Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~   作:八坂 義景

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評価5件突破で色が着いたので初投稿です。
週一更新をどうにか保っている亀更新な作品ですが、感想、お気に入り、評価、ここすきは執筆の励みになるので大歓迎です。

さて対便利屋68戦、後編です。



File11-Ab.~襲撃、便利屋68②~

~大通り 防衛陣地~

side-ミヤコ

 

「ぐぁっ?!」

「一人やられた!」

「私が援護します。誰か彼女を後方へ!」

 

 私の右隣で銃撃していた一人が額に被弾して仰け反りながら倒れる。そう指示を出し、戦列の穴を埋める様に[RABBIT-31式短機関銃]で制圧射撃を行う。その後ろで後方へと運ばれていく気配を感じ取る。

 

「...弾切れ。リロードします!」

「了解だ、援護するぞ!」

 

 マガジンの弾が切れ、左隣で射撃を行っていたネイトさんがバリケードに身を隠した私に代わって制圧射撃を行う。手早くリロードし終え、再び射撃を再開し―――

 

ドォォォン!!

 

「...っ?!」

「な、何だ?!」

 

―――突如陣地右翼側、サキさん達が受け持つバリケードから爆発音が聞こえて来る。咄嗟にバリケードに身を隠して見やれば―――砂煙と爆煙の中でバリケードがボロボロに砕けていた。何度か傭兵達がグレネードを投げて来ていたけど、とうとう限界を迎えてしまった様だ。数人ほど衝撃で吹き飛ばされて気絶したのか、砂と煤に塗れて倒れて動いていない様子も見える。

 

ケホッ...こちら右翼側、"RABBIT2"!バリケードが破壊された!こっちはもう陣地として機能しないぞ!』

ひぃん、嘘ぉ?!ど、どうしたら...!』

「ユメ先輩、落ち着いてください。――"先生"、防衛陣地第一段の放棄、第二段への後退を提案します」

 

 インカムに届いたサキさんの報告を聞いて、大通りの指揮(前線の指揮は私、サキさん、セリカさんだけど)を執るユメ先輩が慌てた声をあげるけど落ち着かせ、"先生"にそう提案する。

 

こ、後退?!便利屋達(向こう)の攻撃は激しいけど、それでも防衛はできているじゃない!あいつらを学校に近付かせる訳には――』

「セリカさんも落ち着いてください。――歩兵の数だけでも此方は圧倒されているんです。遮蔽もない状況で相手取っては此方が先にやられます」

『"セリカ、落ち着いて。確かに便利屋達(向こう)が一段校舎に近付くことになるけど、大事なのは秩序を保って敵を防ぐことだ。その為の多段構築だからね。――ミヤコの提案を受け入れる。アヤ、お願い!"』

『了解です!――口を閉じていてくださいよ!』

 

 後退すると聞いてセリカさんが声をあげるけど、"先生"はそう窘めながら私の提案を受け入れ、アヤさんに指示を出す。数秒後―――

 

 

―――バサッ!

 

 

...ザァッ...!

 

 

―――アヤさんが()()()()()()()()()横切る様に一瞬で上空を飛び去り、視界を塞ぐ程に濃く激しい砂嵐が私達と便利屋達の間に発生する。

 

「――砂嵐の発生を確認。陣地第二段へ後退します!」

『"RABBIT2"了解!負傷者の搬送も忘れるなよ!』

「了解!お前ら行くぞ!手伝えるヤツは倒れた連中の搬送を手伝え!」

 

 私に続いてネイトさんが指示を出し、何人かが倒れた方々を担ぎながら第二段の陣地へ後退していく。

 

―――ヒュゥッ...

―――チュィン!

 

―――砂嵐の中から傭兵達の銃撃が飛んで来るけど、めくら撃ちの為か被弾する事無く第二段の陣地へと入る。

 

「――ほらミヤコ、弾薬よ。砂嵐が治まる前に補給しましょ」

「ありがとうございます、セリカさん」

 

 セリカさんが出迎えと同時に差し出した弾薬箱を受け取り、空、弾切れ寸前のマガジンに弾を込めていく。

 

「...さっきはごめん。ちょっと頭に血が上ってた。陣地が破壊されちゃったら、撃たれっぱなしになってもっと損害が大きくなるものね」

 

 弾を込めていると、セリカさんが申し訳無さそうに猫耳を垂らして謝ってくる。どうやら先程の私の提案に反対した事を気にしている様だ。

 

「――戦闘で興奮して冷静な判断ができなくなるのはよくあることです。先程も言いましたが、防衛戦で重要なのは()()()()()()()()です。陣地が機能しなくなればその秩序が失われる。それを避ける為に、この多段構築を採ったんです。流石に第四段まで後退させられたら不味いですが...」

「それに、"便利屋68"のメンバーが裏路地やアーケード街を通って奇襲と挟み撃ちを図っているって報告もあったわね。ホシノ先輩達なら大丈夫だと思うけど...」

「私達ができるのはホシノ先輩達を信じることだけです。私達は私達で、この大通りの防衛ラインをできる限り維持しなければ」

「そうね。――サキの部隊は結構負傷者が居るみたい。第二段は私が右翼を受け持つわ」

「分かりました。サキさんに伝えましょう」

 

 セリカさんの提案に頷き、インカムに触れる―――

 


~大通り左方 無人の住宅地 空テナントビル屋上~

side-ミユ

 

「――っ!」

 

 住宅街の中で唯一三階建ての空き家に立て籠もっている()()()()()()()()()()()が僅かに窓の隅に見え、狙い澄まして撃つ。―――しかし狙撃に気付いたのか素早く隠れ、外れてしまう。

 

「...やっぱり、勘が鋭い。どうにかカウンターは阻止できてるけど...」

 

 [RABBIT-39式小銃]のコッキングレバーを引いて装填し、立ち上がってビルに掛けて置いたラペリングロープで地上に降り、次のポイントに向かう。

 

―――()()()()()()()()()()()、"便利屋68"の"社長"『陸八魔アル』さんの迎撃を始めてからどれだけ経っただろうか。随伴させていた傭兵は練度が低かったのか、演習みたいに連続で撃破出来たけど―――彼女は今までで一番手が掛かる相手だと実感している。

 一発撃つ度に離脱し、別のポイントからの狙撃を繰り返し...未だに撃破できていない。ミヤコや"先生"からは『撃破は狙わなくていい』と言われているけど―――

 

「...弾は...もう五発(クリップ一個分)だけ。装填済も含めて九発...うぅ、厳しいなぁ」

 

―――歩きながら弾薬ポーチを開いて残弾を確認すると残り僅かで、このままアルさんを止め続けるなら補給しなければならないけど―――ここで補給を受ければ行動が目立って位置がバレるかもしれない。でも陣地に戻ってしまえばアルさんを進ませてしまう。

 

「厳しいけど...大通りの防衛が成功することを信じよう...!」

 

 弾切れより先に防衛が成功する―――それを信じると方針を決めて次のポイント―――看板がボロボロで嘗てはどんな店だったのか分からない、二階建ての大きな空き店舗の屋上に登って狙撃ポイントに伏せ、スコープを覗いて視界に入っている空き家の窓を監視する。

 

「......!」

 

―――何分待っただろうか。窓の一つにアルさんのコートらしきものが見え、すかさず撃つ。()()()()()()コートが倒れる様に窓から消えて―――

 

 

 

 

 

―――チュイン...!

 

 

 

―――ドォンッ!!

 

「ひゃあう...?!」

 

―――銃弾が私を掠めた感覚を感じて離脱しようとした瞬間、私の傍で爆発が起きて数メートル吹き飛ばされて転がる。

 

「...か、カウンター...?!」

 

 屋上が広いおかげで落ちる事は無く、混乱しつつも離脱しようと起き上がって―――

 

 

 

 

ッタァァン...!

 

「...うっ...」

 

―――銃弾が額に当たった衝撃で意識が飛ぶ寸前、空き家の屋根に立って銃を構える―――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()姿()が見えた。

 


~大通り右方 裏路地出口~

side-ノノミ

 

「逃がしませんよ~!」

 

 [リトルマシンガンV]を構え、相対する"便利屋68"の"室長"『浅黄ムツキ』ちゃんを逃がすまいと弾幕を張る。

 

「ムダムダ~!」

 

 しかしムツキちゃんは身軽に弾幕を避け、スカートの裏から地雷らしきものを三つ取り出し―――私に向かって投げて来る。

 

「おっと...!」

 

ドォォン!

ドォォン!

ドォォン!

 

 地雷に向けて弾幕を張り、被弾した地雷が三個一気に爆発して爆炎で視界が塞がる。

 

「...アヤさんの情報通り、地雷の直当てを狙ってきましたね~。銃撃戦ばかり意識していたら――」

 

 

 

―――ガギィ...!

 

「...う~ん、決まると思ったのに」

「視界を塞いで肉薄。地雷の直当てで吹き飛ばす狙いもあったのでしょうが...この位は見抜けますよ~」

 

―――爆炎を突っ切って銃のストックでの殴打を狙って来たムツキちゃんを[リトルマシンガンV]で受け止める。銃で鍔迫り合いをしながら残念そうな表情を浮かべるムツキちゃんにそう返す。

 

「...やっぱりアルちゃんの過小評価だったみたいだねぇ。これは油断禁物だね――こんな風に♪」

 

 悪戯っぽく笑うムツキちゃんが銃で隠れていた左手を出すと―――()()()()()()()()()()()()が現れ、そのまま手を広げて落とす。

 

「っ?!しま――」

 

―――ボフンッ...!

 

―――グレネードから白煙が吹き出し、私達を包み込む。ほぼ同時に、ムツキちゃんが離れたのか目の前から気配が消える。

 

けほっ...またスモークですか...!」

 

 煙幕の範囲から逃れようと後ろ―――路地の出口の方へと下がる。運良く少し強い風が吹き込んで来て煙幕を晴らすと―――やはりムツキちゃんの姿は無い。

 

「...逃げ...いえ、恐らく罠を仕込みましたね~。()()()()()()()為に......こちらノノミ。"先生"、手は空いていますか?」

 

 そう呟きながらインカムを起動し、"先生"に通信を繋ぐ。

 

『"ちょうど手が空いた所だよ。――ノノミ、どうしたの?"』

「現在『浅黄ムツキ』ちゃんと交戦中ですが、(わる~)いイタズラを仕込んで隠れてしまいまして。――可能であれば()()()()()()()()()()()んです☆」

『"了解、ちょっと待ってて......二十メートル前方の横道に潜伏してるみたいだ。あと、これは...()()()()()()が所々にあるね。室外機の影、ゴミ集積ボックスの下...死角になる所にあるみたいだ。今分かるのはこんな所かな?"』

「なるほど~、あの横道ですね☆情報ありがとうございます、"先生"」

『"どういたしまして。指揮は要るかな?"』

「いえ、大丈夫ですよ~。私より他の娘達を優先してください。――私は()()()()()()()を思い付いたので♣」

『"そっか...でも、手助けが必要になったら遠慮せず言うんだよ"』

「了解で~す☆」

 

 通信を切ってインカムから手を離す。

 

「――さ~て、お仕置きに行きますか♣」

 


~大通り左方 商店街裏手の路地~

side-ホシノ

 

「う、うわぁぁぁぁぁ!!」

 

っく...!

 

 またしても"便利屋68""平社員"の片割れ『伊草ハルカ』ちゃんが構えるショットガンから繰り出される、ポンプアクションとは思えない連射速度による散弾の弾幕を盾で受け止めるけど、衝撃は防ぎ切れず少しづつ後退り始める。

 

「ホシノ先輩...!」

「うわあ?!」

ひっ...ぐ、グレネード...!

 

 シロコちゃんがグレネードをおじさん越しに投げて放物線を描くのが見える。ハルカちゃんが気付いて突撃を止めて飛び退く様に伏せ、彼女の支援を行っているもう一人の"平社員"『依神シオン』ちゃんが青ざめた表情を浮かべて頭を抱えてその場にしゃがみ―――

 

―――コツンッ...!

ドォォン...

 

―――地面に落ちたグレネードは()()()、小石にぶつかって変な跳ね方をしてハルカちゃん達の後方に飛んで行って空中で炸裂する。

 

「...むぅ、やっぱり上手くいかない...!」

「うへぇ、こりゃ厄介だね~...全然有効打が出せないや」

 

 シロコちゃんは珍しく目立つ様に不満気に表情を顰め、おじさんも同意して頭を掻く。

 

―――"便利屋68"の"平社員"二人と戦い始めてから、未だに状況は膠着している。ハルカちゃんのタフネスを活かしたタンクを援護するにはシオンちゃんの射撃の腕は低く、戦闘力ではおじさんとシロコちゃんが勝っている筈だけど―――()()()()()()()()()が実力の差を補っている。さっきのグレネードの様に、いい所で()()が働いてチャンスを逃す...そんな場面を何度も見ている。

 

「...ホシノ先輩、どうする?」

「う~ん...前向きに考えればここで足止めできてるのはいいことだけど、普段通りの連携でも勝てないのはもどかしくもあるね~。...うへぇ...もしかして、この膠着状態も()()だったりするのかな~?」

「...考えれば考える程、どんなことも()()のせいだと思っちゃうね。――ホシノ先輩。撃破は一旦諦めて、ここを突破させないようにしよう」

「...そうだね。ここは突破の阻止に徹しようか~」

 

 ふとそんな事を考えてしまって思わず表情を顰めてしまうけど、シロコちゃんの提案に頷いて思考を振り払う。

 

「...シオンさん、大丈夫ですか?」

「な、何とか...」

 

 ちょうど二人も体勢を立て直した様だ。頷き合ってそれぞれ得物を構える。

 

「――さ~て、戦闘再開と行こっか~」

「――ん、今度こそは当てる」

 

 おじさんも盾と[Eye of Horus]を構え、シロコちゃんもドローンを従えて[WHITE FANG 465]を構える―――

 


~大通り右方 旧アーケード街~

side-モコウ

 

――おらッ!!

「っち...!」

 

 蹴りを繰り出すも、"便利屋68"の"会計士"ジョオンは背をのけ反らせて躱し、すかさず至近距離でハンドガンを撃って来る。数発頬や腕を掠るが―――()()()()()()()()()()()

 

「効かないな、その程度の弾じゃ!」

「ぐっ...?!」

 

 [不死鳥の羽]のストックでハンドガンを持つ腕を殴り付ける。取り落とさせるには至らなかったが、ジョオンは怯んで少し後退る。

 

っ...9mm弾(九パラ)とは言え、今度は神秘を込めてたってのに...!」

()()()()()()()が私の取り柄なんでな。こんな小さい弾の傷程度すぐ治っちまうよ」

 

 痺れているのか腕を擦りながら悔しそうに私を睨むが、自身の取り柄について簡単に説明してやる。

 

「本当、厄介ね...!――だったら()()()()()()()()()位デカい一撃をぶち込んでやる...!」

「やれるものなら、なッ!

 

 意気込むジョオンにそう返しながら蹴りを―――

 

 

 

―――ガシィッ!

――んなッ?!

「吹っ飛べッ!!」

 

―――ガッシャァァン!!

 

―――ジョオンは蹴りで伸びた私の足を左脇で掴み、一回転程振り回して傍の空き店舗に投げ飛ばす。まさかの攻撃に私は対応出来ず吹き飛ばされ、ショーウィンドウをぶち抜いて元は服屋だったらしい店内に転がる。

 

ッ...ぐぉ...まさか投げ――」

 

 

―――ガシィッ!

 

「ッ?!」

「ふんッ!!」

 

―――ゴッ...!

「がッ...?!」

 

―――起き上がろうとした瞬間、割れたショーウィンドウから店内に入って来たジョオンがすかさず私の胸倉を掴んで引き上げ、頭突きをして再び床に叩き付ける。神秘を込めていたのか、あまりに強烈な衝撃で意識が飛びかけて視界が白飛びする。

 

―――チャキ...!

 

―――眉間に冷たい何かが突き付けられる感覚を感じ、視界の白飛びが治まって来ると―――ジョオンは私に馬乗りになってハンドガンの銃口を眉間に当てているのが見える。

 

「あ‟~(いっだ)ぁ......流石に頭突きは効いたみたいね。傷は付かずとも中身に伝わる衝撃は強烈でしょ?これで――」

 


~大通り 防衛陣地第二段~

side-ミヤコ

 

―――ドォォォンッ!!

 

―――右翼側で爆発音が聞こえ、ハッと向けばバリケードを構成していた家具やトタン板が砕け散って吹き飛ばす様子が見える。

 

くっ!...こちらセリカ!バリケードがやられたわ!』

左翼側(こちら)のバリケードもそろそろ限界ですね...先生、第二段でこれ以上の戦列維持は厳しいかと思われます。――第三段への後退を提案します」

『"了解。――アヤ、またお願い!"』

『了解です!』

 

―――バサッ!

 

...ザァッ...!

 

―――再びアヤさんが風を起こして砂嵐を誘発させる。

 

「砂嵐の発生を確認、陣地第三段へ後退します!」

『了解!ほら、モタモタしてないで負傷者も運ぶ!』

 

 砂嵐の発生を確認し、負傷者を運びながら後退―――

 

 

―――バッ...!

 

「「「う、うぉぉぉ!!」」」

 

っ?!

なッ?!――っこの!!」

 

―――突然砂嵐を突き抜けて()()()()()()()()()()()()()()()()傭兵数人が銃を乱射しながら吶喊して来る。突然の事に驚きながらも、ネイトさんと共に迎撃する。

 

「がっ?!」

「ぎゃっ?!」

「ぐぇっ?!」

 

 傭兵達は私達の弾幕をもろに食らって次々倒れ―――

 

 

 

 

 

「「「「「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!」」」」」

 

 

―――追加された様にまた()()()()()()()()()()()()()()()()傭兵達が砂嵐から次々現れて吶喊して来る。

 

な、何なのコイツら?!まるで()()()()()()()みたいに――』

分析は後です!迎撃できるように兎に角第三段まで退きましょう!

『り、了解!ほら皆急いで!』

ひぃん?!なんかヤバい気がするよぉ!速く速く!』

 

 通信も混乱していて、負傷者も忘れず運びながらも皆さん慌てて第三段へと後退していく。

 

 

「「「「うぉぁぁぁぁ!!」」」」

「「「「「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!」」」」」

「「「「うぉぉぉ!!」」」」

 

 走りながら振り向けば―――次々傭兵達が声をあげながら砂嵐を突き抜けて銃を乱射しながら迫って来る様子が見える。

 

『こちら"RABBIT3"!何これどうなってんの?!なんかゾンビ映画みたいなことになってるよ!』

『こちら"RABBIT2"!皆速く陣地に来い!これじゃ機関銃も下手に撃てないぞ!』

「――っく...!"RABBIT1"、迎撃を開始します!」

 

 そんな通信を聞きながら第三段の左翼側バリケードの裏に飛び込み、すかさず射撃体勢を取って弾幕を張る。セリカさんやネイトさん達も次々陣地内に飛び込み、体制を整える間も無く各々射点に付いて迎撃を始める。

 

『"――皆、大丈夫?!こっちの映像でもとんでもない様子が見えてる。本当にゾンビみたいに群れを成して次々と..."』

「大丈夫、ではありませんね...!どんどん砂嵐を抜けて迫って来ています!」

 

 "先生"にそう答えながらも射撃の手は緩めない。ドラムマガジンの豊富な弾数を活かして弾幕を張り続ける。

 

「――弾切れ。リロードします!」

「よし、援護――」

 

 

―――ドサッ...

 

―――突然、ネイトさんが尻餅をつく。その目は()()()()()()()()()()()様に震えている。

 

「――ネイトさん、大丈夫ですか?」

「――ヤバい。傭兵共の後ろにヤバいのが居る...!

「後ろ...?」

 

 震えた声で答えたネイトさんの言葉を疑問に思いながらバリケードから顔を覗かせ―――

 

 

―――ゾワァッ...!

 

「――っ?!」

 

―――咄嗟に身を隠す。見たのは一瞬だけだった筈なのに、速い鼓動と身体の震えが止まらない。

 

「...見ちまったか?」

っ...は、はい...あれが、アヤさんが言っていた...」

 

―――『――彼女の持つ雰囲気か神秘かは分かりませんが、彼女と相対した者は恐怖で身体が動かなくなると言います――』

 

 脳裏に戦闘開始前の会議でアヤさんが私達に齎した情報を思い出す。

―――次々吶喊して来る傭兵達の後方でハンドガンを片手に砂嵐を背に立つ"便利屋68"の"課長"『鬼方カヨコ』さん。その顔を見た瞬間―――()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 戦闘前に"便利屋68"の皆さんが挨拶に来た時も無愛想な顔付きだったけど、さっき見たあの顔付きは正に情報通りだった。

 

「...分かりました。恐らくカヨコさんがあの顔付きで傭兵の皆さんをどんどん吶喊させているのだと思われます」

「そりゃヤバいが...今突撃させてアイツらに何のメリットが――」

 

――ピピッ!

『こちらノノミで~す☆ムツキちゃんはこちらで食い止めました~♪恐らく大通り(そちら)に合流すると思われますので私もそちらに合流しますよ~☆』

『こちらおじさんとシロコちゃん。"平社員"二人は撃退できたよ~。多分、大通り(そっち)に合流すると思うよ~』

『...こちらモコウ。ジョオンに手痛い一撃を食らわせたが...逃げられた。多分大通り(そっち)に向かった筈だ。...私は少し休んだらそっちに合流する』

『こちら"RABBIT2"!()()()()()()()()を食らってる!恐らく()()()()()()()()ぞ!"先生"は司令部の奥に避難させた!』

 

―――インカムに通信が次々入って来る。どうやらミユさんが相手取っていたアルさん以外は食い止める事が出来た様だ。

 

『――こちらセリカ、陣地右翼側!カヨコ以外の"便利屋メンバーも砂嵐を抜けて来て攻撃に加わってる!』

 

 セリカさんが入れて来た通信を聞いて前を伺えば―――傭兵達の後ろにアルさんを除いた"便利屋68"メンバー全員が援護射撃や指揮を行う姿が見えた。

 

「...なるほど、迂回しての奇襲が殆ど失敗したから数に任せたゴリ押しに転じたってワケ、か!」

「ぐわっ?!」

 

 ネイトさんが傭兵達の群れを成した吶喊の理由を悟りながら此方に迫っていた傭兵の一人を撃ち倒す。―――傭兵達の吶喊は止まらない。私達の弾幕で次々倒れているけど、少しづつ傭兵達が倒れる距離が縮まりつつある。

 

『"ミユの動きがないからまさかと思ったけど...不味い状況だね。アヤ、アルの相手はできるかい?"』

『正直厳しいですね。アルさんの狙撃技能であれば高速で飛ぶ私も撃ち落とせるでしょうし、私が得意なのは撹乱と所謂"回避盾"というものなので正面切っての戦闘は...』

『だが、何とかしないと不味いぞ!せめて後方からの狙撃だけでmおわッ?!

『さ、サキちゃん?!――私がタンクで狙撃を惹き付ける!サキちゃんは弾幕で前線の皆を援護してあげて!』

 

―――サキさんの言葉が狙撃音らしき銃声に遮られ、ユメ先輩が盾を構える音が背景で聞こえて来る。

 

『"――迂回に対応していた皆は急いで大通りに戻って救援を!ミヤコ達は陣地第三段を放棄!迎撃しつつ距離を取るんだ!アヤはミユの捜索と救助を!"』

『――うへ、了解だよ。皆、急ぐよ!』

『了解しました!できる限り急ぎます!』

「"RABBIT1"、了解しました!――皆さん、陣地第四段まで後退します!

『くっ...了解よ!距離が近いヤツは撃ち倒しながら下がって!ほら急ぐ!』

 

<「わわっ?!」

<「何転んでんだ!ほら行くぞ!」

<「ひっ...?!」

<「だ、大丈夫?!」

 

 "先生"の指示を受け、出来る限り広範囲に聞こえる様に声を張り上げ、迫る傭兵達を迎撃しながら後退を始める。何人かが慌てたり、()()()()()()()()()を見てしまったのか尻餅をつくけど、他の方々がそれを引っ張って後退していく。

 

「――う、うわぁぁぁぁぁ!!」

「「「ぎゃぁぁ?!」」」

 

―――しかし、傭兵達の吶喊の中にハルカさんのショットガンを高速で乱射しての突撃まで混ざり、数人が散弾の弾幕に捕まって倒れる。

 

「ぐぉっ?!」

「ぎゃっ?!」

「ぐぇっ?!」

 

―――それを皮切りに、傭兵達の吶喊と弾幕に捕まって倒れる方々も出始める。

 

「くっ...!段々と被害が...!」

「ヤベェぞミヤコ!このままじゃ陣地で体制を整える前に――」

 

 

 

『――傭兵諸君、()()()()()だ。直ちに戦闘を停止せよ!!』

 

―――突如、空から拡声器によるトオルさんの大きな声が聞こえて来て、同時に銃声がピタリと止んだ。

 


side-"先生"

 

「――ど、どういうことよ?!この傭兵達と契約したのは私達"便利屋68"よ!」

 

―――ミユを救出して(アヤ曰く、傷も治療されて建物の中に寝かされていたらしい。恐らくアルの手によるものだろう)戻って来たアヤに彼女の介抱を任せ、司令部を出て前線に向かうと、トオルの呼び掛けで傭兵達の動きが止まった異変に気付いたアルが一足先に来ていた様で、着陸した『カイザーPMC』のロゴをあつらえた[UH-1(ヘリ)]の前に立つトオルに戸惑った表情を浮かべて抗議している。外周で囲む様に集まっている傭兵達は銃を降ろしていて、攻撃を仕掛ける様子は一切無い。

 

「――結論を言えば、()()()()()()()()()()()()()()()()。さっきの宣言により、この場に居る傭兵全員が我が『カイザーPMC』の傭兵――()()となった。まさか()()()()()()()()()()()がこちらの提案をあっさり受け入れるとは予想外だったが――数を優先した結果、金払いが悪くなればこうもなるか」

「なっ、なんですって?!」

「あ、アル様が契約したのに...!許せない許せない許せない...!

「ハルカちゃん落ち着いて!ここで暴れたらこっちがハチの巣にされちゃうよ!」

「うぅ、なんでこんなことに...()()()()のせいかな...」

 

 トオルの問いにアルは白目を剝いて驚き、ハルカは敵意に満ちた眼差しでトオルを睨むけど、ムツキがそれを窘める。その隣ではシオンが青ざめた表情を浮かべている。

 

「――あぁ、やられたわね。成功が確実とは言えなかったし、コイツら質も低かったしねぇ」

「...これは私達の負け、かな」

 

―――その一方で、ジョオンとカヨコは察した表情を浮かべている。どうやらトオルがやった事を理解している様だ。

 

「...()()()()()()()()()()()は何か――それは()()()()()()だ。日々を生きる為には金が必要。傭兵はそれを怪我、そして最悪()を伴う危険な仕事で稼がねばならない。

――だが、傭兵も人だ。死にたくないし、楽に稼げるならそれに飛び付きもする。この傭兵達と交渉した際にお前達が結んだ契約について聞いたが...前払いの額が低い上に、"成功したら多額の報酬を支払う"と謳う。これでは集まる傭兵の質が低くなるし、何が起きるか分からない戦場に向かわせておいて補填も補償も無いのではあっさり契約を変えるというものだ」

 

<「「そうだそうだー!」」

「前払いが渋すぎるんだよー!」>

<「失敗時の補償の最低限も無いとか初めてだぞー!」

「ちくわ大明神!」>

 

 トオルの言葉に賛同する様に傭兵達が口々に"便利屋68"の面々に抗議の声を上げる。―――嘗て遊んだ事がある何かのゲームで見た、報酬の問題や他の事情で契約を切り替えて裏切る傭兵を目の当たりにするとは思わなかった。

 理不尽ではあるけど―――不確実な契約を信用できないのは他の仕事でも同じだ。特に稼ぐ為に身体を張る傭兵達は契約の信用性に敏感なのだろう。

 

「――代表各位。データは取ってあるが、書面でも契約内容を確認してくれ」

 

 トオルが手に提げていたカバンから数枚の書類を取り出しながら呼び掛けると、数人の傭兵がトオルの下に集まる。

 

「...契約に間違いは()ェ。これでいいぜ」

「そうか。――ことが終わったら迎えを呼ぶ。もうしばらく待機していてくれ」

 

 代表の一人がそう声を上げると、他の代表達も頷く。それを確認したトオルも頷いてそう指示を出して代表達を戻し―――私に顔を向ける。

 

「――"先生"、遅れてすまなかった。仕込みの影響がこの通り大きくなってしまったのでな。準備に時間がかかってしまった」

「"こっちも陣地を突破されて校舎が襲われそうだったから、最高のタイミングだったよ。――まさか傭兵達の契約を塗り替えてしまうなんてね"」

「『カイザーPMC』だからな。傭兵業に携わって長いからこそ、この手が使えるかもしれないと考えた。ちょうど人手も欲しかった所だしな。総じて質は低いが、そこは猛訓練を施すしかない」

「"兎に角、助かったよ。――さて"」

 

 改めてトオルにお礼を言って―――まだ白目を剝いて硬直しているアルに目を向ける。

 

「"――アル、残念だけど君達"便利屋68"の負けだ"」

「『柴関ラーメン』で耳に入れた話が確かなら、お前達はそう簡単に退けないのだろう。――だが、ここは大人しく退いてくれると助かる。抵抗するなら――包囲中の傭兵達も使ってお前達を倒さねばならない」

「」

 

 トオルと揃って退却を勧めるけど、アルは白目を剝いたままピクリとも動かない。

 

「...はぁ...ほら、"社長"。いい加減現実を受け入れて」コツンッ...

――はっ?!

 

―――溜息を吐いたカヨコに肘で脇腹を小突かれ、アルは我に返る。

 

「ど...どどどどどうしよう?!まさかあのタイミングでこんな大逆転されるなんて...!でも失敗しちゃったらもうお金が――」

「――"社長"、ここは潔く負けを認めて退こう。傭兵達もアビドス(向こう)に付いて、こっちが圧倒的に不利。これからどうするかは...皆で考えよう」

 

 我に返るも想定外の状況で慌てているアルの言葉を遮ってカヨコがそう提案する。

 

「うぅ...た、確かにこの数は私でも捌き切れないわね......っ~~~!!"便利屋68"、逃げるわよッ!!

「は、はいアル様!!」

「わ、分かった...!」

「さーて、これからどうしよっかなー」

「はぁ...最悪私物や備品を売って生活費と事務所の家賃だけでも工面しないと...」

 

 アルの号令一下、"便利屋68"のメンバーが傭兵の一部が包囲を解いて出来た道を足早に歩き出す。―――しかし、カヨコが足を止めて私達に振り向く。

 

「――一つ、聞かせてくれる?この『アビドス』は滅ぶ寸前なのに、どうして生徒達と一緒になってまで抗うの?()()なら切り捨ててしまってもおかしくないのに」

「"私は『シャーレ』の"先生"。教師は困っている生徒を助けるのが役目だからね"」

「俺は『アビドス』の卒業生だ。嘗ての『アビドス』を知っているからこそ――滅ぶ寸前であろうと復興を目指す彼女達をできる限り助ける。それだけだ」

 

 カヨコの問いにトオルと揃ってそう答える。

 

「――そっか。『アビドス』は貴方達を迎えられた奇跡に恵まれたんだね。...最後に一つだけ。"社長"が依頼を受けた時の印象を話していたけど...それが確かなら、依頼主はまだ諦めないと思う。武力で追い出せないなら次は――()()()()()かもね」

<「カヨコー!早く逃げるわよー!」

 

 アルがカヨコを呼び、彼女は手を挙げて応えながら歩き去る。

 

「"...()()()()()..."」

「...学校を運営する生徒会、それに準ずる組織がなくなればその学校は()()となる。人質を取って脅すか、追い出すように仕向けるか...便利屋68(彼女達)に襲撃を依頼した依頼主について探る必要があるかもしれないな。

 傍から見れば『アビドス』が滅びかけであるのは確かだ。だが、この砂漠に埋もれた地をそうまでして狙う理由が解らない。俺とマミゾウの様に復興を助けるということも無さそうだしな」

 

 カヨコが残した言葉に厳しい表情を浮かべていると、トオルが顎に手を添えて考え込みならがそう呟く。

 

―――一体、依頼主は『アビドス』で何を狙っているのだろうか。

 

 

―――to be continued―――

 

 




ということで無事撃退。はたして"便利屋68"はこれからどうするのか...
さて、次回はあやや主観のお話です。
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