Blue"Fantasy"Archive~透き通るような"幻想"世界~   作:八坂 義景

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お気に入り50件突破したので初投稿です。そして週一投稿が崩れてしまいました()リアルがそこそこ忙しく、執筆ペースも低調気味になっていました...まだアビドス編なのにエタる訳にはいかんでしょ自分。

さて風紀委員会戦、後半です。と言っても戦闘描写は少ないです。


File19-Ab.~手打ち~

―――時は"風紀委員会"出撃辺りまで遡る―――

 

~『ゲヘナ学園』自治区 とあるカフェ~

side-レミリア

 

―――チリン...

 

「――いらっしゃいま...せ...?!に、二名様でよろしいでしょうか...?

「えぇ」

「か、かしこまりました...!空いているお席にどうぞ!」

 

 店内に入り、ちょうど傍のテーブルの後始末を行っていたらしいバイト店員である一年生の娘が私達に―――いや、私の少し後ろに立つ()()に気付くと目を点にして、緊張して震えた声で応対する。

 

「ありがとう。...そんなに緊張しなくてもいいわよ。今日は揃って非番だから。()()()()()()()()()()()()()()荒事を起こすつもりはないわ」

「あ、ありがとうございます...!どうぞ、ごゆっくり...!」

 

 微笑みながら緊張を解く様に語りかけ、テーブルを片付け終えて厨房に向かう様子を見ながら適当に空いている二人分の席を見繕ってそこに向かう。

 

「...あのバイトの娘と知り合いなの?」

「いつだったか、成り行きで風紀委員会(そっち)の鎮圧活動に協力したことがあったでしょう?その時に巻き込まれていたあの娘を守ってあげたの。そしたらお礼にってこのお店を紹介されて、個人的に好みだったから貴女にも紹介しようと思ったの――『ヒナ』。折角の非番――プライベートなんだから、こういう所でお菓子と紅茶に舌鼓を打つのもいいものよ」

 

 私の向かい側に座ってそう聞いて来た彼女―――『ゲヘナ学園』入学以来の親友の一人である『空崎ヒナ』にそう答えて微笑む。

 

―――実家である『緋色魔財閥』は『ゲヘナ学園』自治区で様々な事業を展開し、学園設立に関わった"出資者達"の一員でもある。そして、何人も"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)議長"を輩出して来た名家だ。一方、ヒナは実家の傘下にある警備会社のごく一般的な社員の娘だった。―――今思えば、サクヤ(忠実にして完璧な従者)との出逢いと同じくらいにヒナやマコト(かけがえのない親友達)との出逢いも運命的なものだったと思う。

 

―――閑話休題。

 

「――はい、お先にどうぞ」

「...私、このカフェは初めてだし、別に貴女が頼むものと同じでも...」

「そんなの駄目よ。貴女が何を頼もうと笑うつもりも貶すつもりもないし、プライベート位は自分を主張していいのよ。――仕事では何でもかんでも自分でやろうとする癖に、プライベートじゃ一転奥手になるのは相変わらずね」

 

 メニューを渡すと眉を八の字に曲げるヒナに呆れながらそう窘める。

 

―――ヒナには面倒臭がり屋と役割への強い責任感が同居している。"面倒事を早く片付けるなら自分が全てやった方が早い"―――"風紀委員会"下部組織の"情報部"に入った頃から今までずっとそんな思考で仕事を熟していた結果、()()()()()()()()()()()()ではあったものの歴代でもかなり早い出世スピードで"風紀委員長"にまでなった。

 しかし、風紀委員長(一組織のトップ)になっても彼女の仕事量は減っていない。『ゲヘナ』において日常である問題児達の鎮圧活動や万魔殿(私達)との打ち合わせは兎も角、机上業務すら彼女が大半を受け持っている。そのおかげで彼女は寮よりも"風紀委員会"本部の実質彼女専用と化している仮眠室で過ごす時間の方が多い。―――そうして仕事に忙殺されている結果が今の彼女だ。プライベートの時間を取れても、自分のやりたい事を見出せず無駄に過ごす事が多い。

 

「あのアコが万魔殿(ウチ)を訪ねてきて、私に頭を下げてまで用意してくれた非番の時間。楽しまなきゃ損よ」

「...そう、ね。寮の部屋の掃除中にサクヤから報告された()()の件が気になるけど...」

「時々空回りするけどアコは優秀だし、そのサクヤも居るわ。"便利屋68"の実力は高いけど、二人が居れば大丈夫でしょう。...でも、アコも最近は激務で疲弊して頭脳が鈍ってるみたいだし、彼女にも非番か休暇を与えた方がいいかもしれないわね。()()が終わったら考えてみましょうか。頑固なら私も一緒に話し合うから」

「...ありがとう、レミリア」

 

 ヒナはそうお礼を言ってメニューを開いて目線を動かしながら吟味を始める。

 

「...そうね...ショートケーキと、紅茶にするわ。写真だと美味しそうに見えるし」

「――ふふ、初めてにしてはいい選択ね。個人的な感想ではあるけど、このカフェのショートケーキはオススメよ。私も同じものを頼もうと思ってたの。じゃあ――」

 

 十数秒して決まったヒナの注文を聞いてそう褒めて注文すべく店員を―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ドゴォォォォォンッ!!!!

「「――!!」」

 

―――突如外から聞こえて来た爆発音を聞いた瞬間、私はヒナと揃って[スカーレット・グングニル(相棒)]を携えて店の外へ駆け出し―――

 

 

 

 

 

 

「たくさん吹き飛んだ!お店なんて跡形もないよー!」

「ぶちょー!お店吹き飛んだよー!流石期待の新人ちゃん!」

「ハーハッハッハッハッ!!いいぞぉ、ジャマなものはどんどん吹き飛ばせ!!きっとここには源泉が――」

 

「――レミリア」

「――えぇ」

 

 

―――♨温泉開発部鎮圧中♨―――

 

 

「うにゅ~...」

「ぐふっ...」

「な...なぜぇ...」

 

―――修理も不可能な程に破壊された掘削ドリルや重機。軒並み気絶して動かない部員達。そして私達の目の前で目を回し、ヘイローを点滅させながら転がる”温泉開発部"の主要人物三人。

―――この三人含め、"温泉開発部"部員五十名程が相手だったけど、ヒナと共にものの三分も要さず鎮圧してしまった。重機も軒並み破壊したから暫くは()()()()()()()無理だろう。

 

「...平和かと思えばすぐコレだもの。流石『ゲヘナ』ね」

「えぇ、そうね。...けど、『地霊寮』が近いのにお構い無しなのは流石と言うか馬鹿と言うか...」

「とりあえず、この子はまた"寮監生"の()()のお説教ね。()()()にも劣らない破壊力の持ち主なのに()()なのが致命的過ぎるわ、全く...」

「うにゅ~...」

 

 構えていた[スカーレット・グングニル(相棒)]を下ろし、ヒナとそんな会話を交わしてため息を吐く。

―――キヴォトス屈指の治安の悪さを誇る『ゲヘナ』だけど、自治区全域がそういう訳では無い。この通りを少し歩いた先にある『地霊寮』とその管轄区である『アニマ旧市街地』は真面目に学業に励む生徒達――残念な事に『ゲヘナ』では希少な存在で、大半の生徒からいいようにカモにされている可哀想な側面もある――の受け皿となっていて、『ゲヘナ』で()()()()()()()()のならまず候補に挙げられる地区だ。―――まぁ、今回の様にゲヘナでは至極日常的な出来事(テロ染みた活動)が起きない訳では無いのだけど。

 

「――い、"委員長"?!それに"副議長"まで?!」

 

―――そこに、"温泉開発部"を追って来たのであろう"風紀委員会"の委員達がやって来る。委員長(ヒナ)が今日非番である事は周知されているだろうから、こうして鎮圧を行っていた事には驚くだろう。

 

「お疲れ様。すぐ近くで活動しようとしていたから、緊急で鎮圧したわ。"救急医学部"は呼んであるわね?」

「は、はい!」

「なら宜しい。――じゃあ、捕縛と後始末は任せるわ。ヒナもそれで――い い わ ね?」

「......え、えぇ」

 

 私が指揮者の腕章をはめた委員の一人と話している傍で()()()()()()指揮を執ろうとするヒナに有無を言わせない圧を掛け、渋々ではあるけど頷かせる。今回の鎮圧は緊急だけど、何もその後始末までヒナの手でやる必要は無い。後始末や連行の指揮位は指揮の資格を持つ委員は皆出来る位にならなければ現状の改善にも繋がらない。

 

「...さて、カフェに――」

 

――

「――あら?ちょっと待って」

 

―――後始末に動き出した委員達を見送り、ヒナを連れてカフェに戻ろうとするとスマホから『モモトーク』の通知音が聞こえて来る。取り出して見れば―――

 


―――今日―――

 

サクヤ

お嬢様

サクヤでございます

遠征の件ですが

行政官が――

 


 

「――は?

「...レミリア?」

 

―――ヒナの声がどこか遠い。サクヤ(従者)から送られて来たトークでの報告内容が衝撃的で気が遠くなりそうになる。意識を保ち、ヒナに向いて―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ヒナ。本当に残念だけど()()()()()()よ。アコが――――」

 


 

~『柴関ラーメン』跡地付近の通り~

side-アル

 

「――っ!」

 

「きゃッ?!」

「ッ?!」

「がッ...!」

 

 身を隠していた横道から飛び出してきた委員数人を一気に狙い撃つ。途中で弾が切れて二人程逃して―――

 

<「きゃんッ?!」

<「ぐぇッ?!」

 

―――向かい側のビルでポイントを構えているミユの狙撃でしっかり殲滅される。

 

「――お見事、"RABBIT4"。敵に回せば脅威だけど、味方だと本当に心強いわ」

あ、ありがとうございます...!

 

 マガジンをリロードしながらインカムで"RABBIT4"―――ミユを褒める。以前の校舎襲撃では敵として相対したけど、こうして味方として共闘していると()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()の脅威がよく分かる。私達が相手取っている"風紀委員会"の"切り込み隊長"である『銀鏡イオリ』が率いる部隊はミユの狙撃による横槍を警戒していて殆ど前進出来ていない。

 

―――『柴関ラーメン』が突然爆発し、それを皮切りに"風紀委員会"の攻撃が始まってからどれ程経っただろうか。規模は歩兵だけで一個中隊相当。更に装甲車三輌と迫撃砲まで装備している。私達"便利屋68"を相手取る際によく見る規模だ。全く、起業当初に比べたら随分と評価が高くなったものだと思う。とは言え、便利屋68(私達)の結束力で"風紀委員会"の鎮圧活動は何度も撃退出来ている。そして今回は私達だけじゃない。"風紀委員会"の戦力には到底並べないけど、『アビドス』の生徒達約三十名が増援として来た。しかし―――

 

―――ピピッ!

『こちら"RABBIT2"!()()()()――"風紀委員会"の"行政官補佐"を確認した!多分ノノミ先輩とシロコ先輩の方が突破されたぞ!校舎から増援は来たがこのままじゃ...!』

『こちら"RABBIT3"!航空支援したいけど、装甲車からの対空砲で中々近付けない!中々やるじゃん...!』

「ヘリの援護も期待できない...『十六夜サクヤ』――アイツが居ると厄介だわ」

 

―――インカムに"風紀委員会"の主力部隊を相手取っているアビドス(こちら)側の主力を受け持つサキと、数分前に増援を率いて来たヘリからオペレートを行っているモエの通信が入って来て、これまでも便利屋68(私達)に辛酸を舐めさせて来た相手が居ると改めて感じて言ちる。

 

―――『十六夜サクヤ』が”風紀委員会"に入って来てから、鎮圧や逮捕活動に対する撃退の成功率が低くなっている。"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"に所属していたのは知っていたけど、まさか"風紀委員会"に出向して来るとは思わなかった。

 "風紀委員会"最高戦力である"委員長"に迫る戦闘能力と、彼女を支える"行政官"を補佐代行出来る程の指揮、事務能力。彼女が便利屋68(私達)の鎮圧に出向いて来ると、誰かが逮捕される(犠牲になる)前に尻尾を巻いて逃げる選択肢すら出て来る程に苦戦してしまう。メンバー全員でなら何とかなる事もあるけど――タイマンに持ち込まれると手強いのも脅威だ。

 表情を変えず的確な指揮で追い詰め、必要となれば矢面に立って戦闘を行い、タイマンでも多勢に無勢でも憶さず相手となり、不利を悟ればすぐに退く。―――"風紀委員会"の役職持ちの中では"委員長"に次いで相手をしたくないとつくづく思う。

 

「――モエ、"RABBIT3"。こちらアル。可能な限りサクヤを――"行政官補佐"の動向を()から監視できる?現状、"風紀委員会"の中では彼女が一番の脅威よ。フリーにさせていたらどんな風に掻き回されるか分かったものじゃないから」

『"RABBIT3"了解!ちょっち厳しいけど、なるだけやってみる!』

「頼むわよ。――カヨコ、何か策はある?」

『さっきモコウとジョオンをサクヤの方に向かわせた。彼女相手に近距離は怖いけど、モコウとジョオンを信じるしかない。その間にムツキと随伴の生徒二人でノノミとシロコの回収を行わせる。"風紀委員会"が人質戦法なんて非道をする筈がないけど、念の為にね』

「了解よ。――他の皆にも改めて伝えておいて。戦力差は未だに圧倒されている。だから、こちらは損害を抑えて風紀委員会(向こう)に出血を強いて撃退を狙う。いいわね?」

『了解』

 

 モエ、カヨコと通信を終え、窓からチラリと通りを覗き見る。――チラチラと委員の姿が見えるけど、未だに狙撃手二人(私とミユ)を前に前進を躊躇っている様だ。

 

「...今のところは食い止められてるわね。風紀委員会(向こう)は数を活かして包囲を狙っている。こうして食い止め続けて包囲できないように穴を―――」

 

 

―――ヒュルルルルル...!

 

っ?!迫撃砲!ミユ、伏せてッ!!

 

―――ドォォォンッ!!!!

 

―――迫撃砲弾の落下音が聞こえた瞬間、インカムを繋いでミユにそう声を張り上げて伏せた瞬間、私がポイントを構えている空き店舗の前に着弾して轟音と振動が伝わって来る。

 ミユ共々ある程度狙撃したらポイントを変えているとは言え、大きくエリアを動いている訳では無い。迫撃砲による面制圧で私達の撃破を狙ってきた様だ。

―――イオリの頭は決して悪くは無い。けど、予想外の事態に弱く、指揮も攻勢に向いている印象がある。恐らくアコかサクヤの入れ知恵だろうか。兎も角―――

 

「っ...ミユ、大丈夫?」

『あぅ...な、何とか無事、です...』

「ほっ...なら良かったわ。...面制圧に切り替えたならこれ以上留まるのは危険ね。効力射が来る前に後退するわよ」

り、了解...!

 

―――通信を繋いでミユの安否を確認し、後退を指示してから私自身も狙撃ポイントを離れる。

 

―――ヒュルルルルル...!

 

―――ドォォォンッ!!!!

 

 空き店舗を出て裏路地を走り出すと、背後で迫撃砲が店舗に着弾した音が聞こえて来た。躊躇していたら吹き飛ばされていただろう。

 

「っぶな...でも、不味いわね。増援は来たけど未だに戦力差は圧倒的だし、このままじゃ先にこっちが――」

 

 

 

 

 

 

 

―――ピピッ!

 

『"――皆、大丈夫?!こちら"先生"とホシノ!"』

 

―――インカムが鳴り、『シャーレ』の"先生"の通信が入って来た。

 


~『柴関ラーメン』跡地~

side-"先生"

 

「――では、"大将"を病院に運んだらすぐに戻ります」

「"うん、任せたよ"」

 

 『雨雲号』に"大将"と見届け役の"風紀委員会"の委員一人を乗せ、アヤネの操縦で病院へと飛び立っていく。

 

「"――さて。まずは一時停戦に応えてくれたことに感謝するよ"」

「感謝される程のことではありませんわ。民間人の負傷者が居る中で銃火を交え続けるのは我々も本意ではありませんから」

 

 『雨雲号』を見送り、私達の前に立つ面々の中でも目立つ白い軍服風の制服を纏う生徒―――『ゲヘナ学園』の治安維持組織"風紀委員会"の"行政官補佐"だと言う『十六夜サクヤ』に向き直ってお礼を言うと、彼女は謙遜するように返事をする。その後ろや周囲では『アビドス』や"便利屋68"、"RABBIT小隊"を合わせても到底上回れない人数の"風紀委員会"の委員達が並んでいる。

 

―――誘拐犯であるヤチエとの()()が決裂し、アヤネからの急報を受けて急いで戻って来た時には皆包囲されかかっていた。現着し、ユメからお店の爆発に巻き込まれて"大将"が怪我を負ったと聞いて真っ先に一時停戦からの話し合いを思い付き、通信を介して『雨雲号』のスピーカーで呼び掛けたら風紀委員会(向こう)はすぐに応えてくれた。―――でも、私達を囲む様に並んでいるから、話し合いの結果次第では―――

 

「謙遜するねぇ...おじさんはその銃火を交える理由を知りたいな。――責任者は誰かな?」

 

 アビドス(こちら)側の生徒代表として私の隣に立つホシノは少し眼差しを鋭くしてサクヤ達"風紀委員会"の面々を見回す。その視線でサクヤ以外の面々の表情が少し強張る。

 

「...わ、私だ。"風紀委員会"、"切り込み隊長"『銀鏡イオリ』。今回の『アビドス』遠征の()()()()を――」

「――貴女じゃダメだね。そもそもアビドス(ここ)に遠征することを提案した()()()()()()を出してくれるかな?それとも――出せないような理由でもあるのかな?」

 

 数秒して銀髪の長いツインテールと褐色の肌が特徴的な"風紀委員会"の娘―――『銀鏡イオリ』と名乗り出るけど―――彼女は違うとホシノは断じてそう問い掛けてイオリを見つめる。

 

っ...

 

 見つめられたイオリは気圧された様に表情を強張らせ―――

 

 

 

『――お呼びでしょうか』

 

―――そんな彼女の隣にドローンが飛んで来て、紺鼠色の髪の生徒のホログラムが現れる。左腕に"風紀委員会"の腕章を嵌めているから間違いなく"風紀委員会"の娘なのだろうけど―――

 

<「ん、変な横乳」

<「わぁ、すごい服装ですね~。姉さんはキッチリしてるのに...」

<「ノノミちゃんや私ほどじゃないけど、それでもあの大きさであんな露骨に...」

<「『ゲヘナ』の制服は個性的だな。...いや、アイツの感性が個性的なのか?」

<「相変わらず彼女であると分かりやすい横乳ですねぇ」

 

―――私の後ろでひそひそ話を交わす"対策委員会"の皆やアヤの言葉通り、彼女の制服のシャツは胸の側面を露出する()()()()が施されている。それも、明らかに露出していると分かる程だ。サクヤは勿論、イオリや、以前の『シャーレ』オフィスビル奪還の際に指揮を執ったチナツの制服とは明らかに違う、()()()()()な制服だ。

 

―――閑話休題。

 

「...うへ~、貴女が全体の責任者かな?」

『えぇ、その通りです。――お初にお目にかかります。"風紀委員会"、"行政官"《天雨アコ》と申します。そちらは――"暁のホルス"、《小鳥遊ホシノ》さんですね?』

「...まるで関わりがない筈の学校の人間にも伝わってるのかぁ」

 

 『天雨アコ』と名乗る生徒はホシノの事を知っていた様で、皆と同じように彼女の復元を見て少し呆けていたホシノは我に返り、前に(ユカリ)やアヤに向けた様な嫌そうな表情を浮かべる。

 

『我々"風紀委員会"にも()()()()()()()はありますので。今回の遠征にあたってある程度アビドス(そちら)の情報は把握しています』

「ふ~ん、そっかぁ...なら、アビドス(こっち)風紀委員会(貴女達)()()()()()()()()()()()()()()()()って分かってるよね?」

『えぇ、勿論。ですので――我々の目的である、そちらの"便利屋68"の()()にご協力いただければこれ以上銃火を交えるつもりはありません』

「な、なんですってーーーー??!!」

 

 アコがホシノの問いにそう答えてアルをキッと見やれば、彼女はそう叫んで白目を剥く。どうやら『アビドス』では無くアル達"便利屋68"が目的だった様だ。でも―――

 

「"確かに、"便利屋68"はゲヘナ(君達)から指名手配を受けているってことは知ってるよ。――だったら、なぜ『アビドス』に..."対策委員会"の皆に逮捕の旨を伝えなかったのかな?"」

『お昼時に突然"アビドス"の皆さんを巻き込む形になってしまったことは申し訳ございません。"便利屋68"がそこの瓦礫..."柴関ラーメン"でしたか。そちらに入店後、店舗が爆発した瞬間を目撃しましたので、"便利屋68"による犯行と判断して早急に行動した次第です』

「...なっ...言いがかりよ!私達だって巻き込まれた側なのよ!

「ん、アル"社長"の言う通り。"便利屋68"は普通にラーメンを食べようとしてただけ」

 

 アコの言葉を聞いて我に返ったアルが異議の声をあげ、シロコが弁護する様に証言する。

 

『では、それを証明できる()()()()()()でもあるんですか?我々は店舗が爆発した瞬間を目撃していますし...このように映像記録も撮ってあります』

 

 アコが近くの委員に目配せすると、その委員は端末を操作してドローンから映像を投影する。―――近くの砂丘から見下ろした視点で。最初はカヨコ達が、次にアルとジョオンが、数分経ってノノミ達が入店してしばらくした瞬間、『柴関ラーメン』が大爆発を起こす瞬間が映し出される。

 

『緊急展開でしたので詳細な分析はまだですが...一目見た所では従業員出入口傍の()()()()()()()()()が爆心地のように見えますね。そちらが証拠を出せない場合、第三者から見れば我々の映像が現状最も確度の高い証拠となり得ます。――さぁ、どうですか?』

 

 アコは自信満々の表情を浮かべて私達を見る。

 

「ひぃん...動画なんて撮ってないよぉ。あ、でも...!"大将"なら映像だと爆心地に見える()()()()()()()()()の証言はできる筈だよ!確か、珍しく納品ミスした分だって言ってたよね?」

「あぁ、そうだな。だが、"大将"はついさっき病院に運ばれた。それを待つ程度量が広いとは...思えないな」

『口ではどうとでも言えますから、その程度ではこちらの証拠を覆すには至りませんね。――では、"便利屋68"をこちらに引き渡してください。それから――"先生"にもご同行願います』

「"――え?"」

「――どういうつもり?」

 

 アコの要求に私自身も、後ろに控える皆も驚く隣で、ホシノはより一層眼差しを鋭くして()()()()()()()()()をも宿して"風紀委員会"の面々を一瞬後退りさせる。――表情を変えないサクヤですら制服のホルスターにそっと手を添えている。

 

『我々が得た情報によれば、"先生"はごく最近"便利屋68"と接触した機会が何度かあったそうですね。"便利屋68"が"ゲヘナ学園"より指名手配を受けた犯罪組織であることをご存知でありながら、何故平然と接しているのでしょうか?我々から見れば、"便利屋68"の犯罪幇助の可能性を否定できないのです。ですから、少々お話を――』

 

 

 

「――()()()()()()()。理論武装するにしても無理があるよ」

 

―――突然、カヨコが一歩前に出て声をあげる。

 

『――無理がある、とは?』

「確かに、私達は"先生"と交流があるのは事実。でも――その程度の情報で"先生"が犯罪幇助をしてると疑うのは短絡的過ぎる。異論があるなら、その情報の詳細を教えてくれる?まぁ...答えられないだろうけどね。だって――私達を出汁に"先生"を確保しようって狙いが破綻しちゃうものね」

 

 カヨコの言葉に"風紀委員会"の面々――サクヤだけは分かっている様な、察した様な表情を浮かべている――と、"対策委員会"、カヨコ以外の"便利屋68"、"RABBIT小隊"の皆も驚いた表情を浮かべる。当のアコは少し眉を上げ―――

 

『――流石、カヨコさんですね。えぇ、その通りです。"便利屋68"の逮捕はついで。本命は"先生"をゲヘナ(こちら)で確保することです。――だって、あの"SRT"ですらキヴォトスを構成する各校の独立性を脅かしかねないのに、"シャーレ"は最早露骨に各校の独立性を越えて容易に介入できてしまう()()()()()()を持っているのですよ?現在締結に向けて大詰めを迎えている()()に何かしら介入されては非常に困るのです。それこそ、()()()()()に利用されては堪ったものではありません』

 

 アコは開き直った様に狙いを明かす。―――()()が何かは分からないけど、その締結の為には『シャーレ』が―――私が脅威だと認証しているらしい。でも―――

 

「"私は『シャーレ』が持つ権力を下手に濫用するつもりはないよ。君達生徒の自主性を重んじ、困っていたら手を差し伸べる。これが私のスタンスだ。――実際、『アビドス』は生徒達だけでは解決できない問題を抱えていてね。それに――今、生徒が二人誘拐されてしまっていているんだ。私は"対策委員会顧問"でもある。尚更、アビドス(ここ)を離れる訳にはいかない"」

「そうよ!私達も依頼主――誘拐犯に騙される形で"先生"や『アビドス』の娘達の行動を妨害してしまったの!その償いとして解決を手伝う為にも――尚更貴女達に捕まってたまるもんですか!」

「それに、私達は『カイザーPMC』に雇われているわ。これについては...ほら、契約書がちゃんとある。私達を逮捕しようとすれば――『カイザーPMC』も雇用主として動くわよ」

 

 『アビドス』でセリカとネイトが誘拐されている事を明かし、アルが続いて啖呵を切り、ジョオンが軽く脅しをかける。今『アビドス』を離れてしまえばずっと心残りになってしまうし、"対策委員会顧問"でもあるからセリカとネイトの安否を確認する必要がある。

 

「――ま、そういうことでね。おじさんは、『アビドス』を手助けしてくれようとしている"便利屋68"が無実だって信じる。風紀委員会(そっち)の言い分の方がよっぽど信用できないしね。だから――"対策委員会"委員長として、"風紀委員会"の『アビドス』への無断侵入に抗議するよ。このまま退去すればよし。しないなら――全力で追い返す」

『――そうですか』

 

 ホシノの抗議の宣言を聞いたアコは瞑目し―――

 

 

 

 

 

『――えぇ、認めましょう。確かにこの遠征はかなりこじ付けたものです。ですが――こんな遠方の砂漠に埋もれかけた僻地まで来たのです。得るものなしでは、今日は非番で私に委員会の指揮代行を任せてくださった"委員長"に申し訳が――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――私がなんですって...アコ?』

 

―――ゴォッ...!!

 

「"――?!"」

「――っ?!」

『――へ...?』

 

―――拡声器を使って響かせた少し低く冷淡な声とヘリが飛来する音が突然聞こえ、ハッと空を見上げれば―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――アコ"委員長代行"。この遠征を――()()()()()()()()()()()()()()()を行った理由を説明してくれる?』

『言い訳は一切受け付けないわ。――しっかり、説明しなさい』

「...ひ、ヒナ"委員長"とレミリア"副議長"?!ど、どうしてこちらに...?!」

 

―――ホバリングする『雨雲号』の側面扉が開け放たれた機内に立つ、黒紫色の軍服風の制服とコートを纏い、白いモップの様なフワフワとしたボリュームがある髪の上に紫色の蛍光ラインが走る立体的で大きなヘイローを浮かべた生徒。黒い軍服風の制服とコートを纏い、軍帽を被る青みがかった銀髪の上に赤い槍をコウモリの様な翼が囲う様を模ったヘイローを浮かべた生徒。外観的に『ゲヘナ』生らしき生徒二人がマイクを片手にそれぞれ紫と紅の瞳に怒りを宿して私達を―――否、二人を見上げて冷や汗を流して驚愕の表情を浮かべているアコだけを見下ろしていた。

 


 

side-ホシノ

 

<「ノノミと...『砂狼シロコ』、だったわね。さっきはごめんなさい。背中、まだ痛いでしょう?」

<「いえいえ、大丈夫ですよ~。そちらは仕事だったんですから、ね?」

<「ん、すごかった。煙幕もあったけど、何も抵抗できなかった」

 

「はぁ...サクヤの提案を受け入れていればこんなことには...」>

「過ぎたことを悔いても仕方ありません。撤収作業位は整然と行いましょう」>

 

「"対策委員長"『小鳥遊ホシノ』、及び『シャーレ』の"先生"。"風紀委員会"の責任者たる"風紀委員長"として、今回の件を謝罪する」

「同じく、"風紀委員会"を監督する"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)"を代表して謝罪するわ」

『...こ、この度は...誠に申し訳ございませんでした』

 

 "風紀委員会"が撤収作業を行う中、ホシノと私の前に立つ"風紀委員長"『空崎ヒナ』と"万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)副議長"『緋色魔レミリア』が揃って頭を下げ、少し遅れてアコも頭を下げる。その雰囲気は二人が来る直前までとは打って変わってすっかり萎縮してしまっている。彼女にとって上司であるヒナに対してはまるで頭が上がらない様だ。

 

「うへ、謝罪を受け入れるよ~。流石に『ゲヘナ』の大物幹部級二人に謝られちゃ断れないしね~。でも、あの"行政官"にはよーく言い聞かせておいてね~?」

「"同じく、謝罪を受け入れるよ。まさか私を狙ってくるなんてね...それだけ『シャーレ』の権限は強力なんだと改めて実感したよ"」

 

 いつも通りの雰囲気を纏い直したホシノと揃って二人の謝罪を受け入れる。

 

「――アコ、後は執務室で大人しく反省してなさい。戻ったらお説教だから」

『は、はい...申し訳ございません...』

 

 ヒナがアコにキッと鋭い視線を向けてそう指示を出すと、彼女はより萎縮した様子で縮こまる様にホログラムの姿を消す。

 

「全く...非番のヒナに代行を任されて張り切ったんでしょうけど、寧ろこんな事態にしてしまうなんてね。...やっぱり一度休暇を取らせて休ませるべきね...さて、貴女達のヘリには助けられたわ。『ハイランダー』に無理を言って特急を出してもらったのはよかったけど、停まれる最寄駅が少し遠かったのは予想外だったの」

「あのヘリがなかったら、私達の介入は恐らく戦闘の最中か終わった後になっていたかもしれなかった」

 

―――アヤネ曰く、病院に"大将"を運んで帰還しようとした所近くの駅に電車が停まっているのを目撃し、何事かと寄ったらそこで二人に出会って二人からの頼みで『雨雲号』に乗せたらしい。そのおかげで、二人は速くここまで来られたらしい。

 

「"大将"の搬送は二人にとってプラスに働いたんだね~。あのままだったら決裂しておじさん達はもっと激しく銃火を交えていただろうし、間に合ってよかったよ~」

「えぇ、本当に間に合ってよかったわ。...それで、ヘリを操縦していたアヤネって娘から聞いたのだけど――生徒二名が誘拐されたというのは事実なの?」

「...残念なことに事実だよ~。おじさんと"先生"は、二人を誘拐した犯人から取引を提案されて会いに行ってたんだ~。ま、決裂した上に逃がしちゃったんだけど」

「"――そうだ。もし、何か知っていたらでいいんだけど...二人は、"鬼傑組"、『吉弔ヤチエ』に心当たりはないかな?"」

 

 レミリアの問いに答えたホシノに続いて、"鬼傑組"、『吉弔ヤチエ』について何か知っていないか尋ねてみる。"風紀委員会"には情報を扱う下部組織があるらしいから、もしかしたら何か知っているかもしれない。

 

「ふむ...『ブラックマーケット』で覇権を争う"三大暴力組織"の一角と、それを束ねる"組長"ね。情報網の広さは"三大暴力組織"でも随一で『ブラックマーケット』どころかキヴォトスの各校自治区にも網を張っている程。無論、ゲヘナ(私達)の所でも警戒しているわ。

 とは言え、"鬼傑組"そのものが出張ることが殆どないし、『ブラックマーケット』にはそう簡単に手出しできないから、『ゲヘナ』内で犯罪活動を見付けたら鎮圧、逮捕に動く位しかできていないけど。――そう尋ねるということは、犯人は"鬼傑組"という訳ね?」

 

 レミリアはそう答えて逆にそう問いかけて来て、ホシノと揃って頷く。やはり、"鬼傑組"は『ブラックマーケット』を根城にしている組織の様だ。セリカとネイトもそこに―――

 

「...ごめんなさい。"風紀委員会"もそれ以上の情報は持ち合わせていない。...ただ、『ブラックマーケット』外での生徒誘拐なんて()()()()()()()()()()()()()()は初めてだと思う。証拠を持っているなら..."連邦生徒会"を動かせるかもしれない」

「"連邦生徒会"を?『シャーレ』が来る以前まではいくら救援要請を送っても『学校内問題なので』って全部蹴るような組織なのに?」

「『ブラックマーケット』は()()()()()()()()とも言われている程に独立性を持っているの。『ブラックマーケット』()()()()()()()は"連邦生徒会"でもそう簡単には裁けない。でも、『アビドス』生を――()()()()()()()という()()()()()であれば被害者である貴女達は"連邦生徒会"に訴えることができるわ。"連邦生徒会"としても、犯罪の温床の癖に一丁前に独立を保っている『ブラックマーケット』の鼻先に泥を濡れる機会でしょうし、『SRT』も動かせるかもしれないわね」

 

 ホシノの問いにレミリアはそう答える。『ブラックマーケット』が学校と同等の独立性を有している事はミヤコ達から聞いていたけど、今回のセリカとネイト誘拐は"連邦生徒会"を動かせる様だ。方針として『ブラックマーケット』に向かう事は決めていたし丁度いい。

 

「"なるほどね。情報ありがとう。『ブラックマーケット』で情報を集める予定だったし、役に立ちそうだよ"」

「...なら良かった。私達の方でももう少し"鬼傑組"について調べてみる。『アビドス』に迷惑をかけてしまった償いでもあるし、"鬼傑組"が学校の生徒を誘拐した実績を作った以上私達も警戒しなければならないから」

「うへ、ありがとね~」

「どういたしまして。――さて。準備は終わったみたいだから、そろそろ私達も撤収しましょうか」

 

 "風紀委員会"の方に目を向ければ迫撃砲や物資の車両への積込が終わってトラックに委員達が乗り込んでいて、サクヤやイオリ、チナツの幹部三人が二人を待っている。

 

「えぇ。...本当にごめんなさい。何もしていない、寧ろ巻き込まれた"便利屋68"を逮捕することを言い訳にして『アビドス』に無断侵入し、生徒達を攻撃してしまって」

「そうしろって命令した"行政官"にちゃんとお説教して改めさせてくれればそれでいいよ~。"鬼傑組"について新しい情報が分かったら教えてね~」

「えぇ、勿論そのつもりよ。――では、縁があったらまた会いましょう」

 

 レミリアは軽く手を振り、先に踵を返して歩き出したヒナに続いて歩き出す。私はホシノと共にそれを見送る。

 

―――"風紀委員会"の攻撃は予想外だったけど、セリカとネイトの救出に向けて新たに情報を得る事が出来た。

 

「...セリカちゃん、ネイトちゃん。もう少しだけ待っててね。おじさん達が必ず――助けるから」

 

 ヒナ、レミリア達を乗せて走り出したトラックや装甲車が巻き上げる砂煙を見送りながら、ホシノは静かに呟いた。

 

 

―――to be continued―――

 

 




ということで風紀委員会戦終了!次回はいよいよブラックマーケットへ...
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