Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~   作:八坂 義景

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幹線道路解放作戦、開始です。


File14-Ab.~幹線道路解放作戦②~

~『アビドス』砂漠領域~

side-モコウ

 

ひぃん!!どんどんミサイル来てるよ~?!

「迎撃する!おら、落ちろッ!

 

 ユメの声を背に装甲車の屋根に据えられた銃座の[M134(ミニガン)]で弾幕を張り、次々飛んでくるミサイルを迎撃する。

 

「九時の方向よりミサイル!回避を!」

「あいよ!」

 

 アロナの索敵システムがリンクしている、装甲車に装備されたタブレット端末を見ているミヤコが私が迎撃できない方角からのミサイル接近を伝え、ドライバーの傭兵がハンドルを大きく切って砂上をドリフトし、突入したミサイルの軌道から逃れる。

 

<ドォォォン...!

 

「っと...!」

 

 遠心力と外れたミサイルが砂漠に着弾した衝撃に耐えながら、[M134(ミニガン)]で弾幕を張り続ける。

 

「――モコウ先輩、大丈夫ですか?」

「何とかな!――ミサイルは思ったより迎撃しやすいな。確かに高速高威力だが、弾体がデカいおかげで銃撃でも落とせそうだぞ!――銃身過熱だ!ユメ!

「はい、これ!」

「――食らえ!

 

 ミヤコの気遣いにそう応えながら撃ち続けていると、[M134(ミニガン)]の銃身が赤熱し始める。少し休ませる為にユメから[不死鳥の羽(相棒)]を受け取り、近くに迫っているミサイルを優先して撃つ。

 

ドォォン!!

ドォォン!!

ドォォン!!

 

 拡散も絞っていて、尚且つ神秘も込めている。大型である分弾殻も多少厚いだろうが―――神秘を纏う散弾のペレットはあっさり貫き、弾頭内の炸薬を爆発させる。

 

「モコウ凄い!ショットガンでミサイルを落とすなんて...!」

「神秘も纏わせてるし、弾体がデカいおかげだ!――弾切れ!ユメ、装填しとけ!」

 

 ユメの称賛にそう返しながら弾が切れた[不死鳥の羽(相棒)]をユメに渡し、再度[M134(ミニガン)]を構えて弾幕を張る。

 

『――こちら"雨雲二号"!ビナー(向こう)は一旦ミサイル撃ち止めみたいだよ!』

 

―――迎撃を続けていると、対策委員会(ウチ)で保有しているヘリ三機の内、今作戦に参加している二機の片割れ『雨雲二号』を操縦しているモエからそう報告が飛んで来る。サッと上空を見渡せば、ミサイルの噴射煙と『ビナー』の周りを飛ぶ『雨雲号』二機だけが見える。

 

『うへ、流石にミサイル撃ちまくりはできないみたいだね~。ミサイルが弾切れ(在庫切れ)ならおじさん達にとっては好都合――』

『"――ビナー、地中に潜行!!"』

 

[GRRRRR...!]

 

 ホシノの言葉を遮る様に『雨雲一号』を操るアヤネの報告が飛ぶ。『ビナー』を見れば、ヤツは機械的な唸り声をあげながら砂漠へ潜り―――

 

...ゴォォッ...!

 

『砂嵐――いえ、竜巻発生!複数です!!

うわうわヤバいって?!回避するよ!皆、落ちないようにね!』

「っち...!」

 

 

―――完全に潜る寸前に尻尾を大きく振り回すと、砂を巻き込んだ大きな竜巻が複数発生する。『雨雲号』二機は回避機動を取り始め、地上(こっち)も巻き込まれそうになって砂上を疾駆する装甲車が揺れる。

 

「一度距離を取りましょう!機動戦で車両()を失えば致命的です...!」

「了解だ!」

「ひぃん!飛ばされる~?!」

 

 ミヤコがドライバーに指示を出し、無軌道に動く竜巻を回避しながら距離を取る。時々竜巻が接近して乱気流で装甲車が浮き上がりそうになるが、ドライバーは上手い事竜巻を避けていく。

 

『――竜巻消失!』

 

 少しして、風を失って竜巻が消える。しかし、撒き散らされた砂が漂って視界が若干不明瞭だ。

 

『"砂で視界が...アロナ、ソナーの反応は?!"』

『今は検知範囲外――ソナーに感あり!"砂走一号"の前方です!!

「私達の前――」

 

―――ドォォン!!

―――『砂走一号(私達)』の前方数百メートルで砂煙と共に『ビナー』が現れ―――

 

 

 

 

 

 

 

[GYYYYY...!]

ギュィィィィン...!

 

『わわっ?!び、"ビナー"口内に()()()()()()()()!!こ、これh『"モコウ、射線から逃げるんだ!!"』

「左へ回避!!」

 

―――"先生"に言われずとも、『ビナー』が開いた口に()()()()()()()()()()のは見えていた。ミヤコはタブレットを睨みながら即座にドライバーに指示を飛ばす。装甲車が大きく左へ曲がるが、『ビナー』は頭を向けてこっちを狙い続ける。

 

「ひぃん、ずっと狙い続けてるよぉ!!」

見りゃ分かる!!くそ、[M134(コイツ)]じゃ流石にあの距離は...!」

『"不味い...!何とかs『"ビナー"口内の高エネルギー反応収束!!』"』

「くそ、このままだと――」

 

―――カッ...!―――

 

―――『ビナー』の口内の光が、口内の砲口の真ん中に点となって収束するのが見え―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[GYAAAAA?!]

 

―――ッドォォン...!

 

―――突然だった。『ビナー』が()()()()()()()様に頭を揺らして吠え、口内の()()()が消える。それとほぼ同時に()()()()()()が空に響く。

 

ナイスショット、ミユ![Lahti-39(RABBIT-39式対戦車銃)*1]持って来て正解だったね!』

動き回るヘリから狙撃...しかも()()使()()()()()()()()()()()だから上手くやれるか不安だったけど...モコウ先輩達を守れて良かった...!

 

 インカムにモエの嬉しそうな声が入り、続いてミユの珍しく素直に嬉しそうな声が入る。―――どうやらミユの狙撃が決まって『アツィルトの光』の発射を阻止出来た様だ。

 

―――『うーん、こんなにデカいなら普通の銃じゃ...ねぇミユ、持ってきたはいいけど整備以外はずっとしまいっぱなしの()()、使えない?今回こそ正に打って付けだと思うよ』

―――『うぇ...そ、そんないきなり言われても...!

―――『何が通用するか分からないから、火力が出せるならそれに越したことはないと思うんだ。大丈夫、ミユならできるって!何なら午後一杯練習に付き合うからさ』

 

―――作戦と対策委員会(私達)の役割を伝えた際、モエがミユに提案して今作戦で持ち込んだ対戦車ライフル[RABBIT-39式対戦車銃]。対装甲戦力用としてミユが所有していたものの、対戦車ライフル故の諸々のデカさは隠密性に悪影響を与えるからと整備や訓練以外では殆ど、実戦では一度も使って来なかったらしい。モエはそれを思い出してミユに運用を提案した。

 

 昨日の午後一杯を、モエが操縦するヘリから狙撃する練習を行っていたのを準備の合間に見たが...回避機動中は流石に無理そうだったが、ホバリングである程度静止した状況下で的を全部撃ち抜いたのは流石だった。それに、大型で重い対戦車ライフルを載せた事でヘリのバランスも不安定な筈だが、普段通りに操縦するモエもアヤネと同等かそれ以上の操縦技能の持ち主だ。

 

『"ミユ、ありがとう!最高のタイミングでよく決めたね!"』

...え、えと...ありがとうございま――

『――"ビナー"の身体から複数の熱源反応!ミサイル来ます!』

 

[GAAAAA!!]

 

―――ビナーは咆哮をあげ、再度ミサイルを次々放つ。今度は対空が多いが、こちらにもミサイルは飛んで来る。

 

『うっひゃぁ、来た来た!ビナー(アイツ)、自慢の砲撃を邪魔されてお冠みたいだね!』

『余計なこと言ってないで回避しろ!"RABBIT2"、ミサイル迎撃を開始する!』

 

 『雨雲二号』の銃手(ガンナー)として乗り込んでいるサキが、どこか楽し気なモエに吠えるやり取りを聞きながら再び[M134(ミニガン)]で迫り来るミサイルの迎撃を始める。

 

―――作戦は始まったばかりだが、早速危うい場面が出て来てしまった。とは言え、私達なら充分対応出来る範疇だ。このまま『ビナー』を引き付けて...!

 


~幹線道路付近~

side-ネイト

 

『――三時の方向よりオートマタとドローン!』

「こっちでも見えた!お前ら、迎撃するぞ!

 

 空から目を光らせるアヤの通報を聞くと同時に、アタシの視界からでもこっちに向かって来る―――銃らしきものを構える古びたオートマタと武装した古びたドローンが見えて皆に迎撃指示を飛ばす。

 アタシらの後ろでは、"解放部隊"『砂祓』の重機が道路に積もる砂をどんどん除去している。それを護るのがアタシら『砂城』の役割だ。アタシは仲間達と、『カイザーPMC』の傭兵一個小隊と共に幹線道路右翼側の防衛を受け持っている。

 

「邪魔は――させねェ!

[GA...?!]

 

 [道拓く織り手(相棒)]のスコープを覗いてオートマタの一体を狙って数発放ち、頭を撃ち抜いて倒す。アタシの神秘が弱いのもあるだろうが、5.56mm(小口径)じゃオートマタやドローンの装甲を撃ち抜くのに一苦労だ。けど―――

 

『――装填完了、射撃再開!』

 

 

―――ド ド ド ド...!

 

[GAGA...?!]

[GYAA?!]

[GEGE...?!]

 

―――『カイザーPMC』のテクニカルが搭載する[Browning M2]が弾帯装填を終え、重厚な銃声を響かせる。金属製の身体故に頑丈なオートマタでも、流石に12.7mmの弾幕には耐えられないらしい。腕や脚、頭を吹き飛ばされ、砕け散りながら次々倒れたり落ちたりする。

 

『敵全滅を確認。――ネイトさん、一度前線司令部に戻って小休止を。右翼側は小康状態と見ていいでしょう』

「弾も少なくなって来てるしな...了解だ。お前ら、一度戻るぞ!

 

 オートマタとドローンの全滅を確認したアヤの提案に頷き、仲間達に指示を飛ばす―――

 

 

~幹線道路 『アビドス』境界ゲート 前線司令部~

 

「――戻ってきたか。お疲れさんじゃな」

「マミゾウさん、来てたのか」

「予定に色々調整付けてつい先程な。ほれ、飲むといい」

 

―――幹線道路の『アビドス』境界上にあるゲートの傍に設置された前線司令部のテントに入ると、マミゾウさんが出迎えてくれる。

 

「ありがと。......っはぁ。――セリカ達、大丈夫だといいんだが」

 

 マミゾウさんが差し出したスポーツドリンク(プカリスウェット)を受け取ってキャップを開けて一口飲み、テントの奥に据えられたディスプレイを見る。

 

―――大型ディスプレイは二つあり、一つは砂を除去する"解放部隊"の重機群の映像とレーダー表示画面を、もう一つは"陽動部隊"の『雨雲一号』機上カメラの映像とレーダー表示画面を映している。

 アタシが見ている"陽動部隊"の映像では、ミサイルを次々放つ『ビナー』と、回避しているのかカメラの視界が大きく揺れる様子が見える。レーダーでは『ビナー』を示す大きな赤い点の周りを、四つの青い点が動き回っている。―――今の所は損害無く『ビナー』を引き付けられているみたいだ。

 

「今の所は順調のようじゃな。砂除去の進捗は三割程。『ビナー』もホシノ達がよく引き付けておる」

「でも、油断はできねぇ。『ビナー』がレーザー砲とミサイル、砂嵐以外に何かしら備えている可能性もあるみたいだからなぁ」

「うむ、そうじゃな。――相手は古代兵器の類。儂らが知り得ぬ武装やらシステムやらがある可能性は捨てきれぬ」

 

 マミゾウさんはアタシの言葉に素直に頷く。―――今は順調でも、これから何かしら想定外な事態が起きる可能性も充分にある。『カイザーPMC』の拠点では、万が一に備えた戦車部隊や"ゴリアテ"が待機しているのを見かけたが、それが果たしてビナー(アイツ)に通用するのか...

 

「よしよし、『カイザーコンストラクション(儂の所)』の連中はよくやっておるのぉ。『アビドス』展開に備えて()()()()()()()()()()を積ませておいて正解じゃったわい」

「...ずっと前から備えてたのか?」

「『プレジデント』より『アビドス』展開を命ぜられる前から、な。当初は社員達から怪訝な顔をされたが、『アビドス』展開を知ってからは"見事な先見の明"だなんだと尊敬されるようになったのぉ。"備えあれば憂いなし"――予算(カネ)にも資源資材(モノ)にも限りはある故何でもはできなんだが、一見無駄に見えても思わぬ所で役立つものじゃ」

 

 マミゾウさんは"解放部隊"の映像を眺めながらそう答えて満足そうに頷く。―――マミゾウさんとトオルさんが『アビドス』の卒業生である事はセリカ達から聞いていたが、『アビドス』に来る前から色々と備えていたらしい。それだけアビドス(ここ)に思い入れがあるんだろう。

―――"カタカタヘルメット団"に居た頃、『アビドス』に進出すると聞いた時にアタシは()()()()()()()()()()()()()けど、今でもこの感覚を感じる理由は解らない。アタシの両親は中学校での卒業式目前に事故で亡くなったから、懐かしさを感じる理由を聞く事ももう出来ない。―――『アビドス』で過ごしていけば、この感覚を感じる理由を見つけられるだろうか。

 

―――閑話休題。

 

「――そろそろ行くぜ。右翼側で見張ってるアヤと傭兵連中も休ませねぇとな」

「油断せず頑張るんじゃぞ。"陽動部隊"より相手取る脅威が低いとは言え、それでも武装したオートマタやらドローンやらは自衛手段に乏しい重機隊にとって危険じゃからな」

「あぁ、分かってる」

 

 一気に飲み干して空になったペットボトルをゴミ箱に入れ、マミゾウさんと別れてテントを出る。―――作戦はまだまだ続く。油断せず、アタシらに出来る事をやって行こう。

 


~『アビドス』砂漠領域 市街地跡~

side-"先生"

 

―――ドォォォン!!

 

「"うわっ?!"」

『"先生"、大丈夫ですか?!』

「"何とか...シールドがなかったら不味かったかもね"」

「あら~...申し訳ありません、"先生"。少し迎撃が間に合わなかったですね~...」

 

 ノノミが迎撃したミサイルの爆風が廃ビルのガラスを吹き飛ばし、ガラス片が幾つか機内に飛び込んで来て咄嗟に身を屈める。アロナが展開しているシールドのおかげで傷付く事は無いけど、それでも危険な物が飛んでくれば驚きもする。

 

「"大丈夫、気にしないで。アロナのおかげで無事だよ。――アヤネ、爆風の影響は?"」

「現状特に問題ありません!ビル風が怖い所ですが、このまま『ビナー』を引き付け続けます!」

 

 申し訳無さそうな表情を浮かべて謝るノノミにそう返し、続いてアヤネに機体の状態を尋ねると問題無いと返って来て、『雨雲一号』はビルの間を抜けていく。

 

[GRRRR...!]

 

 続いて、私達から見て左後方から『ビナー』の機械的な唸り声と砂を掻き分けて追いかけて来る音が聞こえて来る。

 

―――作戦開始からどれだけ経っただろうか。先程トオルから"解放部隊"の作業進捗は四割を越え、もうすぐ五割に届くと伝えられたけど、『ビナー』は作戦開始から変わらず私達"陽動部隊"を狙い続けている。

 

―――『"先生"、おじさんから一つ提案があるんだ~。こんな遮蔽がまるでない砂漠の真っ只中で戦うより、遮蔽になりそうなビルとかがある市街地跡で戦った方がいいと思うんだ~。ヘリのチャフやフレアも無限じゃないし、()()()()()()()()()()()()ら――仮に"解放部隊"の作戦が成功してもおじさん達が()()()()()()()()()()()()()()だろうし、さ。どうかな~?』

 

 『ビナー』はミサイルを主に用いて迎撃を図っていて、ホシノの提案でミサイルの射線の障害になる事を狙って()()()()()()()に少し近付いた位置にある廃墟の市街地に戦場を変えている。砂漠に埋もれていてもビル群は半分以上突き出ていて、嘗ては高層ビルが並ぶ市街地であったと解る。本校が在った中心街でなくともこの規模だから、嘗ての『アビドス』の規模は凄まじいものだったのだろう。

 

―――閑話休題。

 

「"――『雨雲二号』、そっちの状況は?"」

『変わらず左側面から"ビナー"を追い掛けてるよ!アツィルトの光(レーザー)撃ちそうならまたミユが妨害できるようにスタンバってるから安心して!』

「"頼もしいけど、油断しないで。相手は高度なAIを搭載している。さっきのミユの妨害方法を学習して対策してくる可能性も充分にあるからね。――『砂走』各車、状況は?"」

 

 私達の反対側から『ビナー』と並走する形で追尾する『雨雲二号』を操るモエの自信満々な答えにそう釘を刺し、続いて地上の『砂走』に状況を問い合わせる。

 

こちら"砂走一号"!ミサイル及び散発的に襲撃するオートマタやドローンを迎撃しながら移動中!――やはり懸念通り、オートマタやドローンが居ましたね』

 

 [M134(ミニガン)]が弾幕を張る音を背景にしたミヤコの報告が返って来る。機内の下方カメラ表示画面を見れば、[M134(ミニガン)]であちこちから迫るミサイルやオートマタ、ドローンを迎撃しながらビルの間を疾駆する『砂走一号』の装甲車の姿が見える。

 

―――『確かに、遮蔽もないまま戦闘を続けるのも危険ですね。...ですが、恐らく壊れたオートマタやドローンが徘徊している可能性があります。ミサイル以外の脅威の出現に注意しつつ行きましょう』

 

―――ホシノの提案を受け入れた際にミヤコがそう懸念を挙げていたけど、的中してしまった。トオル曰く、砂漠を徘徊するオートマタやドローンは『セイント・ネフティス社』が放棄したものや、"アビドス工学科*2"製のものが殆どらしい。稀に()()()()()()()()()()()()()が現れる事もあるらしいけど、殆どが警備、治安維持用のものだから総じて何かしら武装しているから充分脅威だ。

 

「"ミサイルは廃ビルのおかげでかなり防げているけど...爆風で飛び散るガラスや瓦礫、死角に潜むオートマタやドローンも厄介だね。――『砂走二号』、状況は?"」

『こちら"砂走二号"!こっちもオートマタやドローンがちょくちょく襲ってきてるわ!ホシノ先輩の神秘を込めた[M134(ミニガン)]であっさり破壊できてるからいいけど――』

『"ビナー"、潜行!!』

 

[GRRRRR...!]

 

 アヤネが声を張り上げた通報を聞いてバッと『ビナー』の方を見る。機械的な唸り声をあげながらその場で潜って行く様子が見える。

 

「"アロナ、ソナーで追尾を!"」

『もうやってます!――振動検知、進路は..."砂走二号"近傍のビル群です!』

「"セリカ、聞こえたね?!『ビナー』がそっちに向かっているから――"」

 

 

 

 

―――ドォォォォンッ!!

[GYAAAAAAA!!]

 

「ビル群の中から――」

 

ゴゴゴゴゴゴゴ...!!

 

うぇぇ?!"ビナー"出現と同時にビル群が倒k「"セリカ!砂走二号、急いで回避ッ!!"」

 

―――ビル群の倒壊が始まった瞬間、私はインカムに限界まで張り上げた声で咄嗟に指示を飛ばしていた。

 

『うへぇ~ヤバいよこれ...!急いで――』

『まさかビルを崩して...!ドライバー!倒壊に巻き込まれないように全速遠回りで"砂走二号"の傍に――』

 

 

ドドドドドド...!

ガシャァァァァン!!

 

―――砂煙をあげて崩れていくビル群。

 

 

 

 

 

 

 

―――ドガッ...シャァァァン...!

 

「"セリカ、皆?!"」

『ホシノちゃんッ?!』

『シロコ先輩...?!』

 

―――その中で、進路上に落ちて来た瓦礫にぶつかって空中で乱回転しながら吹き飛んでいく『砂走二号』が見えてしまって―――

 


~???~

side-セリカ

 

―――『...セリカ、だいじな話があるんだ。わたしは――――』

―――『...なん、で...?"いっしょに『アビドス』をふっかつさせよう"って...やくそく、したよね...?』

―――『わたしだって、反対した。...でも、お父さんもお母さんもこうするしかないんだって、わたしもわかっているんだ。約束をやぶっちゃうことになって...ごめん』

 

―――漠然とした記憶。小学校四年生の頃、折角仲良くなったのに生活の為の稼ぎが厳しくなって『アビドス』を離れていった()()()()()()()との別れ。それからの二年間は友達が居ない喪失感で無気力に過ごしていた。

 

―――でも、『アビドス公立第一中学校』でアヤネと出会って。卒業して『アビドス高等学校』に一緒に進学して、ホシノ先輩やシロコ先輩と言った個性的だけど『アビドス』復興を志して一丸となって頑張っている皆と出会えて。心にぽっかり空いた喪失感は埋められた―――()()()()()()()()()

 

―――何で、今になってこんな記憶を思い出しているんだろう。もう顔も思い出せず、あの時の喪失感だけは何となく思い出せる程度に風化しかけていたのに。あの日から―――

 

 

 

 

 

 

 

~市街地跡近郊~

 

―――ドォォォン!!

 

「っ?!」

 

―――傍で爆発音が聞こえ、跳ね起きると視界に日光を反射して眩しい砂漠と日影が混ざっている。日影の様な暗さの原因は何かと辺りを見回せば、ボコボコにひしゃげて擱座した装甲車が―――私が乗っていた『砂走二号』が見えた。

 

「――確か、『ビナー』がビルを纏めて崩してきて、その瓦礫にぶつかって...皆は?!

 

 

 ホシノ先輩、シロコ先輩、ドライバーの傭兵の安否と状況を把握しよう装甲車の影を出て―――

 

「よし、これでミサイルは全部落とした――って、アンタ目ぇ覚ましたのか!」

「――!うへ、起きたんだね~セリカちゃん。早速で悪いんだけど――」

 

[GAAAAAAA!!]

 

『"ビナー"、ミサイル発射!!』

 

―――盾と[Eye of Horus(ショットガン)]を構えるホシノ先輩と、その隣で[G36C]を構えていたドライバーの傭兵が私に気付き、一瞬驚いた表情を浮かべてから安心した様ににへらと笑うのを遮る様に『ビナー』の咆哮と連続したミサイルの発射音、インカムからアヤネの声が聞こえて来る。

 

「――『砂走二号(私達の装甲車)』がお釈迦になっちゃってこの場で戦ってるって訳ね。..."先生"、聞こえてる?こちらセリカ、これから戦闘に復帰するわ!」

『"セリカ、目を覚ましたんだね!――現在、"解放部隊"の作業進捗がもうすぐで九割に達する所だ。"砂走二号(セリカ達)"が装甲車()を失ったって聞いて"解放部隊(向こう)"も更にペースを上げている。"解放部隊"の作業完了の報告が届き次第"雨雲号"で君達"砂走"を回収して離脱予定だから頑張って!"』

「私が気絶してる間にそこまで...了解!

 

 "先生"の状況報告を聞いて頷き、ホシノ先輩の一歩後ろに立って[シンシアリティ(愛銃)]を構えてミサイルを撃つ。

 

『――ん、まとめて吹き飛ばす』

 

ドドォォォン!!

 

―――少し離れた所ではシロコ先輩がドローンを操っていて、複数のミサイルが狙って来て突入した所にポッドのロケット弾を放って纏めて爆発させている。作戦開始時に装甲車に積み込んでいたけど、どうやら無事だったらしい。

 

 

 

[GARRRR...!]

ギュィィィィン...!

 

"ビナー"口内に再び高エネルギー反応!狙いは...ホシノ先輩達です!』

装甲車()を失って、砂漠で足付けて戦ってるんだ。そりゃ狙うだろう、な...!おいモエ!ミユが撃てるように位置変えろ!

『とっくにやってるよー!――とは言え、まだミサイルもそこそこ多いからチャンスは少ない...!ミユ、タイミングは任せるよ!』

ら、"RABBIT4"了解...!

 

 

 『雨雲二号(機体)』に迫るミサイルを[M134(ミニガン)]で迎撃しながらサキがモエに吠え、モエがそう答えながらビナーの正面に展開しようとミサイルを避けつつ移動する。

 どうやら砲口を狙撃しようとしているらしい。確かに砲口、その奥の薬室やら砲撃機構やらはどうしたって装甲で覆う事は出来ない。構造材そのものが硬い物質だと厳しいかもしれないけど、狙う意義は充分にある。

 

『"皆、ミユが撃てるようにミサイルを落とすんだ!"』

『元よりそのつもりだ!おらドライバー、もう少し近付け!』

『...ユメ先輩、タブレットをお願いします。"RABBIT1"、ミサイル迎撃に加わります!』

「うへ、勇敢だね~。――おじさん達ももっと迎撃しよっか」

「はいよ!」

「了解!」

『ん、任せて』

 

 "先生"の指示に頷き、『雨雲二号』に迫るミサイルを優先して迎撃する。視界の端から『砂走一号』が走り込んで来て、モコウ先輩が[M134(ミニガン)]を、ミヤコが助手席から上半身を乗り出して[RABBIT-31式短機関銃(サブマシンガン)]で弾幕を張って次々ミサイルを迎撃していく様子も見える。

 ミサイル迎撃を始めてしばらくして、障害や脅威が殆ど無くなった『雨雲二号』は『ビナー』正面に躍り出て―――

 

 

 

 

 

 

―――ッドォォン...!

 

[GR...!]

 

―――ッギィィン...!

 

『『『『"――は?"』』』』

――うぇ...?

「――うへ?」

「――え?」

 

―――ミユが狙撃した瞬間、『ビナー』が()()()()()()()()()()()()()()()のを目の当たりにして私含め誰もが変な声を零す。

 

[GRRRR...!]

ィィィィン...!

 

『わわっ?!口内のエネルギー反応更に――

 

 

 

 

 

―――ザザッ!!

「――ホシノッ!!」

「――っ!」

「え?!ホシノ先輩――」

 

―――突然だった。私達の傍に『砂走一号』が走り寄って来たと思いきや手を差し伸べているモコウ先輩が声を張り上げてホシノ先輩を呼び、ホシノ先輩は即座にモコウ先輩の手を取って屋根に飛び乗って―――

 

『ドライバー、このままビナー(ヤツ)の真っ正面目掛けて突っ走れ!!』

『は?!――あぁクソ、了解!』

 

―――『砂走一号』は再び口を開いてチャージを始める『ビナー』目掛けて走っていき―――

 

 

 

 

 

『――行くぞッ!!』

『はい!!』

 

―――ダンッ!!

 

[――GA...?!]

 

―――ホシノ先輩と、銃座から屋根に上がったモコウ先輩が()()()()()()()()()()()()()()、『ビナー』にとっても予想外の行動なのか一瞬硬直して―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『『――食らえッ!!』』

ダダァァン!!

 

ドゴォォォォン!!

[GYAAAAAAA??!!]

 

―――ズシャァァァァン!!

 

 

―――先輩二人が同時に散弾を砲口に撃ち込むと、大爆発を起こして『ビナー』が悲鳴の様な咆哮をあげて巨躯を仰け反らせ、そのまま砂漠に倒れる。

 

び、"ビナー"口内"アツィルトの光"発射機構内で爆発!かなりのダメージを与えたみたいです!』

『"なんて無茶を...!"』

 

―――ドサッ...!!

『ぐぉっ?!』

『うべっ?!』

 

―――ザザッ!!

 

 爆発の衝撃で吹き飛ぶ様に『ビナー』の傍から離れ、砂に落ちた二人の下にすかさず『砂走一号』が走り寄る。

 

『二人共無茶し過ぎだよ!ほら、速く離脱するよ!』

イテテ...すまん、これしかないと思ったら身体が動いちまった』

うへぇ...モコウ先輩に合わせてたらまさかこんなやり方で阻止しちゃうなんて、やり遂げちゃったけどおじさんビックリだよ~...』

『"ビナー"だけでなく私達も意表を突かれましたよ、全く...こちら"砂走一号"!ホシノ先輩、モコウ先輩を回収します!

 

 インカムにそんなやり取りが入り、ユメ先輩とミヤコが二人を回収して倒れている『ビナー』の傍から離れる。

 

「...なぁアンタ、あの二人ヤバいな」

「...私だって、あんな無茶苦茶なやり方初めて見たわ。初見且つ未知が多い相手だってのに、あんなタイミング次第じゃ()()()()()()()()()()()()リスクがあるのにも構わず...私には真似できないわ」

 

 呆然としているドライバーの傭兵の言葉にそう返しながら倒れ伏す『ビナー』を眺める。―――"炎のベンヌ"、"暁のホルス"と呼ばれる程の戦闘力を持つ二人の、常人より強力な神秘を込めた散弾はかなり効いたらしい。砲口から黒煙を立ち昇らせながら動かない。

 ミユが今回運用している[RABBIT-39式対戦車銃(対戦車ライフル)]の弾は装甲を抜けずとも衝撃は与えられていたものの、ミユが持つ神秘が弱いのか(或いは味方すら気付けない希薄な存在感に割かれているのか)ダメージは大して与えられていなかった。だからこそさっきは『ビナー』の砲口を狙った―――けど、『ビナー』は()()()()のか()()()()()()()()()()()()()()なんて芸当を見せた。

 

―――けど、モコウ先輩とホシノ先輩(歩兵二人)が至近距離に迫って散弾を撃ち込んで来るのは高度なAIでも予想出来なかったらしい。あの爆発は中で溜め込んでいたエネルギーか何かが爆発したのだろう。内部で爆発したのに外観では殆ど無傷なのはかなり堅牢な装甲みたいだけど―――内部へのダメージは大きい様だ。

 

『"――作戦司令部(HQ)から速報!"()()()()()()"!――"陽動部隊"は離脱に移るよ!ユメ、"砂走一号"の状態は?"』

『えーっと...燃料がちょっと厳しいかな?普通のスピードで走っても間に合わないかも...』

『"分かった。――トオルから"装甲車は放棄してもいい"って許可を得ているから、"砂走一号"は放棄。"雨雲一号"及び"二号"に分乗して離脱するよ!"』

『"雨雲二号"了解!ちょうど近くに一時的な着陸ができそうな平坦な砂地があるから、そこを回収地点(PZ)に設定するよ!』

 

―――"先生"が"解放部隊"が作戦を完了させたと私達に伝え、離脱に入る。『雨雲号』二機は私達の位置から西へ百メートル程離れた方へと高度を下げながら飛んでいく。

 

「...作戦成功、ね。『ビナー』が目を覚ます前に離脱しないと」

「あぁ、それがいい」

 

 ドライバーの傭兵と一緒に回収地点に向かう。少し離れた所で戦っていたシロコ先輩も同じ様に向かっている様子が視界に映る。

 

『モコウ、ホシノちゃん!帰ったらお説教だからね!あんな普段の戦闘以上の無茶は見過ごせないよ!』

『お前の説教は大して怖くないんだが...まぁ、らしくない無茶をやったのは事実だ。甘んじて受けるさ』

『うへぇ...砂だらけだからシャワー浴びてお昼寝したかったんだけどな~』

 

 インカムに届くやり取りを聞きながら、乗り込めるギリギリの超低高度でホバリングしている『雨雲号』二機の下に向かう。

 

「"――全員乗ったね?"陽動部隊"、離脱する!"」

 

―――『雨雲号』二機が浮かび上がり、未だに倒れて動かない『ビナー』を眼下に見ながら離脱を始める。

 

―――幹線道路は解放された。これで、慢性的に品薄だったコンビニや商店への安定した供給が再開する―――『アビドス』復興に向けて一歩前進だ。

 

 

―――to be continued―――

 

 

*1
フィンランドの対戦車ライフル。20×138mmB弾を使用する

*2
当作品オリジナル学科。ミレニアムには劣るが、様々な研究開発が行なわれていた




という事で、後半少し端折りましたが作戦成功です。これで物資や商品の安定した供給が『アビドス』に齎されます。

なお、今回ミユが運用した[Lahti-39(RABBIT-39式対戦車銃)]はオリジナル設定です。フィンランド製だったので起用にちょうどよかったです。
 ヘリの機内伏せ撃ちできる広さは無いだろうから中腰だけど、キヴォトス人には同等の対戦車、対物ライフル使ってる娘も居るから大丈夫でしょ!...と判断してこの展開を入れました。

さて、次回はあややの『アビドス』インタビュー後半です。そして...ンフフ

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