Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~   作:八坂 義景

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 新盆とか色々忙しくて更新遅れました。
 ゲヘナ編が思っていたよりとんでもないので初投稿です。三年生組が組むとは思ってたよ。実は仕込まれていた洗脳でそっちに走るなんて誰が予想できるよ?しかも各人の思想やアイデンティティを曲げずにあれだから雷帝の遺産の恐ろしさが分かる()
 キョウコが身内でも周囲でも地雷を思いっ切り踏んでて草生えない。案の定ぶん殴られたし。これだからある種の思想家は面倒なんだ...しかもキヴォトスの何処かに雷帝シンパの組織『嵐』が居るらしいから、この子はここ所属のか...それはそれとして姿勢を一貫させる悪役は好きよ。
 そしてイブキの過去よ...散々某掲示板で刷られたネタを公式から供給するなんて草生えない()雷帝も胡散臭い丁寧語で、真っ当なカスで良かった

さて、反撃前の作戦とか諸々です


File126.ET-31~アリウスへの道③~

~合宿所 教室~

side-アヤ

 

「"――皆、集まったね"」

 

―――"補習授業部"が利用していた合宿所の教室。上座の"先生"が音頭を取って私達を見回す。

 

 『シャーレ』からは私、ハタテ、"RABBIT小隊"が。

 『トリニティ』からは元"補習授業部"の皆さんが。

 『ミレニアム』からはアリス(Alice)さんが。

 『アビドス』からは"覆面水着団"こと"廃校対策委員会"――"ファウスト"ことヒフミさんからの依頼で救援に来たものの、"先生"からの改めての依頼で『シャーレ』指揮下に加わっている――の皆さんが。

 そして『アリウス』、"アリウススクワッド"の四人。

 

―――『アリウス』に対する反撃を企図し、『トリニティ』と協力しての作戦に向けた協議が始まる。

 

「"まず、先日"ティーパーティー"との情報共有、収集で得られた『アリウス』について説明する。――アロナ、纏めた情報を投影して"」

『了解です!』

 

 "先生"の指示を受けて『シッテムの箱』からホログラムが投影される。『アリウス分校』という表題の下、様々な情報が羅列され、私含め全員が見上げる。

 

「"――『古書館』に収蔵されていた古文書により、『アリウス分校』はここ『トリニティ』内にて確かに一学校として存在していたことが確認された。

 残っていた情報からの推測だけど、『トリニティ』成立前の構成校間の紛争を、『アリウス』も行っていたようだ"」

「...アリウス(故郷)が昔はこんなに過激だったなんて、初めて知ったわ」

「...自分の学校の歴史を知らなかったのか?」

「少なくとも、私達が生まれるずっと前から『アリウス』は内戦が続いていたから。その日を生き抜くことで精一杯で、記録を残す暇なんてなかったんだ。..."お母さん"を手伝って史料を集めていたけど、殆どが焚書で喪失しちゃったから。今も私達は『アリウス』の歴史をあまり知らないの」

 

 アリス(Alice)さんの言葉に怪訝そうに首を傾げるモコウさんの問に対してアツコさんがそう答えて目を伏せる。―――『ベアトリーチェ』なる人物が意図してそう言った記録、文献を消去した以前に、『アリウス』では記録を残す暇も余裕も無かった。それ故にアツコさん達にとっても驚くべき情報ばかりの様だ。

 

「"そして――『トリニティ』成立の機運が高まった()()()()についても、確実ではないものの一人の人物の存在が明らかになった。『トリニティ』の校史では初代"ホストリーダー"『桐藤イスラ』が統合を提唱したとされているけど、単に彼女一人が統合に向けた活動を始めた訳ではないことが判明した"」

「...どういうことです?初代"ホストリーダー"の所属校である『フィリウス神学校』と、『聖パテル学院』、『サンクトゥス神学校』の代表が現"ティーパーティー"の原義であるお茶会を通して現構成校との和解、統合を進めて今の『トリニティ総合学園』として成立させたと、()()()()()()()()()()()()()()()校史では説明されていますが」

 

 "先生"の言葉に疑問を挙げると、"先生"は答えずにホログラムに触れて一枚の画像をズームする。そこには―――

 

 


〇〇〇年‪‪✕‬月△日

 今日も我が『フィリウス』の生徒会長たるイスラ様は、『アリウス』のシンキ校長とテラスで二人きりで話し込まれていた。私は今日の側役としてテラスに居合わせた為、会話は聞こえていた。我が『フィリウス』含め、長らく争ってきた諸校と和解し、一つの学校として統合する。今まで争ってきた者同士で手を組むなど、はたして実現できるのだろうか――――


 

「...おい、シンキ校長って、式典を襲撃した『アリウス』の...」

「その筈だけど...この文書が本物だとしても...」

「いやいや...これじゃああの人()()()()()()()()()()人間ってことになるじゃん?!」

「――"先生"、これは確度の高い情報なのよね?」

 

 内容から察せられる驚くべき情報に対し、ハタテが確認するように"先生"に尋ねる。

 

「"古書館では、『トリニティ』成立前の年代の文書、書物も保存、修復復元されて所蔵されている。間違いなくこれらの文書は、その当時書かれた本物だ。

 この文書は内容から察せられると思うけど、現"フィリウス分派"の前身である、『フィリウス神学校』生徒会所属生徒の日記の一部だ"」

 

 "先生"の返答を受け、"アリウススクワッド"の皆さんも驚きを隠さず文書を見上げている。

 

「...まさか、"母さん"がそれ程昔に存在していたとはな。だが、何故数百年前にこうして記録が残っているんだ?」

「...私達もそれなりに頑丈な自負はあるけど、それでも数百年なんて生きられる訳がない」

「ど、どういうことなんですか?!"お母さん"が数百年前に生きていたなんて私達も知りません!だったら、あの時私達を救ってくれた"お母さん"は一体――」

 

 

「――冬眠...()()()()なら、説明は付くかもしれないわ」

 

―――アリス(Alice)さんが推測を挙げると場が鎮まり、私含め全員が彼女に注目する。

 

「サオリ、"お母さん"が私達の前に姿を現した時のことで、ユメコ姉さんから聞いたこと、覚えてる?」

「あぁ、覚えている。――『ベアトリーチェ』の命令で、バシリカの更に奥にあった隠し部屋にあった()()()()()()()の中に"母さん"は安置されていて、それを破損させたことで目覚めた、だったか」

 

 アリス(Alice)さんがサオリさんに尋ねると彼女は淀むことなく答える。―――事情聴取の後に『アリウス』とシンキ校長の関係について聞いた時にも言っていたことだったけど、あの時はある種の表現、比喩の類だとあまり気にしていなかった。

 これをアリス(Alice)さんが確認したという事は―――

 

「その通りよ。――その、"お母さん"が居た()()()()()()()が、ある種の()()()()()()の可能性があると思うの」

「冬眠って...熊とかの獣が冬を越す為に、洞窟とかで長期間眠るってヤツだよな。それを人為的に、人間に対してできるのか?」

「『ミレニアム』では、人工冬眠の()()()()()()()()()わ。尤も、現行技術では安定した冬眠維持が五日程、頑張って伸ばして一ヶ月程度が精一杯と試算が出ているけれど」

 

 アリス(Alice)さんはモコウさんの問に対してそう答えて人工冬眠についてそう説明し、『でも』と続ける。

 

「――人智を超えた過去の遺物、"オーパーツ"なら?ユメコ姉さんが言っていた()()()()()()()が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()性能を有していたなら、数百年の時を経て"お母さん"が私達の前に姿を現したことに理由が付くわ」

「"オーパーツ"...『アリウス』にそのような代物があるんですか?」

 

 アリス(Alice)さんの『ミレニアム』生らしい推測に対し、"アリウススクワッド"の四人に尋ねる。

 

「...私達も詳しくは知らない。"母さん"がどうやって姿を現したのかは、アリス(Alice)が説明した通りだ。だが、()()()()()()()については私達も知らないんだ。バシリカの奥は元々『ベアトリーチェ』に封鎖されていたし、"母さん"が来てからも、復興が最優先で調査は殆ど出来ていないんだ」

「...やっぱり、『アリウス』に戻らないとね。"お母さん"と『トリニティ』の関わりについても、ちゃんと確かめないと」

「...古文書の中だと、このシンキとかいう人物は『トリニティ 』成立に向けた動きに名前がよく出てるな」

 

 モコウさんがホログラムを幾つか指し示して傾向を挙げる。

 

「内容は異なりますが、何れも共通してシンキ校長の()()()()()()()()()()()()()()ようにも見えます。『争いを止め、一つの学校として統一する』...この考えは、桐藤"初代ホストリーダー"を切っ掛けとして、この方からより広まっているように見えます」

 

 アヤネさんの推測を受けて古文書を見れば、確かに『魔創シンキ』の名前は現『トリニティ』構成校の前身校の生徒会、それに類する組織に所属する人間の日記や議事録に多く出ている。

 

「う~ん...しかしこれでは、何故『トリニティ』を攻撃するに至ったのかは分かりませんね~。これだけを見れば、『トリニティ』成立に向けて精力的に活動していたようにしか見えません」

「ん、質問。――『トリニティ』成立直後とか、少し後の時期の古文書はないの?」

 

 ノノミさんが悩ましげな表情で疑問を挙げ、それに続いてシロコさんが挙手して質問を挙げる。

 

「"私達が『古書館』を訪ねた時点では、その時期に著された文書は見付からなかった。

 "図書委員会"の娘達も他に見付からないか、改めて探してみると約束してくれたけど...そもそも、『アリウス』に関する情報は勿論、名前すらも()()()()()()みたいなんだ。

 『古書館』は"ティーパーティー"の手をも逃れた文書や本も多く所蔵しているにも関わらずね。『アリウス』についてだけは本当に乏しいようだ"」

「僅かでも残っているだけ、こちらとしてはありがたいですが...それでも『アリウス』と『トリニティ』の関係が益々分からなくなりますね。

 少なくとも、『トリニティ』成立に向けた動き、機運の加速には『アリウス』の人間が関わっていたと分かりますが...それが、何故今、『トリニティ』を襲撃することに繋がるのか」

 

 "先生"の答えに対してミヤコさんが悩ましげに眉を顰める。―――"古書館の魔術師"を擁する"図書委員会"、『古書館』を以てしても核心に至る情報を得られない。となれば、推測から可能性を模索するしかない。

 

「ふむ...では、式典襲撃時にシンキ校長が挙げたあの声明を、仮に真実だとしましょう。

 あの声明も途中で終わってしまいましたが、そこまでの内容を要約すれば――『アリウスはトリニティへの統合に加わらず、独立を維持することを認められていたというのに、成立したばかりのトリニティから攻撃を受けた』ということです」

 

 私の言葉に誰もが耳を傾ける中、推測を続ける。

 

「また、事実として、『トリニティ』成立前のバラバラだった時代の『アリウス』はかなり攻撃的だった。その在り方を変えたのは、このシンキ校長でほぼ間違いないでしょう。

 『トリニティ』を構成している、かつて独立していた諸校の文書に名前が出ているくらいですから、営業よろしく直接訪ねていたのでしょう」

「本当に"お母さん"らしいね。"お母さん"は、必要なら積極的に自分で動く人だから。今の『アリウス』でも、警戒する娘を説得する為に直接話し合いを求めて前に立つ位だし」

 

 私の推測にアツコさんが頷いてシンキ校長の人となりについてそう補足する。

 

「ありがとうございます、アツコさん。――それだけ積極的に、献身的に『トリニティ』統合の機運を広め、『トリニティ』は成立した訳ですが、何故その立役者と、所属していた『アリウス』が攻撃されたのか。...もう一つ、あの声明で糾弾されていた、『今もアリウスがトリニティから攻撃されている』こと。恐らくこの理由が明らかになれば、『トリニティ』成立時に何が起きたのか分かると思うんですがねぇ。推測は一つあるんですが」

「"ふむ...アヤ、その推測を教えてくれるかい?"」

 

 "先生"に促され、"アリウススクワッド"、アズサさん、アリス(Alice)さんに目を向ける。

 

「今の『アリウス』が『トリニティ』の人間から攻撃され、『カタコンベ』で迎撃を繰り返していたことは、我々『シャーレ』での事情聴取でも裏付けを取っています。

 何故『アリウス』が攻撃されているのか――まず、動機は不明なれど、『トリニティ』は『アリウス』を攻撃した。しかし、それは()()()()()()()()()()()()()()()()()。これは――『トリニティ』、或いは()()()()()()にとって()()()()()()()()()だと思われます」

「"...不都合?"」

「そう。――『トリニティ』の()()()()()()()()校史では、『アリウス』の()()()()()()()()()()()()()。『古書館』の奥を探して、漸くごく少数の断片的情報が出てくる位です。

――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。皆さんの中にも経験がある方が居るのでは?」

 

 私の言葉に場が沈黙する。その中でホシノさんはモコウさんとユメさん(先輩二人)に見られて顔を背けている。

―――この世の中は正直に生きていられる程甘くはない。素を晒す事は、時として()()()()()()()からだ。

 だから真実を、事実を隠し、自らを強く、何事もないように振る舞うことで身を守ろうとする。

 しかし、真実の隠匿は得てして長続きしないものだ。思わぬ要素、要因で看破され、とんでもない事態に発展する事もある。

 

「――『トリニティ』成立後に『アリウス』を攻撃したものの、結果として失敗。その事実を、『トリニティ』のあらゆる記録から『アリウス』に関する情報を抹消することで隠そうとした。

 しかし――()()()()()()()()()()()()()()()のでしょう。いつから始まったのかは分かりませんが...()()()()()()()()()()()()を企図したのが、今の『アリウス』に対して行われた攻撃の正体だと思われます」

「...何それ。数百年前の『トリニティ』が失敗したツケを、私達が支払ってるみたいじゃん」

 

 推測を締め括ると、ミサキさんが眉を顰めて吐き捨てるように言ちる。

―――『アリウス』への攻撃とその失敗。『アリウス』も長く内戦状態にあったらしいけれど、それでも今まで存続している。その事実に対し、()()()()()()―――()()()()()()()という選択を取れなかった。

 確かに、今の『アリウス』から見れば、自分達は『トリニティ』に()()()()()()()()()()のに一方的に攻撃された形だ。

 

「...ますます、"母さん"に確認しなければな。"母さん"が『トリニティ』成立に関わった人物だと言うなら、数百年経った今『トリニティ』から攻撃を受けることになった原因を知っている筈だ」

「"...よし。次は、『アリウス』に辿り着ける道についてだ。『古書館』所蔵の文書の中に、『カタコンベ』に関する記録が一つ見付かった"」

 

 サオリさんの言葉を受けて"先生"が次に進む。説明に合わせてホログラムが別の文書に変わる。文章と絵図が記されたページで、文章には―――

 


 カタコンベは常に構造が変化する、広大で異質な地下構造だが、『ユスティナ聖徒会』の弛まぬ努力により、この構造変化の影響を受けない安定した経路が構築されている。

 この道を行きたいならば、ユスティナの紋章を辿れ。さすれば惑わされる事なく『アリウス』へ到るだろう。


 

「...安定した経路だと?私達でも見つけられなかったものだぞ」

「...でも、ユスティナ?のものかは分からないけど、私達も紋章みたいなものは何ヶ所かで見つけたことがあるね」

「ちょっと待て。『ユスティナ聖徒会』ってなんだ?字面的には宗教組織っぽいが」

 

 文書の内容を受けてサオリさん達が驚きの声をあげる中、モコウさんがそう尋ねる。

 

「――我々"シスターフッド"の前身にあたる組織です。"戒律の守護者"とも呼ばれ、学校間対立の原因でもあった、教義や祭礼のなどの宗教的観念の違いを仲裁し、調整し、根本的な信仰そのものを維持することを目的としていました」

「"シスターフッド"の前身...なるほど、『トリニティ』成立以前、学校間で対立しながらも、分裂せず今の『トリニティ』の枠内に緩く収まっていた所以、ということですね♡」

 

 キクリさんがスラリと『ユスティナ聖徒会』について説明すると、ハナコさんが成程と頷く。

――どうやら『百鬼夜行』における"陰陽部"に似た、『トリニティ』が成立する前から、宗教的に現構成校を緩く纏めていた組織であった様だ。

 

「『ユスティナ聖徒会』は、『トリニティ』成立に合わせて主流派として定義された教義を説き、広める為、再出発という形で再編成され、現在の"シスターフッド"となった...と、私のようなシスターは歴史として学んでおります。

――『アリウス』に関しては、少なくとも私は"シスターフッド"内では情報の一欠片も聞いたことがありません」

 

 キクリさんが『ユスティナ聖徒会』と"シスターフッド"の関係についてそう説明し、"シスターフッド"では『アリウス』について何も知らないと答える。

 

「"成程...少なくとも、"シスターフッド"()()()()()関わってないかもしれない、か"」

「..."先生"?」

 

 しかし、"先生"が何処か意味深な言葉を零し、キクリさんがそれを聞き留めて尋ねる。

 

「"...キクリ。これから話す情報は、()()()()()()()()()()()()()()かもしれない。それでも聞くかい?"」

「...聞きましょう。一介のシスターに過ぎない身ですが、我が"シスターフッド"が何かしら関わっているのであれば、無関係では居られませんから」

 

 "先生"の念押しの確認に怪訝そうに首を傾げ、キクリさんは頷く。

 

「"分かった。――実は、『古書館』で『アリウス』に関する情報を求めたのは()()()()()()()()()()()()んだ"」

「...ん?おい、それって――」

「ずっと前、式典前から、『アリウス』について()()()()()()何者かが居た、ということになりますね」

「"その通りだ。私達、"ティーパーティー"よりも前に『アリウス』について調べていたのは――――"」

 


~『大聖堂』 応接室~

sideーサクラコ

 

「――申し訳ございません、セイア様。大したおもてなしもできず...」

「いや、こちらこそ急に押しかける形になってすまない」

 

―――『大聖堂』内の応接室。時間が無い中シスターマリーが用意したティーセットを並べたテーブルを挟み、セイア様と相対する。私の傍にはシスターマリーが、セイア様の傍にはテンシ総長がそれぞれ控えている。

 本音を言えば、セイア様程の人物が訪ねられるならサリエルにそばに居て欲しかった。しかし彼女は()()を取っていて不在だ。

 

 家の伝統、私自身の意思で"シスターフッド"に加わった当初から、私は自分自身の()()()()()()()()()()()()振る舞いのせいでシスター達から畏怖されている。誰にでも優しく、親身に接しようとしているのに、他者からは()()()()()()()()()()()に見えてしまう。

―――私自身でも直そうとしているものの、今まで改善した試しが無いこの振る舞いをフォローしてくれているのが、他ならぬサリエル。私の幼馴染の親友。

 畏怖される私とは逆に、シスター達から()()()()()を集めており、彼女が私の意図や真意を補足してくれるおかげで、私の言葉や指示は()()()()()()()伝えられている。

 

 権謀術数渦巻く"ティーパーティー"のリーダーたる"ホストリーダー"を務められるだけの駆け引きや話術、政治力を持つセイア様も、私の()()()()()()()については把握されている。

―――問題は、この"ホストリーダー"から"シスターフッド"の長を務める私との()()()()()を求めて来た事だ。

 "シスターフッド"は()()()()()()()()()を設立当初から宣言し、その遵守と宗教組織としての説教や布教、教義探求に務めてきた。しかし、その裏では過去、()()()()()()()()等も何度か行われており、その情報が噂や工作で校内に広まっており、"秘密主義の怪しい組織"という印象を抱かれている。

 

 そんな組織の長が、ホストリーダー(学校の現生徒会長)と直接話し合うのだ。如何なる内容であろうと、()()()()()()()()()()として尾鰭が付いて広まってしまうだろう。

 こういった噂への対応も、サリエルが得意とする事だ。彼女のおかげで、噂による()()()()()()()()()()()()()()()()()の抑止が成されている。

 

―――閑話休題。

 

「――それで、私と直接お話されたい用件とはなんでしょうか?」

 

―――頼りにしている親友が居ないのは不安だ。しかし、怖気付いていては"シスターフッド"の長としてシスター達に示しが付かない。どんな内容であろうと、真摯に、誠実に応えなければ。

 

「...君にとっては寝耳に水の話になるかもしれないが、構わないかな?」

「この『トリニティ』の生徒会長たる"ホストリーダー"が、直接会談されたいと求められたのです。それに、そう言った話は懺悔で度々聞きますから」

「...分かった。君が大丈夫だと言うなら、信じよう。――"シスターフッド"のNo.2であり、君の親友でもあるサリエルは今、何処に居るかな?」

「......へ?――あ、も、申し訳ございません。――シスターサリエルは、本日より()()()()()()を取っており不在です」

 

―――念を押す様な確認に頷き、()()()()()表情を浮かべたセイア様の口から出た問に思わず拍子抜けして一瞬呆けてしまうが、すぐ我に返ってそう答える。

 

「...そうか。...タイミングが完璧過ぎる。やはり...

 

 しかし、私の返答を受け、セイア様は()()()()()何か呟く。生徒が休暇を取ることは別に珍しい事では無い。"シスターフッド"でも、シスターとしてでは無く、一生徒としてプライベートを過ごしたい者は居る。サリエルも頻度は少ないものの、()()()()()()()()()()()から、特段何も思わず休暇を認めた。セイア様は何が気になっているのだろうか。

 

「...もし、シスターサリエルに火急の用件がありましたら、私から連絡してみますが。休暇でプライベートの最中に呼び出すのは忍びありませんが...彼女ならすぐ、()()()()()()()()()でしょう」

「...随分と信用しているのだね、君は。優秀な側近として以上に、幼馴染の親友なら当然ではあるが。

――そんな君の、サリエルに対する信頼を()()ようで申し訳ないが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だろうね」

「...どういうことです?」

 

 私の提案に対してセイア様はそう返し、幼馴染の親友(サリエル)を悪く扱う物言いに思わず少しムッとして尋ねる。セイア様も、サリエルの献身や活躍は知っている筈だ。何故、その様な物言いをなさるのか―――

 

 

 

 

「――"ティーパーティー"での調査により、サリエルは『アリウス』に関する()()()()()である可能性が浮上した。もしかしたら――先日の『アリウス』による式典襲撃についても、()()()()()()()()()可能性もある」

「......え?」

「...そ、そんなまさか...!」

 

 セイア様の言葉がすぐには受け止められられず、傍のシスターマリーも信じられないと言わんばかりの言葉を零す。

 

「...サクラコ。サリエルは君に何か話していないのかい?『アリウス』そのものでなくとも、()()()()()()()()()()()()()()は無かったかい?」

「...そんなことは、一度も...有り得ません。サリエルにその様な素振りは一切...!偶に()()()()()()()()こともありましたが、単独作業は"シスターフッド"内でもよくあることですし...本当に、サリエルが...有り得ません...!」

 

 セイア様の問を受けて今までのやり取りを思い返すけど、そのような素振りは無かった様に思う。時々()()()()()()()()事もあったけれど、それもよくある事であり、サリエルを疑う要素には―――

 

「――その()()()()()()。具体的にはどんな作業をしていたの?」

「え?...ボランティアや懺悔の対応以外でなら、聖堂内の書庫に()()()()()()()()()事は、私と共に"シスターフッド"に入った当初から何度かありましたが...元より、サリエルは聖書の研究も行っています。書庫で過去の文献を探すことは自然なことだと思いますが...」

 

 テンシ総長の問にそう答えると、セイア様が耳をピクリと動かす。

 

「――サクラコ、その書庫を調べさせてくれるかい?勿論、私達の杞憂で終わればそれに越したことはないが...念の為にね」

「...わ、分かりました。それでサリエルに対する疑念が晴らせるかもしれないなら、協力致しましょう」

 

 セイア様の求めに応じ、席を立つ―――

 


~『大聖堂』 書庫~

sideーテンシ

 

「...ふむ...かなり古い本もあるが、聖書や関連文書の写本ばかりだね」

「――写本作業も、嘗ては"シスターフッド"の活動の一つでしたから。我が"シスターフッド"としても、過去の教義解釈や活動を把握する助けとなっております」

 

―――書庫に入り、古い書架に並ぶ古い装丁の本や、紙を紐で纏めた束などを見回し、()()()()()が無いかと探しながら奥を目指して歩きながらサクラコの言葉に耳を傾ける。

 

「特に、サリエルはこの書庫に古くから所蔵されていながら、整理されていなかった多くの文書の整理に貢献しております。おかけで、我々としても過去の記録を探しやすくなっています」

「...やはり、この書庫は専らサリエルが入り浸っていたのかな?」

「運搬や整理で他のシスターを呼ぶことはありますが、基本的には()()()作業することが多いですね。()()()()()()()()()()()()()()()()の一つでもありますから」

 

 セイアの問にサクラコはそう答える。―――趣味と実益を兼ねた作業だった様だけれど、()()()()()()()()()()()()()点が今は気になってしまう。

 監視カメラなど一切なく、窓も多いとは言えず、書架も天井に迫る高さのものばかりのこの書庫は()()()()()()()()()には実におあつらえ向きで―――

 

「...ん?」

「――テンシ、何か見付けたかい?」

 

―――ふと、書庫最奥、壁に据えられた書架の中に並ぶ本の中で()()()を見付けて足を止める。セイア達も気付いてこちらに戻って来る。

 

「これを見て。この本だけ、()()()()ように見えない?」

 

 書架で見付けた違和感―――『聖徒会とシスターフッドの繋がりについて』というタイトルの本が()()()()()()()()()()()()を示す。左右に並ぶ本の高さが違う為、パッと見では気付きにくい違和感だ。

 

「...確かに。よく見れば浮いているね。左右が高さが違う本だから、隠れていたのか」

 

 セイアの言葉に頷きながら本の上部に触れる。感触は普通に本のそれで―――

 

――ガコン...

 

―――力は大して掛けていないのに、()()()()()()()()()()感触と共に何かが動く音が聞こえる。

 

「...!」

「...ほう、こんな仕掛けが...」

「...こ、こんな仕掛けがあったなんて...サリエルは何も...!」

 

ズズズ...

 

 サクラコが愕然として顔を青ざめさせる中、書架の一部が()()()()()()動き、その先の部屋が見える。

 

「――隠し部屋ね、どう見ても」

「あぁ。...中にも棚があるね。本以外にも何かあるようだ」

 

 隠し扉が開き切り、私達は隠し部屋に入る。

―――隠し部屋はパッと見四畳程の広さで窓も無く、書庫からの灯りが部屋を少し照らしている。

 

「...あった、ランプだ。年季が入っているが...()()()使()()()()()()ようだ。オイルも充分ある」

 

 セイアがスマホを取り出して懐中電灯を起動して照らすと、天井から吊るされたランプを見付ける。

 

「マッチは...あぁ、あったね。これも()()使()()()()形跡がある。――テンシ、灯りを点けてくれるかい?」

「えぇ」

 

 セイアからマッチ箱を受け取り、ランプを操作して明かりを灯す。

 

「...本が色々とあるね。それに、これは...手紙か?」

 

 セイアが書架の向かい側に据えられたテーブルに置かれた手紙らしき紙を手に取る。その内容を読み始めた瞬間―――()()()()()()()表情に変わる。

 

「...せ、セイア様?」

「...サクラコ。どうやら()()()()()()()()()ようだ」

 

 不安そうな表情で声を掛けたサクラコに対し、セイアは紙をこちらに向ける―――

 

 

 

 


拝啓 トリニティ福音派首長 天城サリエル様

 

 先日私共に命ぜられたカタコンベ探索についてですが、先週までの探索の成果を報告致します。

 探索進捗は別添えの地図をご覧くださるようお願いいたします。変わらず牛歩ですが、着実にアリウスへ到る安定した道程は構築されつつあります。

 アリウス側の迎撃も変わらずありますが――――


 

「これは...」

「...そ、そんな...こんな派閥は知りません...!それに、『カタコンベ』、『アリウス』についてすら...サリエル...どうして――」

「さ、サクラコ様?!」

 

―――手紙の文頭に記された宛名と内容を見たサクラコの顔が更に青くなり、ヘイローが消えて(気絶して)倒れかけ、マリーが咄嗟に支える。

 

 

―――To be Continued―――

 

 




ということで、サリエルの裏の顔のカミングアウトです。
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