Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~ 作:八坂 義景
~『アビドス高等学校』自治区 幹線道路付近の電波塔~
side-アヤ
―――一昨日解放された幹線道路で『カイザーPMC』の護衛が付いたトラックが列を成して『アビドス』に入っていく。多くはコンテナに『カイザーコーポレーション』のロゴを誂えているけど、幾つかはごく普通の運輸会社のトラックも見受けられる。
「作戦成功からそこまで日が経っていないけど、『ビナー』は奪還に来ないわね。損傷の回復もあるでしょうけど...当初の予想通り、『ビナー』は
電波塔の点検用足場から見下ろせる、そんなトラックの車列を眺めながら呟く。
―――"陽動部隊"として『ビナー』を相手取っていたモコウさん、ホシノさんが
「損傷を回復できる手段を持っているのは厄介だし、また幹線道路に砂を撒き散らして自分の領域として取り返そうとする可能性も否定できないけど――これで、『カイザーPMC』主体の空輸による細々としていた供給が一気に改善される。『ビナー』についても幾つか新たに情報が得られたし、復興に向けて大きく前進したわね」
―――今は作戦成功を喜ぶべきだろう。『ビナー』も決して無敵では無い事も分かったし、トオルさんは"これで『
"炎のベンヌ"、"暁のホルス"と呼ばれる程に高い実力を持っているとは言え、
「――さて、今日は前回のインタビューの続き。思ったより早く時間が取れて良かったわ。今回は二年生のお二人と、一年生のお三方が対象。――よし、行きますか!」
~『アビドス高等学校』校舎 "廃校対策委員会"部室~
―――本日はインタビューに応えていただきありがとうございます。まずは、それぞれ自己紹介をお願いします。
ノ「は~い☆『アビドス高等学校』二年生、"廃校対策委員会"委員『十六夜ノノミ』で~す♪」
シ「同じく二年生、"廃校対策委員会"の"切り込み隊長"『砂狼シロコ』だよ」
―――ノノミさん、シロコさん、よろしくお願いします。インタビューに移る前に...一昨日実施された"幹線道路解放作戦"への"陽動部隊"としての参加、お疲れ様でした。
ノ「いえいえ~。アヤさんも"解放部隊"としての参加、お疲れ様でした♪」
シ「これでコンビニとか商店の品物もしっかり補充される。復興に向けて大きく前進できたね」
―――しかし、作戦中にシロコさん、ホシノさん、セリカさんが乗っていた装甲車が『ビナー』によって崩されたビルの瓦礫に巻き込まれた大破したと聞いた時は、"解放部隊"でも、司令部でも誰もが顔を青くしていましたよ。しかもそこにセリカさんが気絶したという報告も入りましたからねぇ。
シ「まさかビルを崩してくるなんて予想外だった。しかも、助手席の方から瓦礫にぶつかっちゃったから...セリカは運がなかった」
ノ「でも、装甲車の喪失以外はセリカちゃんの気絶だけで済んで本当に良かったですね~。兵器はいくらでも作れますが、それを操る人の補填はそう簡単にできるものではありませんから」
―――えぇ、人的損害を殆ど出さず作戦を成功させることができて本当に良かったですね。では、インタビューに移ります。―――まず、お二方が『アビドス高等学校』に入学した理由を教えてください。
ノ「は~い♪...実は私、本来は『私立ネフティス中学校』卒業後は
―――ふむ、十六夜と言えば...いえ、これについては後にしましょう。
シ「...私は、『アビドス高等学校』
―――おっといきなりぶち込んできましたねぇ。これ聞いて大丈夫なヤツですか?
ノ「大丈夫ですよ~。ネイトちゃん達――最近編入された娘達以外の皆さんにはちゃんと共有されていて、受け入れられていますから☆」
―――それならよかったです。まさか『アビドス』出身ですらない可能性もあるとは...しかし、それならどうやって入学したんですか?
シ「...ちょうど入学シーズンの少し寒い頃。私はこの校舎の正門前で座り込んでいた。何かすることも、何かしようとする意思も全く働かず、ただ座り込んでいた。――そんな私に気付いたのが、その日最初に登校してきたホシノ先輩だった。声をかけられて、初めて顔を上げたら...戸惑った表情のホシノ先輩が居たんだ。
名前を聞かれて答えたけど、それ以外は何も覚えていないからホシノ先輩は"うへぇ...これは私だけじゃ手に負えないよ"って、モコウ先輩とユメ先輩に登校を催促したんだ。そうして登校してきた二人も私を見て戸惑っていた」
―――普通に登校したら全く知らない誰かが座り込んでいるんですから、ホシノさんでなくとも戸惑うでしょう。
シ「ん、そうだね。...で、当時は生徒会の部室だったこの部屋に入れられて、改めて三人から色々聞かれたけど、それでも私は名前以外何も答えられなかった。ホシノ先輩とモコウ先輩がどうしたものかって頭を抱えていたら...ユメ先輩が"じゃあ生徒として入学させちゃおう!"って提案したんだ。二人共、"何言ってるんだコイツ"って
―――流石ユメさん。素性がまるで分からない方を生徒として迎え入れようとするのは実に彼女らしいですねぇ。
シ「何が起きてるか分からない私の前で、ユメ先輩はホシノ先輩と口論を始めた。"素性が分からないのに受け入れるのは危険だ"ってホシノ先輩が言えば、"
―――普通に考えればユメさんの提案はとんでもないですからねぇ。言い方は悪いですが、便衣兵の類であれば内側から崩されて大惨事でしょうし。...しかし、こうして『アビドス』の生徒となっているということは、何だかんだ受け入れられたんですね。
シ「正論や現実を説いてもユメ先輩は意見を曲げなかったからね。モコウ先輩が"記憶が無いなら、その記憶で何かしでかさないように私達で記憶を上書きしてやりゃいい。生徒が増えるのは大歓迎だしな"って仲裁して、私は『アビドス高等学校』に入学することになった。――このマフラーは、その時にホシノ先輩から貰ったものなんだ。あの時の私は薄着だったから、"せめて寒い思いをしないように"って。あの頃は固い所があったけど、その裏に優しさがあったのは確かだよ」
―――いつも身に付けているなとは思っていましたが、なるほどそんな理由があるからこそ肌身離さず持っている訳ですね。
ノ「私が『アビドス高等学校』の門を叩いたのは『私立ネフティス中学校』卒業式が目前に迫った頃、シロコちゃんの入学が決まった後ですね~。ホシノ先輩から決まっていた進路を蹴った理由を尋ねられましたが、先程答えたように理由を話して受け入れられたんです」
―――なるほど、よく分かりました。では、次の質問を。今年度が終われば、ホシノさん達は卒業します。モコウさん、ユメさんは留年していますが...流石に二度目の留年は無理があるでしょう。そうなればお二方が三年生として"対策委員会"を引き継ぐことになりますが、何か方針や描いている将来はありますか?
ノ「私は"アイドル活動で人を呼び込み、且つその収益を借金返済に充てる"...という方法を何度か提案したんですが、尽く却下されているんですよね~。なので、ユメ先輩が常日頃語っている"アビドス砂祭り"の復活を目指したいですね~☆アイドルでもお祭りでも、人の興味を引くものは必要でしょうから」
―――アイドル活動は厳しいですよ?あの界隈の人気、覇権争いは熾烈ですし、一朝一夕で人気になるなんてそれこそ奇跡でもなければ到底無理です。学業の傍らで活動する程度では収益は中々出せないでしょう。『ワイルドハント芸術学院』の様な専門校であればまだ余裕はあると思いますが、『アビドス』には借金もありますからねぇ。
シ「ん、アイドルをやるんだったら銀行強盗をやるべき。私が"対策委員会"委員長になったら銀行強盗を敢行する。これで私達の代で借金は完済できる」
―――ガッツリ犯罪じゃないですか。それこそ『アビドス』の名前と信用に傷を付けるでしょう。
シ「大丈夫。顔バレ防止の覆面は用意してあるし、暇さえあれば銀行強盗のチャートも練っているから問題ない」
―――大問題ですよ。金融機関を経営しているマミゾウさんも居るんですからやめましょうよ。
ノ「シロコちゃん。めっ、ですよ♣...ホシノ先輩達も都度止めてるので実行は止められていますが、こんな風に破天荒なところがあるんですよね~。入学してしばらくはホシノ先輩達のことを呼び捨てにして、事あるごとに喧嘩を仕掛けてボコボコにやられていたんですよ~☆それに、廃品回収業者から廃品を奪って別業者に売る、なんてこともやっていた時期もあったので、今より手のかかる娘でしたね~」
シ「ん、今となってはいい思い出だね」
―――何やってるんですかシロコさん...他校であれば良くて拘束、最悪退学処分ですよ。『アビドス』の皆さんが寛容でよかったですねぇ。
ノ「シロコちゃんを『アビドス』に編入できてよかったと、つくづく実感しますね~。でも...破天荒な分勇敢さは"対策委員会"でも随一ですし、仲間想いでもあるので掛け替えのない、大事な仲間ですよ♪」
シ「私も『アビドス』に入学できてよかったと思ってる。だからこそ、復興の為にできることをやっていくつもりだよ」
―――その意気は結構ですが、犯罪はやめましょうね。さて、最後に改めて問います。『アビドス高等学校』に入学したことに後悔はありませんか?
ノ「ありませんね~。...
シ「むしろ感謝しかない。...私自身どうやって『アビドス』に来たのか分かってないし、入学以前の自分の人生もまるで覚えていない。そんな私を生徒として受け入れてくれた『アビドス』に、ホシノ先輩達に報いる為にも、これからも復興に向けて努力を続ける。...銀行強盗させてくれたら百点満点だけど」
―――ですから犯罪はやめましょう。...インタビューを終了します。お二方、本日は時間を取っていただきありがとうございました。
side-アヤ
「...あ、ノノミさん。ちょっとお時間よろしいでしょうか。――オフレコで確認したいことがありまして」
「はい、大丈夫ですよ~☆」
ライディングに向かったシロコさんを見送り、部室を出ようと身支度を整えるノノミさんを呼び止める。
―――彼女の性『十六夜』。私が
「――オフレコということは、あまり他人に聞かせたくないことでしょうか?」
「えぇ。...実は、ノノミさんの性――『十六夜』に関して確認したいことがありまして。その答え次第では――
「あらあら、それは気になりますね~。答えられる範囲であれば、お答えしますよ♪」
「ありがとうございます。ノノミさん――」
~『柴関ラーメン』 店内~
―――お三方、本日はインタビューに応えていただきありがとうございます。また、会場として開店前の店内を貸してくださった柴"大将"にも感謝を。
柴「なァに気にすんな!腹に余裕が
―――勿論、終わったら一杯いただくつもりですよ。さて、まずはそれぞれ自己紹介をお願いします。
ア「『アビドス高等学校』一年生、"廃校対策委員会"書記担当『奥空アヤネ』です」
セ「同じく一年生、"廃校対策委員会"会計担当『黒見セリカ』よ」
ネ「編入ほやほやの一年生、"廃校対策委員会"の新米委員『水元ネイト』だ」
―――アヤネさん、セリカさん、ネイトさん。本日はよろしくお願いします。まず、一昨日の幹線道路解放作戦への参加お疲れ様でした。特にセリカさんは災難でしたね。あれから後遺症などは出ていませんか?
セ「特に問題ないわ。...まさか助手席側から瓦礫にぶつかっちゃうなんて。本当、不運過ぎたわ」
ネ「セリカが気絶したって速報が届いた時は呆然としちまったな。トオルさんもマミゾウさんも動揺していて、"解放部隊"に作業ペースを上げるよう指示を飛ばしてた程だ」
―――それだけセリカさんを、"対策委員会"、ひいては生徒の皆さんを想っていたということですね。セリカさんが無事で私もホッとしていますよ。では、インタビューを始めます。まず、セリカさんとアヤネさんが『アビドス高等学校』に入学した理由を教えてください。
ア「『アビドス公立第一中学校』に進学した際、セリカちゃんと出会って『アビドス』復興を目指しているって聞いたのがきっかけですね。私も『アビドス』で生まれ育っていますから、窮状を子供ながらに見ていて漠然と"復興の為に何かしたい"という想いはありましたが、セリカちゃんとの出会いでその想いは確かな決意になりました。そうして『アビドス高等学校』に揃って進学し、"アビドス生徒会"から再編された"廃校対策委員会"に加入して書記担当になったんです」
―――なるほど。漠然とした想いがセリカさんとの出会いで変わったんですね。さて、そんなセリカさんは何故『アビドス高等学校』に入学したんでしょうか?
セ「私は、小学校の頃から『アビドス』を復興したいって決めていたの。でも、五指に満たなかった当時のクラスメイトは、
―――ほう、小学生の頃から復興の意思を固めていたとは。しかし、一歳年上であれば現在高校二年生となっている筈ですが...ノノミさんやシロコさんではないでしょう?
セ「えぇ。その友達と一緒に『アビドス高等学校』に進学するって決めていたけど...四年生の時に、両親とお金の事情でその友達は『アビドス』を去らざるを得ない状況になったの。...今じゃ顔も声も思い出せないくらい記憶が風化しちゃってるけど、あの時の喪失感だけはハッキリ思い出せる」
―――『アビドス』の現状では、仕事もかなり少ないでしょうからねぇ。子供を育てるとなればよりお金もかかることでしょう。子を想えば『アビドス』の外で安定した暮らしを求めることは重要な選択だと思いますよ。
セ「今ならそうやって納得できるけど...あの時の私は約束を破られたショックと、『アビドス』への想いはその程度だったのかって怒りが綯い交ぜになっちゃって、無気力に小学校の残り二年間を過ごしていたわ。
そうして無気力なまま『アビドス公立第一中学校』に進学して――アヤネと出会ったことで、改めて復興の意思を固めたの。最初はまた唐突に『アビドス』を出て行くんじゃないかって不安もあったけど、友達として一緒に過ごしている内にアヤネの意思は本物だって解って。こうして『アビドス高等学校』に進学して"対策委員会"に加入して今に至っているわ」
―――なるほど。一度喪失を味わったものの、同い年で同じ意思を持つアヤネさんと友達になり、同じ道を歩めているんですねぇ。...もし、その友達と再会したらセリカさんはどうしますか?
セ「...うーん...とりあえず、一発殴ってやろうかしらね。生活に関わる事情があったから強く言えないけど...『アビドス』に戻ってこないのはその程度の想いだったってことだろうし、私は諦めずに復興を頑張ってここまで来たって見せつけてやりたいわ」
―――それが実現する奇跡が起きればいいですねぇ。では、続いてネイトさんに質問です。とは言え、あまり思い出したくないでしょうから無理強いはしませんが..."カタカタヘルメット団"に入る前はどの学校に所属していましたか?
ネ「『ビストロ調理師専門学校*1』だ。小学校の頃からお袋の料理の手伝いをしてたらハマってな。料理人になりたいって思って進学したんだが...アタシに料理の才能があったのが不幸だったんだろうな。上級生共からイジメに遭って、耐え切れず中退して流れた末に"カタカタヘルメット団"に流れて今に至った」
―――あぁ、あの学校でしたか。本来は料理の腕を競い、"万人の舌を喜ばせる"ことを至上命題とする校風でしたが、一昨年"総料理長"が代わって以来急速に歪んでしまったんですよねぇ。料理で競うべきなのに、どうしてか賄賂とコネ、媚売りがものを言うようになり、真っ当に料理人として学ぼうとしている生徒が陰湿なイジメに遭って耐え切れず転校や中退が相次ぐようになったんです。
セ「何よそれ...!料理と全く関係ないものが横行するなんておかしいじゃない!そんな事情でネイトが真っ当な学校生活を送れなかったなんて許せない...!」
―――そんな有様だったので、代替わり以前までは有名料理店に向けて将来有望な料理人を輩出していたのがパッタリ止んでしまっていて"連邦生徒会"も疑念の眼差しを向けていましたね。そして去年、"七囚人"の一人『五塵の獼猴』捕縛に際して一斉検挙された密輸に関わっていたことが判明して"総料理長"以下運営陣が丸ごと『矯正局』送りになって閉校処分を下されたので、もうネイトさんを苛ませることはないでしょう。
ネ「そういやそんなネットニュースを去年見た気がするな。そん時は"カタカタヘルメット団"に入ったはいいが待遇の格差が酷くて、押し付けられた似た境遇の仲間共々日々を生きるのに精一杯で世間の状況を知る暇が殆どなかったから思い出せなかった。まぁ、もうアタシみたな目に遭うヤツが出ないなら"連邦生徒会"に感謝だな」
ア「そんなあっさり...でも、過去を引き摺らないで前を向いているならいいのかな」
―――トラウマとして引き摺っているということもなさそうで何よりですね。さて、次の質問を。セリカさんとネイトさんはここ『柴関ラーメン』でバイトしていますが、何故ここでのバイトを決めたんでしょうか?
セ「"対策委員会"加入早々に"会計担当"に任命させられたから、借金返済の為にどうやって稼ごうかって考えてバイトをしようって決めたのがきっかけね。『アビドス』の現状のせいで人手を求めている所も殆どなくてどうしたものかって悩んでいたら、マミゾウさんが『柴関ラーメン』を紹介してくれたの」
柴「念願叶って店を構えたはいいが、屋台の時より入る客が多くてなァ。俺一人でラーメン作りと接客会計を回すにゃ厳しくなって、ある時マミゾウに愚痴ったら次の日にゃセリカが来たもんだから驚いたぜ」
―――なるほど、マミゾウさんの紹介だったんですね。しかし、話を聞いた翌日に訪ねるとは行動が早いですねぇ。
セ「一円でも多く稼いで借金返済しなきゃならないもの。"大将"にバイトとして雇われたその日から接客と会計、手が空いた時の食器洗いを任せられたけど、最初は注文間違いとかレジ打ちをミスったりしたわ。けど、お客さんから"店に華が増えた"なんて言われたら嬉しくなっちゃって。"大将"も気前がいいから、借金返済しつつも余裕がある生活を送れているわ」
―――正にセリカさんにとって天職、という訳ですね。卒業したら、そのまま『柴関ラーメン』に就職でもしますか?
セ「まだ一年生だし、卒業後の進路は定まってないけど...それも選択肢ね」
柴「俺としてはセリカにゃもっといい就職先があると思うんだがなァ。だが、セリカのおかげで俺の手もかなり余裕ができてラーメン作りに専念できるようになったのは確かだ。就職先に悩んだら、正規の従業員として雇うのもやぶさかじゃねェ。それに、ネイトが良ければだが...将来的にゃお前に『柴関ラーメン』の暖簾を分けて、屋台を引いてもらいてェ」
セ「――へ?」
ネ「――は...?んな話初耳だぞ"大将"?!」
―――あやや、これはスクープですね!ネイトさんはバイトとして雇われたばかりですが、それ程に有望ですか?
柴「あぁ。初日から俺のペースについて行けてるし、調理の腕捌きも場数を踏めば俺と同等かそれ以上になりそうだからな。接客はまだまだセリカに劣るが、『柴関ラーメン』の味を継がせるにゃネイトはこの上なく最適だと俺は思ってる。元々進学していた学校がマトモだったら、間違いなく有数の料理人になれてただろうぜ」
―――おぉ、それ程ですか。歴戦のラーメン職人である"大将"にそう言わしめるなら、ネイトさんの料理の才能は本物なんでしょう。
セ「すごいじゃないネイト!確かに調理は私より上手いと思っていたけど、まさか"大将"が暖簾分けを考える程だったなんて...!」
ネ「...アタシの腕はそんなに有望だったのか...へへ、何か気恥ずかしいな。だが...親父とお袋が応援してくれていた料理人の夢を
柴「今日すぐ決めろとは言わねェ。だが、頭の隅にでも考えておいてくれ。お前達はまだ一年生なんだ。色々経験して自分の道を見付けてくれ。その上で俺の味を継ぐ気になったなら――本格的に教え込もう」
―――屋台となれば、『アビドス』外でも『柴関ラーメン』を提供できそうですねぇ。さて、最後の質問です。『アビドス高等学校』へ入学して後悔はありませんか?
ア「正直、事あるごとに銀行強盗を提案するシロコ先輩や、冗談めかして物騒な提案を挙げるホシノ先輩などに思うところはありますが...それでも、皆で笑い合って過ごせているので後悔はありません」
セ「『アビドス』復興が私のやりたいことだもの。後悔なんてないわ!借金が完済できればできることは増えるだろうし、まずはお金を稼がないとね!」
ネ「"カタカタヘルメット団"として散々襲撃したアタシらを生徒として受け入れてくれただけでもありがてぇのに、初耳だが"大将"が暖簾分けを考える程にアタシの腕を求めているってのも嬉しい。...ここまでされちまったら、『アビドス』生としてやれることをやっていきたくなるってもんだ」
―――やはり皆さん、『アビドス』生であることを誇っているんですねぇ。では、インタビューを終了します。本日はありがとうございました。
~住宅街の通り~
side-ネイト
「まさか"大将"がアタシに暖簾分けを考えていたなんてなぁ...」
「すごいことじゃない。"大将"はマミゾウさんとトオルさんが学生の頃からラーメンを作ってる大のベテランだから、そんな人から将来を期待されるなんて相当よ」
今日のバイトを終えた帰り道。アヤのインタビューで明かされた、アタシへの暖簾分けへの驚きの余韻で呟くとセリカはそう返して来る。
「...誰かに期待されるってのは、こんなに嬉しいもんなんだな。『ビストロ』に居た時も、中退して"カタカタヘルメット団"に流れ着いた時も、アタシは理不尽を押し付けられて、何とかこなしても褒められもせず更に押し付けられてばかりだった。夢は所詮夢でしかねぇって思ってたが..."大将"の期待に応えられれば、夢も現実になりそうだ」
「あまり気負い過ぎてもダメよ。"大将"も言ってたけど、私達は自由に道を選べるんだから。...でも、ネイトと一緒なら――」
―――ふと、セリカが言葉を途切れさせる。まるで
「...どうしたセリカ?」
「......あのさ。インタビューの時に
「――がッ...?!」
「っ?!ネイt――」
―――突如
「――二目標の気絶を確認」
「――ここらの住宅街は殆ど住人が居なくて良かったわね。見付かる前に...っと、その前に......あぁ、あったあった。じゃ、さっさと運んじゃって。私は
「「了解です、"若頭"」」
「...相変わらずウチの"組長"は
ということで、残りのアビドス生インタビューと、遅まきながらセリカとネイト誘拐です。