろうが、今は緊急事態だ。...羽沼"議長"、君は今も条約締結は諦めていないと見ていいね?」

「...『アリウス』の声明に思う所はある。だが、あの声明の内容が真実だったとしても――それは貴様ら()()()()()()()()()だ。『ゲヘナ』としては無関係だし、我々としては条約締結を成せればいい。――だが、この事態の解決は『トリニティ』と『ゲヘナ』の協調のアピールにもなる。エデン条約機構(E.T.O)の組織編成模索の一助にもなるだろう」

「成程...君の意思はよく分かった。私もあの声明には思う所はあるが、『トリニティ』独力での解決は現実的ではないことは事実だ。――『ゲヘナ』が協力してくれるというなら、条約締結を諦めていないと言うならばその意思に応えよう。ナギサ、君はどうかな?」

「...え...?何かありましたか、セイアさん?」

 

 マコトの返答に頷いたセイアがナギサに目を向けると、これまで会話に加わらず俯いていたナギサが顔を上げて戸惑った様な表情を浮かべる。

 

「"ホストリーダー"としての権限で決定できるが、君の意思を確認しておきたい。ナギサ、君は『エデン条約』を今も締結したいと思っているかい?」

「...私は...私には決められません。『アリウス』の声明は、荒唐無稽とは思えません。学校でも、桐藤家でも教わらなかった『トリニティ』の過去...あのような不誠実な行いをしていた身で、条約締結を進めるなど――」

 

 

「――ナギサ様。無礼を承知で申し上げます。確かに『アリウス』の者達が語ったことは我が『トリニティ』にとって驚くべきことです。ですが――今現在、『アリウス』は『トリニティ』を脅かす脅威です。今はその脅威を除くことこそが、我々がなすべきことではないでしょうか」

「イクさん...ですが、それでは『アリウス』との対立を深めることになります。『トリニティ』のせいで追いやられたというなら、その遺恨を更に深めることに...」

 

―――ナギサの傍に付いていたイクが真剣な表情で意見を挙げ、ナギサは驚いた表情を浮かべるけどすぐに暗い表情に戻って懸念を挙げる。

 

「『アリウス』が我が『トリニティ』の被害者であったのか否か。それを確かめることは今現在の脅威の排除を成した後でも可能でしょう。

 私個人の推測になりますが――『アリウス』の襲撃は単なる憎しみ、復讐を目的としたものではないように見受けました。それならばあのような声明を、『トリニティ』が隠してきた歴史を明かして糾弾し、その一方で襲撃について謝罪する言葉など挙げないでしょう。

 何者かの狙撃によって声明は中断されてしまい、今現在の事態を考えれば再開は現実的ではない。――ならば、過激な殲滅ではなく、彼女達が利用している『カタコンベ』へ追い込むことが最適かと愚考します。追撃、尾行を仕掛け、『アリウス』が本当に実在しているならば――彼女達の自治区に辿り着ける筈です。その為にも――」

「――まずは条約を利用して『ゲヘナ』と協力し、襲撃を鎮圧する。...立て続けにあのような事態が起きて混乱していました。今は目の前で起きている事態の解決が優先ですね」

 

 イクの言葉を静かに聞いていたナギサの表情から影が消えていき、決意する様に目を伏せる。

 

「――分かりました。事態解決の為、必ずや『エデン条約』を締結しましょう。『ゲヘナ』と協力し、『アリウス』の勢力を撃退します」

「...君の決意に敬意を。イク、ありがとう。よく説得してくれた」

「ナギサ様のお心に届いたようで安心しました。――我が"総長"、テンシ様もきっと同様のことをしたでしょうから」

 

 数秒してナギサは目を開いて決意を示し、セイアは頷いて瞳を細めてイクに謝意を伝える。対するイクも微笑みながらそう答える。

 

「――決まったようだな。さて、どう動く?議事録なり、条約内容の記録なりを今から『ゲヘナ』より取り寄せるのは時間が掛かるし、そもそも『ゲヘナ』の人間が更に『トリニティ』に入ろうとするのは更なる刺激になりかねない。

 "連邦生徒会"も、態々議事録や条約内容の記録(余計なもの)を持ち込んではいまい。となれば、ここ『トリニティ』、"ティーパーティー"の施設から見つけるしかない訳だが」

 

 ナギサの意思を確認したマコトが頷き、条約締結をアピール出来る文書をどうやって探すかと問う。

 

「――"ティーパーティー"が管理する文書類は会館敷地内にある大書庫で保管、管理している。このツカサという者はそこの管理も兼務している。会館にさえ辿り着ければ、使えるものは見付かる筈だ」

「『エデン条約』関係ならば、最新の文書類ですからすぐに見付かるでしょう」

 

 すぐにセイアがそう意見を挙げて隣に立つツカサに目を向けると、彼女は補足する様にそう答える。

 

「"――私達『シャーレ』も支援するよ。『ゲヘナ』、『トリニティ』の協力で事態解決を目指せるならそれに超したことはない。こちらにはアヤとハタテが居る。急場しのぎになるけど、スマホのライブ配信でも条約締結のアピールになる筈だ"」

「――キヴォトス最速たる我が『文々。新聞』に加えて、『花果子念報』の記者の緊急配信。情報ソースが複数あれば信憑性は高まります。ハタテ、行けるわね?」

「勿論よ!スマホ配信なら、プロとは言えないけどそれなりにやれる自信はあるわ!」

 

 私も『シャーレ』として支援すると宣言し、アヤとハタテも頷く。

 

「――勿論、私達"RABBIT小隊"も『シャーレ』として作戦を支援します」

「――我が"連邦生徒会"も支援を出しましょう。"FOX小隊"は直衛戦力なので、周辺警戒兼遊撃である"Кролик小隊"を合流させます」

「...!」

 

 次いでミヤコ達も作戦支援を宣言すると、(ユカリ)が"Кролик小隊"の合流を宣言し、それを聞いたミヤコは驚きを抑える様に居住まいを正す。

 

「人手は十分だな。――まず、私と百合園"ホストリーダー"、それから"連邦生徒会長"も必要だな。『アリウス』が我々の動きをどう見て、どう対応するか不透明だ。できる限りの精鋭を揃えよう」

「――"ソーサーナイツ"は活動可能です。...唯一、我が"総長"の動向は不明ですが」

「"そう言えば、古聖堂からの避難中に()()()()()離れていたね。連絡は何もないのかい?"」

「はい。――勘が鋭いあの方のことです。あのタイミングで、単身でも動かなければならない何らかの事態を予感し、動いたと思われますが...」

 


―――時を少し遡る―――

~会館敷地内 特別監獄~

side-ミカ

 

「...まさか直接襲撃してくるなんて...シンキ先生()()()()()。これが、私のクーデターが失敗した時の()()()()なの...?」

 

―――外で激しくなりつつある雨音を背中で聞きながら、スマホの画面に映した『クロノス』のライブ映像を食い入るように見つめる。古聖堂から追い出されて包囲している部隊と、聖堂内から銃火を浴びせるサオリ達『アリウス』の銃撃戦を見ながら、今も尚胸中に渦巻く戸惑いからそんな言葉を零す。

 

―――『...ねぇ、シンキ先生。もしも、私のクーデターが失敗したらどうするつもりなの?勿論、成功させる為に私も頑張るけどさ。万が一があるよね』

―――『勿論、その時に備えて()()()()は講じておくわ。まだ詳細は詰めていないから話せないけど...万が一貴女が失敗しても、私達だけでも対応できるようにするつもりよ』

 

―――『アリウス』自治区でシンキ先生と対面した時に、あの人はそう言っていた。結局次善の策がどんなものか尋ねる前にクーデターを起こせるチャンスが生まれ、決行して失敗してしまってその機会は得られなかった。だからこそ、こんな方法を取った事に驚きを隠せない。しかも―――

 

「でも、まさか撃たれるなんて...やっぱり、『カタコンベ』に侵入していた娘達の勢力はどうしても『アリウス』を妨害したいんだ。シンキ先生の声明は『アリウス』で私が聞いたことと同じ。本当に、トリニティ(この学校)は――」

 

 

ガチャン...>

「...!」

 

―――突然、面会室側の扉が荒く開かれる音が聞こえてハッと顔を上げて鉄格子の向こうを見る。そこには、"ティーパーティー"の娘達が、パテル分派(元身内)の娘達だけではなく、影響力が小さかったり、没落した分派の娘達が居た。皆一様に憎む様な表情を浮かべている。

 

「...いきなり押しかけて来てどうしたの?私なんかに構うより、今外で起きている事態の解決に向かった方がいいんじゃない?」

「今起きている事態の解決の為に貴女に会う必要があったのよ、()()()()()()()

「...言っておくけど、式典を襲ったことについては私は無関係だよ?」

 

 前に立っている娘が、今は没落した分派の首長(ホスト)だった娘が私の言葉にそう返す。罵倒にズキリと胸が痛むけど、平静を装って先んじてそう釘を刺す。

 

「白々しく嘘を...!貴女しかありえないのよ!貴女が手引きしなければ、あんなに計画的に襲撃できる筈がない!」

「そうよ!下賎な魔女め...!」

「原因は貴女しかありえないのよ、魔女!」

 

 私の言葉を真っ向から否定する様に彼女はそう理由――というには短絡的過ぎる、言いがかりみたいな言葉――を返し、後ろの娘達も口々に私を糾弾する。

 

「...目立たないけど、曲がりなりにも"ティーパーティー"、学校運営を預かる組織の娘にしては短絡的過ぎない?私は見ての通り囚われの身。クーデターが失敗してから、『アリウス』とは何も接触できてないんだよ?その状態で手引きなんてできる訳ないじゃん」

「まだ嘘を吐くの?!クーデター前にでもそう決めたのでしょう?!接触すれば、貴女が襲撃に協力しているとバレるのだから!私の目は誤魔化せないわ!」

 

 全く変わらない、僅かな状況証拠から決め付けた短絡的な主張に呆れる一方で、私が起こした行動の影響の大きさを実感して胸がズキリと痛む。

―――今の"パテル分派"には私の後を引き継げるだけの人材が居ない。実力至上主義の組織風土故に、私の後任はすぐに決められない。そんな身内争いで"ティーパーティー"内の派閥争いに構う暇は無くなり、それが三大分派としての主導権の喪失に繋がるのは当然だ。

 後ろにチラホラ見えるパテル分派(元身内)の娘達は、三大分派としての権力を喪失した原因への恨みを晴らす為、目の前の娘達は()()()()()()()()の為に私――()()()()()()()()()()()罪人の()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()事が目的だとは私でも察せられる。

 

―――パテル分派(身内)に向けて碌に根回しもせず、私自身が『アリウス』を救いたいと思った、それだけで単身行動を起こした結果がこれだ。

 ナギちゃんやセイアちゃんは『条約締結を成してから詳しく調べる』と言ってこうして収監に留めているけど、クーデターが失敗した翌日にでも裁くべきだったと今も思っている。アリウス(学外)の、武装集団の無断、秘密裏の誘致に加え、トリニティ(学校)ティーパーティー(生徒会)へのクーデター(反抗)―――その事実だけでも、退()()()()()()()()()なのだから。

 

「...(短絡的過ぎる主張は呆れちゃうけど、そもそもこんな状況になったのは私のせい。パテル分派(身内)の為にも、何より...ナギちゃん達の負担を減らす為にも、私は...)貴女達の言いたいことは分かったよ。...そんな頑なに、私が『アリウス』の襲撃を手引きしたって言いたいなら、その主張を――」

 

 

 

 

「――断じて認められないわ。そんな()()()()()()()()()()()()

「「「「...?!」」」」

「...て、テンちゃん...?!」

 

―――面会室に響く凛とした聞き馴染みがある声。その声が聞こえた出入口に目を向けると、開け放った扉に背を預けて腕を組んでいるテンちゃんの姿があった。

 

「...ひ、比那名居総長が何故ここに。会場で護衛に付いていた筈では?」

「――『アリウス』の襲撃だと分かった時点で、ミカにも脅威が及ぶと思ってね。ナギサ達の護衛は充分な戦力が集まっていたし、こっちに来たのよ。...私の懸念は的中したみたいね」

 

 テンちゃんはそう答えて扉から離れ、ケープを揺らして面会室に入って来て―――()()()()()()間に割って入る。

 

「...魔女に脅威が及ぶ?寧ろ逆ではなくて?あの襲撃は明らかに――」

「――詳細な状況把握も途中で、短絡的な決めつけでミカが原因だと断じ、勝手に断罪しようとする。今この場にそれ以外の脅威があるかしら?」

「...比那名居総長は魔女の肩を持つと?」

 

 テンちゃんの反論を受け、彼女はテンちゃんの意見を察して眉を顰める。

 

「――ミカがクーデターを起こしたことは覆しようがないわ。それは裁かれるべきこと。だけど...ただそれだけで断じることはできない。『アリウス』が声明で明かしたことが事実だったなら、それも加味すべきよ。『アリウス』のことは――ミカを裁くだけで終わりではない」

「...どうせ幼馴染の親友を守りたいのが本音でしょう?『アリウス』についても調べるべきなんて宣うのは、時間稼ぎが目的。早急に裁くべき罪を、個人的感情で何かと理由を付けて先延ばしにする。――"総長"、騎士の長の立場が泣くでしょう」

 

 テンちゃんの言葉に対して尚も引かず、寧ろ蔑む様に反論して罵倒をも加える。だけど、テンちゃんは何処吹く風と言わんばかりに平然とした表情で見つめる。

 

「本音と言うなら、貴女だってミカを早く裁けと催促するのは()便()でしょう?――貴女からすれば、没落した自分の分派の復権のチャンスでしょうから。

 既に貴女以外は他分派に移ったと言うのに、嘗てはそれなりに大きな権勢を振るっていた過去にしがみついて、力がない故に他者を蹴落とすことでしか自分のプライドを保てない」

「っ...お前に何が分かる!"サンクトゥス"の()()()に!百合園家に偶然拾われただけの、歴史も浅い外様の家に!由緒ある名家を背負う私の責務が分かるものか!

「...っ...それはちょっと聞き捨て――」

 

 

 

「――えぇ。貴女の責務、貴女の個人的感情なんて知らない。でも、貴女が今は辛うじて存続している、嘗て名家だった家の出身で、復権の為に()()()()()()()()()()()()()まで取っていることは知っているわ」

 

―――テンちゃんへの罵倒に我慢できずに割って入ろうとした瞬間、テンちゃんはそう宣言する。そこまで知っている事が予想外だったのか、彼女は硬直してテンちゃんを見つめる。対するテンちゃんは『だけど――』と言葉を続ける。

 

「――貴女がミカに対してやろうとしていることは、その責務すら無に帰す行いよ。これまでの行動は、嘗ての家名の大きさに免じてなあなあで済まされてきたことを自覚していないみたいね。

――個人的感情を抜きにすれば、裁定が下っていない状況を糾弾し、催促するだけならそれは当然の不満だから許容できる。でも...不確定、不確実な証拠を持ち込んだとしても、そもそも――勝手に断罪を図るのは()()()()()()()よ。

 余罪、責任の有無、犯した罪に関わる状況、経緯を調べ上げ、査問会で罪状を確定し、刑罰を決定する。――貴女の行動はその前に介入して不当な罰を与える()()にあたるわ。最悪、"ティーパーティー"にすら居られなくなるでしょうね。後ろの貴女達も、このまま彼女に与同するつもりなら、私刑の幇助で詰められて権威は確実に落ちるわよ」

 

 テンちゃんの淡々とした、だけど強烈な脅しを受けて先頭の娘の瞳と肩がワナワナと震え、後ろの娘達が怖気付いた様にヒソヒソ話を始める。

 

「だったらお前を口封じしてやれば――」

 

 

―――ボッ...!

 

「――()()()()()よ。今すぐ監獄から退去し、"ティーパーティー"として今現在起きている事態の解決に合流しなさい。『トリニティ』を預かる生徒会としての責務を果たすなら、この場の出来事はなかったことにするわ。それでも尚、ミカを害そうというなら――」

 

 

 

 

「黙れぇぇぇ!!」

「テンちゃん?!」

 

―――[緋想の剣]の柄を持って焔の刃を伸ばしたテンちゃんの通告に対し、先頭の娘は激昂してライフルを構えて至近距離で銃口をテンちゃんに突き付け―――

 

 

フッ...

「がっ...」

 

―――一瞬だった。私には辛うじて見えた[緋想の剣]の剣閃が先頭の娘の首を突き、彼女は白目を向いて倒れて気絶する(ヘイローが消える)

 

「...貴女達はどうするのかしら?」

「っ...い、今しかないのよ...!復権の為なら手を汚したって...!」

「この狭い場所で多対一...!数の差で...!」

 

ジャキ...

 

「...退きましょう」>

「えぇ。流石にテンシ様相手では勝ち目がない...」>

 

 だけど、後ろの娘達は顔を青ざめさせながらもライフルを構える。その中で、パテル分派(元身内)の娘達はコソコソと面会室から出て行く姿が見える。曲がりなりにも三大分派の所属。不利を悟って退いたみたいだ。

 

「...残念ね。首魁が倒れたら退くことを期待していたのだけど。...そう簡単に得られない巻き返し、復権のチャンスとなればなりふり構わなくなりもするか」

 

 その反応を見てテンちゃんは残念そうに息を小さく吐く。―――クーデターを起こした時も、そして今もそうだ。沢山の交友関係を持っているテンちゃんが、単身になってまで私の為に行動する。クーデターを止める為に。断罪されようとしている私を守る為に。どうしてそこまで出来るのだろうか。

 

「...テンちゃん...どうして?その娘達の主張は確かに短絡的だけど...クーデターを起こした私は早く裁かれるべきなんだよ?調査が必要なのは分かる。でも...どうしてそこまでして私を守ろうとするの?」

「えぇ、確かにクーデターについては裁かないといけないわ。その事実は幼馴染の親友であっても覆せない。でも――」

 

 

 

 

「――でっち上げられた罪で断罪されようとしているのを見過ごすなんて、幼馴染の親友失格でしょ?」

 

 テンちゃんは真っ赤な瞳をチラリと私に向け、すぐに視線を正面に戻す。私の目の前で揺れる白いケープと、晴れ空みたいな青い長髪は見慣れている筈なのに、不思議と頼もしく感じられた。

 

 

―――to be continued―――

 

 




ということで、反撃のチャンスが見えてきました。果たしてどうなるのか?!

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